今回はプロローグ投稿時には既に出来上がり掛けていたのですごく早く投稿できました。
次回からは相当遅くなります。
今回も試験的に投稿します。
お気に入り登録していただきありがとうございます!!
それではどうぞ
「長いな……」
3人掛けのベンチにゆっくりと腰を降ろし一息つく。
今日は国立魔法大学付属第一高校の入学式だった――にも関わらず目の前を横切っていく生徒は疎らでしかも大抵は2年生以上の上級生であった。
(早く来すぎたかな)
別に用が無ければこんなところにこんな朝早くから居るはずはない。『
「見てあの子、
「補欠なのに張り切っちゃってねぇ」
彼女らは竜士の脇を通る度にその肩を見てクスリと笑い立ち去る。竜士のその肩には八枚花弁の無いただの下地が縫い付けられている。
(
「
初日から遅刻など目立つことは避けたかった――はずなのだが、違う意味で既に目立ってしまっているようだ。溜め息をつきながら周囲を軽く見渡す。すると先程まで誰も居ないと思っていた、講堂正面階段の前に2人の新入生を見つけた。1人は身長180センチメートル程、細身に見えるが引き締まった印象の男。もう1人は彼の彼女だろうか、今まで見たことの無いほどの美少女でここからでも聞こえるほどの声量で詰め寄っていた。
「納得できません!」
「何故お兄様が補欠なのですか!?」
「入試の成績はお兄様がトップだったじゃありませんか――」
詰め寄る美少女の相手は彼氏ではなくどうやら兄のようだった。あんな美少女の妹がいては兄も大変だろうと妹は居ないが何故か思ってしまう。と同時に入試のペーパーテストがトップであるということもどうやって知ったのかは分からないが判明していた。ここで竜士は二人の制服に目をやった。美少女の肩には八枚花弁、兄の肩には何もない。ペーパーテストがトップにも関わらず2科生である兄の方は実技が苦手ということだろう。
(ペーパーテストがトップなのに2科生か……、よほど実技が悪いのか)
気になった竜士は少しだけ”視てみる”ことにした。
(コイツは……ッ)
竜士は瞬時に視線を2人から逸らした。彼が兄を”視ようと”したとき確かに気付いていた。普通は気付かない。というか気付けない。違和感こそ感じてもそれが竜士によるものと気付けるはずは無かった。
「只者じゃないみたいだな」
つい口から零れてしまう感嘆の声。同じ2科生として竜士はとても興味が湧いていた。
やがて2人のやりあいも終わり妹の方は講堂の中へと消えていき、残された兄の方はやることがないらしい。周囲を軽く見渡すと他にもベンチはあるだろうに竜士の方へ足を進めた。
「隣、いいか?」
「ああ、空いてるぞ」
予想通りの問いかけ。断る理由もなく竜士は即答した。
「俺は司波達也だ俺のことは達也でいい。同じ2科だ。これからよろしくな」
「ああ、英竜士だ。俺のことも竜士でいい」
達也はベンチに腰を下ろすなり自己紹介をした。突然の自己紹介に若干驚いたが竜士も後に続いた。達也は竜士の自己紹介を聞くと一旦会話を切り、胸ポケットから携帯端末を取り出し何かのサイトにアクセスしているようだったが、直ぐに顔を上げると竜士に向かって問いかける。
「ところで竜士、さっきはどこまで”視た”?」
「すまん。お前の妹が余りにも美人なんでつい目を離せなかったんだ」
「……そうか、そう言うことにしておこう」
達也の急な探りに対して竜士は”分かっていない”振りをすることで話を逸らした。竜士のあからさまな答えにこれ以上は無駄だと判断したのか達也は再び視線を携帯端末に落とす。達也が携帯端末に視線を落としたのを見て竜士は少しだけ仮眠を取ることにした。前日は新型CADの設計に没頭してしまい、深夜4時頃まで作業をしていたお陰で若干思考力が鈍っている気がするからだ。講堂が開かれるまではまだ2~30分間程時間が在るため、今日は特に授業はないが軽く寝ておこうと思ったのだった。
「……じ……おい、竜士」
突然肩を揺さぶられ竜士はゆっくりと瞼を持ち上げる。目の前には不思議そうな顔でこちらを覗き込んでいる達――じゃなく、見知らぬ女子生徒が竜士の顔を覗き込んでいた。女子生徒は竜士が目を覚ました事に気付くと僅かに笑みを浮かべ、上体を起こすと達也に問いかける。
「貴方達は新入生ですね。そろそろ開場の時間ですよ」
達也は女子生徒に正対すると、微風に揺れる黒のロングヘアーを抑える左手の袖口から覗くブレスレットに気が付いた。
(CAD……確か校内での携帯を認められているのは生徒会役員と一部の生徒のみだったはず。彼女もそれらに関する者だということか……)
入学そうそう上級生にしかも何かしらの地位にある生徒に目をつけられる訳にはいかない。達也は女子生徒に軽く会釈をすると竜士を連れて直ぐに立ち去ろうとした。
「スクリーン型を使用しているのですね。感心です。当校では仮想型ディスプレイ端末は規則で禁止されています。しかし、それでも一部の生徒は仮想型を使用しています」
「……ええ、読書にはスクリーン型が向いていますから」
立ち去ろうと竜士を起こしたところで突然女子生徒が問い掛けてきたため達也はそれが手にしている携帯端末の事だと気付くのにほんの僅かの時間を要した。達也がスクリーン型を使用していたのは単に使いやすいからというだけで、仮想型特有の問題点を考慮した結果ではない。正直どうでもいい話を続けられ達也の顔が僅かに困った風になったのかもしれない。女子生徒は「申し遅れましたが――」と話を切り替えた。
「私は本校の生徒会長を努めています、七草真由美と言います。「ななくさ」と書いて「さえぐさ」と読みます。よろしくね」
蠱惑的な笑みを浮かべながら、真由美は達也とすっかり目を覚まして立ち上がった竜士に自己紹介をした。その笑顔と先程からの見ず知らずの新入生にも人懐っこく近づく様は勘違いを招いてしまいそうではあるが2人には全くそのような誤解は起こり得なかった。
「
「この人が七草ね」
達也も竜士も一番気になったのは彼女の苗字だった。
「自分は司波達也です」
「英竜士です」
2人も揃って名乗り返す。その名前を聞いたとき真由美は僅かに驚いた表情を浮かべる。
「そう……君達があの司波君と英君なの」
「司波君。入試7教科平均98点。特に魔法理論と魔法工学については合格者平均が70点未満のところ文句なしの満点よ。君の事は先生方も噂していたわ」
真由美は先程とは違う、楽しそうな雰囲気で達也と竜士の顔を交互に見比べる。”あの”と付けると言うことはそれなりに話題性があると言うことだ。竜士は少し思考を巡らせる。達也は実技は苦手だがペーパーテストは前代未聞な点数を叩き出したそのアンバランスさが話題になるのは十分だろう、しかし――
「あの……達也はともかく自分は何かしら話題になるようなことしましたか?」
この際、どうやって入試の点数を知ったのかは隅に置いておく。しかし、竜士は自分が目をつけられてしまった事に疑問を感じていた。
「……そうね。君の事に関しては、秘密かな」
真由美は竜士を分析するような目で見つめると答えをはぐらかした。そして追求しようとした竜士と達也に「それでは式で」と言い残しその場から立ち去った。
(まさか……いや、”それ”は厳重にガードされているはず。特に十師族に漏れるわけには)
立ち去る真由美の背中を目で追いながら竜士はこめかみを抑え今日3度目の溜め息をついたのだった。
いかがでしたでしょうか?
この調子で投稿出来ればいいですが……頑張ります。
それでは次回もよろしくお願いいたします。