もしもSAOがデスゲームじゃなかったら   作:Remick

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Darkness, My Name Is

「……ん? このバイクって確か……げぇっ、ディアベル! どうしてここに!?」

「この店のことは、ツーリング仲間のメンバーに聞いてね。まあ、他にも理由はあるんだけど」

「偶然……じゃないよな。あんたのような有名人がこんな場末の酒場に来るなんて、なんか用があるとしか考えられないからな。エギル、コーヒーを頼む」

「……あいよ」

「とっくにお見通しか。流石は黒の剣士殿」

「おい馬鹿やめろ。リアルで二つ名呼ぶの禁止な、勇者様。明らかに不公平だろ、これ……」

「はは、悪かったよ。あんまり似合ってるものだから、つい」

「さっさと本題に入ろうぜ。こう見えて、気は短い方なんだ」

「ではお言葉に甘えて……。キリトくん、ギルドを作る気は無いか?」

「……ハァ? 作る? 入れじゃなくて?」

「ああ。もちろん、うちに入ってくれる気になったのなら歓迎するけど……」

「あのサボテン頭がいる限り、あんたのとこに入る気は無いぞ」

「キバオウさんか。彼もああ見えて、なかなか気が付く方でね。なんだかんだで重宝してるよ」

「へー、あんな厄介そうなのを扱うのは、あんた以外無理だろうな」

「まあ冗談はさておき、なんでこんな話をするのかというとね。ユウキさんが、キリトくんの作るギルドなら入ってもいいと言ってるんだ」

「ユウキが? あんたが欲しがるのはわかるけど、どうしてそこで俺の名前が出てくるんだ?」

「さてね。君ならてっきり、心当たりがあると思ったけど?」

「……いいや、見当も付かないな。デュエルで凹られた覚えならあるけど」

「ははは、それは少しばかり大げさだね。紙一重の勝負だったと聞いているよ?」

「その紙一枚分が大きいんだよ。……ちなみにランの時は、鋼板一枚分ぐらいはあったがな」

「それはそれは。オレも一度くらい、手合わせしてみないと駄目かな?」

「やめといた方がいいぞ。あんたの強さはよく知ってるが、あれは別次元の住人だ」

「ご忠告どうも。それを聞いて更に、この計画を早急に進めなければならなくなったよ……というのもここ最近、PKが無視できないほどに活発化してきてるからね。目ぼしいプレイヤーには、町中で大っぴらに接触しているという話まで聞く。もちろん絶剣だって例外じゃない」

「なるほど、話が見えてきたぞ……あんたはユウキを欲しがってるものの、すげなく断られたもんだから、奴らの手に渡るのだけはなんとしても阻止したいわけだ」

「ご名答」

「そしてそのためなら、ソロを貫いてきた俺まで利用しようとしている」

「利用なんていうと、少々聞こえが悪いけどね。話を聞く限りでは、彼女とお姉さんの実力は飛び抜けている。率直に言って、パワーバランスを崩壊させかねないレベルだ。まあその点は君も同じだが。しかし君と違って、彼女達がどういった行動に出るかまでは予測できない」

「だから俺とひとまとめにして、こちら側に置いてしまおうっていう腹か。……でも、ひとつだけ誤算があるぞ。もし俺があっち側に寝返ったらどうするつもりなんだ?」

「その場合は当然、我が騎士団の全戦力をもって叩き潰すまでだよ。幸い、彼らの隠れ家のおおよその位置は既に見当がついている。無論、幹部達の逃げ道くらいは確保してるんだろうけどね」

「そして俺の逃げ道は完全に塞いでるわけだ。もしこの話を断れば、ボス戦でなぜか俺だけレイドに入れてもらえなくなるんだろ? 用意周到だよ、まったく……」

「そんなつもりはこれっぽっちも無いんだけどね。これまでの話から、そう思われても仕方ないかもしれないなぁ……」

「……。しかし、リアルで会ってる時までゲームの話とか、俺達ってつくづくゲーマーだよな」

「ははっ、言えてる。……個人的には、彼――プーさんのプレイスタイルは嫌いじゃないんだよ」

「プ、プーさん……は、ははは……あれと戦ってまだそう呼べるのは、アインクラッド広しと言えどあんたぐらいだろうよ」

「褒め言葉と受け取っておくよ。ああいう悪役を演じてくれるプレイヤーが存在してこそ、オレみたいな人間のロールプレイが輝くって面もあるからね。……もちろん、やり過ぎて世紀末状態にされるのも困りものだけど」

「へぇ……案外考えてるんだな」

「まぁね。だから彼の気持ちに、こちらとしても全力で答えてやりたいんだよ。加えて、もし結成に同意してくれるなら、我がギルドとしてはあなた方と同盟を結ぶ用意がある、ということを伝えておきたかったんだ」

「そりゃまた、願ってもない話だな……」

「そちらにとっても、悪い話ではないと思うけど?」

「それ、わざとやってんのか?」

「もちろん」

「はぁ……相変わらず食えない奴。まあ一応、考えてみるよ。あんたの手の平で踊らされるのは癪だけどな」

「そうか、ありがとう。よろしく頼むよ。じゃ、騎士系の仕事が今からあるからこれで」

「なんか混ざってるぞそれ」

「おいィ?ナイトなら誰もが憧れる人でしょう? なんてね」

「悔しいけど似合ってるわ。あんたと腹を割って話せて良かったよ、じゃあな……あ、あと最後に、あんたの名前の由来を教えてくれないか」

「それはもちろん、バイクから……ではなく、お察しの通り、イタリア語方言の悪魔の方だよ」

「やっぱりそうか。アルゴから聞いてたけど、本人に確認を取るまではわからないからな」

「本当は君やユウキさんのようなデュエリストになりたかったんだけどね。やってみたら、なんだかんだでこっちの方が性に合ってるような気がしてきたんだ。ではまた」

「……! もしかしてあんた、ベータの時に――ちっ、逃げられたか。やっぱかなわないな……。しかし、俺がギルドねぇ……ちょっと想像できないよなぁ……」

 

 

 

 

 

 

「よう、クライン。お前が遅れるなんて珍しいな」

「おう、キリの字。……ちょっと野暮用でな」

「ふーん……ああ、そうだ。お前にひとつ、聞いてみたいことがあったんだ」

「ん? なんだ?」

「お前、自分のギルドを立ち上げる時って、どんな感じだった?」

「どんな感じって言われてもなァ……。もともと、他のゲームでダチだった連中を集めて始めたから、自然な流れでそうなったんだよ。オレらはそんなに社交的ってわけでもなかったし、大手のとこに入れてもらうよりは、自分らで作った方が気楽で良いだろってことでな」

「ほーん、そんなもんか。……たとえばの話なんだが。もし誰かにギルド結成を勧められた場合、自分で作る理由が特に思いつかなかったとしても、お前ならやってみるか?」

「んー……オレなら断るか、他の奴に任せるかもなぁ。やりたくもないのにやらされても、つまんねぇだけだろ」

「そっか……」

「でもよ……。オレを信じて付いて来てくれる奴が、もし一人でもいるってんなら話は別だ。できる限りそいつの期待に応えてやりてぇって思うし、そのためならオレはいくらでも踏ん張れるぜ? なーんて、柄にもねぇこと語っちまったな。へへっ」

「いや、参考になったよ。ありがとな、クライン。……お陰で決心がついたよ」

「そうかい。まあ頑張んな、応援してるからよ」

「ああ。しかし、ギルドかぁ……。となると、やっぱり……」

 

 

 

 

 

 

漆黒の堕天使(ダークセラフィム)!」

「ボクら別に堕ちてないから」

「†暗黒騎士団†!」

「なんか悪役っぽいから嫌。あと変な記号入れないで」

「なんでわかるんだよ……じゃあ、ダークフレイム――」

「さっきから、黒いのしか出てないじゃない! 真面目に考えてよね、もう!」

「いやいや、俺は至って真面目だぞ。なんせ俺がギルドを作るなんて、人生で一度あるかないかの一大イベントだからな」

「そんな堂々と胸を張って言われてもさぁ……」

「お前は張れるほど胸が無いもんな――」

「キリト? 牢獄とデスペナルティ、好きな方を選んで? ボク的には両方でも良いかなぁー、なんて思ったりするんだけど」

「すいませんなんでもないですゆるしてくださいどうかこのとおりです」

「キリトさん、最低です……それはともかく、わたしもさっきのはどうかと思います。ネーミングセンスって言葉、知ってますか? キリトさん」

「うっ、ランまで……俺にそんなもの、期待しないでくれよ」

「はぁ……それよりユウはどうなの? 最初にギルド作りたいって言い出したの、ユウじゃない」

「ふぇっ!? ボ、ボクは……キリトの作ったギルドなら、入ってあげても良いかなー、って思っただけで……」

「言い出しっぺの法則というものがあってだな……」

「キリトさんはちょっと黙ってて」

「はい……」

「ユウ、よく聞いて。お姉ちゃんもあなたのその、明るくて素直なところは大好きだけど、だからと言って人様に迷惑を掛けてまで、ワガママを通して良いなんてことにはならないわ。もし理由があるのなら、キリトさんに自分の言葉ではっきりと伝えなさい」

 

「ボク……ボクは、キリトと初めて剣を合わせた時、確信したんだ。この人になら、ボクのすべてを預けられる。この人となら、この世界でどこまでも昇っていけるって。それを邪魔する存在がいるのなら、すべて斬り捨ててみせる。もう決めたんだ。だからキリト、どうかボクを、この世界の頂上まで連れていってください」

 

「よろしい、よくできました。……キリトさん。こんな妹ですが、どうかよろしくお願いします」

「……ああ。俺の腹はここに来る前から、とっくに決まっている。こちらこそ、よろしく頼むよ。俺達で、この城のてっぺんを目指そう!!」

「うんっ!!」「はいっ!!」

「……で、ものは相談なんだけど……」

 

 

 

 

 

 

「黒の騎士団だって! まんまじゃねーか! 黒の剣士だから黒の騎士団って、安直すぎるだろ!」

「いや、なかなかどうして、面白い名前じゃないか」

「へっ? なにか元ネタとかあるんすか?」

「クク、ク、ククク……そうきたか」

「あ、僕も知ってます。アレですよね」

「ザザにシュピも、知ってんなら教えてくれよ! オレだけ仲間はずれかよォ!?」

「まあ、落ち着けよ……いいか、あいつは俺達にこう言ってるんだ、『斬っていいのは、斬られる覚悟のある奴だけだ』ってな」

「考えすぎじゃないですか? どうみてもまんま、通り名から取ったとしか思えないっすよ?」

「ふっ、そうかもな。だが、このタイミングでギルドを結成するということは、俺達への宣戦布告も同然だ。それがわからないほど、奴も馬鹿じゃないさ」

「そういうモンっすかねぇ……」

「しかし、騎士団ねぇ……フン。案外、あの勇者様に乗せられたのかもな……」

 

 

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