ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
今回から少し嫌な話になります。申し訳ありません。
苦手な方は、どうかお気をつけくださいませ。
教室に戻ると、吉井明久の姿はなかった。確かさっきボクが食べ物を恵んでやったから、餓死したということはないはずなのだが、一体どうしたというのだろうか?
そう考え事をしながら卓袱台の席に座ると、さっき廊下で女と修羅場を繰り広げていた男…名は確か…坂本雄二だ。そいつがこっちへ近づいてきた。それにしても一体どうやってあの女から逃げ切ったのだろうか?
「よお、秀吉。無事だったか?」
「む?雄二よ、何故その様なことを聞くのじゃ?」
こいつがボクの安否を確認する理由が分からず、聞き返した。
「ん?ああ、いや、何もなかったんなら良いんだ。世の中には知らない方が幸せなこともあるからな…ハハ」
「?よ、良くは分からんが、お主こそさっきは襲われておったじゃろう?どうやって逃げ延びたのじゃ?」
「ああ、翔子の奴か……。拉致されそうになってたところに偶然鉄人が現れてな、さすがのあいつも鉄人には敵わないからな、一時退いてくれたって訳だ……っていうか秀吉、お前見てたんなら少しは助けてくれても良かったんじゃ……まあ、いい。」
……悪いけど、あんなおっかない女に関わっちゃったら命がいくつあっても足りないからね。それに、只でさえ姫路って女に命を狙われてるっていうのに、これ以上敵を増やすのはまずい。
「……それはそうと雄二よ、明久の姿が見えんな?一体あやつはどこへ行ったのじゃ?」
「ん?ああ、あいつか……さっき医務室に搬送されたところだ。まあ、あの状態なら持って3日ってところだろうな。」
「む?一体何が起きたのじゃ?明久は誰かに襲撃されたのかの?」
「フッ、まあそんなところだ。これでアイツともおさらばだな。……さて、明日は我が身だ。俺も翔子から命を何としてでも守らなきゃならないしな。……お前も、あいつの分までしっかり生きろよ。」
……どういうことだ、これは?命を狙われてるのは、ボクだけじゃ無いってことなのか?もしかすると、この学校って場所では、こんなことは日常茶飯事で、常に互いに命のやり取りをしているっていうのか?……ここは争いのない平和な町だと思っていたが、どうやらとんだ思い違いをしていたようだ。皆、どこかに潜む見えない敵の脅威から、自分の身を自分で守らなければならない。……普段平凡な日常を演じている分、たちが悪い。
とにかく、ボクも自分の敵と思われる姫路って女から命を守らなくては。同じ手は二度とくわない。今度奴が手を出して来れば、必ず返り討ちにしてやる。ボクは、そう誓った。
そうしていると、鉄人と呼ばれる教師が教室に入ってきて、授業を始めた。もちろん授業中も警戒を解くことは一度も出来なかった。……全く、思ってたよりも随分と面倒な場所だ、ここは。
全ての授業が終わり、とうとう下校時刻になった。……さて、やっと仕事の時間が来たようだ。
(サテ、白ゼツ。早速任務ヲ開始シロ。……ヘマハスルナヨ?)
「くくく、勿論、分かっておる……。」
最初のターゲット……やはり厄介な姫路を始末するか、それとも今医務室で療養中で隙だらけの吉井明久にするか……。
「さて、どっちがいいかのう……。フフフ……。」
コツコツ
「ん?(足音……か?)」一体誰だ?……!あ、あいつは!!
「あっ、居ました!あそこです!」
「本当だ!ちょっと木下!待ちなさい!」
……早速現れたか、姫路瑞希。……そのとなりにいる五月蝿そうな女は……確か島田美波とかいうクラスにいたもう一人の女だ。
「ん?……ああ、姫路に島田か。ワシに何のようじゃ?」
「……木下君、正直に答えてください。」
「……何じゃ?」
「……木下、あんたアキに何したの?」
「……はぁ?」
何を言ってんだ、こいつらは?
「とぼけないでください!」
「アキが今日倒れたの、あんたがやったんでしょ!!」
「…………お主ら、何をいっておるのじゃ?」
「ウチはね、知ってんのよ。あんたが今日アキにお弁当を渡してたのを。」
「ええ、私もさっき聞きました。信じられません、あなたがこんなことをする人だったなんて……」
……何なんだ?こいつらは。本当に訳がわからないよ
「……訳が分からんのう。……確かにワシは明久が腹が減ってそうじゃったから、ワシの弁当を与えた。……それが一体なんだというのじゃ?」
「……この期に及んでもしらを切るとはね……はっきり言ってやるわ、木下。あんたはその弁当に予め薬を盛っておいて、わざとアキに渡した!そしてアキが倒れて医務室に運ばれた所を、こっそりと医務室に侵入し、そのままアキを誘拐するつもりだったんでしょう!?アキを自分のものにするために!」
「…………。」
ほんと何いってんだろうね、この人達。全くついていけないよ。
「……はあ、全く、くだらんことを。……時間の無駄じゃ。ワシは帰るぞ。」
「待ちなさい!木下!アキはあんたなんかに渡さないわよ!」
「そうです!あなたみたいな酷いことをする人に、明久君は渡しません!」
「「サモン!!」」
「…………!」
姫路と島田がその呪文を唱えると、二体の小さな人のような生き物が現れた。……成る程、これが試験召喚獣って奴か。……わざわざそちらから出してくれるとは、なかなか都合が良い。
「諦めなさい、木下!……そしてアキとは距離を置くのよ!」
「……明久君は、私達が守ります!」
……もうだめだ。理性の限界だ。
「……おい、貴様ら。」
「「!?(な、何?急に雰囲気が……!)」」
「……さっきから黙って聞いてりゃ訳の解らんことをベラベラと喋りやがって、……いい加減ウンザリなんだよオオオオオッッ!!」
ドカッ!!バキッ!!
ボクは躊躇わず二体の召喚獣を蹴り倒した。……いくら弱いボクでも、只の人間なんかに遅れを取りはしないつもりだ。
「ギヤッ!!」 「ウウッ!!」
「「なっ!!??」」
……間抜け共が、驚いてやがル。良い気味だ。
「フン、口ほどにも無い奴等じゃな。情けない。」
そう言ってボクは倒れた二体の召喚獣を回収する。
「ま、まちなさい!木下、あんた、ウチらの召喚獣をどうするつもりよ!?」
「……はあ?そんなもん、貴様らに教えてやる義理もない。とっとと失せろ。」
「ふ、ふざけんじゃないわよ!木下!だ、大体なんなのよ!?さっきからのその態度!!」
「……愚かじゃな、そんなに死にたいか……。」
「「!?」」
「……貴様ら、さっきワシが明久に酷いことをした……と言ったな?……じゃがのう、明久にいつも酷いことをしとるのは、貴様らの方じゃろう?」
「!?……な、何言って」
「とぼけるな。ワシは知っておるぞ。島田、姫路、貴様らが明久に対して、どういうわけかは知らぬが、いつもいつも残忍極まりない暴力を振るっておったのを……それでよくもまあ、明久を守る、等と言えたもんじゃのう?全くヘドが出るわ。」
「……な、ち、違う……ウチは……本気でアキを傷付けようと思ったことなんて……そんなの……。」
……今ボクは木下秀吉の持つ記憶を頼りに話をしている。ボクの成り代わりの術は、対象の姿や声だけでなく、性格やクセ、チャクラの性質なども同じ、ほぼ対象と同一の存在を作り出すことができる。つまり、今のボクの発言は、半分はあの木下秀吉の心の声を代弁したものでもある、ということだ。……まあ、ボクはあの子みたいに優しくないから、言いたいことを全部ぶちまけちゃってるんだが。
「……もうよい、島田よ。……貴様の明久に対する心は、愛なんかじゃない。……貴様はただ、明久を己のものにしたいだけじゃ。その独占欲に従って動いておるだけなのじゃ。……全く歪んだ心じゃのう、欲しいものを手に入れるためには惨たらしい暴力をも厭わない。……本当に汚れた輩じゃよ、お主は。」
「ち、違う!違う!……ウチは……ただアキのことを……ウチは……ウチは!!」
「……煩い、少し黙れ。」ドスッ
そう言ってボクは島田の腹に蹴りを入れる。
「!?かっは!!」バタッ
島田は息を吐き出し、そのまま気絶した。
「し、島田さん!!」
姫路瑞希が倒れた島田の元に駆け寄る。
「ひ、ひどいです!!木下君、何でこんなことを!?」
「……姫路よ。単刀直入に聞く。……昼間ワシに毒を盛って殺そうとしたじゃろう?」
「!?な、何の話ですか!?一体貴方は何を言ってるんですか!?」
あくまでしらを切るか、まあいい。
「全く、やってくれたのう。危うく死ぬところじゃったぞ?……この怨み、今こそ晴らさせてもらわねばのう。」
「や、やめて……もう、やめてください……お、お願い…助けて……助けてください!!」
泣きながら姫路が助けを乞うてくるが、知ったことではない。
「……去らばじゃ(ニコッ)」
ドスッ!バキッ!ドカッ!
「」 ボクの攻撃の前に、成す術なく姫路は倒れた。
どうやらこいつは毒による暗殺は得意だが、生身での戦闘能力はボクよりも低かったようだ。こうして復讐を終えたボクは、気絶した二人を分身に運ばせ、そして二体の召喚獣を連れ、学校を出た。
(フン、ドウヤラウマクヤッタヨウダナ。無事召喚獣ヲ回収シタカ。)
「ん?ああ、上手くいったぞい。いやあ、案外チョロいもんじゃのう。」
(アア、全クダ。コノ調子デ残リ七体モ集メロ。九体集マラナケレバ、意味ヲナサナイカラナ。)
「うむ、分かっておる。ま、取り敢えず今日のところはこれで良いじゃろう。続きはまた明日じゃ。」
(フッ、マアイイダロウ。今日ハモウ家ニ帰レ。)
そうしてボクは木下秀吉の家への帰路についた。
……厄介な姫路瑞希とその煩い連れ、島田美波は始末した。これだけで充分な収穫だろう。……本当なら今医務室で無防備な姿を晒している吉井明久も襲うのが良いのかもしれないが……あんまり帰る時間が遅くなったら、姉の木下優子に怪しまれるかもしれないし。……それに、あの明久って子……何だか哀れで憎めないんだよね。……取り敢えずあの子には当分手を出さないで置くとしよう。
そう考え事をしているうちに、木下宅に到着した。……さて、今からは木下優子の弟、木下秀吉を演じないとね……。
「ただいまなのじゃ、姉上!」
その頃、木下秀吉は……
「…………皆は……無事じゃろうか…………明久……
……ワシは……どうすれば……。」
続く
この様な駄文を読んでくださり、ありがとうございました。ここからは少し残酷で暗い内容になっていく……かもしれませんw。
では、またお会いしましょう。