もしもSAOがデスゲームじゃなかったら   作:Remick

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第2章
you are not alone


「じゃあ改めて、メリー・クリスマス」

「おう、メリー・クリスマス! ……しっかし、おめぇもすっかり有名人になったよなぁ、ハーレムギルドの団長さんよぉ~? 晒され常連のブラッキー先生が、随分と出世したもんだぜ」

「それはもういいだろ……。今までいろんな奴に散々からかわれたよ。だからそんな柄じゃないって、あれほど言ったのに……」

「ははは、まあ有名税と思って諦めるんだな!」

「はぁ……それより、お前のギルドのメンバーも一緒に呼べたら良かったんだけどな。……俺、未だに全員の名前も憶えてないし」

「オレら社会人は、この時期みんな忙しいしなぁ。こういうのは、一人でも欠けたら意味がねぇからよ。ま、オレらも近いうちにまた、忘年会で集まる予定だったから気にすんな」

「そっか……悪いな、俺が無理に誘ったばかりに」

「なぁに、おめぇとは正式開始初日からの縁だ。こうなりゃ、最後までとことん付き合うぜ!」

「もしあの時お前に話し掛けられなかったら、今夜だってソロでレベリングに明け暮れてたかもな。だからまあ、その……感謝してるよ、色々と。ありがとな、クライン」

「よせやい、そんな改まって言われると照れるだろうが……。つーかオレはよ、おめぇがいつか、でっけぇことをやってのけるって知ってたぜ? 本当のおめぇはこんなモンじゃねぇ、誰もが一目置くような、すげぇ男になるってよ」

「ははは……それはまた、随分買いかぶられたな。本当の俺なんて、剣の腕ではユウキやランに全然適わない、指揮能力でもディアベルの足元にも及ばない、いちゲーマーだっていうのに」

「おめぇの悪い癖は、すぐそうやって自分を、周りの人間と比べてしまうところだなぁ……。まあ今日みたいなめでたい日に、辛気臭い話は似合わねぇっての! そんなことよりオリャあ、おめぇんとこのべっぴんさん方が、一堂に会したところを生で拝めて感激だぜ!」

「大げさだなぁ……と言いたいところだけど、確かにあれは、目の保養になることを認めるに吝かではない」

「服装から見て、ありゃ相当気合入ってるぞ。おめぇも本当なら、こんなところで現実逃避してる場合じゃねぇんだからな? 後でちゃんと相手してやれよ?」

「お前、楽しんでるだろ絶対……」

 

 

 

「PK……ラフコフとの戦いが本格化するにつれ、皮肉にも奴らの方まで団結力を高めてきている。現在ラフコフの主力を構成しているのは、対人慣れした精鋭中の精鋭だ。……最近思うんだ。俺のやってきたことは、果たして正しかったのか?って」

「だからおめぇは、いちいち難しく考えすぎなんだよ……妹さんのことにしたってそうだ」

「お前、知ってたのか? でもスグは知らないはずなのに、いったいどうして……」

「ンなもん、おめぇの様子見てればわかるっつーの! どんだけなげぇ付き合いだと思ってんだよ、この野郎」

「ほんの二ヶ月程度だろ? いちいち大げさな奴だな」

「そういう意味じゃねぇよ! 密度の問題だよ、密度の!」

「おいクライン、早くも酒が回ってきたんじゃないか?」

「オレは全然酔ってねぇよ、ちっともな」

「酔っぱらいはみんなそう言うんだよな……」

「いいから黙って、オレの話を聞け! いいか? おめぇは素直に楽しんでればいいんだよ。おめぇが立ち上げたギルドのお陰で、攻略のスピードが飛躍的に上がったのは紛れもない事実だろ? 責任を感じるのは結構だ、俺のせいじゃねぇ!なんて言って投げ出す奴よかよっぽどいい。けどよ、おめぇの周りに一人でも、それを責める奴がいるか?」

「ぷっ……ふ、はははっ! 久しぶりに聞いたな、お前の説教」

「たまにガツンと言ってやらねぇと、おめぇぐらいの年頃の子供は、あさっての方向に行っちまうからな。これも、大人の義務ってやつよ」

「わかった、肝に銘じておくよ。俺だって一応それなりに成長してるんだからな。それにしても、10人足らずのギルドでこれなんだから、最大ギルドを束ねるディアベルの苦労とか想像も付かないな。あとプーさんも……いや、あいつはどうでもいいか。むしろ、心労で死ねまであるわ」

「はっはっは! それだけ広い目で見られちゃ上出来だ。やっぱ、おめぇに任せて正解だったぜ」

「……ん? それはどういう意味だ?」

「おっと、酒のせいで口が滑った。今のはなんでもねぇから忘れてくれ」

「いいや、聞き流せないな、まったく。よくよく思い出してみれば、あの日に限って遅刻して来た理由は、結局なんだったんだ?」

「おいおいキリト、その件はもう終わった話だろ? 勘弁してくれよォ……」

 

 

 

「今更聞くことでもねぇけどよ。PvPってのは、基本的にはレベルの高い方が有利なんだよな?」

「ああ。普通に考えれば、頭数が多く街にも自由に出入りできる俺達の方が、圧倒的に有利なはずだ……少なくとも、ついこの間まではそうだった」

「だがこの前のアップデートで、何もかも変わっちまった。対モンスターとは異なるダメージ計算式が導入され、多少のレベルやステ差なら誤差の範囲に収まるくらいにまでなった……聞けば聞くほど、不可解な話だぜ」

「プレイヤースキル重視のゲームに生まれ変わった、なんて歓迎してる連中もいるけどな……」

「それ自体はおかしなことじゃねぇ……。レベル差だけで勝負が決まるんじゃ、対人なんてタダのクソゲーだからな。けどよ、もともとそこまで対人戦をフィーチャーしてたわけじゃないだろ? だいたいそれなら、ギルド戦やら集団戦のシステム整備も同時にやるべきだろうが」

「となると、他に考えられるのは……ゲーム自体の寿命を無理矢理にでも引き延ばすための、運営の苦肉の策だろうな」

「それにしたって、運営会社がPKに肩入れするゲームなんざ、聞いたことがねぇぞ。いったいなにをどうしようってんだ?」

「黎明期のMMORPGみたいにしたいのかもな……と言っても、俺が生まれる前のことだから、聞いた話でしかないけど」

「へぇ。どんなゲームだったんだ?」

「うちの母親の話では、まるで世紀末の様相だったらしい……。ちょっと圏外に出ればレッドカーソル、じゃなくてレッドネームに襲われたし、街中でさえスリに持ち物を盗まれ放題だったとか」

「うへー、そいつはちょっと勘弁してもらいたいぜ。てか、誰がやるんだよ? そんなゲーム」

「当時は世界的に人気があったらしいよ。曰く、完全なる異世界での生活をネット上に初めて実現したんだとか。そう考えると今回のアップデートも、原点回帰と言えなくもない……のかもなぁ」

「いやいや、そりゃねぇだろ。だってこのゲームはレベル制なんだぜ? 先に始めたモン勝ち、プレイ時間が強さに直結、それがレベル制のMMOってもんだろ。そりゃ従来のゲームよりはプレイヤースキル、というか生来のセンス?みたいなのが占める割合は大きいんだろうけどよ」

「うーん……。後発組にしてみれば、ゲーム進行は遅い方が公平感は増すんじゃないか? それにしたって、フロアボスの強化といい今回の件といい、露骨すぎな気もするけど」

「オレに言わせりゃよ、仮にクリアされたらなんだってんだ? クリアしてもらうために用意してんだろ? もし仮にラスボスが倒されたとして、そこで現実の世界まで終わっちまうのか? そうじゃねぇだろ? 全クリされたらリセットするとかサーバーを増やすとか、方法はいくらでもあるだろ。……わりィ、なんか熱く語っちまってよ」

「いや、俺の言いたかったことを、そのまま代弁してくれてありがとう。……確かに今のゲームは楽しいさ、俺にはもったいないくらいの、最高の仲間にも恵まれてる。でも、どんな物語にだって終わりはあるんだ……」

「それで、これからどうすんだ? 運営に怒りのメールでも送るのか?」

「別にどうもしないさ、今まで通りだ。ただ、このゲームをなにがなんでも終わらせたくなったのだけは確かだ。ボスが強すぎる? ならレベルを上げ、装備を整えて、最強のレイドを組んで挑むだけさ。邪魔する連中がいるなら、徹底的に叩き潰す。奴らの望み通りにな」

「おぉ、こえーこえー……まるで絶剣の嬢ちゃんみたいだったぜ?」

「ははは、俺もお前達に感化されたのかな。大それたことを平気で言えるようになった気がするよ。だからクライン、お前も遅れずに付いて来いよ?」

「へっ、誰に物を申してんだ? こちとら吐いた言葉は決して曲げねぇ無頼者、風林火山の親分よ!」

 

 

 

「俺ってさ……。その……どちらかと言うと、女の子にモテる方なのかな? い、いやもちろん変な意味じゃなくて、純粋に好かれてるかどうかって話なんだけど……」

「なんだ、今頃気付いたのか? もしかしたらこの先も一生、こんな調子なんじゃないかって心配してたとこだぞ」

「いくら俺でも、流石にな。……本当は怖かったんだ。こんな俺に好意を寄せる人間なんているはずがない、この人達はみんな、なにか目的があって俺に近づいてきてるんじゃないか?って。人との距離感がわからないんだ……。こんなこと打ち明けたのだって、これが初めてだよ」

「やれやれ……おめぇは自分で思ってるほど嫌われてねぇし、自分で考えてるよりかはあの子達に好かれてるとオレは思うぜ?」

「……ああ。お前がそう言うなら信じるよ。今すぐみんなと向き合うのは、まだちょっと厳しいけど……」

「ま、ようやく一歩前進ってところか。それはそうとおめぇ、結局本命はどの子なんだ? もう自覚が無いなんて言わせねぇぞ」

「うっ……今すぐ言わなきゃ駄目か?」

「今更隠すことでもねぇだろ、オレらの仲じゃねぇか、なっ?」

「絶対、誰にも言うなよ? …………だよ」

「……そりゃまた、前途多難だな。つーかそれ、見た目はともかく、年齢的にどうなのよ?」

「わ、わかってるよ……。それに意識してるのは俺だけだから、どうにもやりづらくって……」

「ほぉー。キッカケはなんだったんだ?」

「ギルド結成する時に、なんか物凄いことを真剣な顔で言われてさ。まあこっちも同じくらい、恥ずかしい言葉で返したんだけど……」

「そうかそうか……まあ、存分に悩みたまえ、若人よ!」

「ここまで聞いといて、結局それかよ! はぁ、真面目に話して損した……」

 

 

 

 

 

 

「あの2人、さっきからなにを熱心に話し込んでるのかしら?」

「随分仲が良さそうですよね。以前は毎日のようにお話をされていましたし……」

「ま、まさか、そういう関係なんじゃ……」

「えええっ!? あのお二人って、そうだったんですか?」

「はい、まず間違いないです。それですべて説明が付きます」

「えっ? ラ、ラン? 急にどうしたの?」

「考えてみれば、普段みなさんからあれだけ猛アタックを受けてるのに、落ちる気配がまるで無いことからしてありえないのです。でも今になって、ようやく腐に堕ちました……ぐ腐腐腐!」

「お兄ちゃんを勝手に、そっち系にしないでください!」

「となると、どっちが攻めでどっちが受けなんでしょうか。ここはやはりオーソドックスにキリトさんが受け、いや案外年下攻めの下克上という線も……?」

「どっちも無いから! というかあなたの妹はどうなるのよ!」

「それはそれ、これはこれです! ホモが嫌いな女子なんかいません!!」

「あ、あたしもちょっとだけ興味があるかな……」

「メ、メリダまで!?」

 

 

「よくわかんないけど、みんな一緒に集まれてホントに良かったよね!」

「あんたは相変わらずねぇ……この中では一番、あいつに近い位置にいるっていうのに」

「?? ……あっ、ボク副団長だから、確かにそうだね! すっかり忘れてたよ、えへへ~」

「……そういえばあんたとランって、歳の割にあたし達とそんなに背は変わらないのよね……肝心な部分はまだまだみたいだけど」

「どこを見ながら言ってるのさ! ボクらだってまだまだこれから成長するんだからね!……と言いたいところだけど、ボク達って一気に背が伸びたから、これ以上はあんまり大きくならないかもなんだよね。クラスでも一番後ろだったし。はぁ……」

「だった? 今は違うの?」

「ああ、うん。今はちょっと訳あって入院中なんだ……。でも今日は特別に、先生に外出許可を貰って来たんだよ」

「そう、だったの……。ごめんなさい、デリカシーのないことばかり言っちゃって……」

「ううん、気にしないで。それに最近は調子もずっと良くなって、来年には退院できるかもしれないんだ。そしたら学校にも行けるし、みんなともいろんな場所に行ってみたいな。今からとっても楽しみだよ!」

「おっ、それならまず、あたしを誘ってもらわないとね。なんてったって、この中じゃ一番最初にあんたと出会ったんだからね!」

「もちろん! その時はよろしくね! どこがいいかな、京都なんていいなぁ……」

「それならきっとアスナが詳しいわよ、実家が京都って言ってたからね。後で聞いてみなさいよ」

「うん、わかった! ……あのね、リズ」

「ん、どうしたの?」

「ボクね、今……すっごく楽しい! 生まれてきて、本当に良かった!」

 

 

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