魔法科高校の劣等生 神速の魔法師   作:mr.KIRIN

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こんにちは!
 
 
仕事の影響で投稿が随分と遅れてしまいました、すみません。
 
今回は横浜騒乱編の第3話の投稿になります。
正直竜士君は魔法コンペ開始までは余り出番もありませんから物語の進行はここから一気に進むと思います。
ですので今回はオリジナル展開が殆どです。読みづらいと思いますがどうぞよろしくお願い致します!

それではどうぞ!



横浜騒乱編Ⅲ

 「街路カメラの方は心配するな、既に処理を開始している」

 「有難う御座います、少佐」

 

 灯りを落としたリビングで達也は目の前の大型ディスプレイに向かって敬礼する。画面の向こうの男、風間は僅か眉を寄せると続けて一つの懸念を口にする。

 

 「それより、貴官と行動していた男、英竜士に機密が漏洩した恐れは?」

「ありません。自分が狙撃手を処理した際、彼は既に大量の出血で意識を失っていました」

 

 「それならいい」と風間は再び表情を戻し、話題を件の襲撃者に変える。そんな風間の反応に達也は内心、安堵とも取れる溜息をついた。先の襲撃事件で達也が使用した魔法は国防軍の機密事項に当たるものだった。もし竜士がその魔法を知ってしまうような事があれば達也の友人だろうと何かしらの不利益を被ることは明らかだ。(―――無論、もし竜士に意識があれば他の策を考えたのは当然なのだが)

 

 

 「それにしても、興味の絶えない男だな。英竜士は」

 「ええ、今回の一件から英がFLTと何かしらの繋がりがあることは明確です。つきましては―――」

 「ああ、その件も此方で調べておく事にしよう」

 

 気を効かせた風間の言葉に「有難う御座います」と画面越しに敬礼をした達也は秘匿通信が切れると振り向き、先程から扉の影から様子を伺う妹に優しい視線を向ける。

 

 「……深雪。竜士の事なら心配するな。気を失ってはいたが大事はないよ」

 「お兄様……」

 

 先程までの達也の報告を聞いていたのだろう。竜士が撃たれて病院に搬送されたという事実に深雪は心配そうな表情を隠そうとせず達也を見つめる。

 

 「……大丈夫だ。搬送された病院は救急医療で定評のある病院だし、国防軍の関係者もいる。直ぐに退院するだろう」

 「それなら、良いのですが……」

 

 魔法が一般社会に広く普及した現代では同時に医療分野への魔法の応用も積極的に行われている。先の九校戦における数々の負傷事例も、最大で数日間程度の入院で完治し、後遺症も無い。勿論、それは物理的な面においてであって、精神的な面、例えばPTSD(心的外傷後ストレス障害)と言った心的な障害は今現在に於いても根本的な治療には時間を要しているのが現状であった。

 

 (……竜士に限って”そういう事”は無いと思うがな)

 

 「ところで深雪、そのエプロンは?」

 

 達也は一瞬の杞憂を頭の隅に追いやり落ち込んだ深雪を慰めようと、彼女がいつの間にか身に着けているエプロンに目を遣り、話を振った。

 

 「はい!美月がエプロンを買い替えると言うので、一緒に買ってみたのですが……あの、おかしくは無いですか?」

 

 達也から話を振られて深雪は思わず笑みを零した。そして、その場で軽く腰を左右に捻り新調したエプロンのデザインを達也に見せるようにしてその感想を尋ねる。そのエプロンは白を基調に水色のリボン、肩と裾にはフリルをあしらったもの。

 

 「とてもよく似合っているよ。ここに居ないのが残念だが、竜士が見たらあいつもきっと目を丸くしていただろうね」

 「そ、そんな事は……竜士君はいつも深雪にそっけないですから」

 

 

 そういって深雪は達也の率直な感想に頬を朱く染めながらも僅かに膨らませ、竜士への不満を漏らしたのだった。

 

 

 

 

 

 ―――――――

 ―――――

 ―――

 

 

 

 

 

 

 「状況を報告しろ」

 「……横浜の魔術師協会への潜入に成功しました。引き続き作業を進めます」

 「……現地協力員の確保に成功。間も無く行動を開始する予定です」

 

 古びたコンクリート造りの建物の中、無数のディスプレイが青白く照らす作戦本部で陳は端末を操作する部下からの報告を受ける。無数に展開する段階的な浸透作戦の報告を受ける中で一人のオペレーターが少し言葉を詰まらせながら報告を上げる。

 

 

 「レリックの奪取、失敗した模様です」

 「―――聖遺物の魔法式保存機能は確認できたのか?」

 「……いえ、それも現物が無ければ解明出来ないとの事です」

 

 そこまで聞いて陳は少し考え込むようにしてやがて口を開く。

 

 「魔法式保存機能が事実だとして、それを手に入れる事が出来れば我が大亜連合の魔法戦力は飛躍的に上がる……何としても奪取するのだ」

 

 陳は振り返らずに背後に控える大男に指示を与える。当の大男はようやくといった感情に口角を吊り上げたのだった。

 

 

 

 

 

 ―――――――

 ―――――

 ―――

 

 

 

 

 

  

 

 「割に合わないよな。全く」

 

 約2日の入院期間を空けて退院した竜士は病院の自動ドアを通ると両腕を頭上で伸ばし、ため込んでいた文句を口にした。

 

 「―――それでも、先方からお見舞いは在ったんでしょう?」

 「そんなこと覚えていませんよ―――って、七草先輩?どうされたのですか?こんなところに」

 

 独りごとに対する返答に驚き竜士は慌てて後ろを振り返る。先程通った病院の自動ドア。その脇の柱にもたれかかる様にしていた真由美は竜士が振り向くと身体を起こし、駆け寄ってくる。

 

 「どうした?はこっちのセリフなんだけどね、竜士君、急に学校に来なくなったから達也君に聞けば、女性を助けて車に跳ねられたって」

 「……女性?車に跳ねられた?」

 

 竜士は入院前までの記憶を急いで辿る。九校戦の時と違い今でもハッキリとその時の事は覚えていた。

 

 (……あの時は確か、FLTからの要請で聖遺物の回収に行って、そこで撃たれて―――)

 

 そこまで思い出して竜士は納得する。一般的に考えて、一介の高校生が夜中、街中で狙撃されて入院しましたなって大っぴらにできる筈もない。これは公安か”その方面”の組織が裏で操作した結果だろう(―――どうせなら竜士にも知らせて欲しかったところではあったが)

 

 「そうよ、結構大きな怪我だったみたいで何度かお見舞いに行ったんだけれど、昨日まで面会謝絶だったんだから」

 「そうだったのですか、俺もずっと寝ていたみたいで気付きませんでした」

 

 「寝ていた」のは事実だが、それ以外は全く本人の知らない方向で話が進んでいるようで竜士は一応話を合わせておくことにする。

 

 時間はまだ午前9時を回った辺り、このまま帰宅しても良いとは思うのだが、少し用事もあり竜士は学校へ寄る事を真由美に話す。対する真由美もこのまま学校に戻る予定だったらしく(―――そもそも平日のこんな時間に学校を抜け出しても良いモノなのか、という疑念はあるがそれはこの際置いておくことにした)、二人は揃って同じキャビネットで学校に向かう事にした。

 

 

 

 

 

 「―――それで、相手の女性からお見舞いがあったんでしょ?」

 

 乗り込んだキャビネットが発進するや、真由美は若干不機嫌そうに竜士に尋ねた。

 対面に座る竜士も正直そのような話は一切聞いていないしそもそも助けた女性なんて居ないが一応話を合わせるべく「……そのようですね」と真由美の言葉に話を合わせる。

 

 「……長身で美人なお姉さん、なんでしょ?」

 「そこまでは知りませんが、何故それを?」

 「病院の人が言ってたわ。プライベートナンバーも交換しているって」

 

 竜士の対面で真由美は一層不満そうに頬を膨らませてまくし立てる。

 

 「こんな美少女が目の前に居るのに、竜士君全く手を出す素振りないものね。ごめんねー、お姉さん子供体系で」

 

 半ば自虐的に両手で肩を抱く真由美に竜士は溜息をつく。何がどうしてこうなったんだ、と。それにいくら事実を表に出せないと言ってここまで変な設定を考えつく人間もなかなかいない。是非、文句を言わせて貰いたい。

 

 

 「そんな事はありませんよ?ただこんな衆人環視のある環境で女性に手を出すような趣味が無いだけです」

 

 仕方なく竜士は口を開き周りを見る。一面に張られた窓からは外の様子が確認できる。真由美は竜士の言葉に戸惑いつつ同じように周囲に目を遣る。

 

 「じゃ、じゃあ、ここが密室だったら?」

 「そうであれば……そうですねご想像にお任せしますよ」

 

 顔を真っ赤に染めて肩を抱く両手に力を入れる真由美に竜士は再び溜息をつく。そうしている内にキャビネットは到着し、停車したのだった。

 

 

 

 

 

 ―――――――

 ―――――

 ―――

 

 

 

 

 

 

 「と言う事は竜士、お前は企業と契約していると言う事なのか?」

 

 そう言って達也は少し驚いたような素振りを見せる。

 

 「契約、というか、設計の外部委託みたいな感じだな。正式な雇用形態ではないよ。この間のは俺と委託間にある部署の研究員が強盗に襲われてるっていうから助けてやってくれって頼まれてさ」

 

 ―――実際には強盗どころの話では無かったのだから竜士からしたら何かしらの対応を考える話ではあったが事が公表できない以上何もできないだろうと半ば諦めていた。

 

 「そうだったのか、高校生にして企業からオファーが来ているとは凄いな」

 「止めてくれよ、九校戦の七光りって奴だよ。お陰で俺はこのザマだしな」

 

 竜士は自嘲した笑みを浮かべて両手を力無く持ち上げる。

 

 (―――竜士がFLTに、これも叔母上の意向なのか?)

 

 一方の達也は少し思案顔を浮かべて「大変だったな」と労いの言葉を掛けた。

 

 

 「……それで、達也はどうしてあそこにいたんだ?」

 「ああ、あの事件の被害者は俺の知り合いなんだ。急に連絡が来てな」

 (―――まぁ、実際に達也もFLTに何かしらの関わりがあるって事か)

 

 飽くまで関係性が無い風に表現する達也に竜士は疑いを向ける。勿論、達也自身の口からそれが発せられる事は殆ど無い事も分かっているので問い詰めることもしないのだが。

 

 「―――ところで達也、この件はどこかで情報操作されていると思うんだが、心当たりはない、よな」

 「……まあな、そういった操作がされるのは当然だと思うが、一体どうしたんだ?」

 

 一瞬、達也は自分と国防軍との関係の事かと慎重に回答を選ぶ。

 

 

 

 「いや、その担当者に対して是非とも言っておきたいことがあってな」

 

 

 




 竜士と別れた後、達也の携帯端末が振動した。通知画面に登録名は表示されていない。つまりは知らない人間から、若しくは、そうでない機関からのものか。
 
 「はい」
 「それで英君は何か言っていたかしら」
 
 電話口の声から相手を察した達也は溜息をつくと同時に周囲を一瞥して人気のない事を確認する。
 
 「……よくもまあ、特定の端末をハッキング出来ますね。藤林さん」
 「そうでも無いわよ。それで彼は何て言ってたのかしら?」
 
 どこか楽しそうに響子は達也に先を促す。先程までの竜士の言葉と完全に話が合致した達也は少し呆れた溜息を零しつつも、竜士の言葉をそのまま伝える事にした。
 
 「是非とも言っておきたい事がある、だそうですよ」
 
 電話の向こうで満足げにする響子に達也は三度溜息をついたのだった。
 
 
 
 
 
 いかがでしたでしょうか? 
 今回はほぼオリジナル展開でした。次回からは特に何もなければ論文コンペに突入していくと思います(―――次回も仕事の関係で少し遅れてしまいますが)
 
 それでは次回もどうぞよろしくお願い致します!







いかがでしたでしょうか?



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