魔法科高校の劣等生 神速の魔法師   作:mr.KIRIN

26 / 26
よろしくお願いいたします!


横浜騒乱編Ⅳ

 「よぉ、竜士」

 「……レオか、どうしたんだ?」

 

 学校の中庭の一角に設置された巨大な水晶玉の様な装置。その周囲を取り囲むように巡察する竜士をレオは呼び止める。その背後には水晶玉と台座から伸びた無数のケーブルの先でデバイスを操作する達也、圭そして鈴音の姿がある。3人とも各々に与えられた役割を淡々とこなしている様子で、無闇に声を掛けて邪魔をする様なことはレオには出来なかったのだろう。

 

 「俺は別にどうしたって訳じゃ無くて……」

 

 そう言ってレオは自分の背後視線を向けその中の一角を指差す。そこには何やら長身の男子生徒と言い争っている様子の赤毛の少女。顔を見るまでも無くエリカだ。対する男子生徒は風紀委員である竜士は知っている。2年生の風紀委員の関本勲(せきもと いさお)だ。

 

 「何をやっているんだ?エリカは」

 

 何やら気に入らない事があるのか声を荒げる勲に対して、涼しそうな表情を一切崩さないエリカ。風紀委員の命で会場の警備を担当している竜士からすればもっと別の所でやって欲しいところではあった。

 

 「面倒だな、全く」

 

 更に声を荒げる勲に次第に周囲には何か、と気になった生徒達が集まり始めていた。

 これ以上エスカレートして暴力沙汰(―――とは言ってもエリカが相手では一方的に負けるのは目に見えているが)にでもなれば更にややこしくなると竜士は溜息交じりに二人の下へ足を向ける。

 

 「あの、どうさ「関本さん、一体どうしたんですか?」」

 

 やがて二人の元に着いた竜士が向けた言葉はその途中で更に後ろからの声に上書きされた。

 

 (千代田先輩……)

 

 竜士が振り返るとそこには先程まで鈴音の傍で警備をしていた花音がやや不機嫌そうな表情を浮かべつつ近づいている。

 

 「千代田か、いや、大した事じゃない。この2科生にうろちょろしないように注意していたところだ」

 「……今後の為にも実験を見学するのを止める理由はありません。それに、もし問題があれば護衛役の私たちが注意しますから」

 「俺は風紀委員だが?」

 「論文コンペに関しては専門の警備隊が編成されていますから。ここは私たちに任せて貰えませんか?」

 

 先ずは対面に立つ勲に、間髪入れずに振り返り、既視感を覚える2人に花音は内心頭を抱える。

 

 「……あと、貴方たちも今日は帰って貰えないかしら?先程の件だって見方を変えれば4対1の暴力行為なんだから」

 

 「―――暴力?」

 

 花音の言葉に疑問符を浮かべる竜士に千代田は「そうね」と、事の顛末を簡単に説明することにする。

 

 「ついさっきの話だけど、2科の1年生が実験に小細工しようとしてね、彼らと取り押さえたって訳なの。君がいてくれればもっと楽に捕まえられたと思うのだけど―――ん?」

 

 そこまで言って花音は突然携帯端末を取り出し2、3操作すると顔を上げ、「少し離れるから、後お願い」と竜士にその場を託し校舎の方へ駆け出していったのだった。

 

 

 

 

 

 ―――――――

 ―――――

 ―――

 

 

 

 

 

 

 「……エリカと西城君、まだ履修中なんですか?」

 

 昼休みのカフェテリアで昼食を囲む一同、その中に見当たらない2人を指してほのかは何の気なしに疑問を場に投げた。

 

 「あの二人、今日は多分休みだよ」

 「え……?」

 

 投げかけた疑問に対して達也の口から発せられた言葉に思わず手に取った食事を落としてしまうほのか。続けて何やら意味深な笑みを浮かべながら「二人一緒にですか?」と聞き返す。

 一方の達也もほのかの期待に添えられるように微笑を浮かべ「ああ」とほのかの言葉を強調するように肯定した。

 

 「……エリカとレオが?珍しいな、何かあったのか?」

 「つい先日の話だ、俺たちは学校帰りにいつも通り帰宅していた訳だが、とある機関の人間と一悶着あってな」

 「……とある機関、ねぇ―――さしずめ、レオはエリカにしごかれているって訳か」

 「勘が良いな、そこで盛り上がっているところ悪いがそういう事だろう」

 

 普通に勘案するなら達也の言葉から察せるのは、ほのかの様な反応が正しいところだろう。しかしながら”そう言った事”がありえないことは竜士もよく知っている。 

 事の核心を含みも無く口にする竜士を他所に盛り上がるほのかに達也は苦笑いを向けたのだった。

 

 

 

 

 

 ―――――――

 ―――――

 ―――

 

 

 

 

 

 「やあぁっ!」

 

 正面に立つ男子生徒が手に持った竹刀に魔法を発動させ気合の入った声と共に突っ込んでくる。対する克人は一切避ける素振りを見せる事無く魔法障壁を展開、真っ向から男子生徒の突っ込みを受けそれを跳ね返す。

 悲鳴にも近い声を上げ男子生徒は飛ばされ、地面に伏した。

 

 既に彼の周りには同様の姿勢の生徒が数人、同じように倒れこんでいる。重大な怪我の者は居ないが、衝撃で気を失っている生徒は居るようだった。

 

 

 

 

 

 「……十文字君、警備隊の指揮を高めるつもりなんだろうけど、反って自信を無くしちゃわないかしら」

 

 第一高校の屋外訓練場、そこで行われているのは論文コンペの警備隊に抜擢された生徒と十文字克人、ただ一人による模擬戦であった。とはいっても今のところ克人に擦り傷の一つでもつけられた生徒は居ないのだが―――。

 

 真由美は訓練の様子が映し出されたモニターの前で少し困ったような表情を浮かべ、同じくモニターを座して観る摩利に心配を言葉にする。

 「……今の内に後輩を絞っておきたいんだろう?今回あいつは警備隊総隊長だからな」

 

 依然と流れる惨劇の映像を目の当たりにしながら一方の摩利も困った様な表情を浮かべつつも克人の心情に一定の理解を示し、同時に一種の期待を込めて再度口を開いた。

 

 「だが、今回に限っては十文字の独り勝ちって訳でも無さそうだぞ」

 「―――竜士君ね」

 「ああ、勿論、他にも見どころの在る奴は居るが、以前壊れたCADを新調したと言っていたし、あの男がどう立ち回るのか見物だな」

 「まだ体調も万全じゃない筈なんだけどね……」

 

 

 モニターの前で心配を口にする二人を他所にそこに映し出された男、英竜士は機会を伺うように森林の茂みに身を隠していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 「……いやいや、模擬戦ってこんなに激しかったか?」

 

 訓練場のところどころで起きる砲撃音とも似て取れる音と揺れる足元に竜士は溜息と同時に呆れともとれる声を漏らす。

 先程から続く砲撃音と地揺れは次第に少なくなっていく。恐らくは克人に立ち向かってやられたのか、襲撃を受けてやられたのか、生存者は最早少ないといった所か。

 

 「……あくまで此方から仕掛けるのを待つ、って事か」

 

 サイオンを展開して状況を察知する竜士、意図的に展開されたサイオンに克人程の人間が気付かない筈は無い。

 あくまで竜士の出方を伺っているのか、少し開けた場所で竜士の方へ視点を合わせ、克人はその場に佇んでいた。

 

 「……よし」

 

 その場から一向に動く気配を見せない克人の誘いに竜士は乗ることを決め行動を起こす。

 

 両手に持った拳銃型CADの片方、左手のそれを進行方向へ向け引き金を引く。瞬間的な移動を目的とした魔法を次々と地面に用意して発動と同時に踏み込む。予め移動方向を決めて数歩先まで魔法を用意しておく。

 体術のみでも半ば超人的な達也に匹敵するものを発揮する竜士だが、相手は十文字克人である。無駄な一撃を貰う訳にもいかない為、竜士は魔法を併用して文字通り瞬間的な移動を実現する。

 

 

 

 「……」

 

 十文字は静かに構える。

 先程まで静止していた気配が瞬間的に加速して距離を詰めてきている。

 

 (……こんな芸当が出来る奴は、英か)

 

 みるみる距離を詰める気配に僅かに口角を持ち上げ竜士が飛び出してくるだろう茂みに視線を向ける。

 

 (この距離ならば、飛び出しだ所を狙える、か―――ッ!!)

 

 そう考えて克人は迫る気配に合わせてファランクスを利用した攻撃に移ろうとタイミングを合わせる。しかし次の瞬間、克人の顔に一筋の汗が伝う。

 

 克人が気配に合わせて正面を向いた方向、その斜め後方から突然何かが飛来してきたのだった。すぐさま克人は物理障壁を後方に展開し、攻撃を回避する。そしてその機会を逃さない、と茂みから横っ飛びの姿勢で竜士が飛び出してくる。その右手に握った拳銃型CADは既に克人を捕らえていた。

 

 

 「……流石、竜士君といったところなのかな」

 

 興味深いといった姿勢を崩さずモニターをしがみ付くように観る真由美は隣の摩利へ感嘆の声を漏らす。モニターでは数分前から克人と竜士の戦いが途切れることなく映し出されている。今までの生徒達が大抵初撃を防がれてそのまま負けてしまっている事を鑑みれば相当善戦していると取れるだろう。しかし、そんな光景にも摩利は何処か納得がいかない様子で眉を(ひそ)めていた。

 

 「いやな、どこか違和感を感じないか?」

 「そう、かしら?」

 「ああ、九校戦の時と戦い方が違うと思うんだが」

 

 そう言って摩利は椅子の背もたれに身体を預ける。対する真由美も先程までの表情の裏で摩利の言葉が決して見かけで判断しているものでは無い事を理解していた。

 「……確かにそうね、今の竜士君は何処か決め手に欠けるって感じがするものね」

 「ああ、手を抜いている、と言う事は無いとは思うのだが」

 「もしかして、決め手が無いのでは無くて、何か理由があって使えない、とか?」

 

 少し意味深な言葉を紡ぐ真由美に、摩利は生唾を飲み込む。

 

 

 

 「……例えばよ、摩利。彼の決め手が”戦略級魔法”だったとしたら、どうかしら」




いかがでしたでしょうか?

次回は一気に論文コンペ当日まで飛びます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。