もしもSAOがデスゲームじゃなかったら   作:Remick

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ロール・プレイング・ゲーム

「あっ、キリト! お久しぶり」

「えーと……サチ? 久しぶりだな。どうしたんだ、こんなところで。うちに何か用事でもあったのか?」

「あ、特にそういうわけでもないだけど……それよりその、大丈夫なの? なんだか若干、目が死んでるように見えるよ?」

「おう……別に大したことじゃないさ……。ただちょっと、死んだ両親?と爺さんが、河の向こうで手を振ってただけだから……」

「それ、全然大丈夫じゃないよ!? 思いっきり死にかけてるから! っていうかいきなりヘビーすぎるよ!?」

「ははは……まあ、俺のことは良いんだ。それより――」

「……良くないよ」

「サチ……? 急にどうしたんだ?」

「だってキリトは、わたし達月夜の黒猫団にとってのヒーローなんだから! そのキリトがこんなになるまで頑張ってるのに、黙って見てられないよ……」

「……ありがとう、サチ。でも、その言葉だけで十分だよ。俺は本当にもう大丈夫。もう全然負ける気なんてしないよ」

「わたし……わたし、キリトは絶対、あんな人なんかに負けないって信じてる! だからあの時みたいに、カッコよく勝ってきて! わたし達全員で応援するから!」

「サチ……なんだか変わったな」

「そ、そうかな? たしかに最近よく言われるけど……」

「ああ、とても良い方向に変わったと思う。もしかして君は今、なにか目標とかあるのか?」

「えっと……笑わないで聞いてくれる?」

「もちろんさ。絶対笑わないって誓うよ」

「最初はね……キリトと並んで戦いたくて、みんなで攻略ギルドの仲間入りを目指してたんだ。でも今は、始めたばかりの人達に色々教えたり、悪い人達から守ったりしてるの。ちょうどキリトがわたし達を助けてくれたみたいに」

「……そっか。大丈夫、君ならきっと俺よりずっと上手にやれるよ」

「ありがとう、キリト。ところでキリトはその、ギルドの人達とは上手くいってるの?」

「ん? ああ、まあ仲は悪くない方かな……。あー、一応言っとくけど、あんまり変な噂を真に受けないでくれよ?」

「ふふっ、キリトは変わらないなぁ……わたしもそろそろ、新しい恋を探さないといけないね!」

「えっ? それってどういう……」

「今更気付いたって、もう遅いんだから! じゃあ頑張ってね、応援してる!」

「……あっちゃー。これがフラグってやつだったのか……。わかるわけないだろ、こんなの……」

 

 

 

 

 

 

「――以上が、彼と実際に戦ってみて気付いた点だ」

「なるほど。思った通り、いやそれ以上の対人特化型ビルドだな。しかし、対戦中にクイックチェンジを使うなんて、大胆なことを考えるもんだなぁ……」

「ああ。剣の突きに目を慣らされた後にやられると、わかっていてもなかなか対応しづらいものだよ。くれぐれも気を付けてくれ」

「わかった。奴が斧に持ち替える前に、ケリを付けるつもりで行くよ」

「それと君にひとつ、言っておかなきゃならないことがあるんだ……。オレも実は昔――」

「違うだろ?」

「……えっ?」

「今言うべき言葉は、そうじゃないだろ? 騎士ディアベル」

「!! ああ! 勝って来い! みんなの未来のため、そしてオレ達の、騎士の誇りのために!!」

「応ッ! まかせとけっ!」

 

 

 

 

 

 

「キリトさぁん。開始までまだ時間があるみたいなんでぇ、ちょっとお話でもしませんかー?」

「……別にいいけど。俺にトークスキルなんて期待するなよ」

「いえいえー、自分が勝手に話すだけなんでぇー、ウザかったら無視してくれて構いませんよー」

「……それにしても、大晦日に公開デュエルなんて、まるで格闘技のイベントだな」

「あははー、たしかに。今日のこの時間だけは、オレンジでも街に入るのを許可してもらってますから。運営にも話のわかる人がいて良かったですよねぇー」

「ちょっと人気取りっぽいけどな。まあ、盛り上がるの自体は良いことじゃないか? この試合を観て、PvPに興味を持ってくれる人がいるかもしれないしな」

「あれれー? 随分と余裕なんですねぇ。それともそれとも実は内心、ガッチガチに緊張しちゃってたりしますぅ?」

「いいや、不思議と全然そんなことはないな。これも史上最恐のコーチが、地獄のようなトレーニングメニューで朝から晩までみっちり鍛えてくれたお陰かもな」

「あははぁー、そんな付け焼き刃が、いったい何の役に立つっていうんですかぁ?」

「そう腐したもんじゃないさ。自慢じゃないが、一夜漬けは俺の得意技なんだぜ? なにしろ学校のテストはすべて、これで乗り切ってきたんだからな」

「あははー。面白い人ですねぇ。ところでところでキリトさんは、ディアさんがベータ時代、どんなプレイヤーだったかご存知ですかぁ?」

「さぁな。よく知らないし、特に興味もないな」

「えぇー? 本当にぃ~? あの人が今までにやってきたことの半分でも耳にしたら、きっとドン引きしちゃいますよぉ~?」

「たとえそうだとしても、それは過去の話だろ。お前らの言葉を借りるなら、これは所詮ゲームだ。どう楽しもうが、俺達の勝手だろ?」

「あっは、たしかに。話は全然変わるんですけどー。斬る、って面白い言葉だと思いません?」

「……は? いきなりなんだそれ。唐突すぎるぞ」

「だってだって、時代劇とかでよく言うじゃないですかー、誰々を斬った、って。それって大抵の場合、殺したって意味ですよね?」

「あ、ああ……。多分昔は、手足を失ったり内臓を傷付けられたら、助からないことの方が多かったからじゃないか? 近代医学が入ってくるまでは、適切な処置も難しかっただろうし……」

「キリトさん、案外真面目なんですねぇー。これから戦おうって相手の戯れ言に付き合ってくれるなんて。好印象ですよー? そういうの。自分的にポイント高いですねぇ」

「…………」

「さっきの続きですけど。殺すって英語ではキルって言いますよねぇー。キルと斬る。面白い偶然の一致だと思いませんかぁ?」

「……どうしてお前は、俺を狙うんだ? お前とは会ったことも、話したことも無いはずなのに」

「ベータの頃、あなたの噂を初めて聞いた時ですねぇ……思ったんですよ。キリトさんを斬りたいなぁ、キルしてみたいなぁ、って……アハァ」

「……そろそろ時間だ。始めるとしようぜ」

「はいはぁーい。ではでは、自分からリク出させてもらいますねぇー」

 

 

 

 

 

 

「アッハァ……やっぱり強いですねぇ、キリトさん。自分、結構自信はあったんですけど」

「あんたもな……まさかあそこで、斧を投げてくるとは思わなかったよ。……それで、どうする? まだちょっと時間が残ってるけど」

「それはもちろん、続行で……と言いたいところなんですけど、自分片手斧がメインなんで、剣はあんまり練習してないんですよー……。同じ盾無しの片手剣だったら、そりゃ本職の人に敵うわけないですよねぇ。あっはははー」

「そっか……実は俺の方も、手札はもう全部見せてしまったんだよなぁ。正直自信無かったりして。でもまあ……」

「せっかく盛り上がってるのにこのまま終わるのも、お客さんに申し訳ないですよねぇー。じゃあじゃあいっちょ、ショーダウンといっちゃいますかねぇぇー!」

 

 

 

 

 

 

「よう、ブラッキー」

「PoH……あんたまで俺に何の用だ」

「こういう時はなんて言えばいいんだろうな。うちのモンが世話になったな、とでも言っとけばいいのか」

「どこのヤーさんだよ……そうだ、あんたにひとつ、頼みがあるんだ」

「ほう……言ってみろ。聞いてやるかどうかは別だがな」

「これからは中層以下のプレイヤーには、なるべく手を出さないでほしいんだ。特に、初心者狩りのような真似はやめてくれ」

「……で? 何の見返りも無しに、そんな頼みを聞くとでも? このオレを誰だと思ってるんだ?」

「見返りか……それならこういうのはどうだ? 俺達黒の騎士団はあんた達ラフィン・コフィンに対し、正式に宣戦布告する。まあ、まだギルド戦のルールなんて無いから、形だけになるけどな。今回の件から察するに、運営に要望を出せばなんとかしてくれるかもしれないよな。そうすりゃ晴れて、あんたと俺は不倶戴天の敵同士ってわけだ。どうだ?」

「プ……クククッ、この状況でよく、そんなことを思い付くもんだ。取り引きと呼べるかどうかは別としてな……。まあ、ゴミしか落とさねぇ雑魚共を延々狩るのも、そろそろ飽き飽きしてたところだ。だがその分、お前らが思う存分相手をしてくれるんだろうな?」

「ああ、もちろんだとも。いつでもかかってきてくれて構わないぞ」

「一応言っとくが、オレの命令を聞くようなお行儀の良い連中ばかりじゃないからな」

「わかってる。それでも、あんたが一言言ってくれるだけで全然違うはずだろ?」

「フン……まあ今回は、お前とあの勇者様の顔を立てといてやる。おいブラッキー、こいつはひとつ貸しだぞ。それも特大のな」

「ああ。この借りはいつか、精神的に返させてもらうよ」

「なんだそりゃ……まあいい。月の出てない夜は、精々後ろに気を付けろよ?」

「肝に銘じておくよ、じゃあな。あいつにも、また戦ろうって伝えといてくれ」

 

 

 

 

 

 

「すいません、負けちゃいました……あはは。自分、もう用済みですかね。まあ、覚悟はしてましたけど」

「はぁ……お前はいったい何を勘違いしてるんだ?」

「……はい?」

「オレたちにとっちゃな、本来勝ち負けなんざどうだっていいんだよ。面白けりゃそれで良いんだ。うちのモットーはな、『汝の為したいように為すがよい』、だ。お前、あいつと戦ってみてどうだった? 楽しかったか?」

「えっ? ええ、そりゃもう。最高に超クールで超エキサイティン!でしたけど……」

「ならそれで良いんだよ。PKなんざ所詮、お楽しみの手段でしかねぇんだ。お前みたいな対人屋にはちょっとわかりにくい話かもしれんがな」

「ヘッド……なにか悪い物でも食べました?」

「心外だな。お前ら揃いも揃って、オレをいったい何だと思ってるんだ?」

「極悪非道人畜有害快楽殺人ギルドのリーダーですよね?」

「お前、帰ったらしばらく雑用係な」

「ええぇぇ~、そりゃないですよ~」

「……冗談だ。今日付けで幹部に加えてやる。別に大した意味もないがな」

「え~、要りませんよー、そんな微妙なもの……。レア武器とかのが全然嬉しいんですけどー」

「お前なあ……。そういえば、ブラッキーの奴が言ってたぞ。また戦ろう、ってな」

「……そうですか。ヘッド、これからよろしくお願いします」

「……ああ」

 

 

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