今回は少し遅めの投稿になります。
お話は、決勝戦終了までとなります。
分かりづらい展開となりましたがご容赦を、
それではどうぞ!
「そう……竜士さんが九校戦に」
「左様でございます。なんでも七草家の息女によるものと……」
人気のない屋敷の中、椅子に腰掛ける真夜はティーカップを机に戻し、背後に控える青木の報告を受ける。
余りに良い報告でない事は重々承知しているのだろう戦々恐々と報告する青木に真夜はどこか楽しそうに続きを促す。
「どうやらあの者共は揃って新人戦モノリス・コード決勝戦に出場するようで御座います」
「……そう、あの子は今どうしているのかしら」
「それが、同じ会場に……」
滴る脂汗をハンカチで拭う青木を余所に真夜は平然としかしどこか面白そうに口角を持ち上げた。
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―――――
―――
「こ、これは―――――ッ」
「彼は、本当に2科生なのですか?」
モノリス・コード決勝戦。その試合開始から数十秒後、試合を見守る第1高校のブースで一部を除き衝撃が走った。
彼等の視線の先、モニターに映った竜士達は今、対戦相手である第3高校のエース、一条将輝と吉祥寺真紅郎と壮絶な砲撃戦を繰り広げている。会場は草原ステージ。それまで1高の生徒でさえ予想し得なかった戦いを竜士は見せる。
「これが、竜士君の、力」
メインスタンドで雫やほのか達と応援する深雪は両手を口に当て目を見開いた。
―――――――
―――――
―――
「ウソ……だろ?」
相手に構えた拳銃型CADの引き金を絞りながら将輝は恐怖にも似た何かを感じていた。
目の前に立つのは第1高校の英竜士。聞けば第1高校では補欠にあたる2科生だそうだ(―――第3高校では普通科生であるが)。試合前から結果は見えている。今までの相手と同じように遠距離からの砲撃戦で勝負は決まるとそう思い込んでいた。
だが違った。
将輝は竜士の周囲に魔法を展開させるはずが、出来なかった。
(……明らかに魔法が相克を起こしている。これは、干渉装甲なのか?)
互いに少しずつ歩を進め距離を詰めていく中、竜士の干渉域の広さと魔法が展開できない事に焦りを覚え何時しかその脚を止める将輝。"全くもって歯が立たない"彼は一つの結論に辿り着く。
「この俺が、魔法力で押されている……?」
同じ1科生のそれも先輩であればまだ納得もできるが、相手は同学年、九校戦に出られているだけで優秀である事は理解できるが、それでも普通科生だ。
今までの予選では竜士よりむしろ達也を警戒していた将輝達第3高校の選手。その誤算は試合の流れを大きく流れを変えることとなった。
一方の真紅郎も将輝同様に達也と幹比古のコンビネーションに効率よく魔法を使えていない。達也は持ち前の体術で真紅郎の
「将輝の方も、厳しそうだね……」
真紅郎は一瞬、視線を将輝に向ける。しかしその"一瞬"を達也が逃すはずはなかった。
一瞬目を反らした隙に達也は一気に真紅郎との距離を詰めるように蛇行していた動きから直線的に地面を駆ける。
「――――――ッ!!」
「ジョージッ!!」
視線を戻した真紅郎の先には先程から距離を一気に詰めた達也が尚も一直線に突っ込んでくる。
すかさず真紅郎も一直線に向かってくる達也に対して魔法を発動しようとするが―――
(―――ッ!間に合わない!)
CADを操作しつつも、内心絶望した真紅郎は強く目を閉じた。誰もが真紅郎の敗北を予感したその時だった。
「ジョージ!!」
真紅郎の危機をいち早く気付けた達也の行動から相棒を守ろうと、慌てて魔法を向ける。
それは制御できなかった魔法。シンプルな圧縮空気弾だが、加減を失った魔法は命中すれば相手を容易く殺めてしまう程に強力なものであった。
「―――しまったッ!加減が……」
反射的にトリガーを引いてしまった将輝はその魔法の発動に顔をひきつらせる。事前の情報で達也が魔法を無効化する術式解体の使い手であることは判っている。しかし、慌てて反射的に複数発動してしまった将輝の魔法はその威力も去ることながら、到底対処できる数ではない。
「このままじゃ……殺して、しまう」
―――――――
―――――
―――
「達也―――ッ!!」
達也に向けて放たれる魔法を見て”直感的”に竜士はそれが明らかに危険な魔法である事を認識し、達也の名を叫んだ。当の達也もその事には感づいている様子で、直線的に駆けていた足を止め、可能な限り迎撃する姿勢を見せる。
(あの威力は……マズいか。達也も防ぎきれない。このままでは、達也が……)
―――ねがい……これ以上は、もう誰も……
竜士の頭の中の奥深く、まだあどけない声色の女性の声が途切れ途切れに竜士に届く。以前から事あるごとに竜士に語り掛ける謎の声。全く記憶にないその声は今では声色まで判るようになっていた。
(この声は、どこで。誰なんだ?)
遠い昔親しい間柄であった様な曖昧で断片的な意識。しかし、その声は竜士にとってただの言葉ではなく、”絶対に守らなければならない何か”である気がする。
―――守って。
最後にそう竜士に告げて、少女の声は消える。
随分と長い間意識が飛んでいたような錯覚に包まれながら竜士は視線を達也に向ける。
達也の能力は恐ろしく高い。しかし、将輝の放ったこの魔法はその力の上を行く。しかし―――
―――そんな事は知ったことではない。
未だに呆然とした表情を浮かべる将輝の前から竜士は消えた。
―――――――
―――――
―――
「―――――ッ!」
一条から放たれた魔法は明らかにレギュレーション違反だ。精霊の目をやむなく使う事にした達也は一条から放たれた魔法をその発動前に限りなく冷静に効率よく処理していく。しかし、大量に放たれた魔法の処理に次第に遅れていく達也は発動した魔法から放たれる圧縮空気弾をその身のこなしで躱していく。
次々と達也へ襲い掛かる圧縮空気弾。既に達也にも対応できなくなっていた。
(不味い、これは避けられん―――)
達也は最善を尽くすが、ついにその能力を超えたところで圧縮空気弾は発射された。
命中までおよそ1秒掛からない。達也は僅かに表情を歪める。
身体に強い衝撃が走り、達也は真横に大きく飛ばされる―――しかし、その力は予想を遥かに下回るもので達也は怪訝に思いつつ視線を元居た位置に向ける。そこには、先程まで将輝と対峙していたはずの竜士が片手で達也を押しのけて立っている。
「……竜士、おま―――」
達也がその言葉を言い切る前に残った全ての魔法が発動し、竜士は圧縮空気弾の嵐に包まれる。
今までとは威力の違う圧縮空気弾が次々と地を抉り、その場に高々と砂煙を巻き上げる。
「竜士――――――ッ!」
達也と幹比古が叫ぶ目の前で最後の圧縮空気弾が地面を穿つ。
将輝の放った一撃は確実に竜士に命中し、彼を布切れの様に宙に飛ばす。
誰の目から見ても明らかだ、竜士は確実に戦闘不能となった。それどころか重症若しくは生命さえ危ういかもしれない、と。
「英、竜士……」
いとも軽々と宙に舞う竜士の身体に思わず敵である真紅郎が動作を止め声を漏らす。
「俺は、何て事を……ッ!」
将輝は最早、竜士の姿を見られないといった様子で俯く。
決勝戦と言う事もあり、ほぼ満員となったスタンドも固唾を飲んで大型モニターを見守っている。その中で一人、深雪だけはきつく瞼を閉じ、竜士の無事を祈っていた。
「竜士君―――――――っ!!」
―――――――
―――――
―――
―――俺は、死ぬのか?
先程まで居たはずの草原フィールドとは全く違う真っ白な空間で彼は問い掛ける。目の前には見たことは無いが知っている銀髪の少女。
―――ここは死後の世界ってやつなのか?
遠い昔、見たことのあるような光景に竜士は戸惑いつつ、薄く微笑む少女に再び問い掛ける。
少女は竜士の問い掛けには答えない。代わりに彼女は”最後に”と口を開いた。
―――約束、しましたよね?……さん。
(ああ、約束だ。)
ゆっくりと身体を起こし立ち上がる。
(―――殺してやる)
―――――――
―――――
―――
「……り、竜士?」
「……」
「……嘘だろ」
幹比古と達也そして将輝までもがその姿に唖然とした。恐らく折れているだろう右足や鮮血で赤黒く染まる競技用ユニフォーム、血の滴る右手には大きく損傷した大型拳銃型CADが力無く握られている。しかし、彼のその表情に痛みといった感情が全く現れてはいない。
立ち上がった竜士は最早竜士では無かった。
そして次の瞬間、達也達は目を見張る事となる。
達也は精霊の眼で竜士を観る。そこでは彼を中心に広大な範囲を取り囲むように魔法が作用しようとしていた。そして次の瞬間―――
「「ぐあぁぁッ!!」」
達也の正面で真紅郎とその更に奥、第3高校のモノリスの前で相手選手が短い悲鳴を上げて地に伏せるようにして倒れ、一瞬で意識を失った。
「―――クッ、お前は、何者だ」
将輝のみが唯一、片膝を突きながらも必死に上体を支えている。
竜士は僅かに口角を吊り上げると更なる魔法を発動する。その竜士の姿を精霊の眼で見ている達也も既に驚きを隠せなかった。
(既に発動させた魔法の上にパラレル・キャスト、だと……?)
内心ありえないモノを見ているような錯覚に囚われる達也は更に”それ”に気付いた。
「この魔法は―――――!?」
竜士は静かにCADを将輝に向け、その引き金を絞る。瞬間、今も尚片膝を突いたまま悶える将輝の後方で地面が大きく抉れる。
達也は竜士の構えたCADを遠目に見る。その先端部、以前からカスタマイズを施して強化していた照準補助システムは破壊されていた。
(……照準補助が効かないから外した、のか)
続けて竜士に視線を向けると彼は、達也の視界から消えた。
「なッ」
思わず達也は驚きの声を漏らし、視線を左右に振って竜士を探す。彼は既に将輝の背後に立っていた。そしてその足元には他と同様に意識を刈り取られた将輝が横たわっている。
達也は普段から鍛えられた動体視力を以てしても、竜士の動きを追えなかった。
「……これで、終わり、だな」
―――いつも無茶ばかりするのですから、”兄さん”は。
「ゴフッ」っと音を立てて吐血し、竜士は将輝の脇に倒れる。試合終了を告げるサイレンが鳴ったのはそのすぐ後であった。
いかがでしたでしょうか?
今回は、モノリスコード決勝戦終了までのお話でした。
次回は、いよいよ九校戦も終了となれたらいいなと思います。
それでは次回もどうぞよろしくお願い致します!
PS 前回の次回予告的なアレあった方が面白いですか?どうでしょうか?