PCを新調したので更新も再開する予定です。
今回から九校戦編を始めます!
「......ですから、俺には達也のような知識も技術もありません。達也はともかく俺は適任ではありません」
一日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、会長を始めとする役員が揃った生徒会室に竜士の呆れと若干の悲痛さの混じった声が響いた。
「ですが、英君も自身のCADを自分で作り上げて、調整なさっていると聞きましたが――実力は充分ではないのでしょうか?」
反射的にCADがある左胸を押さえた竜士に鈴音が僅かに口角を上げる。
「まぁ、達也君のメンバー入りは決定してるんだ、もう2科生がどうのといった理由は通じんぞ。それでも参加出来ない理由があるのか?」
既に達也は桐原のCADデータを別の低スペックCADにコピーするといった課題を難なく成し遂げ、メンバー入りが決定していた。
「わ、私も英君のチーム入りを司波君と同様に希望します。前に一度英君のCADを見せてもらいましたが、彼のCADは私にも構成できないカスタマイズが施されていました。もし、九校戦でこの二人がチームに入ればハード、ソフト共に他校よりも大幅に優位に立てることは間違いないと思います」
何とかその場を逃げようとする竜士にさらに摩利とあずさが追い打ちをかける。
「・・・いや、ですが――「わかった」」
それでも諦めない竜士に今まで沈黙を保っていた克人が声を挙げる。
「英、お前のメカニック起用は諦めよう、が、お前にはその代わり選手として戦ってもらう」
「は・・・」
「九校戦は我が校の威信を掛けた戦いなのだ、その戦いにみすみす有用な人材を起用しない理由や余裕は当校には無い。そして、生徒の見本でも在るべき生徒会役員のお前にはそれを拒否する権利は無論無い――と、言うことだ。どうする?」
口を開いた克人から発せられたのは最早、逃げ場の無い宣告。苦い顔を浮かべながらも竜士に残された選択肢は1つだけだった。
「分かりました・・・メカニックとして全力でサポートさせて頂きます」
「それでいい」
満足げに頷く克人の横、達也の隣で深雪が心底嬉しそうに笑みを向けてくるのに対して、竜士はひきつった笑みを返したのだった。
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「―――久しぶりだな、特尉」
夜の司波家にすっかりとお決まりとなってしまっている"少佐"からの秘匿回線が開く。照明を落としたリビングで達也は通信の相手である風間少佐から定時連絡を受ける。なんでも、"サードアイ"のオーバーホールが終了したからその性能試験を行うこと。そして、達也も今度参加する九校戦に不穏な動きがあるといった忠告であった。足早にそれらを伝達した風間は最後に「質問はあるか?」と達也に問う。
「はい。1つ確認したいことがあります」
普段であれば、質問はなくそのまま回線を閉じてしまうところだが、達也は以前から抱いていた疑問を上官問うことにした。
「風間少佐は"英竜士"という人物をご存知でしょうか?」
滅多にない部下からの質問に少し虚を突かれた風間だったが、表情の変化も最小限に知り得ている情報を達也に伝える。
「竜士……同じような名前の男なら聞いたことがあるな。名字は英ではなく……
「そうですか……」
「ああ、今で言うとお前と同い年だ。が、それが別人であることは間違いない」
「……と、いいますと?」
「彼はもうこの世には居ない。5年前……お前も覚えているだろう、大亜連合による沖縄侵攻。このときに彼は亡くなっている」
「……そうですか、有り難うございます――因みに、それは少佐がご確認を?」
「いや、実のところ彼は病院施設での診断を受けていない。事後処理の段階でとある機関からの情報提供によるものを身元照合した結果だ。一家ともども事件でな……それから先は掴めなかったそうだ」
これ以上は何も出ないぞ、と言外の意思表示を受け取った達也は再度感謝の言葉を続けて回線を閉じる。
(機関……一家全滅ならば扱いやすい、か)
風間の言葉と今までの竜士の行動を思い浮かべ誰も居ないリビングで達也は1人思案を巡らせるのであった。
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―――
「と、言うことでハード担当スタッフとして皆さんをサポートさせて頂きます、英竜士です。よろしく」
達也に続いた竜士の自己紹介に深雪を始めとする1年女子の九校戦参加メンバーの面々が拍手で竜士の歓迎を示した。
「……技術スタッフは女の子が良かったなぁ」
竜士の自己紹介を受け初めに口を開いたのは教室の壇上に立つ二人を見比べていたエイミィこと
英美が発言したことによって他の女子達もそれに続いてそれぞれ口を開く。
「仕事さえしてくれればどちらでもいい」と
スバルの発言に過剰に反応したほのかが達也と竜士を名前で呼び、達也と竜士を除いたら1年女子しかいないその場は話が大きく逸れ始める。
しかしそんな中、達也、竜士と同じく時折笑みを浮かべるだけで言葉を発しなかった深雪がスバルの発したとある言葉に反応した。
「もしかして司波君は、ほのかの彼氏とか?」
「――――ッ!!」
「「えぇーー!?」」
その場にいる女子一同が驚きの声を各々に挙げる。当のほのかも余程恥ずかしかったのか顔を真っ赤に染め言葉になら無い言葉をボソボソと紡ぐだけで否定しようとしなかった(―――のではなくできなかったのだが)。その為、同じ年で入学から時間も経った彼女等は興味やそれ以外の理由で自然とほのかに詰め寄っていく。しかしそんな道を外れた論議も深雪の一言で一度落ち着きを見せることになる。
「ほのかとお兄様はただのお友達よ」
キッパリと言い切ったその言葉に淀みはなく、スバルを始めとする茶々入れにも揺らぐことは無かった。そして大きく脱線した話もここで終わるはずだった。
「……竜士君も彼女居ないの?」
突如発せられた英美の問いかけはその場に沈黙をもたらした。同時に今まで蚊帳の外で達也を笑って眺めていた竜士は一気に話題の舞台に引き出されることになった。
「……俺?俺にはそういうのは居ないよ」
努めて冷静に、感情を出すことなく竜士は疑惑を否定する。その言葉に英美、深雪を含む数名が意識せずに僅かに安堵の表情を浮かべた事には本人も含めた誰も気が付かなかった。
「―――そろそろ話を進めたいんだが」
英美の質問で静かになったこのタイミングを逃すまいと達也は苦笑いを浮かべながら話を元に戻したのだった。
―――――――
―――――
―――
「あの、竜士君、ちょっといい?」
「エイミィか、どうしたんだ?」
「実はね、最近CADの調子が悪いみたいで……」
「……分かった、少し借りてもいいか?」
時は放課後、九校戦に向けてのトレーニングの合間、グラウンドから少し離れたベンチでスポーツドリンクを飲む竜士は背後から声を掛けられた。
何故背後からなのかという疑問はあったが、そこには触れず、声の方へ上半身だけ振り返る。そこには、両手を後ろ手に組み若干上目がちに竜士を見る英美がいる。そんな英美を見て竜士は違和感を感じる。別に、背後から呼ばれた相手が英美だからではない。視界にこそ入ってこなかったが、この休憩中、竜士に向けられた様子を伺うような視線に気付いていた。それでも気付かない振りを決めたのは、純粋に面倒な事に巻き込まれそうだったという直感だった。
しかし、そんな竜士の直感を英美は知るよしもない、サポートすると言った手前、達也に丸投げも出来ないため、竜士は英美のCADを取り敢えず診てみる事にした。
(達也がいる手前迂闊なことは出来ないけど……)
達也に悟られないように必要最小限のサイオンをCADの流路に流す。異常は違和感をもって直ぐに判った。
「……なるほどね。大体分かったよ。今の手持ちじゃどうにも出来ないけど、1日預かってて良いなら直せるよ」
「ホント?よかったー、でもお願いしていいの?」
「このくらいならそんなに手間でもないから大丈夫だよ。今時珍しいけど、これはハードの問題だからね……まぁ、予想だけど」
「そうなんだ――」
竜士の軽い返事に何故か英美は頬を紅く染め、意を決して続けた。
「......じゃあ、今日は竜士君のお家に行った方がいい?」
精神的原因でない寒気を覚えながら、竜士は判りやすく首を横に振った。
いかがでしたでしょうか。
ここからまた再開できればと思っていますのでどうぞよろしくお願い致します。
それでは次回もお会いできれば幸いです。