九校戦編、第六話の投稿になります。
GWパワーもこれが最後となりそうですのでここから遅れていきそうです。
今回は、モノリスコード決勝までのお話です。
それではどうぞ!
『新人戦モノリス・コードに出場して貰う』
真由美からの伝言だと言って達也ははっきりとそう口にした。
達也の口から出る予想を上回る言葉に一瞬驚きつつも竜士は改めて達也の言葉を反芻する。
「”貰う”って強制か?そもそも俺は2科生でしかもサブスタッフなんだが……」
少し前に同じ様なことを真由美や克人に言っていた事を思い出し僅かに笑みを浮かべると「その言い分は俺も使ったんだがな」と竜士の説得に入る。
「竜士、例のモノリス・コードで起きた事件について大会本部と折衷を図っていた十文字会頭と七草会長から俺に打診があった―――」
「具体的には」と達也は事の経緯を竜士に説明する。―――先日のモノリス・コードで起きた事故について第1高校の選手が重傷を負った要因の一つして大会本部の試合開始位置の設定が大きく関係しているといったものだ。
その試合は、廃墟ステージで行われ、第1高校の生徒(―――森崎達1科生の1年生チーム)は崩れやすい建物の中に開始地点が決められていた。その為、敵チームであった第4高校の意図を問わず、建物を崩落させる破城槌の使用に巻き込まれることとなってしまったと言う事だった。
十文字はそのことを言い分に、復帰不可能な森崎達の代わりに他の生徒で大会の継続をさせろと言い、それが了承されたためにこうして達也や竜士に白羽の矢が立ったという事だ。
「……そうか、上の言い分は分かった。けど―――」
第1高校首脳陣の考えは理解している。しかしそれでも竜士は納得は出来なかった。
どうにかして立てられた矢を引き抜こうとする竜士が口を開く前に再び部屋のドアがノックされる。
「……達也、他にも誰か居るのか?」
「これは余り使いたく無かったんだが―――「こんばんは、竜士君」」
「……七草先輩」
致し方ないと達也は小さくため息をつく。挨拶と共に入ってきたのは竜士を指名した張本人である真由美だった。
「竜士君を指名させて貰ったのは私なのだけど、駄目かな?」
「お断りします」
どこかコケティッシュな笑みを浮かべ真由美は竜士に改めて頼み込んだ。
そんな真由美に目もくれず竜士は真由美の要請を拒む。しかし、真由美は諦めない様子で次の手を打つ。
「そっかー、それなら十文字君にも説得に参加して貰おうかしら。あと摩利とか鈴ちゃんとかあーちゃんとか」
「―――」
真由美のその言葉に竜士は表情は崩さず、辟易とする。真由美の指した人物はどれも普段竜士を苦しめる生徒会の面々だ。それに加えて克人まで参加するならある意味盤石の布陣ともいえる。しかしそれで真由美の攻勢が衰えることは無かった。
「それに、ね、深雪さん」
今度は小悪魔的な表情で真由美は深雪に視線で合図を送る。当の深雪も元より図っていたかの如く「そうですよ。竜士くん」と真由美と対照的な笑みを竜士に向けた。
「……先の女子スピード・シューティングで雫が使った魔法、これが新種の魔法としての認定と受けているというお話はご存知だと思うのだけど、実はあの時使われたデバイスにもついてもお話があるのです」
そこまで聞いて竜士はバツの悪そうに机の上に投げた資料に一瞬視線を移す。竜士の表情に現れない狼狽を何故か嬉しく感じつつ深雪は言葉を繋いだ。
「FLT……竜士君もご存知だと思いますけど、FLTを筆頭に国内のCADメーカーからエンジニアとのコンタクトを求める連絡がありまして」
「司波さん……それは」
「公表すれば竜士君も有名人ですね?」
既に諦めの境地に入る竜士に深雪は笑みを向けて止めを刺した。
―――――――
―――――
―――
「出てきたね、彼らが」
「そうだな、選手としてとは少し驚いたが、お手並み拝見といくか」
宙をいく飛行船の大モニターに映し出される達也と竜士、2人を見てスタンドの陰で将輝と真紅郎は意外な竜士達の登場に期待と敵対心をもって呟く。
竜士達は今、新人戦モノリス・コード予選の舞台である森林ステージに陣取っている。背後には黒く無機質なモノリス。
昨晩の作戦会議を思い出す。達也主導で取られた会議では先ず、決勝トーナメントまでは達也が前衛、幹比古が遊撃、そして竜士が後衛となることになった(―――達也としても、能力的に把握できていない竜士を当初後方に置くという意図もある)。
竜士は手に持ったデバイスを見る。そこには普段使用している大型拳銃型CAD。競技参加の条件として竜士が提示したものの一つだ。無論大会委員によるチェックは済ませてあるので問題はない。
試合開始のブザーと共に達也は一気に森の中を駆ける。今回の相手は第8高校、作戦としてはコード入力より戦闘不能による勝利を狙っていく予定だ。
すぐさま森の中に消えていった達也と遅れてサポートに入る幹比古、自陣モノリスには竜士一人となった。
それ程時間もたたない内に達也から「モノリス起動」の連絡が入る。一方、幹比古は別の選手を相手にしているようだ。連絡を鑑みるに、達也が相手にしているのは後衛、幹比古が遊撃だろう。となると竜士の下にはそろそろ相手の前衛が来るだろうことはすぐに予想できた。
竜士は目を閉じ、感覚を最大限に活用する。魔法力を使って探す方が容易で速いが、無用な勘繰りを避ける為にも今は使わない。
暫くそうしていると竜士からそれ程遠くない茂みに人の気配を感じる。
竜士はゆっくりと手に持ったCADの
次の瞬間には竜士は隠れた相手の背後数メートルの位置につける。目の前の相手は急に視界から消えた竜士を慌てて探すようにしきりに頭を振っていた。
竜士は静かにCADを構えるとその引き金を引く。手段は至ってシンプルなものだ、波長の違うサイオン波をループキャストし、波の合成による極度の”酔い”で相手を戦闘不能にする。
竜士の相手が意識を失った段階で会場に試合終了を告げるブザーが響く。達也と幹比古も難なく相手を倒した様だった。
―――――――
―――――
―――
「ジョージ、お前ならどう攻める」
会場に響く試合終了のブザーを聞いて、将輝は相棒に問い掛ける。
「……司波達也、英竜士。彼らはとても戦い慣れているように見えるね。魔法技術より戦闘技能の方が高そうだ」
「その、魔法技術の方はどうだ?」
「そうだね、確かに司波達也の
先程までディスプレイで目にした情報を元に、真紅郎は冷静に分析する。相棒の分析に自分の同意見なのか将輝も僅かに頷くと、同じことを考えているのだろう真紅郎に笑みを浮かべる。
「正面から打ち合うなら恐れるに足りない、と言う事か」
「そうだね、例えば試合が草原ステージだったら、九割九分九厘こっちの勝ちだ」
―――――――
―――――
―――
「……分解はともかく、フラッシュキャストや
個室でモニター越しに達也を見る男、国防陸軍の治療魔法師、
試合は予選リーグ最終戦。市街地ステージで行われ、幹比古の精霊を活用した戦いにより1校は順当に勝利を収めていた。
「使えない事情があるのですよ。それより、彼、まだ実力を隠しているみたいですね」
「ふむ、元よりそれ程の実力は無いのかもしれないがな」
「それもこの先になればわかる事でしょう……ここから先は決勝トーナメント。実力を隠して3校の2人とは戦えないでしょうから」
モニターを見る藤林はどこか楽しそうに笑みを浮かべた。
―――――――
―――――
―――
「竜士君いよいよ決勝戦ですね。お兄様も頑張って下さい」
「竜士さん、応援してる」
「……吉田君、頑張って下さいね」
決勝戦を控えた選手用控室、準備を整えた竜士達はただその時を待っている。他には応援に来た深雪、雫、美月らいつものメンバーが詰め寄っている。
決勝トーナメント一回戦は第9高校との試合、これを前試合同様難なく下し、いよいよ本命の第3高校との試合まで彼らは来たのだった。
「……作戦は昨日話した通りだ、俺が吉祥寺を、竜士が一条を抑える。幹比古は相互に遊撃だ。場所は草原ステージ、間違いなく向こうは一条と吉祥寺を前面に出してくる」
「ああ」
「オーケー、達也」
「よし、行くぞ」
達也の合図で一同は決勝戦の会場へと向かう。
「ん?あいつ等の配置……」
「……どうやら彼らも僕たちと同じ布陣のようだね」
「ってことは俺が英、ジョージが司波、か」
「そこは意外だね、僕はてっきり将輝に司波達也を当ててくると思ったのだけど……力負けすることは無いと思うけど、油断はしないようにね」
「勿論だ」
一面が草原のステージで2つのチームは互いに目を遣る。どちらもコード入力による勝利は考えていない。
試合開始までの束の間、二校の間に静寂が流れる。離れた位置の観客席にも各校の生徒や魔法関係者、報道関係者などここ一番の盛り上がりを見せている。
予告のブザーが数回鳴り、そして―――
いよいよ、モノリス・コードの決勝戦が始まった。
「竜士――――――ッ!」
……の放った一撃は確実に竜士に命中し、彼を布切れの様に宙に飛ばす。
「俺は、何て事を……ッ!」
「竜士君―――――――っ!!」
立ち上がった……は最早……では無かった。
「この魔法は―――――!?」
次回、魔法科高校の劣等生 神速の魔法師 九校戦編Ⅶ
みたいな感じで予告ってクサイですよね。
次から元に戻します。
さて次回はいよいよモノリスコードも終わります。
それでは次回もどうぞよろしくお願いいたします!