「キリトはさ」
「んー? どうした、ユウキ」
「この世界がおかしいとは思わない?」
「おかしいって? 何がだ?」
「上手く言えないんだけど……猛烈な違和感を覚えるとか、そんな感じ」
「んん?……そりゃまぁ仮想世界なんだし、現実と色々違うのはわかるけど」
「そういうことじゃなくて……外の世界も含めてさ、都合が良すぎるとは思わない?」
「??都合が良いって、誰にとって?」
「わからない……けど、強いていうなら、誰にとっても、かな」
「なんだそりゃ。もうちょっと具体的に言ってくれないと、俺の頭じゃわかんないよ」
「ええと……たとえば最近物騒な事件、誰かが殺されたとか、聞いたことがある?」
「……そういえばないかなぁ。でもそれって、この星が平和になったってことだろ? それがそんなに悪いことなのか?」
「もちろん、それ自体はとっても良いことだと思うよ。だけど……不自然だと思わない? 人間の歴史と争いは、切っても切れない関係なのに」
「考えたこともないな……今が幸せなら、それでいいじゃないか。今日は一体どうしたんだ?」
「なんだか、とてつもなく嫌な予感がするんだ……。じゃあえっと、周りに誰か、深刻な悩みを抱えてる人はいる? たとえば重い病気だとか、家庭の問題だとか」
「……いや、特に思い付かないな。言われてみれば確かに、個人的な不幸や悩みまで綺麗さっぱり消え失せてしまうのはおかしい……かもしれない。でも、一体いつから?」
「それは恐らく……このゲームが始まった時だと思う。……これからするのは、すごく突飛で馬鹿げた話だよ。遠慮なく笑い飛ばしてくれていいからね?」
「ユウキのする話を笑ったりしないよ。お前の直感はいつも当たるからな」
「ありがとう、キリト。ボクも詳しくは知らないんだけど、ある量子力学の実験で、電子を観測することで結果が変わってしまうっていう話があって……」
「ああ、それは俺も聞いたことがあるな。確か、二重スリット実験だったか?」
「うん、多分それ。で、その話を初めて聞いた時、ものすごくゾッとしたんだ。なんていうか……決して見てはいけないモノを覗いてしまった、みたいな」
「ああ……なんとなくだけど、わかる気がするよ」
「だってそんなの……こっちが見ていることに、
「……それがさっきの話と、どんな関係があるんだ?」
「ボクが言いたいのは、この世界自体が――」
「待ってくれ、ユウキ……それ以上は言わないでくれ、お願いだ。何かが」
「誰かに作られた――」
「ユウキッ!! やめてくれっ!! 頼むから!!!」
「 だってこと」
「被験体***、覚醒レベル5に到達。全シミュレーションを停止します」
「まだ調整不足だったか……やれやれ、またやり直しだな。さて、最後にバックアップを取ったのはいつだったかな……」
「やはり彼女はイレギュラー過ぎるのでは? 本来、あの場に居るはずのない存在ですし……」
「余計なことは考えるな。我々はただ、上の命令に従っていればいい」
「……しかし、こんな実験を繰り返すことに、一体何の意味があるんでしょう?」
「さぁな。もしかしたら我々もまた、彼らと同じく……だが、確かめようのないことだ」
「
「その辺にしておけ。余計な詮索は寿命を縮めるだけだぞ」
「…………」
「……あれ? 俺、今なにをしてたんだっけ?」
「えっ? ただ寝っ転がってウトウトしてただけじゃないの?」
「そうだっけ……? でもなにか大事なことを忘れてるような……うっ、頭が……ダメだ、なにも思い出せない……」
「……それは多分、思い出さなくてもいいことなんだよ、きっと」
「そう……かな。そうかもしれないな」
「だから今日はここでしばらく、ぼーっとしてようよ? ねっ?」
「ああ……なにしろ今日は、一年の中でも最高の気象条件の日なんだからな……」
この話には実在の実験に対する誤解を基にした描写が含まれています。ご了承ください。
内容は完全に思い付きです。本編に影響を与えることはありません。