それと、イベントないのでこの辺はすっ飛ばしたいですね・・・
「……勝者、英竜士」
模擬戦は当初真由美たちが予想していた通り、僅か数分で決着が着いた。ただ、気を失い身体を横たえているのが1科生の服部で、勝利したのが2科生である竜士であることは彼女らの予想に大きく反する結果となっただろう。気絶した服部はあずさと達也そして深雪で看ている。達也の所見ではただ気を失っているだけだと言うことだが、大事を取って医務室に運ぶ事となった。この際、深雪が魔法を使って意図も簡単に服部を運ぶ様はその場の上級生達を大層驚かせたのは言うまでもない。
達也達が演習室を離れて少し、摩利が唐突にその口を開いた。
「竜士君、話は戻るが、先程の魔法はもしや領域干渉か?」
「……ご想像にお任せします」
試合開始から生徒会のメンバー全員が抱いていたにわかに信じがたい疑問を摩利が竜士に問い掛ける。それに対する竜士の回答は自ら肯定はしないものの、否定もしないものであった。そして、真由美たちはこれを”肯定”と受け止めた。
「何故だ……まさか入試の時に手を抜いていたのか?」
「いいえ、ですが自分には決定的な欠陥がありますから」
摩利の力の篭った視線に苦笑いを浮かべ竜士は首を左右に振る。依然として目の前の事実が認められないのか、生徒会の面々は口の動かし方を忘れてしまってかのように黙りこくってしまう。
「只今戻りました」
ただ、気絶した服部を看ていたあずさと達也、そして深雪は服部を医務室へと連れていき今丁度帰ってきたところだった為、先程までのやり取りを知らない。部屋に入った瞬間に空気を感じ取った達也と深雪だったが、あずさはそれより竜士の右手に握られているCADに興味津々である様子を隠そうともしなかった。
「英君、それはもしかしてシルバー・ホーンですか?」
我慢できなくなったのだろうあずさは小動物の様な動きで竜士に近寄った。
「ええ、ただ正確に言えばこれはシルバー・ホーンをベースに自分が改良したカスタムモデルになりますが……えっと何でしょうか?」
「ってことは英君はCADの調整も自分でできるのですか?」
「まぁ、自分はハード専門ですので、ソフトは基本的な事しか出来ませんが」
「大したものだわ」
「ええ、正直これ程の知識は一介の高校生のレベルでは信じられませんね」
あずさと竜士のやり合いを端から見ていた真由美と鈴音が竜士を称賛するところを見て、背後で深雪が「お兄様だって」と名乗り出ようとしたところを達也が小さく静止したことは真由美の肩越しに見ていた竜士以外気付かなかった。
「……対人戦闘能力も高いようだしな、それでも魔工師希望なのか」
未だに納得のいかない表情の摩利が漏らす不満を苦笑いを浮かべて躱すと、真由美に向き直り、”条件”の再確認に入ることにした。
「七草会長、約束通り服部副会長に勝ちましたので、風紀委員の件は別の人材を起用頂けますね」
「……勝手に任命しようとしたことは謝るわ。でも、貴方のその能力は実践向きだと思うし、改めてお願いできませんか?」
新入生に対して深々と頭を下げる生徒会長の構図は中々に珍しいものだ。普通の高校生ならば直ぐにでも了承の返事を返していただろう。しかしながら、”普通でない”竜士の返答は否定的なもので、約束を盾にしている以上真由美達には取り付く島も無かった――真由美達には。
「会長、頭を上げて下さい。そんな事をしなくても英の風紀委員入りは決定していますから。そうですよね、渡辺先輩?」
真由美に助け船を出したのは他ならぬ達也だった、そしてその後ろに満面の笑みを浮かべる深雪の姿、竜士が再度達也の顔を見ると達也は「すまないな」と表情で語っていた。
竜士は先程の模擬戦を思いだし直ぐに気が付いた。しかし、未だに達也の言葉の意味を真由美達は理解できていない。達也は「何の事だ?」と疑問符を浮かべる摩利に確認した。
「ここで言う負け、と言うのは何も倒した、倒されただけの話ではありません。今回、渡辺先輩が呈示された規定によれば、捻挫以上の怪我を与える徒手攻撃はルール違反に当たります。そして、先程医務室で服部先輩は右手首に重度の捻挫、と診断された為――」
そこまで言われて摩利はハッと感ずいた素振りを見せ、ニヤリと笑みを浮かべると説明を止めた達也に被せて宣言した。
「先程の宣言を撤回する。英竜士は反則負け、勝者、服部半蔵」
「竜士君、これからよろしくね!」
摩利の宣言を受けて真由美は雑じり気のない笑みで、打開策は無いなと諦めた顔の竜士に対して胸を張って言い切ったのだった。
「まぁ、多少散らかってるが座ってくれ」
(これが多少……か)
達也と竜士は摩利に連れられ風紀委員室に来ていた。風紀委員本部は生徒会室の下階にあり、生徒会室とは直通の階段で繋がっている。その直通階段を利用して竜士達は部屋に入ったのだが、入った瞬間の部屋の荒れようには摩利を除いて大きな溜め息をつかずにはいられなかったのだった。
「委員長、この部屋少し片付けていいですか?」
「何故だ?」
「魔工師志望としてこの状況には堪えがたいものがあるんです」
案の定、達也は摩利に部屋の片付けを具申し、若干不服そうな摩利も含めた三人で部屋の片付けを行う事となった。しかし、手際よく散らばったCADや書類をカテゴライズし片付けていく竜士と達也に比べて、摩利の請け負った区域は以前と変わらない状態を維持したままだった。一向に片付かない、寧ろ荒れていく目の前と竜士と達也の無言のプレッシャーに負けたのか摩利は両手を上げて降参のポーズを取った。
「すまない、こういうのは苦手でな」
「構いませんよ」と一言返し、竜士は摩利の区域の片付けに入る。元より余り割り振りを大きくしていなかった事を正しい判断だったと再認識し、これからは風紀委員全員に片付けを徹底しなければと考えたのだった。
「そう言えばお前らは二人とも魔工師志望らしいが何故なんだ?どちらも高度な対人戦闘スキルを持っているのに」
「……自分はその様なことをいった覚えはありませんが」
「お前の妹が嬉しそうに言ってたが、それは違うのか?」
「え?」
「君でも、慌てることはあるんだな」
予想しなかったところからの情報流出に虚を突かれ、つい声を漏らしてしまった達也をしてやったりと嬉しそうな表情で摩利は笑った。
苦笑いを浮かべ。そして深雪が知られてはならない秘密まで喋っていないことを達也は切に願ったのだった。
片付けも次第に終わりに近づき、三人の会話の割合も増えてきたところで風紀委員本部のドアが開いた。視線が集まる中、入ってきたのは二人の男子生徒だった。
「はよっす」
「おはようございます」
対照的な挨拶で入室した二人は摩利を「姐さん」と呼び名で呼び、直ぐに冊子を丸めたもので頭を叩かれる。竜士としては「委員長」より「姐さん」の方が摩利の性格に合っているような気もしたのだが、同じように叩かれるのも癪に障ると思い、考えを止めた。やがて、摩利の”指導”も終わり、二人は視線だけを傍観を決め込んでいた達也と竜士に向けると「新入りですか?」摩利に対し紹介を求めた。
「新入りの司波達也と英竜士だ」
「へー……紋無しですか」
「辰巳先輩、今の表現は禁止用語に抵触する恐れがあります。この場合、2科生と言うべきかと」
「お前ら、見掛けだけで決めつけると足元をすくわれるぞ?此処だけの話だが、さっき服部が足をすくわれたばかりだ」
達也と竜士に品定めするような視線を向けていた二人は摩利の突然の言葉に驚きの表情を浮かべ自分達の評価を改める。
「そいつは頼もしい」
「逸材ですね」
達也達の予想に反して彼等の対応は先程と打って変わって友好的なものであった。入学してからここまで達也達は差別的な態度しか受けなかったが、どうやら役員の面々は一部を除いて、差別思想に毒されていない、正当な評価の出来る人選で選出されているようだ。
「……ここは君らにとっても居心地の悪い所では無いと思うがな」
そんな達也と竜士の心を読んだのか、摩利は二人に言葉を掛け、反応を待たずして入室してきた二人の紹介へと移った。
「こっちのゴツいのが3-Cの『
摩利の紹介を受けて辰巳と沢木はそれぞれ正面の達也と竜士に右手を突き出し、握手を求めた。互いに握手を交わしながら辰巳は達也達を紹介されてから気になっていた事を摩利に尋ねる事にした。
「ところで姐さん、服部に勝ったっていうのはどっちなんです?」
「鋼太郎……服部に勝ったのは竜士君の方だ、だが達也君も舐めない方がいいぞ、彼は忍術使いの『
再び「姐さん」呼ばわりした辰巳に摩利は鋭い視線と殺気を向けるが一々話を切っていたら埒が明かないとそのまま話を続けた。摩利の話を聞きながら改めて目の前の1年生の評価をし直す辰巳と沢木を他所に妹は一体何処まで話してしまったのだろうかと達也は鉄仮面の下で再び不安になったのだった。
キーボード使うとペースが一気に上がる、ような気がします。
次回もよろしくお願いいたします!
感想等もお待ちしておりますよ。