(いつ読まれるか分かりませんから”こんにちは”よりこっちの方がいいですよね?)
横浜騒乱編、第一話の投稿になります。
今回は、論文コンペ参加からレリックの下りまで、特にバトル要素はありません...
それではよろしくお願い致します!
「
早朝の横浜、その中華街の一角の古井戸から男たちは現れる。全身黒づくめのウェットスーツを着用した20名の屈強な男たちは大亜連合の特殊工作部隊だった。
内側から崩した古井戸から先頭で出てきた男、工作部隊部隊長の
先日、とある任務を帯びて日本へ浸透した陳らは港で日本の警察組織の襲撃を受けた。幸い陳たちは既に乗ってきた偽装船を離脱した後だった為、人員、装備に異常は無い。
「……先ずはレリックの確保を最優先とする」
陳は追って井戸から出てきた部下に早速指示を出したのだった。
―――――――
―――――
―――
「竜士君、少しいいですか?」
「司波さん……どうしたの?」
放課後、一人で机の上のデバイスに向かう竜士の背後から深雪は声を掛ける。声質から深雪である事や何か要件があって声を掛けている事を判断した竜士は視線は目の前のディスプレイに置いたまま、深雪に先を促す。
「……
「それ、もしかしてだけど、達也も呼ばれてる?」
予想外の竜士の確認に虚を突かれた表情を浮かべるが、深雪は「いいえ、お兄様は別の御用ですよ」と竜士の言葉を否定する。対する竜士は、意外そうな表情を浮かべるも警戒は解かない。
先の九校戦以来、竜士を取り巻く環境は大きく変化していた。いままでは風紀委員出会った事を抜きにしたらそれ程目立っていたわけでも無いと自負していたのが、今では校内で九校戦の時の竜士の話題で未だに盛り上がっている。幸いなことに、恐らく十師族がブロックしてくれているお陰で、モノリス・コードで竜士が見せた力は彼等3人の力で、と言う事になっている為、外部から竜士に対する接触は今のところ殆ど無い。ただ―――
「―――委員長になったばかりで忙しいんじゃないのかな?」
「さぁ、私は竜士君をお呼びするように言われただけですから」
九校戦が終わり、第一高校では3年生が生徒会を退き、今は2年生以下の新体制で生徒会は運用されている。その中で深雪は会長はあずさ(―――なにやら噂には立候補するように裏で達也が手を回したとか)、副会長に1年生だが深雪も抜擢されている。達也と竜士は2科生であるため今まで通り風紀委員となっていた。
竜士の懸念に少しも笑みを崩さない深雪に大きくため息をつくと、竜士は重い腰を上げる。
「……場所は何処?」
「風紀委員室です」
「―――英君、毎年10月末に開催される全国高校生魔法学論文コンペティション、論文コンペについて知っている?」
「……名前程度は知っています」
「単刀直入に言うわ、英君、貴方にはその警備として参加して貰いたいのよ」
摩利に代わり(―――半ば強制的に)風紀委員長を務める事になった
「それは、委員長としての指示ですか?」
「……回答によってはそうなる、わね」
結果として、”命令”であって竜士に選択権は無い打診に竜士は素直に頷く。
「分かりました、ですが俺一人って訳では―――――何か?」
余りにも素直すぎる竜士の反応に花音は少しばかり唖然と竜士の顔を見上げる。竜士も目の前で唖然と口を開ける花音にすかさず口を挟む。
「いや、意外に素直だなって、摩利さんが言うにはあの手この手で逃げようとするって……」
「……一体どんな引継ぎをされたんですか」
「引継ぎの殆どは君と司波君の事だったけど」
思わぬところで前委員長の名前が出てきて竜士は少し不服そうな表情を浮かべる、しかしそれ以上ややこしくする前に話を先に進める事を選択した。
「兎に角、警備はどのメンバーで行くのですか?」
「今決まっているのは君と十三束君の二人、後は追って連絡するから」
「要件は以上よ」と言外に退出を求めてくる花音に竜士は一礼し退室する。と同時にブレザーのポケットに入れた携帯端末が振動する。通知を確認すると見たことの無い番号からの着信、不審に思いながらも竜士は端末を耳に当てる。
『……英竜士君でいいかな?』
「さて、一般人の携帯端末をハッキングするような
通話の相手はその独特な口調から分かる、国防軍関係者だ。
竜士は警戒心を一層強く、耳を傾ける。
『その件に関しては謝罪しよう。私は国防陸軍の風間という者だ。良ければ時間を貰えないかな?』
「風間……?」
どこかで聞いたことのある単語に竜士は記憶を辿る。
『君の事は壬生から聞いている、と言えば分かって貰えるかな?』
そこまで言われて竜士は思い出す。数か月前、一校で起きたブランシュ構成員による襲撃事件。その首謀者により精神操作を受けていた壬生紗耶香の父親、壬生勇三が会話の最後口にしていたのが風間という人間の事だった。
「……それで、どういった要件でしょうか?」
『一般回線では保全上の観点から伝えられない案件であるため、直接会って話したいのだが、週末は空いているだろうか?確かFLTとの交渉は午後の予定の筈だ。午前中に終わる、こちらで送迎も行うが……』
(さすがは国防軍といった所か、セキュリティの高い筈のFLTでさえ情報は筒抜か。相当な凄腕が居るんだろう)
―――第一校入校時から、竜士には大手CADメーカーのFLTから専属契約の依頼が届いていた。それが今回の九校戦での竜士のエンジニアとしての能力も評価されて(―――どこから情報が洩れたのか知る由も無いが)いよいよ契約条件の交渉に入る段階まで来ていた。
「……では、今週末の午前中で」
『うむ。よろしい』
肯定の返事を返すと、風間は満足そうに通話を切ったのだった。
―――――――
―――――
―――
「―――達也、論文コンペの代表に選ばれたんだ」
「ああ」
放課後、例の如く竜士達いつものメンバーは喫茶店で各々、注文した飲み物を楽しんでいる。そんな中、達也は今日あった出来事をメンバーに報告する。
幹比古が驚きながら聞き返すも達也は短く肯定するだけだった。すかさずエリカが「感動薄すぎ」とやや呆れ気味に苦笑いを浮かべ、レオも当然とばかりに笑みを浮かべる。一方、竜士は昼間の話と合点がいったのか「なる程な」と小さく頷いた。
「なる程って竜士君、どういう事?」
「丁度同じ頃、俺も千代田先輩に呼び出されてな、その論文コンペの会場警備に指名されたって訳」
やや困ったような表情を達也の横に向けると深雪は満足そうに笑みを浮かべて「頑張って下さいね、お兄様、竜士君」と二人にエールを送ったのだった。
その後暫しの談笑の後、達也と深雪が自宅に着くと、家の側に普段は無い小型の車両が停められている。ドアを開けると玄関には見慣れない女性用の靴が一足並べられていた。この時点で達也はその来訪者が誰なのかおおよそ察しがついていたが、無言で灯りの付いているリビングの扉を開いた。
「お帰りなさい。相変わらず仲が良いのね」
「……こちらにお帰りになるのは久しぶりですね、
リビングで彼らを待っていた女性、
深雪の態度に彼女の心情を察した達也が「先ずは部屋で着替えておいで」と優しく深雪を部屋に送ると深雪は小百合に見せつける様にその場から立ち去ったのだった。
「……相変わらず、貴方たちは私が嫌いな様ね」
深雪が居なくなったリビングで達也と面と向かって座る小百合は吐き捨てるようにそう言った。
小百合は深雪の実の母である
達也は仕方ない事だと、深雪の感情を説明しつつも、小百合に用件を改めて問う。
当初は、達也に学校を中退して再びFLTで研究員として戻るように要請する小百合。しかし、達也も深雪の護衛や在学ながら会社に対する貢献はしていると実績を以てその要請を拒否した。
「……それじゃあ、せめてこのサンプルの解析だけでも手伝ってくれないかしら」
説得を諦めた小百合がバッグから出したのは一つの小箱だった。
「……
「……」
「……なる程、国防軍絡みですか。解析と仰いましたが、まさか瓊勾玉の複製なんて請け負ってはいませんよね?」
「……」
達也の質問にまともに回答できないところからこれが国防軍からの要請だと直ぐに理解した達也は改めて聖遺物の解析や複製の難度の高さを説明する。しかし、対する小百合も、これが拒否できない類の案件だと達也に理解を求めた。
「……分かりました、どうしても、と言うなら、サンプルを開発第3課に回しておいてください」
「結構よッ!」
仕方ないと自身の所属するFLT開発第3課でなら解析すると提案する達也に小百合は勢いよくその場に立ち上がると、聖遺物をバッグに押し込み部屋から飛び出した。
「深雪」
「……ッ!」
小百合が飛び出した後、達也はこっそりと覗き見ていた深雪を呼ぶと、戸締りをしっかりとするように言い、外に出る支度を整える。
「危機管理意識の足りない人のフォローに行ってくる」
いかがでしたでしょうか?
今回は小百合さんの下りまで、次回は冒頭、バトルです。(竜士君も絡みます)
それでは次回もどうぞよろしくお願い致します!