魔法科高校の劣等生 神速の魔法師   作:mr.KIRIN

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オハコンバンチハ。

横浜騒乱編第二話の投稿となります。

今回は小百合に対する大亜連合の襲撃のお話です。

それではどうぞよろしくお願い致します!


横浜騒乱編Ⅱ

 すっかり日が暮れ、疎らに立つ街灯と民家の灯りが照らす道路を達也は大型二輪を走らせる。目的は先程家を飛び出していった小百合だ。

 少し前に達也と深雪の自宅を飛び出した小百合はその手に聖遺物(レリック)を持ったままだった。

 改めて達也は被ったフルフェイスヘルメットの内側で溜息をつく。今回、国防軍からの要請で預かっているレリックをこうも無防備に持ち出せる小百合の危機管理意識はほぼないと言ってもいい。普通に考えれば、様々な組織からの工作を考えるのが妥当であるが、それが一切彼女には無かった。

 

 暫く走る内に達也はその視界の先に小百合の乗った車両を見つける。ただ、小百合の車両の後方にはワンボックス型の車両がほとんど感覚無く走行していた。そしてワンボックスは突如加速すると小百合の車両の前方に横付けするように無理やり停車する。

 最新の危険回避技術で走行している車両ではあるが、その限界を超えて車両はスピンし、速度を殺しきれず衝突してようやく停車した。

 

 続けて開くワンボックスのスライドドアから拳銃で武装した男達数人が飛び出すと取り囲むように小百合の様子を外から見る。小百合は衝突した衝撃で展開したエアバッグに包まれるように突っ伏している。意識は無いが、エアバッグのお陰か、特に大きな怪我は無かった。

 

 

 「―――ッ、間に合わんか……」

 

 達也は再びヘルメットの内側で小さく呟く、達也と小百合との距離は未だ数百メートル近い距離がある。到着する頃にはレリックは強奪されているだろう。となると、次は犯人を追跡して奪還と言う事になるが、どう見ても相手は素人ではない。奪還は困難である事は容易に想像できた。

 

 最終的な手段として犯人の車両を魔法により消滅させる事を達也は考える。レリックという軍事的・科学的に重要な物資を流出させるリスクを考えるならそれしか方法は無かった。

 

 しかし、やむを得ないとCADをホルスターから抜いた達也の視界に犯人とは違う男が急に映り込む。

 

 「……あれは」

 

 距離がまだあるので顔までは分からないがその男は、瞬間的に小百合の車両と犯人の間に入り込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「―――分かりました。レリックを優先で確保します」

 

 先方からの指示に頷き、竜士はヘッドセットを外す。

 続けて、ジャケットを羽織ると脇のホルスターにCADを納める。前の九校戦でCADが壊れてしまった為、一から作り直した新型モデルだ。ただ、その外観は以前のものとは大きく違う。以前の不格好だった外観はシンプルに纏められ、ベースであるシルバーホーンより少し長い程度といったデザインとなっていた。

 

 「俺はまだ正式に返答した訳では無いんだけど……」

  

 部屋の扉に手を掛け竜士は愚痴を零す。九校戦を終えてから竜士はCADメーカーであるFLTとの非公開専属契約のオファーを受ける事にしていた。脇のCADは彼を取り込もうとするFLTからのものだった。ただ、契約はあくまで研究員として、であって別にボディガードとしてでは無い。これはあくまで仕事では無く、竜士の戦闘技能を見込んだ上での会社からの要請であった。

 

 

 竜士は部屋を飛び出すと駐輪している大型二輪に跨り、全速で送信されてくる位置情報へと向かう。―――どうやら会社からレリックを持ち出した研究員の車両が襲撃を受けているそうで、そのレリックの強奪を阻止して欲しいとの要請だった。

 どこからそんな情報が?と疑いたくもなったが、今は先ず現場に向かう事にする。

 

 送られてくる位置情報は移動しており、幸いなことに竜士の自宅から近い位置だった。

 

 

 

 

 

 

 (……こいつ等は、”プロ”だな)

 

 少し離れた位置に到着した竜士が見たのは小型の車両とその前に横付けされたワンボックス型の車両。小型車両の方はエアバッグが展開されていて外装の損傷具合からも乗員は無事であるだろう。

 そして直ぐにワンボックスから飛び出してくる2名の男、手にはCADでは無く拳銃を持っている。要するにこれらが”敵”と言う事だった。その動きは無駄が無く、実に手慣れていて一目でその手の行動に従事している者であることが分かる。

 

 (―――銃持っているし、コレの試験も兼ねて、行くか)

 

 竜士は静かにホルスターからCADを抜くと前方に認識した”敵”を排除するべく行動を開始する。その手には拳銃型とは別のCAD。竜士は魔法を発動すると、地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おい」

 

 確保対象の車両と敵との間に割り込んだ竜士は、敵の注意を引くようにわざと声を掛ける。

 対する男達も瞬間的に視界に現れた竜士に少し驚きつつも、直ぐに片方の男が嵌めた指輪を起動しようと片腕を持ち上げる。

 

 (アンティナイトか、遅すぎるな)

 

 瞬時に構えた拳銃型CADのトリガーを引く。

 アンティナイトを起動しようとした男の手から”地面に引き寄せられるように”拳銃が落下し、そして同時に悲鳴を上げながら指輪を嵌めた方の腕を抑えて蹲る。その様子を確認する間も無く竜士はCADをもう片方の男に指向し、再びトリガーを引く。その男もまた拳銃を落とす。その様子は急に重いモノを持たされたような、そんな挙動を見せて。

 

 「(クソッ、どうなってやがる!コイツは一体……)」

 

 男は、相方に目を遣る。相方の腕は前腕部の途中でその方向が変わっていた。続けて足元の拳銃を見る。その拳銃は瞬間的に重くなって支えきれず手放してしまった。

 

 「オマエハ……」

 

 唖然とした表情を浮かべ男は竜士に片言の日本語で問いかける。

 

 「お前が知る必要は無い」

 

 竜士が躊躇いなく発動した魔法は2人の命を刈り取った。

 

 

 

 「さて、と」

 

 脅威を排除した竜士は続けてワンボックスの車内を確認し、安全を確保すると、未だにエアバッグが展開されたままの小型車両に視線を向ける。車内はエアバッグで満たされていて見えるのは運転者のみだったが、この様子だと肝心のレリックも無事であろうと予想する。

 後はレリックを回収するだけ、と竜士は拳銃型CADを脇のホルスターに納めて、車両のドアに手を掛けようとした時、突如車両の後方から照射されたハイビームの光が彼を包み込んだ。

 

 「―――ッ!」

 

 反射的に竜士は車両の影に隠れ、CADを抜く。ハイビームのお陰で相手の人数、武装等、全く分からなかった。

 敵の情報が全くない中で竜士は、後方の様子を伺う。相手の足音らしいものは聞こえない。更にライトの光に入らないように上手く動いているようだ。

 

 (此奴は相当の凄腕だな……どう出るか)

 

 このままでは追い込まれて先手を取られてしまう。竜士は意を決めて魔法を展開する。

 

 (間合いは近い、干渉領域を展開して格闘戦、かな)

 

 干渉装甲を展開した竜士はすぐさま相手のいた方へ飛び出す。案の状、目の前に居るのは男が一人。暗くて顔は分からないがCADを構えているところから魔法師だろう。

 竜士は持ち前の体術で彼我の距離を一気に詰める。

 

 (―――間合いに入った)

 

 竜士と男の間合いは数メートル。展開した干渉装甲により相手は魔法を発動できていないようだ。竜士は素早く右ストレートを突き出し―――躱された。

 

 「―――なッ」

 

 少し驚きつつも続けざまに左、蹴りと繰り出すも、それらは相手に全て躱される。逆に、竜士の繰り出す技の一瞬の間隙を縫って、相手も技を繰り出してくる。竜士はこれらを同様に躱し、後方へ間合いを切った。

 

 (……さっきまでの奴等とは格が違う。こいつはバケモノだ)

 

 

 「―――おい」

 

 全く予想していなかった強敵の出現に、驚きつつとある懸念が浮かび上がった竜士に相手の男ははっきりと日本語で問いかけた。どこかで聞いたことのある声に竜士は「もしや」と問い返す。

 

 「「―――お前……」」

 「竜士か?」「達也なのか?」

 

 予想が当たったことと、目の前の男が敵ではない事を確認して竜士はゆっくりと達也に歩み寄る。一方の達也も少し驚いたような表情を浮かべ抜いていたCADをホルスターに納めた。

 

 「こんなところに何で居るんだ?」

 「それはこっちのセリフだ、達也。お前こそどうしたんだ?」

 「……この車両に乗ってるのは俺の知り合いだ。会社の資料を持ち歩いているところを襲われたようだ」

 「……そうだったのか、すまなかった」

 

 例の研究員が達也の知り合いだと理解した竜士は直ぐに達也に頭を下げる。対する達也も「いや、気にするな」と謝罪を受け入れた。

 

 

 

 「ところで、お前はどうしてここに来たんだ?」

 「ああ、それは―――ッ」

 

 そこまで言って竜士は突然、大きく後方へ飛ばされた。少し遅れて達也の耳に届くライフル銃の銃声。

 反射的に達也は小百合の車両の影に飛び込み身を隠す。竜士も同様に飛ばされた勢いを利用して達也の脇に避難していた。

 

 「竜士、大丈夫か?」

 「……脚をやられた。出血量が不味いな」

 

 

 そういいながら竜士は苦痛をこらえるような表情を浮かべながらも応急的な処置を自ら行っている。

 達也は視線を前へ戻す。先程彼らが居た場所では魔法により、竜士の倒した二人がワンボックス型車両に詰められ自動的にその場から走り去っていった。しかし彼らは依然と狙撃手の脅威に晒されている。達也は再び視線を竜士に向けると、竜士はぐったりと車両にもたれかかり、その周りは血溜りが出来ていた。

 

 (―――余り時間は無いか)

 

 負傷した竜士の状況から時間的余裕が無い事を確認した達也は精霊の眼により弾丸の軌道を読み、狙撃手を特定する事にした。

 

 (……約1キロメートル先、ビルの屋上か)

 

 狙撃手を特定した達也は車両の影から立ち上がると精霊の眼により確認した狙撃手にCADを指向するとその引き金を引いた。

 

 

 遥か遠く、ビルの屋上で、僅かに青白い炎が立ち上った。




いかがでしたでしょうか?

本当はもう少し先に進める予定でしたが思いのほか長くなってしまいました・・・

次回はもう少し進めたいと思います。


それでは次回もどうぞよろしくお願い致します!
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