江戸川コナンが恐い   作:麻咲代

2 / 3
File2 謎のおじさん

次の日、帝丹小学校一年B組では始業前の時間、何時ものように児童達の賑やかな情景があった。一つ違うのは後ろ側のドアの側の席、美沙の席には美紗の他にも児童が集まっていた。コナン達少年探偵団だ。席の主美沙はいつもの通り俯いたままだが四人の視線に何処か居心地の悪さを感じていた。緊張しているのか若干顔は赤らんででいる。

 

「美沙ちゃん、昨日は大丈夫だったの?」

 

歩美は心配そうに俯いたまま美沙の顔を覗き込む様に尋ねる。美沙は俯いたまま頭を上下させ肯定の意を示す。

 

「それよりあのおっさん誰だよお前の父親かよ?」

 

元太が先日見かけた美沙を打った男の事を尋ねるが、美沙はますます深く俯き口を閉ざしたままだ。元太は空気が変わるのを感じたが直ぐに腕を引っ張っられ振り向くとコナンの顔があった。

 

「おい元太、その話はするなって今朝会ったとき言っただろ?」

 

コナンは美沙に聞こえないように小声で元太に耳打ちする。

 

「わ、悪かったよコナン忘れてたあいつの両親行方不明だったっけか」

 

「おいバカ!、元太!」

 

元太が美沙を気にせず聞こえる様な声で喋る元太に慌ててコナンは口を塞ごうと手を伸ばすが間に合わず、美沙を見ると肩を震わせ掌もギュッと握り締めている。

 

「あ、有栖川さんそういえば…あ……」

 

光彦が機転を効かせて話題を変えようとするが、美沙は急に立ち上がり教室を走って出て行ってしまう。去り際に見せた美沙の顔は涙で歪んでいる様だった。

 

「もう!元太くん何て大っ嫌い!!」

 

歩美は不用意な発言をした元太に怒りプいっと膨れ顔で元太を非難する。光彦もそんな元太に呆れ顔で伝える。

 

「あーあ、元太くん戻って来たら謝って下さいよ」

 

「じゃあ俺、ちょっと様子見てくる!」

 

追い掛けようとドアから廊下に出たコナンに立ち塞がる影から腕が伸び襟口をつかまれてしまう。

 

「あーら、江戸川君何処へ行くのかしら授業始めるわよ」

 

コナンの前に立ち塞がったのは眼鏡の女の人、コナンが転校してきて直ぐに結婚する事となり退職した担任の戸矢先生の後任の小林澄子先生であった。いつも怒ったような顔をしており厳しく接する彼女は着任早々に生徒達からは怖い先生と認識されていた。

 

「だってー有栖川さんが…」

 

怒った顔で問い詰める小林先生に猫を被るコナンが訳を話そうとするがチャイムが鳴り防がれる。

 

「有栖川さんには保健室に行くよう言っておいたわ、何で泣いていたかは貴方たちに聞いた方が良いみたいだけど…」

 

授業始めるから教室に入りなさいと小林先生はコナンを教室に追いやりドアを閉める。美沙の席の前で固まっている元太の肩に手を置き小林先生は無表情で告げた。

 

「小嶋君は授業後に先生の所に来なさい」

 

言われた元太はハイと機械的に答え肩を落として席に戻った。どうやら固まった元太や怒っている歩美を見て元凶が元太だと見抜いたようだ。

 

騒いでいた児童たちも小林先生が来たことでそそくさと席に戻って行った。

 

 

美沙は保健室に着くと其処に居た保健の先生は特に話を聞こうとせずベッドで休むよう優しく言われていた。どうやら両親が行方不明なのを把握しているようだ。美沙はベッドの上に座りぼーっと窓から外を見ている。

 

「お父さん…お母さん

…」

 

小さく紡がれた美沙の声は誰にも届くことは無かった。

 

 

 

その頃同じように窓から外を見つめ物思いに耽っている男が一人。学生服を着ている事から学生であろう。

 

「ちょっと聞いてるの?快斗、何考え事してるの!」

 

物思いに耽っている男、快斗にセーラー服の女子学生話し掛ける。顔は話を無視さていたのか不機嫌そうだ

 

「なんだ、青子かちょっとマジックのタネをだな…」

 

セーラー服の少女、青子は快斗の返事を聞き呆れ顔で溜め息を吐いたあと怒鳴った。

 

「またマジック、マジックって!少しは人の話を聞きなさい!!このマジック馬鹿!!」

 

急に怒鳴られた快斗は目を回しビックリするが直ぐに悲しげな顔をして深刻そうに喋りんがら立ち上がる。

 

「青子…俺…もうダメだ…マジックのトリックも思い付かないし…」

 

普段見せない快斗の言動に青子は戸惑いながら慌てて言葉を紡ぐ。

 

「な、何言ってんの快斗!マジックなんてなくったって…」

 

「俺は青子の言うとおりマジック馬鹿だ…マジックができなくなちまったら俺…」

 

青子が慌てて取り繕うが言葉を遮り快斗は窓の方に歩みながら続ける 。

 

「生きていく自信が無いよ…」

 

そう言い快斗は窓から身を投げる。青子にはその光景が信じ難くスローモーションが掛かったように見えた。

 

「ちょ…快斗ぉー!!」

 

青子は涙を流し必死に手を伸ばすが間に合わず快斗の体は冷たい地面の上へ落ち…破裂した。

 

「え…」

 

青子が快斗が落ちたはずの地面をみると破裂した怪盗はから白い煙と共に七色のカラーテープが宙を舞っていた。ふと視界の先に縄が見え視線で辿っていくと縄は屋上に続いているようだ。つまり落ちたように見せかけた快斗は縄で上へ上がり人形が下に落ちて破裂したということだ。理解した青子は顔を真っ赤に染めて青筋を立てて喚きちらした。

 

「こらぁー!!馬鹿快斗!!降りてきなさーい!!」

 

そんな光景をクラスメイト達はまた始まったと囃し立てた。

 

屋上で快斗は次の標的について悩んでいた。

 

(ムーンエンジェル…有るのは分かったが場所が分かんなけりゃあ盗みようがねぇぞ…どうしたものか…)

 

普通の高校生にあるまじき思考をしているこの少年の名は…

黒羽快斗、マジック好きな少年である。

しかしその実態は

 

世間を揺るがす大怪盗、怪盗キッドなのである。

 

彼が怪盗キッドになったのはここ最近。家の隠し部屋を見つけ中にあったのはキッドの衣装と聞き取れない八年前にマジック中に事故死した父の声が録音されたテープ。丁度八年ぶりに現れていた怪盗キッドをキッドの衣装で追い詰めたがその正体はマジシャンであった父の付き人その人であった。

その付き人から怪盗キッドの正体は尊敬するマジシャンで快斗の父、黒羽盗一であったと聞かされた。

更に父はマジック中の事故死と見せかけある組織に殺害されたというのだ。

快斗は自ら怪盗キッドとして蘇り父を殺した組織を誘き出す為世界の名だたる宝石を盗んで回っている。

 

やつらよりも早く不老不死の力が宿ると呼ばれるビッグジュエルを手に入れるために…。

 

 

一方、毛利探偵事務所には一人の訪問客が訪れていた。

依頼人であろうか、ソファーに通され対面には小五郎が座っている。すると男は口を開いた。

 

「私、有栖川家の執事をしています。斎藤と申します。名探偵と名高い毛利様にお願いしたい事があり尋ねさせて貰いました。」

 

「有栖川といえばあの商店街の側の屋敷のですか…まさか、行方不明の主人を探してという事ですか?」

 

小五郎が先日の園子の話を思い出しながら依頼内容を推理する。

 

「流石は毛利様、旦那様が行方不明なのはご存知ですか…しかしご依頼したいのはそうではなく、あるモノを探して頂きたいのです屋敷の中から…」

 

「ある物とは…?」

 

小五郎は想像していた依頼とは違い多少驚きつつ先を促す。

 

「有栖川の至宝【ムーンエンジェル】です。勿論、旦那様方を探して見つけて下さるなら一番ですが…」

 

「ほ、宝石ですか…」

 

小五郎は緊張したように息を飲む。

 

「他の高名な探偵にもお声を掛けさせて貰っていますが何分急いでおります 。手付金で百万円程、見つけて頂けたら一千万円お支払い致します」

 

「い、いっせんまんえん!!!」

 

高額な依頼料に小五郎は目の色を変え二つ返事で了承した。

 

「この名探偵毛利小五郎が必ずや探し出してみせます!」

 

「では毛利様、明日から屋敷に来て捜索の方よろしくお願いします」

 

斎藤は手付金を渡し事務所を出ていった。

 

「あの男より早く見つけて頂きたいのです」

 

と去り際に一言残して斎藤は扉を閉めた。

 

 

小林先生のさようならの言葉に児童達も続けてさようならと返し、終わりの会が終り児童達も思い思いに友達と帰る準備をする者、遊び足りないのかボールを持ち出し校庭へ飛び出す者等居る中、美沙もそそくさと帰る準備をし教材や文具をランドセルに仕舞っている。そのランドセルは特注品なのか、背の部分に金色の盾の形の紋章が付けられていた。ランドセルを背負い席を立ち教室から出ようとする。しかし、目の前に大きな影が現れる。俯いた顔を上げるとそこにはバツの悪そうな顔をした元太がいた。

 

「わ、悪かったよ…ごめん」

 

元太が朝の出来事を素直に謝るが、美沙は直ぐに俯きそんな元太を無視して歩いて行ってしまった。

 

「あーあ元太くん、嫌われてしまいましたね」

 

光彦が言うと元太は肩を落とした。コナン達少年探偵団はそんな美沙を追いかける様に走って行った。

 

「待ってよー、美沙ちゃーん」

 

歩美の声が廊下に響くと美沙はますます歩く速度を上げた。その顔は少し恥ずかしそうに赤くなっていた。

 

「こらー!廊下を走るのはやめなさい!」

 

怒鳴る小林先生の顔はいつもの硬い顔ではなく少し優しくみえた。

 

 

 

「なんだよウジウジウジウジ 、ああいうの俺嫌いだな」

 

元太は結局美沙には追いつけず並んで帰宅するコナン達に愚痴を零す。

 

「もー元太くん懲りないですねーそれよりどーやって仲直りするんですか?」

 

光彦は呆れながら美沙と仲直りする方法を思案する。歩美は縋るようにコナンを見つめ懇願する

 

「コナン君、どうしたらいいと思う?」

 

コナンは内心俺に聞くなと思いながらもそーだなーと考える

 

(ガキも大変だなー、感情だけで動くから…)

 

「そうだ!歩きながらだと良い案浮かばないから作戦会議開こうぜ!」

 

元太は閃いたかのように手を叩き提案する。

 

「でも、一体何処でやるの?」

 

歩美は作戦会議は何処で行うか尋ねる、するとコナン以外の三人は考えながらコナンの顔を見ると何かを思いついた顔をする。

 

(やな予感……)

 

コナンは次の台詞を推理すると冷や汗を流しながら身構える。

 

「じゃーコナンち行こうぜ!」

 

元太が告げると他の二人もおー!と腕を上げる。コナンはやっぱりとため息を吐く。無駄だと思いながら抗議の声を上げる。

 

「なんで俺んちなんだよー」

 

「だってコナンの家が俺達少年探偵団の基地なんだから当たり前だろ?」

 

抗議を上げるコナンは元太からいつ決められたか知らない知りたくもない衝撃的事実を知った。

 

「じゃあ行こうぜー!」

 

元太の号令に光彦、歩美はおー!と腕を上げて応え走っていった…暫くコナンは動けないでいた。

 

「コナン君はやくはやくー!」

 

歩美の声でようやくコナンは渋々動き出した。

 

 

 

 

「おっじゃましまーす!」

 

探偵団の明るい挨拶がコナンの居候先の毛利探偵事務所に響く。コナンも諦めた顔でただいまと告げる。

 

「おー、お前たちか何か様か?」

 

小五郎は機嫌よさそうに子供達の訪問を歓迎する。怒鳴られると思っていたコナンも拍子抜けしたような表情だ。

 

「お前らジュースでも飲むか?」

 

ソファーに座った探偵団にジュースを出そうと鼻歌混じりに冷蔵庫へ向かう小五郎。

 

「今日のおじさん…なんか変」

 

歩美が普段と違い子供にも優しい小五郎を見て不審がる。小五郎は子供達にジュースを出した後席に座り浮かれた表情でコナン、今日は美味いもん食うぞーと告げチラシを漁っている。そんな小五郎を気味悪く思いながらも相談を始める探偵団。

 

「それより、どうしましょう??」

 

光彦が議論を促すが皆うーんと唸ってばかりで一向に解決策が出ないでいると小五郎がそんな探偵団を見て待ってましたと胸を張り告げる。

 

「お前ら何悩んでるんだ?この名探偵毛利小五郎が解決してやろう!」

 

小五郎の申し出に探偵団は顔を見合わせた後、小五郎に経緯を話した…。

 

「有栖川美沙か…有栖川の家にだったら明日行くからその美沙って子の事聞いてきてやろうか?」

 

珍しく子供達の為に行動する小五郎に驚きつつもコナンは疑問を口にする。

 

「おじさん!もしかして美沙ちゃんの両親の捜索、依頼されたの?」

 

依頼内容に興味津々のコナンに小五郎は否定する。

 

「いや、なんでも急ぎで屋敷にある宝石を見つけ出して欲しいそうだ、しかも手付で百万円見つけたら一千万の高待遇!」

 

ぐふふとニヤケが止まらない小五郎にコナンは通りで機嫌がいい訳だと納得した。

 

「それよるコナン、百万の事は蘭には内緒だぞ!おもちゃでも買ってやるからよ」

 

どうせこの調子だとおっさんバレるだろと思いながらも新しいサッカーボールが欲しいと伝えるコナン。ふと子供達が静かにしているなと気になり見てみると、何やら顔を合わせてヒソヒソと話をしていた。

 

「ようし、それで決まりだ!早速早く帰って準備しよーぜ」

 

元太は話がまとまったのか帰る準備を始めた。

 

「じゃあコナン君、また明日ね!」

 

歩美がコナンに伝えると三人はお邪魔しましたー!と足早に帰っていった。

 

(また明日って明日土曜で休み何だけど…)

 

嫌な予感しかしないコナンであった。

 

 

 

次の日朝、小五郎は有栖川邸の前に来ていた。

 

「改めて見るとばかデカイなぁ」

 

「そうだね、おじさん」

 

小五郎の呟きにコナンが応える。

 

「あ、あんなとこに噴水があるよー!」

 

歩美は門の外から見える庭の様子に興奮したようにはしゃいでいる。

 

「美沙のやつ相当な金持ちだな!毎日うな重食ってるのかな!」

 

元太が羨ましそうにうな重を想像しながら呟く、口には涎が垂れている。

 

「もー元太くん、そんな訳無いじゃないすか!」

 

光彦がツッコミを入れる。いつもどおりの少年探偵団の光景にコナンはため息を吐く。

 

「で、どうしてお前らまで居るんだよ!!」

 

小次郎が代表してコナンに問い詰める。コナンはなんとか説得しようと慌てて言い繕う。

 

「だ、だって物を探すなら人が多い方がいいでしょ??」

 

コナンの言葉にそれもそうだと小五郎は一応納得する。なにせ一千万が掛かっているのだ猫の手も借りたい所だ。

 

「とにかく、邪魔はするんじゃねーぞ」

 

小五郎が忠告するとはーいと探偵団は返事を返す。すると門の奥から人が歩いてくるのが見える。

 

「毛利様、お待ちしておりました。おや、お連れの子供達は…」

 

出迎えたのは依頼に来た執事の斎藤であった。小五郎は慌てて子供達のことを告げようとするが遮るように歩美が言った。

 

「私達、美沙ちゃんの友達で遊びに来たの!」

 

歩美の発言に斎藤は驚きながらも嬉しそうに微笑んだ。

 

「お嬢様のご友人ですか、是非上がって行って下さい」

 

門が開けられ入って行く小五郎、探偵団は顔を見合わせ拳を上げながら宣言する。

 

 

少年探偵団!出動!!

 

おー!!!

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。