今回は少し長めです(前回服部戦までもっていくと言いましたので)
この辺りは原作からズラしています。
風紀委員も枠を2名にしています。
「遅かったわね、竜士君」
立派な両開きのドアを開けた竜士を待っていたのは長机の一番奥に座る真由美から投げ掛けれた言葉と、その周りに座る生徒会役員の面々と司波兄弟の視線だった。
生徒会室は中央に長机があり角に配食機、茶器等が固められており、その長机には中央に真由美、右側に生徒会役員、左側に司波兄妹が席についていた。また、一名を除き、各々の前には生徒会室に設置された自動配食機で用意されたであろう食事が置いてあったが、ただ一人、長机の右奥から二番目に座る風紀委員長の摩利のみが明らかに手作りの弁当を持参していた。
「食事を済ませてきましたので少し遅くなってしまいました」
昼休みに来いとは言われたが、食事の有無までは聞いていない。そこについて追及する者は誰もいなかった。ただ、着席を促され長机の左側、深雪の隣に腰を下ろした竜士に案の定声が掛けられた。
「竜士君、身体はもう大丈夫?」
深雪の言葉で竜士は昨日の事を思い出す。昨日はあの後、体調不良を理由に早々に帰宅した。家に着く頃には身体の異変は既に治まっていたのだが、何もする気にならず直ぐにベッドに入ったのだった。
「ああ、心配掛けたけど、結局すぐ治まってな。ありがとう。ところで、司波さんも七草会長に呼ばれたみたいだけど、生徒会に勧誘されたとか?」
竜士は素直に礼をすると、逆に自分が抱いている疑問を聞いてみた。深雪は何故か控えめな笑顔で「ええ、その通り」と肯定し、更に「何故、お兄様じゃないのかしら?」と竜士に説明を求めてくる。竜子はそのまま深雪越しに達也に視線を移すと達也は”やれやれ”と渋い顔を作った。
「それは……」
素直に「君のお兄さんは2科生だから」とは言えない竜士は視線を真由美に向け、視線で話題を進めるように合図を送った。竜士からの合図に気付いた真由美は直ぐに小さく咳払いを挟み、全員の注目を集め「じゃあ、改めて」と現生徒会役員の紹介を始めた――とは言うものの、入学時の資料で一応確認をしていたので全員の顔と名前は既に分かっていた。ただ、会計の
竜士としては事前に確認した通りだったので、全員を一瞥してから「英竜士です」と短く挨拶を済ませる。既に達也と深雪の挨拶は済ませていたのだろう、真由美は深雪に向き直り本題を伝えた。内容は簡潔に纏めると深雪を生徒会に勧誘すると言うものだった。勿論、この誘いを断る理由は深雪にはない。直ぐに生徒会役員となることを了承し、この話は終わりとなるはずだった――深雪が”爆弾”を投入しなければ。
「兄も一緒に、という訳にはいきませんか?」
深雪は勢いよく立ち上がり、その行為事態に驚きの表情を浮かべる真由美に訴えた。普段は大人しい装いを見せる深雪がここまで取り乱して訴えている。真由美としても達也が有能なことは昨日より感じ取っているが、その訴えは現在の規則ではどうにもできない事であることも真由美は知っている。
「無理です。生徒会役員の選出は1科生より行われます。これは不文律ではなく規則です」
回答に困った表情の真由美の代わりに鈴音が深雪の訴えを否定した。淡白な鈴音にはっきりと言われ、深雪は明らかに落ち込んだ素振りで「申し訳ありませんでした」と謝罪した。
うなだれた様子でゆっくりと席につくと深雪は竜士に視線を向ける。
「竜士君、何か方法はありませんか?」
「……知らないな。会計の市原先輩がああ言ってるんだから、生徒会に選出される事は無理だな」
実際に竜士は嘘は言っていない。達也が”生徒会役員”に選出される事は事実上不可能なのだ。その他の手は有るには有るが竜士本人が面倒な事に巻き込まれかねない。何より達也本人が先程から竜士に言葉には出さないがプレッシャーを掛けてきているからここで達也に恨まれるような事を態々する必要は無いだろう。
「竜士君?」
「すまないが、俺に規則は変えられない」
「そうですか……私、竜士君を生徒会役員にする方法を思い付きました」
急に深雪の表情が黒い笑みを浮かべた様に竜士には見えた。そして深雪の言は暗に昨日の干渉装甲の事を指して、真由美に告げ口するぞという意図が込められていた。
(やはり使わなければ良かったか……)
竜士は諦めの混じった溜め息と共に達也に視線で謝罪し、風紀委員長の摩利を一瞥してから真由美に確認した。
「会長、確か風紀委員の生徒会選任枠は2科生でも選任可能でしたよね」
その瞬間、達也の風紀委員就任が”殆ど”決定した。
“殆ど”と言うのは、案の定、達也が2科生であることや実力が無いことを理由に抵抗を試みた結果、この件の結論は放課後に持ち越しになった為だった。
話も大まかに纏まったところで、達也と深雪が同時に席を立った事に合わせて竜士も生徒会室を後にしようと思い、動きを合わせて立ち上がった。このまま生徒会室から脱出できれば竜士に対する用件も無かったことに出来るかもしれない。しかし――
「竜士君も放課後に来るようにね」
(――忘れている訳無いか……)
満面の笑みで竜士を引き留める真由美の顔を見て竜士は寒気を覚えずには居られないのだった。
ようやく生徒会室を後にした竜士たちは今実習室で午後の実習に取り組んでいた。実習と言っても2科生の場合は教員が生徒を監督し、指導を行う訳ではない。予め示された課題さえ達成しておけば実習途中での退出も可能なシステムとなっている。しかし、実際のところは実技が苦手な生徒が多い為、結局授業時間一杯まで使ってしまう生徒が殆どであった。
「それで、生徒会室はどうだったんだ?」
今日の実習は台車を往復させるといった基本的な魔法の実習だった。実習装置を待つ列に並んでいる間にレオが竜士達に昼間の出来事を尋ねてきた。実際のところは達也達と同じクラスの殆どが入学して直ぐに生徒会室に呼び出された達也と竜士に興味津々であったが誰も話し掛けほど交友を深めてはおらず、レオが彼等の声を代弁した形なっていた。
「俺としても良く分からないんだが、風紀委員に入れと言われた」
周囲から明らかな視線を受け、達也は少し大きめの声で結論だけを伝える事にした。”何か問題を起こした”と追い込んでいた周囲からは違う意味で驚きのざわつきが見られ、口々に何かを話し合っている。そんな周囲の反応を考慮してか、レオは小さめの声で「それで竜士は?」と竜士にも尋ねたが、”今のところ”は何も無かった竜士は僅かに苦笑いを浮かべ「俺は時間切れだった」と短く言った。竜士の苦笑いに同情してかレオは二人に「人気者も大変だよな」と慰め、気が重くなるだろう話を打ち切った。そしてこの時エリカが「勝手なんだから」と小さく呟いた事は誰も気に留めなかった。
「失礼します」
達也は深雪と竜士を代表して生徒会室の扉をノックした。少し待っても反応が無いが、呼び出されて来ているのに無人は無いだろうと、達也はドアをゆっくりと押し開ける。視界に広がる生徒会室は夕陽でオレンジに染まっていて若干眩しさがあったがそこに真由美と男子生徒がこちらに顔を向けていた。
(
入学時の資料に一通り目を通しておいた為、生徒会役員の顔と名前は一致している。そして、服部は初対面の竜士と達也に対し明らかな敵意を向けていた。
服部は表情を穏和なものに変えると歩を進め、前列の達也と竜士をすり抜け深雪の前に立ち止まった。達也を無視して自分の前に来た服部に深雪は強い不快感を隠そうともせず服部を睨み付けた。
「副会長の服部
深雪の態度を知っていてポーカーフェイスを貫いているのか、ただ、”副会長”の前で強張っているだけと勝手な思い込みを決めているのか、服部の挨拶は副会長として、上級生として余裕のあるものだった。
服部の一連の動きを見ていた真由美は、「仕方ないな」とその表情に浮かべ、深雪への説明をあずさへと一任し自らは残された竜士と達也に向き直る。
「それじゃあ、二人は摩利と一緒に風紀委員室に行ってそこで説明を受け――「待って下さい!」」
真由美の言葉を最後まで待たず、服部は異論を挙げた。この時達也と共に指名された竜士はいつの間にか風紀委員にされていたことが理解できず「え……」と声を出していたが、服部の声に上塗りされ、真由美には届かなかった。周囲が自分に注目したことを確認した服部はそのまま主張に入った。
「魔法力で劣る
「風紀委員長である私の前で禁止用語を使うとは大した度胸だな」
真由美に対する意見具申だったが服部の使った禁止用語に直ぐに反応したのは風紀委員長を勤める摩利だった。しかし、服部に発した単語に反応したのは摩利だけではなかった。
「下らない」
「……何だと?」
竜士の呟きを服部は見逃さなかった。実際のところは竜士が言い出さなくても我慢の限界に達していた深雪が爆発していたことだろう。達也は深雪のボルテージが下がっていくことを感じて内心、安心したのだった。そんなことは知らず、顔から火が出そうなほどに憤慨する服部を他所に竜士至って冷静には真由美に告げる
「七草会長、折角のご指名ですがお断りします」
「……どうしてかしら?」
「簡単なことです。1科生でない自分は不適当だと思いますから――」
ただ、と竜士は服部を横目にとらえ話を繋げた。
「自分をどうしても風紀委員にしたいのであれば、力で示して頂きたい」
竜士の言は服部に対する挑戦状だった。そして、竜士の読みが正しければ1科生のプライドが傷つけられたであろう服部は間違いなく乗ってくる筈だった。そしてその読みは見事に的中することになる。
「……いいだろう、身の程を弁える事の大切さをしっかりと教えてやる」
両肩をわなわなと震わせ、怒りの篭った視線を竜士に向けながら服部はその挑戦に”乗った”のだった。
“模擬戦”は第3演習室で行われる事となった。あくまで”模擬戦”という形式を取っているのは生徒同士とは言え魔法を用いた私闘は重罪に値する為だった。模擬戦の審判は摩利、立会人としてその他の生徒会メンバーと達也と深雪とし、服部と竜士は演習室中央で互いに向き合っている。服部の左腕にはブレスレット型のCAD、対して竜士は大型拳銃型のCADを右手に握っている、誰が見ても分かる照準補助機能の付いた特化型と呼ばれるCADだ。
(汎用型を使えない程の処理能力か、ウィードごときがその鼻っ柱を叩き折ってやる)
竜士のCADを一目見た服部は軽く鼻で笑い、模擬戦のプロセスを練っていく。服部が思い付いたのは魔法の発動速度の差で一気に決着をつけるシンプルなものだった。そして2科生相手なら能力の差が出るこの方法が一番効果的でもあった――通常の2科生相手であるなら。
「始め!」
摩利の合図で服部はCADに指を走らせる。
「なん……だと」
しかし服部の魔法は”発動しなかった”
認めたくない事実。竜士の圧倒的な干渉力に服部は魔法を行使できなかったのだ。しかも竜士はCADを使用せずに服部より早く領域干渉を発動していた。
「お、おいこれは……」
「領域干渉ですね。それもかなりの干渉力みたいです」
「お兄様、竜士君はやはり……」
「ああ」
(しかし、これだけでは無いないだろうな、仮にあの叔母上が”造った”のであれば)
やがて周囲が竜士の領域干渉に気付きざわめき始める。その中で達也と深雪だけは冷静に竜士を分析していた。
「終わり……ですか?」
周囲のざわめきを無視し、竜士はなす術の無いだろう服部に無表情で問い掛けた。
「ウィードの分際で!」
自分が新入生にしかもあれほど見下した2科生に魔法では負けている。そんな認めたくない事実が彼をプライドを棄てた徒手攻撃、具体的には拳に動かしていた。しかし、格闘経験の皆無な服部は竜士との間合いを詰めると右手を大振りに突きだした。初心者のパンチを受けるほど竜士はお人好しではない。竜士は慣れた動きで服部のパンチをいなすと、反対の手首を引き、バランスを崩した服部の身体を地面に投げつけた。勿論、重大なダメージが残らないように手加減はした、が、倒れた服部は既に意識を失っていた。
本当ならこの辺りで止められると考えていたのだが、未だに摩利の合図は掛からない。竜士はそのまま流れるように服部の顔面に体重を乗せたパンチを叩き込もうと拳を降り下ろす。
「そ、そこまでだ!」
服部の顔面ギリギリのところでで逸らした拳はその速度を殺しきれずに床を叩く。竜士は顔色ひとつ変えないポーカーフェイスで首から摩利に向けた。
「……勝者、英竜士」
無表情な視線を向ける竜士に若干押されぎみに摩利は宣言したのだった。
いかがでしょうか?
本作知識が足りないので、間違った表現もあると思いますがそこはアレンジとでも捉えていただければ助かります。
ps.アンケートのやり方がわかりません笑