これからもこのようなペースになってしまうかもしれまでんがどうぞよろしくお願いいたします・・・
「それで我々の活動に君も参加してくれるのかな?」
「……それはまだ決めかねています。が、興味は在ります」
「出来れば君のような有望な人材には直ぐにでも参加して貰いたいものなんだが」
部活動勧誘習慣最終日、下校時間も迫り人気の無くなった校舎、その中で剣道部主将、司甲は目の前の1年生を何とか頷かせようと躍起になっていた。
一体何を考えているのか分からない。壬生から連絡を受けたときには軽いものだと思った。どんな人間でもコンプレックスはある、この1年生も他の2科生と同じように1科生に対して思うところがあるのだろう。そこを軽く突いてやれば二つ返事で此方側に参加するものだと司甲は考えていた。同じく1年生である司波達也の勧誘に失敗した以上、例の計画の為にも英竜士の勧誘までも失敗する訳にはいかない。それに出来ることなら計画で使いたいとの兄の言葉を思い出すと今日絶対に英竜士を引き込みたいところだ。しかし、英竜士はそんな気持ちを知ってか知らずか、曖昧な回答でかわしている。
これ以上こんなことを繰り返しても、下校時間が来て逃げられてしまう。そう考えた結果、司甲は出来るだけ切りたくなかったカードを切ることにした。
「……実は、近々大きな計画があって、その計画に是非とも君にも加わって欲しいんだ。準備の時間も居るから、今、答えを聞かせて欲しい」
(掛かった)
内心で竜士はそう呟くと、興味津々の様子を作り、司甲に更なる情報を求めた。加入の文字をちらつかせる竜士に騙されているとも知らず、竜士の加入を確信した様子の司甲はダメ出しにと更なる情報を自分から漏らしてしまったのだった。
「それじゃあ、当日に。楽しみにしているよ」
無表情の隅に隠しきれてない笑みをこぼし、司甲は竜士の前から立ち去った。司甲の姿が完全に視界から消えたことを確認した竜士は誰もいない筈の部室に視線を向けると溜め息をつくと、トーンを落とした声で問い掛けた。
「何か用か……達也」
「驚いたな、気付かれていたとは」
竜士の視線の先、部室の陰から現れた達也は素直に感嘆の意見を述べ、苦笑いを浮かべた。
「……たまたまだよ。それで用件は何だ?」
「ああ、一応忠告しとこうと思ってな。お前が今話していた相手は――」
「ブランシュ、だろ?」
口に出しかけたところで、達也はその単語を飲み込んだ。そして、”知っているはずのない”竜士が知っている事に一層と警戒心を巡らせる。反魔法団体ブランシュ、一応は政府により情報統制され一般人には知らされていないはずの事実だった。十師族である真由美や四葉から情報を獲られる達也を除いてその事実を知るのは不可能に近い。
「……何故知っているんだ?」
「さっきのあいつ、司甲が自分から話し出したからそのことかと思ってな」
警戒レベルを上げて問う達也に対して竜士は至って普通に答えを返した。依然と警戒している様子の達也に竜士はその場を立ち去ろうと最後に1つだけ情報提供しておく事にした。
「達也、近いうちにブランシュの連中が事を起こす。結構大規模なモノになりそうだから事前にどこかで行動を起こして来るかもな」
「ああ、分かった。会長には俺から伝えておこう」
「それと、俺は明日から少し休むから宜しく頼む」
それだけ言うと竜士は殆ど誰もいない校門へと一人歩を進めたのだった。
「何にそこまで肩入れするんだ?」
遠くなった竜士の背中に達也はぼそりと問い掛けた。
「これで一応は完成かな」
一度大きく伸びをしてから作業台の上のデジタル時計に目を向ける。日時は4月22日、そろそろ23日になろうかと言う時間帯だった。事前の連絡で学校であった放送室占拠事件と明日の放課後の生徒総会、とブランシュ日本支部による襲撃。生徒会と司甲の双方から毎日のようにメールが届いていた為、双方の動きも把握できている。因みに何故か1科生の雫と上級生の紗耶香からも連絡が入ってきている。しかし、その都度首を傾げるだけで竜士は返信はしなかった。学校には”家庭の事情”と連絡しているから事情知っているだろうと高を括っていたのだった。
竜士は再び視線を作業台に向ける。作業台の中央に置かれた一機のCAD、ベースモデルは
「……基本設計は優秀なんだけど、やっぱり民生品だから耐久性は低い、か。フリーの限界かもな」
誰もいない実験室で独り言ちる。大手の企業の専属となれば豊富な資金に高度な設備を使用できる。彼のように民生品を改造した実験機ではなく一から専用設計で作り出せる事は大きなメリットだった。
「オファーは来てるんだけどな」
大手企業であるFLTを筆頭に今まで取引した大抵の企業から専属研究員へのオファーは来ている。提示されている条件もなかなか破格なものだった。しかし、竜士はとある懸念を捨てきれずに今までフリーでやってきた。
(匿名で出来ればな)
フリーであれば期限までに要求仕様の実験機の設計図を指定フォルダに入れておけばいい。しかし、専属となるとそうはいかないだろう。契約する以上、個人情報は開示しなければならない。両親が居なくなってから世話になった方たちに迷惑を掛けるわけにはいかないと考えると専属研究員の方向は無いものだった。
無い物ねだりをやめ、視線をCADに戻す。原型だったシルバーホーンが読み取れる箇所は数少ない。竜士が開発した新技術を搭載する為に大型化した銃身部、機関部、増設されたセレクタブルスイッチ。殆どが外注生産部品で構成され、これ以上の強化は不可能に近かった。
「後は実用試験か」
再びデジタル時計に視線を移す。日付は23日に変わり、空白の予定欄に『実験機試験』の文字が表情されたのだった。
「竜士君、久しぶりね。さて、今まで何処で何をしてたのかしら?」
「……学校側には届出をしたはずですが」
「そうじゃなくって、会長の私には一言くらい有ってもいいんじゃないの?」
「そうですね、七草会長の仰る通りですよ。竜士君、私はお兄様から聞いていたから知っていましたけど、雫は不満そうな顔をしていましたよ」
昼休みに登校した竜士は何も無かったかのように席についた。しかし、時間をずらした筈がそこには生徒会室へ移動しようとする達也と深雪がまだ居たのだった。彼等と目があった瞬間、彼はデジャブの様なものを感じた。そこには満面の笑みの深雪が居たのだった。そのまま逃げ出すことも出来ず、半ば強引に昼食会と言う名の訊問に出頭した竜士は各委員長達(特に真由美と摩利と深雪)の訊問を受けることとなった。
「全く、君がいない間に大変だったんだからな」
「はぁ……すみません。ですが、本当に忙しいのはここからですよ」
作業中に入ってきた連絡を見た限りではそんなに大したこと無いと思った竜士は歯切れの悪い返事を返す。そして更に追い打ちを掛けようとする摩利に先んじて今度は深刻そうな口調で話を逸らした。
「それってどう言うことかしら?」
「敵勢力ですが、恐らく生徒以外の襲撃も予想されます。規模は分かりませんが、学生の長である司甲がその様な事を漏らしていました」
生徒会室に少しの間沈黙が走る。その沈黙を破ったのは真由美だった。
「直ぐにでも生徒を避難させましょう!」
「だが、真由美。そんなことをしたら今日の生徒総会は中止だぞ?」
「分かってるわ。だけど、そのために生徒を危険に晒すわけにはいかないわ」
「待ってください」
達也の一言で生徒会室は再び静寂に包まれた。
「事件の首謀者は司甲と繋がっています。ここで総会を中止にすればきっと襲撃も起こらないでしょう。そして――」
「我々は討議から逃げたとなるわけか。」
「その通りです、渡辺委員長。そもそもブランシュは一般の認知度はゼロに等しい。その様な組織の襲撃を信じる者は更に少ないでしょう。そして、生徒会が討議から逃げたとなればそれこそ彼等の思う壺です」
「ならばどうすれば……」
「万が一に備えて委員を配置し、襲撃が起これば生徒の避難を最優先に行動すれば良いかと」
「……そうね。わかっているだけ対応もしやすいかもしれないわね。でも、達也君。絶対に無理はダメよ」
「勿論です……竜士、お前はどうする?」
「俺は奴等の仲間だからな。大人しく席で見てるよ」
そう言うと竜士は右手を出し袖を捲る。そこには赤、青、白で彩られた帯が巻かれていた。
「奴等に密偵を頼まれていますから。まぁ、了承も肯定もしてませんが」
不敵な笑みを浮かべると竜士は「お先に失礼します」と一言残し生徒会室を後にした。
次回もできるだけ早いがんばります!