もしもSAOがデスゲームじゃなかったら   作:Remick

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第1章
優しい世界


「よう、クライン」

「おう、キリの字。相変わらずだな、おめぇ。ちゃんと学校行ってんだろうな?」

「行ってるって。期末試験終わって暇なんだよ」

「メシちゃんと食ってるか? 寝る前に歯は磨いてるか?」

「わーかってるよ! お前は俺のオカンか!?」

「ははは、わりぃわりぃ……おめぇを見てるとなんか、弟みたいでほっとけなくてよォ」

「こんな野武士面の兄貴がいたら嫌だよ……」

「そんなに褒めるなよ、照れるじゃねぇか」

「だから褒めてないっての……」

「でも実際、メシもロクに食わずにダイブしっぱなしだった廃人プレイヤーが、そのまま餓死したっていう間抜けな事件があったばかりからな。心配にもなるってもんよ」

「俺は本当に大丈夫だって。親が仕事で遅くなる日も、妹と交代で夕飯ちゃんと作ってるし」

「そうか、ならいいんだけどよ……っといっけねぇ! 今日ピザ頼んでるの忘れてたわ!」

「またかよ……お前、正式サービス開始初日でも、ギリギリになって思い出してただろ。アラームぐらいセットしとけよな。それと、ピザばっか食ってたらいい加減太るぞ?」

「大丈夫だって! オリャあこの世界では、バリバリ体動かしてカロリー消費してるからよォ!」

「だからそれ、現実世界では指一本動かしてないんだってば……」

 

 

 

 

 

 

「そういえば、俺の妹も今度、このゲーム始めるかもって言ってた」

「マジで!? 何歳くらいだっけ?」

「俺の一つ下、あと手を出したら殺すからな」

「そっかー、残念……って、おめぇの妹なんだから未成年で当たり前か」

「それに小1の時から剣道やってて、全国大会でも良いところまで行ってるから、多分あっという間にお前より強くなるぞ」

「うへぇ……おめぇと妹さんが兄妹で有名になるのも、遠い話じゃなさそうだな……」

「あいつ、ネットゲームに興味なんて全然無いと思ってたんだけどなあ」

「おめぇなあ……それどう考えても、兄貴と一緒にやりたいからに決まってるだろうが!」

「えっ? そうなのか?」

「まったく……おめぇも兄貴なんだからよォ、妹の面倒をもっとしっかり見てやらないと駄目だろうが……」

「さっきまで兄貴風吹かしてた癖によく言うよ……まあ、努力はしてみるよ」

「おうよ! オレは一人っ子だからよくわかんねぇけどよ、兄弟ってのはやっぱり、仲が良いのが一番だろ?」

「……ああ、そうだな。きっとそうなんだろうな……ありがとな、クライン」

「??よくわかんねぇけど、気にすんな! その歳であんまり深く考えすぎても、良いことなんてないからな!」

「お前はもう少し考えた方がいいと思うけどな」

「なんだと、このォ……」

 

 

 

 

 

 

「やあ、アスナ」

「こんにちは、キリトくん、クラインさん」

「こんにちわー、アスナさん。ったく、キリトもこれぐらいきちんと挨拶しろよな」

「いいだろ別に、挨拶くらい」

「いーや、こういう基本的なことができてないから、最近の子供はだな……」

「ふふっ、いいのよクラインさん。わたしは全然気にしてないから。逆に新鮮味があって楽しいくらい。……うちは躾が厳しいから」

「ああ、そっか……ごめん、変なこと思い出させて。そういえば、アスナは受験生なんだろ? その、大丈夫なのか? 今が一番大事な時期だと思うんだけど」

「うん、そっちの方は大丈夫。気分転換にここの空気を吸いに来てるだけだから。それより二人とも、ちょっと聞いてくれない? うちの母さんときたら、学校の成績はちゃんと維持してるのに、ゲームのやりすぎだー!なんて怒るのよ? ひどいと思わない?」

「あ、ああ……アスナのお母さんは随分と教育熱心なんだな……」

「良いとこのお嬢様も大変だよなぁ……」

「本当、大変なのよもう……そのうちゲームをするのも禁止されるかも……」

「しかしまあ、親なら心配して当然じゃないか? 娘が学校から帰ってくるなり、VRゲーム始めたりしてたらさ……俺も他人事じゃないけど」

「こっちもこっちで心配だなあ」

「うー……それはそうなんだけど。それにこれ、本当は借りてるゲームだから、取り上げられても文句は言えないのよね……」

「アスナ、兄貴のソフト借りてやってるんだっけ」

「そうなのよ。もうすぐお兄ちゃんが出張から帰って来るから、そうなったらもう、みんなとも遊べなくなるかも……」

「それだけ妹に甘い兄貴なら、自分の分も買って一緒にプレイするんじゃないか?」

「そ、そうかな? 今度思い切ってお願いしてみようかな……」

「ところで、アスナさんのお兄さんってどんな人なんです?」

「えっとね……」

 

 

 

 

 

「しっかしよう、正式サービス開始から1ヶ月経ってるのに、まだ10層にも辿りつけてないとか流石におかしいと思わねぇか?」

「フロアボスが、ベータテストの時より強化されすぎなんだよな」

「第1層のボス攻略の時は、本気でGMコールしようかと思ったぜ。なんだよこのクソゲー、まともにクリアさせる気あんのか!ってよ」

「確かフルレイドで合計10回ぐらい挑んで、ようやく倒したんだっけ……途中参加なのにラストアタックだけちゃっかり頂いたから、白い目で見られたよ」

「天才ゲームデザイナーが聞いて呆れるぜ、まったくよォ」

「あの人が開発から降ろされたのが関係してるのかもしれないな」

「キリトは茅場信者だったなあそういや……」

「安全マージンを取らずに突撃する連中が多すぎるのも問題だよな。もしこれがデスゲームだったらどうなってるんだか……」

「デスゲーム? ……あー、ゲームの中で死んだらリアルでも死ぬってやつだろ? 10年くらい昔のラノベやらWeb小説で流行ってた」

「そう、それそれ」

「そういやそのデスゲームなんだけどよ、システム的には一応可能らしいぜ」

「? どういうことだよ?」

「なんかネットの記事で読んだんだけどよ。オレらの被ってるゲーム機を使えば、電子レンジみたいに脳ミソもチン!できるんだと」

「そりゃナーヴギアならそれくらい簡単にできるだろうけど……そんなことしていったい何の意味があるんだよ?」

「ははっ、ちげぇねぇや。オレに言わせりゃ、バイクや車の運転したりする方がよっぽど危ないぜ」

「バイクかー……そのうち買おうと思ってるんだけど、金がなあ……」

「エギルに聞いてみたらどうよ? あいつ、バイク屋の知り合いがいるって言ってたぜ」

「マジで? 次に会った時にでも聞いてみるよ」

「ところで、なんか忘れてないか? 貴重な情報を提供してくれた人間に対してよ?」

「えーと……このお礼はいつか必ず、精神的にってことで……」

 

 

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