九校戦3話目の投稿になります。
ただ、今回も竜士たちの活躍はありません。すみません。
それではどうぞよろしくお願い致します!
「やっほー!竜士君!」
「エリカ、なんでここに居るんだ?それにその格好は」
参加する気は無かった懇親会の場で竜士は意外な人物に会う。
ホテルの広々としたホールに各校の選手、エンジニアなど競技に参加する生徒達が今は所々に用意されたテーブルを囲み談笑している。一見、エリカがいてもおかしくは無いようだがここは一応軍の施設。関係者でない者は簡単に入れる場所でもない。それに、今のエリカは普段着ている一校の制服では無く、派手なリボンの付いたエプロンドレスだ。勿論ホールには他に給仕として働く者も居る為、他から見れば違和感は無いはずだが。
「そこはほら、親のコネってやつでさ。こうやって"仕事"として来てるわけよ」
そう言うとエリカはエプロンドレスの裾を摘まむとその場で可愛らしく一回り。複雑な表情の竜士に見せ付た。
「……そうなんだ。一人で?」
「そんなわけないでしょ、レオと美月、それとミキも一緒よ」
「ミキ?」
初めて聞く名前。その上愛称で呼んでいるみたいで、ただでさえ授業を休みがちな竜士には誰のことかさっぱり判らない。
疑問をそのまま表情に浮かべる竜士に合点がいったのか、「あ、そっか」とエリカは何も言わずにその場を走り去った。
「何だったんだ?」
「きっとエリカは吉田君を探しに行ったのでしょう」
「"ミキ"とは同じ1-Eの
走り去るエリカの背中を目で追って竜士は一人はごちる。そんな竜士に先程まで後ろにいながらにして何も口に出さなかった深雪と達也が背後から声を掛けた。
「いや、余り人の顔を覚えるのは得意じゃなくてな」
「余計な事かもしれないが、もう少し授業に顔を出したらどうだ?」
「確かにね」と竜士は視線を辺りに巡らせる。エリカが帰ってくる様子は今のところ無い、が竜士は別の方向から向けられる視線に感づいた。
「……あのグループは」
「多分、深雪と話したいんだと思う、けど……」
他人に向けたものでない竜士の言葉にいつの間にか側に居る雫が答えた。勿論、その後ろにはほのかも一緒に居る。
驚きを通り越して苦笑いを浮かべる竜士に特にこれといった反応を示さず、雫は達也と竜士の存在が"深雪と話したい1科生"の妨げになっていると言外に告げた。
「……俺は番犬か?」
「達也はともかく俺も?」
それぞれ言い分の有りそうな文句を口にする達也と竜士に苦笑いを浮かべながらほのかは「皆まだまだ2人との接し方が分からないんだと思う」とグループの意見を代弁する。
「達也さんも竜士さんはある意味目立っているから」
「……そう言うことなら、簡単な解決法がある」
そう言うと達也は側に立つ深雪に向くなり「行っておいで」と深雪の肩に優しく手を乗せる。
言外に兄の意図を悟ったのだろう、「わかりました」と露骨に残念そうな表情を浮かべながら深雪は1科生グループの所へ向かった。
「あれ?深雪は?」
小走りに戻ってきたエリカは首を左右に振り深雪を探す。その後ろに線の細い男子生徒を連れて。
「深雪なら他のグループの所に行ったよ」
「そっかー、なら仕方ないね。あ、竜士君、コレが”ミキ”よ」
少し離れた所に出来た生徒の環の中央に深雪を見つけたエリカはこれ見よがしに深雪に会話を持ちかける1科生達を目にして早々に諦めの言葉を口にした(―――一方の深雪も余りに大勢に囲まれてしまった為に、既にエリカたちの方を見ることは出来ていなかった)
仕方ない、と深雪への紹介を諦めたエリカはそのまま体の向きを変え、今の今まで手首を握られて不快そうな表情を浮かべている男子生徒を竜士に紹介することにした。
「……エリカ、手を放してやったらどうだ?」
「え?ああ、そうね」
「……それで、吉田幹比古でいいんだよな?俺は英竜士だ。俺のことは竜士でいい」
エリカを促し、その手を離させると竜士は幹比古に改めて名を告げる。
ようやくエリカから解放された幹比古も握られた手首を擦りながら苦笑いを浮かべ「そうだよ。僕のことも幹比古と呼んでくれ」と竜士に向き直った。
「達也とはよく学校で会うけど、竜士、君とはなかなか会えなくてね。君とも一度話して見たかったんだ」
「そうか?俺に気になる事でもあるのか?」
「そりゃあ、達也と同じで2科生にして風紀委員だし、色々な噂も立っているみたいだしね」
「―――それに竜士君はクラスの女の子に人気、みたいですしね」
「……そうなんだ、竜士さん、女の子に人気なんだ」
美月により場に投下された爆弾によって、今まで一切口を挟んでいなかった雫の声が竜士に突き刺さる。
竜士が振返ると、そこにはどこか暗い表情を浮かべた雫の説明を要求する視線を向けていた。傍では普段見ない雫の様子に慌てるほのか、事態についていけていない幹比古と腹を抱えて笑うエリカ
「どうなの、竜士さん」
「……もしもし雫さん?」
暗い表情を浮かべたままじりじりと間合いを詰めてくる雫に竜士は暑くもないのにだらだらと汗を流し詰められた間合いを再び開く。
「……俺が何かしたか?」
一歩一歩と迫る雫を前に竜士は大きくため息をついたのだった。
―――――――
―――――
―――
「そういえばさ、懇親会に3校のプリンス、
「あー、見た見た!結構いい男だったね!彼、深雪の事を熱い眼差しで見てたよ」
他に客も居らず、貸し切り状態の温泉にスバルと英美の声が反響した。
懇親会も終わり、各校は翌日から始まる九校戦に向けて準備を行っている。そんな中、まだ試合のない1年生女子たちは英美の提案でホテルの地下にある温泉を楽しんでいるところだ。
他に誰もいないという環境が彼女たちを大胆な行動に移し、標的となったほのかが襲われてしまいそうになるが、深雪の登場で事なきを得た所であった。
「―――深雪はやっぱりお兄さんみたいな人が好みかい?」
こういった年頃の少女が集まる場では最早当たり前とも言うべき会話がスバルによって幕を切って落とされた。
「……何を期待しているかしれないけど、私とお兄様は実の兄弟よ。恋愛対象としてみたことなんて無いから」
深雪の断言を受けて隣に腰を下ろしたほのかは僅かに安堵の表情を浮かべる。
「そりゃそうか」と少し残念そうな顔を浮かべるスバル。しかし彼女はそこで終わることなく言葉を続ける。
「それなら竜士君はどうだい?」
「―――っ!」
「―――ッ!」
スバルの順当な疑問はその場の数人を凍らせた。英美、雫はそっけないふりを決めつつ不自然な視線を深雪に向ける。
当の深雪は虚を突かれたのか、僅かに頬を朱に染めながら驚いた表情を浮かべ言葉に詰まる。
「……え、えっと、確かに竜士君は恰好いいものね。でもそういう風に意識したことはない、わ」
今まで見たことのない深雪の狼狽ぶりに覚えのある女子たちは意外感と共に不安そして焦燥感を覚えたのだった。
―――――――
―――――
―――
「失礼します」
ホテルの小会議場のドアを開くと達也は軍人に類する短節な動作で入室し、その場で両手を腰で組み停止する。
達也の入室を確認した風間はそのまま達也に着席を進める。しかし、達也は「自分はここで」と風間の配慮を遠慮した。
「達也君、今日我々は君を『戦略級魔法師 大黒竜也特尉』としてではなく、我々の友人、司波達也君として招いたのだよ」
その場に同席していた
腰を下ろした達也に風間達が告げたのは、九校戦に関わる犯罪シンジゲートが存在するといったところだった。達也自身昨夜、その敵勢工作に遭遇しこれを幹比古と共に撃退している。
「ところで達也、その後の”彼”とはどうなのだ?」
「そうですね。今のところは自分の秘密が察知されている気配はありません、ですが、彼自身の能力には、まだ見えていない脅威があるように見受けられます」
「―――あの、”彼”というのは?」
主語が伏せられた会話にすかさず真田が口を挟む。
既に知っている響子と達也を除いて風間は「まだ伝えていなかったな」と達也から受けた竜士に関する報告を要約して伝えた。
「―――そのような人材が」
「ええ、真田大尉。全容ははっきりしませんが英にはまだ隠している力があるような気がします。四葉が絡んでいるなら尚のことです」
「それは、君と同じような戦略級魔法師として、という意味かな?」
「……それは未だ分かりません。しかし、いままで彼を見てきた中で感じるのは。一般の高校生とは一線を隔てるオーラです」
「というと?」
「そうですね、自分がこれを言うのもどうかとは思うのですが―――」
そう言って達也は一度、差し出された珈琲で乾いた唇を潤す。
「......一度死を見てきた者のオーラです」
いかがでしたでしょうか?
今回は原作にはありますが間延びさせたくもないので省略しているところが多々あります(私の原作知識の不足も)
ご容赦ください。
次回はいよいよ竜士たちも表に出ていけると思います!
それでは次回もどうぞよろしくお願い致します。
PS.誤字報告まことにありがとうございます。ご感想等もお待ちしておりますのでどうぞよろしくお気軽に