魔法科高校の劣等生 神速の魔法師   作:mr.KIRIN

22 / 26
こんにちは。

投稿が随分と遅れてしまいましたが九校戦編Ⅸの投稿になります。

このお話では、一応九校戦編終了までのお話となっております。

それではどうぞよろしくお願い致します!


九校戦編Q

 「……お兄様、"あれ"を使っても宜しいでしょうか?」

 

 

 3ピリオド休憩も含めて55分の試合の内、3分の2を終えて達也の元に歩み寄る深雪は普段滅多に見せない真剣な表情でそう具申した。

 試合は本戦ミラージ・バット。第2ピリオドを終えて、順位は僅かに数ポイントの差を付けて深雪が1位だ。

 通常は上級生の選手達ががひしめく中で、1年生の生徒が首位に立っている事がそれだけで大健闘だと称賛されるべき事ではあるが、その結果に深雪は満足出来ていないようだった。寧ろ、達也の所見では逆に深雪にこれだけ食い付く他校の選手は健闘していると内心で改めて九校戦に出場生徒達のレベルの高さに感心している所であった。

 

 「いいよ。全ては深雪の望むままに」

 

 端から拒否するつもりは微塵も無いが、真剣な眼差しを向けてくる深雪に彼女の心情を感じ取ると優しく微笑み、それに答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あれは、飛行、魔法?」

 「そんな、先月発表されたばかりだぞ?」

 

 試合も最後の第3ピリオド。選手はもとより、その試合を目にするほぼ全ての人間が一瞬己の目を疑って、驚愕する事になった。

 空中に投影されたホログラムの球体をスティックで叩く事で得点を得られるミラージ・バット。他の選手が一度おきに魔法で跳躍しなければならない所、ただ1人、深雪は空中を自在に飛翔し次々と得点を重ねていく。

 

 

 

 

 

 ―――――――

 ―――――

 ―――

 

 

 

 

 

 「飛行魔法とは……驚いたな」

 「やっぱり竜士君でも驚くんだ?」

 

 目の前を飛翔する深雪の姿を目で追いながら竜士は感嘆の声を漏らす。(―――記憶がまだ戻らないが、退院した竜士は真由美に"半ば"強制的に連れて来られて、深雪の出場するミラージ・バット予選を観戦していた)その言葉に彼の意外な一面を見た真由美はとても愉しそうにそして嬉しそうにクスクスと小さく笑う。

 

 「"でも"って、自分を何だとお考えなのですか?」

 「竜士さんは普段、感情を表に出さないからだよ」

 

 クスクス笑う真由美に若干納得がいかないと抵抗する竜士だが、彼女の隣に座る雫に的確な突っ込みを入れられてなすすべもなく口をつぐんだ。

 

 「それで、どうかしら記憶の方は……」

 「そうですね、人の顔と名前はほぼ一致していると思います。ただ、ここ数週間位の記憶は曖昧ですね」

 

 落ち込んだ表情を浮かべる真由美。竜士自身が気にしていない(―――その時の記憶が無い為、気にしようがないのだが)と何度も告げてはいるが、やはり選手に起用した責任から軽く気持ちが一転する事はない。

 

 「早く戻れば良いのだけれど……」

 

 独り言の様に真由美は心配を口にする。対する竜士はただ苦笑いを浮かべるしか思い付かなかった。一方の雫も当初は真由美同様に表情を曇らせていたが、何かを思い付いたように顔を上げると竜士に1つ、アイデアを提供する。

  

「……それなら、竜士さん。今度うちに遊びに来てよ。お茶でも飲みながら色々話せば思い出すかも」

 

 コーヒーを飲むならそこら辺のカフェテリアでもいいのでは?と言うもっともな意見を

飲み込み「そうだな」と空返事の竜士。ある意味意を決して提案したのに反応が今一だと言葉にこそ出さずともムッとした表情を浮かべる雫とそんな二人の関係に少し安心したような表情の真由美。竜士がその意を汲むことはなかった。

 

 

 「―――そういえば、病院の方から聞いたのだけれど、竜士君って妹さんいたかしら?」

 「突然ですね―――居ませんよ。俺に家族は」

  

 

 目の前の試合も残り10分程度、飛行魔法を使い始めた深雪のみが自在に空中を飛び回るこの試合は最早、彼女の独壇場となっている。観客の視線は敵味方合わせてほぼ深雪に向けられ、それが飛行魔法に対してなのか、深雪の美貌に対してなのか、彼女が得点を重ねるたびに所々で感嘆の声が上がる。

 真由美はそんな周りの歓声を他所に、少し表情を硬くすると兼ねてより訊こうと思っていた事を尋ねることにした。当然、生徒会長として一度は竜士の個人資料に目を通してはいたが(―――もっとも、生徒会長が一般生徒の個人情報を見る必要は無く、その権限も本来は無いのだが)、先日聞いたとある話が気になっていたのだ。

 

 「……これは竜士君が起きる前の夜の事なんだけど、見回りの看護師さんが竜士君の部屋から出る人影を見たらしいの」

 「―――それが、俺の妹、だと?」

 「……聞くところはその人は確かに竜士君の関係者だと名乗ったそうよ。暗くて顔は見えなかったけど、声や雰囲気から高校1年生くらいの女性だろうって言ってたわ。それに―――」

 

 「―――此処、いいですか?」

 

 そこまで口にして真由美は竜士に向けていた険しい視線をその後方、今は誰もいないはずの竜士の背後に向ける。竜士も気付かなかったが振り返るとそこには一人の少女がセミロングの銀髪を垂れないように手で抑え、若干前かがみ気味に竜士に笑みを浮かべていた。

 

 「ええ、どうぞ―――――ッ!!」

 

 少し呆気に囚われる真由美の視線を追って、相槌を打ちながら竜士も背後を振り返る。そしてその少女を見たとき竜士の中に異変が起きた。

 

 (―――ッ!これは)

 

 以前も感じたものと同等の頭痛が再びやってくる。しかし、以前とは違い、それは何か大切なことであるような、決して悪いものでは無いような感じ。同時に、断片的に蘇るどこかの記憶。

 

 (ここは、砂浜、なのか?)

 

 一度も訪れたことの無いどこかの人気のない砂浜の記憶。

 これが記憶と呼べるのか怪しい程、断片的な描写。

 しかし、竜士はそれが決して忘れてはいけないものだと言う事を知っている。

 

 続けて来るのは、薄暗い室内。視線から竜士は仰向けに、その四肢は寝台に縛りつけられている。目の前に立っているのは薄気味悪い笑みを浮かべる一人の女。

 

 (―――お前、は)

 

 

 

 

 「―――くん、竜―――君」

 「―――ッ!!」

 

 肩を揺さぶる真由美の声で竜士は意識を引き戻される。

 戻ってくる視界の先には先の少女が変わらず笑みを浮かべている。

 

 

 

 

 「……リ、サ」

 

 「はい!お久しぶり、ですね」

 

 

 

 

 

 ―――――――

 ―――――

 ―――

 

 

 

 

 

 「本日は、どのようなご用件でしょうか?」

 

 対面して座る老人に風間は訊く。

 

 「なに、彼等に興味が湧いてな」

 

 対する老人、九島も僅かに笑みを浮かべると、表情を崩さず「彼等、とは?」と飽くまで振りを決め込む風間にプレッシャーを掛ける。

 

 「司波達也君と英竜士君、だよ」

 

 続けて久島は達也の出自、彼が四葉とのつながりのあるもので在ることを淡々と風間に聞かせる。そこまでして風間もようやく口を開く。久島が言外に、達也を四葉から切り離したいという意図が見えたからだ。

 

 「……こう申しては、身贔屓に聞こえるかもしれませんが、一条将輝と司波達也では戦力としての格が違います―――――達也の力は、幾重にもセイフティーロックが掛けられて当然のモノなのです」

 「そうか、それでは英竜士君の事はどうかな?」

 「―――彼の事は国防軍でも分かっていないのです」

 

 「ふむ、君は十師族、日本の魔法師界の頂点に君臨するこの一族に属さない、いや”属せなかった”者たちがいたことを知っているかな?」

 「……いえ、そのようなものがあるとは」

 「彼等は、当時最先端の魔法師たちの集まりだった。純粋な戦闘力ならあの四葉をも凌ぐ。ゆえに、彼らは弾かれてしまったのだよ、もともと表立った事に関わるのを良しとしなかったところもあり、彼らは隠れるように生活していたのだ―――5年前までは」

 「と、言いますと?」

 

 「5年前、あの沖縄侵攻で()の一族は滅んだとされているのだ。その一族の名は”天神(てんじん)”」

 「……英竜士がその生き残り、であると?」

 「そこまではまだ判明してはいないが、いずれにせよ”もったいない”と思わないかね」

 

 先の試合での竜士の魔法、風間は思うところもあり「そうですね」と空返事を返すに留まったのだった。

 

 

 

 

 

 ―――――――

 ―――――

 ―――

 

 

 

 

 

 「……九校戦もようやく終わりか」

 

 人気のないホテルのテラスで竜士は独り持ち出したグラスを傾ける。

 少し離れたホテルでは今まさに九校戦終了に伴うパーティが開かれているところだ。各校の生徒たちは、今や入り混じってダンスや談笑に花を咲かせている。特に今回の九校戦で目立って活躍した十師族の面々、深雪や達也といった選手たちは、これ見よがしに囲まれている。当然、竜士にもその手の生徒(―――他校の女生徒が何故か多かったのだが)が話を聞きにやってきたがこうやって人気のないところへ避難した次第であった。

 

 

 

 (……あの娘は、一体)

 

 一息ついて竜士は先日出会った少女の事を思い出す。深雪の出場するミラージ・バットの試合が終わるとすぐに何処かへ姿を消してしまったが、何故だか気になって仕方がなかった。

 

 記憶にも記録にも無いが、何故か彼女の事は知っている。そんな曖昧なものしかないが、彼女が竜士にとってとても大切な何かだという事だけは今も尚感じている。

 

 「リサ……君は一体」

 

 誰も居ない夜空に竜士は独り問いかけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 「英、少し付き合え」

 

 暫くして、パーティ自体もそろそろお開きになる時間。戻ろうかと立ち上がる竜士を見つけ、その背後から話しかけると、克人は同意を得るまでも無く竜士に”進言”する。

 

 「英、お前は十師族になるべきだ」

 

 先の竜士の試合を見た十師族は十師族以外の魔法師が十師族より優れているという事を深く懸念しているようだった。当の克人も十師族代表代理として、その力を誇示するような試合を求められ、出場したモノリス・コード決勝戦では圧倒的な力を見せつけていた。

 そして克人も竜士の事を考え、早々にそういったしがらみから解放されるように進言する。具体的に十師族と関係者との結婚という形で。

 「そう仰られましても、俺は一介の高校生ですし、そういうのは未だ」

 

 無論、竜士にとっても寝耳に水のこの提案をすぐに受け入れる事ができるはずもなく、そんな竜士に克人は「そう悠長にしても居られないぞ」と忠告してぞの場を後にしたのだった。




いかがでしたでしょうか?

次回は、今のところ横浜騒乱編に入っていく予定です。
 
 
また、閑話を挿入するかもご意見いただければ幸いです。

それでは次回もどうぞよろしくお願い致します!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。