魔法科高校の劣等生 神速の魔法師   作:mr.KIRIN

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休日の書きだめが効いています。




入学編Ⅳ

その日も平穏な一日では無かった。

 

朝予定通りキャビネットに乗り、駅からは徒歩で学校へ移動する。昨日はIDを受けとると直ぐに帰ったため、ホームルームに入るのはこれが初めてとなる。

竜士は静かに教室に入る、特に意味はないが目立ったことが嫌いなためここで教室内の視線を一手に引き付けるのは中々に避けたかった――筈なのだが、静かに入った筈なのに竜士にはおびただしい視線が突き刺さった。因みにその内の半数は明らかな値踏みの視線であり、主に女子からのものだった。

(エリートと言われる魔法科高校でも流石にこの辺は普通の高校生と変わらないか……)

 

昨日入学式したばかりなので皆気分が浮かれているのだろうと勝手に決めつけ、竜士は事前に確認しておいた席へと向かう。

 

「おっ、おはよー、竜士君」

「おはようございます。英君」

 

そこには昨日挨拶を済ませたばかりの面々がいた。

竜士は、片手を軽くあげて挨拶とする達也を含めた三人に会釈し、短く「おはよう」と返すと自分の席へと座る。竜士の席は達也の席の左隣だった。

別に竜士が遅く登校したわけではなく、登校初日と言うことで皆早めに学校に来たのだろう。

 

 

 

教室内は一部を除きほぼ全員が揃ってい各々に親交を深めているようだ。入学前の提出物の類は配られていないため特にしなければならない事もない。暇をもて余しそうになった竜士は、ふと隣を見た。するとそこでは達也が今時珍しく、キーボードだけで何やら作業をしているようだった。何をしているのか気にはなったが、声をかけて邪魔をするのも悪いし、一段落ついたら聞いてみようと竜士が考えていた時だった。

竜士と同じように達也の作業に興味を持ったのだろう達也の前の席の男子が身を乗り出すようにして達也のタイピングを見ていた。彼は邪魔しない様にと黙っていたのだろうが、そうまじまじと見られては達也も逆に気になってしまったようだ。案の定、達也からの問い掛けでその男子は軽く謝り、ついでにと周囲にいるエリカや美月そして竜士にも自己紹介をした。

 

「俺は『西城(さいじょう)レオンハルト』、レオでいいぜ。得意な魔法は硬化系だ。よろしくな」

 

竜士や他の面々も順に自己紹介を終えたところで、レオは達也の次に竜士の何かに興味を持ったのだろう。竜士に向かってところで――と話を持ち掛けた。

 

「竜士、お前意外とモテるんだな。クラスの女子の大半がお前の事を目で追ってたぞ」

「それは今日が初顔合わせだからだろ?」

「いや、俺が入った時はそんなこと無かったが……何故なんだ」

「いや、それは……」

 

竜士は不意に答えに詰まってしまった。自分のクラスメートがどんな人なのかは新入生ならば大抵は気になるだろう。特に異性の事となると特にその傾向は強くなる筈だ。そして、そんな環境で余り女子たちの視線が集まらないとなると答えは大体絞れてくる。

竜士は答えは分かっているが、何とか逃げ道を探すことにした。ここでお互いに波風を立てて後々面倒な事になるのならここは適当に誤魔化すのも1つの方法だろうと考えた――のだが、竜士が適当な言葉を見つける前にエリカが既にこの話に食い付いていた。

 

「そんなの決まってるじゃない。アンタがブサイクなだけでしょ」

「なっ」

 

エリカは本心をストレートにレオに伝えた。レオは完全に虚を突かれたのかエリカの言葉に反応するのが精一杯みたいだ。驚愕とも取れるその表情は全く他方からのツッコミに依るものなのか、思いもしない事を言われた事に依るものなのか。正解は後者のようだ。

結局、レオとエリカのやり合いは始業オリエンテーション開始直前に美月と達也に止められるまで続いた。

 

しかし、これだけでは終わらなかった。本来教員が就かないはずの2科生のオリエンテーション開始と同時に教員らしき女性が教壇につき、教室内に軽いざわめきが起こる。その女性は目の前の生徒達の不審そうな視線を気にすることなく自己紹介を始めた。

 

「皆さん入学おめでとうございます。私は本校のカウンセラーを務めています、小野遥(おのはるか)と申します。どうぞよろしく」

 

遥は軽く自己紹介を済ませると、受講登録の説明を始めた。説明といっても各々の机に備え付けられた端末に表示されるガイダンスに従えばいいだけの話なのでこれといっても教員が必要なわけでもない。

 

(目的は別にある……か、俺じゃなかったらいいけど)

 

心の中で願いながら竜士は隣を見る。教室内は竜士を含めた殆どの生徒がガイダンスに従い受講登録をしている。その中で達也はキーボードを打つでもなくただ端末を眺めている。

 

(さっきやってたのはこれか……、俺もやっておけばよかったな)

 

遥はガイダンスに入る前に、既に終了している人はガイダンスが始まる前ならば退出してもよいと前置きをしていた。早々に済ませておけば、ガイダンス前に退出して今頃はカフェテリアでコーヒーでも飲めていただろう。

だが、時既に遅し、ガイダンスも始まってしまっているのでここで幾ら速く登録を済ませてもオリエンテーションの時間中は拘束される事は決まっている。

諦めた竜士は内心大きな溜め息をつくと一度顔を正面に向ける――と、遥と目が合った。正確には遥の顔が動いた様子が無かったので初めから竜士の事を見ていたのだろう。怪訝な表情を浮かべる竜士に対し遥は微笑み、視線を外した。

入学2日目でもう数人に目を付けられたかと思うと竜士はこめかみを押さえられずにはいられなかった。

 

 

 

その後は何事もなくオリエンテーションも終了し、昼休みまでの間の自由時間はレオと美月の提案で工房見学となった。そしてここでもレオとエリカは何やら言い争いを初め、それを美月が止めるという構図が成り立っている。

レオとエリカはそのままに、時間も昼休みに入ろうとしていた為、一同は工房見学を終え一緒に昼食を取ることにした。そしてそんな時でさえ、1科と2科の間ではトラブルが起こる。

各々に昼食の載ったトレーを受け取ると通路に面した丸いテーブルに順に腰を下ろした。全員が座わると、そのまま誰の合図によるでもなく工房見学の感想を言い合ったり、一部で言い争ったりしながら一同は食事を進めた。

 

「お兄様!」

 

食事をするその背後から掛けられた声にレオ以外が気付き、そちらに視線を向ける。ただレオだけはお兄様と言う言葉が誰に向けられたものなのか理解できなかったようだ「お兄様?」と首を傾げながら、嬉しさを隠しきれず小走りで近付いてくる深雪を余所に達也に言外に説明を求めた。

 

「ああ、俺の妹だ」

 

達也の素っ気ない回答に「そうなのか」と言いつつ。レオは深雪の後ろにいる1科生に気が付いた。彼らは恐らく”友達”と食事を共にしたいのだろう、しかし肝心の深雪にはその意思が無く、結果として深雪の後を追う”追っかけ”又は、”付き人”のようにしか見えなかった。

 

(深雪に目立つなという方が難しいか……しかし、深雪もそろそろ限界か)

 

達也と昼御飯を食べたい深雪は未だにしつこく付きまとう1科生の男子に困惑の表情を浮かべている。そんな深雪の様子を見て達也はいつ深雪が暴走するかと少し心配になった。外面上は達也以外は誰も気付けない鉄面皮を被っている深雪だが、その仮面が破れるのも時間の問題だと思われた。

こんなところで暴走させては後々面倒な事になるのは明らかだ、達也は付きまとわれている深雪を助ける為に立ち上がろうとした――が、それは1科生の”爆弾”発言によって無意味なものとなってしまった。

 

「この席を譲りたまえ」

 

1科生グループの先頭に立つ男子生徒が深雪の前に出てそう告げた。その瞬間、エリカやレオから驚きと疑問を混ぜた声が上がったが彼は気にも留めず続け様に言い張った。

 

「……司波さん。1科と2科のけじめは付けるべきだ」

 

男子生徒の一方的かつ差別的な意見にその場の1科生の大半が同調の姿勢をみせ各々に頷いたり、発言したりしている。

2科生を、敷いては兄を侮辱している。そんな発言や態度を深雪が見逃す筈もない。しかし、彼女の中で次第に沸点に近付きつつあった感情は達也の行動により爆発寸前で抑えられた。

 

「深雪、俺はもう済ましたし、先に行くよ」

「え、ですが……」

 

勿論、席に着いてから大して時間は経っていなかったため、トレーにはまだ料理が残っていた。しかし、このままここに居続けるとそれ以上に厄介な事を引き起こしてしまう事は必至であったため、達也は早々に席を譲る事にした。彼の周りでは1科生の一方的な要求に従う必要はないとエリカやレオから声が上がったが達也はそれを無視してその場を後にしたのだった。そして、この深雪を巡る1科生と2科生の対立は放課後にも繰り広げられるのだった。

 




もうしばらく入学編は続きそうです。

次回かその次位で模擬戦までもっていきたいですね……

次回もよろしくお願いいたします!
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