初めはオリジナルですが可能な限り原作を追従したいと思っています。
見苦しい駄文ですがどうぞよろしくお願いいたします!
少年の短い人生はそこで終わったはずだった。
誕生日に海に行きたいと言う妹と沿岸部と出掛けていた為、大亜連合進行の警報は彼とその妹に届くことはなかった。
「あれは……」
少年がそれらに気付いたのは海を眺めていた妹のふとした一言だった。妹の視線を追い、自分も海を見ると確かにそこには何かが浮いていた。いや、正確にはそれは確実に彼らの方に近付いていた。近付くにつれて次第にそれの全容が見えてくる。それは10人乗りくらいの電動機付きゴムボートだった。ここまでなら何ら怪しむ事はない。ただの漁師か観光目的のボートだと予想できるだろう。しかしそのボートは明らかに”違っていた”。ボートの色は黒、10人程乗っている者達も全員、見たことのない迷彩服を着用していた。
「国防軍じゃない?」
国防軍ではないと言うことはどういうことか、第三次世界大戦以降、閉鎖的になったこの国で外国の軍事組織が活動している。この事実から少年が答えを導き出すのはそう難しい事ではなかった。
「リサ、直ぐに逃げるぞ。」
少年は少しだけ思案する。最寄りの交番まで20分、一番近くの国防軍の監視施設までは30分以上かかる。敵は少数で監視の穴を突いてきていた。
どちらも時間がかかる。短い思案の結果、少年の選択は自宅で家族と合流して国防軍の避難誘導に従う。だった。その側で未だに事態が飲み込めていないのか、リサは少年の顔を不安げに見つめている。少年は説明は後にして急いで逃げようとリサの手首を掴み走り出そうとした。しかし、時すでに遅く彼らの背後には突撃銃を構えた男達が既に上陸し駆け寄っていた。
「トマレ」
片言の日本語。少年は足を止める。武器も知識も無い彼らにこの状況を打開するのは絶望的だった。
(魔法が使えれば……)
少年の両親は魔法師だった。そして産まれてきた2人もまた魔法師として育てられた。しかし両親の魔法力は妹のリサに大きく遺伝し、兄である少年は未だかつて上手く魔法を使えた事が無かった。しかし、少年はそれを負い目に感じたことは今まで無く、むしろ強大な魔力を有する妹を誇りに思っていた。この瞬間までは。
少年はゆっくりと横に目配せする。リサは未だに不安そうな顔で見つめている。正直なところ少年も何も手立てが無いことに焦っていた。妹を心配させまいと笑顔でいようと試みるが実際はどうだろうか。きっと同じように不安が表情の隅々から漏れているのだろうか。
「心配するな。俺が何とかするから」
何も手立ては無いが妹を安心させたい。そんな気持ちから放った一言は妹を”一瞬”だけ安心させた。瞬間、安心した妹の控えめな笑顔は驚きの表情へと変わった。そしてゆっくりとその場に倒れていく。驚きの余り体が硬直し妹を受け止める事ができなかった少年は直ぐに駆け寄りゆっくりと視線を下に移す。妹の身体は既に2発の銃弾を受け真っ白なワンピースには赤黒い染みが広がっていく。更に視線を移す。妹の手には小さな機械が握られていた。
「
それは妹の誕生日である今日の朝に渡したばかりのCADだった。少年は魔法師の家系に生まれながら魔法が使えなかった。その事実に少年は悲観せず技術と知識を蓄え、妹の為に魔工技師でもある父親の力を借りて初めてCADプログラミングを行った。そんな大した魔法も入っていないCADを手に妹は撃たれた。きっと妹に抵抗の意図はなく、ただ御守りとして握ってたのだろう。その姿が魔法を行使するように見えたのか、警告もなく妹は撃たれた。
「……ごめんなさ、い」
妹の最期の言葉だった。
「……ばかやろう」
そうぼそりと言い捨て、ゆっくりと妹の身体を起こそうとする。しかしその手は侵略者達によって蹴り飛ばされた。重たいブーツで蹴られた手は手首からズキズキと痛み、熱を持っていた。骨が折れているかもしれない。だがそんなことはもう関係無かった。
少年の中でも今まで感じたことの無い怒りが込み上げてきた。そして何かが吹っ切れた。
生への執着。
妹が居ないこの世界の価値は無に等しかった。
目の前の男を見上げる。男は突撃銃を妹に向けブーツで身体を揺さぶっていた。
「……」
今しかない。そう思った瞬間に既に身体は動いていた。目の前の男の腰にぶら下がったナイフに手を伸ばす。男の反応は鈍い。周囲の動きも何故か遅くなっているような感じがする。直ぐにナイフの留め具を外し、鞘から引き抜く。そしてそのまま抜いたナイフを持ち換え男の下腹部に突き立てる。男が悲鳴を上げた気がした。しかしそんなことはどうでも良かった。
ナイフを引き抜く。刃先は真っ赤に染まっていた。次は左胸を狙う。自分より背の高い男は痛みからか片膝を着き悲鳴を上げていた。
悲鳴を上げる男を見下ろしながら少年は呟いた。
「死ね」
男の顔に焦りと死への恐怖が浮き彫りになる。少年はゆっくりとナイフを構え、男の左胸を貫く……はずだった。
胸の辺りが熱くなっていく感じがした。手をやると鮮血で真っ赤に染まっている。すると急に両足の力が抜け少年は地面に突っ伏した。
「ここまでか……リサ、ごめんな」
少年は意識を手放した。
「あら、この子はどうしたの」
「敵の遊撃部隊を追撃したところ発見しました。まだ息があるようですが瀕死の重傷です」
「この子……連れて帰りましょう」
執事の側で担架に横たえられた少年を見て、女は妖艶な笑みを1つこぼす。
「宜しいのですか?」
「ええ、この子は何れ役に立つわ」
執事の問いかけにも視線も動かさず答える女は”それに――”と続けた。
「達也さんだけでは心配でしょ?」
いかがでしたでしょうか?
次回からは入学編に入ろうと思います。
更新の頻度は相当遅いです。すみません。
それでは次回も宜しくお願いいたします!