奴隷との生活 二次創作短編集   作:f-041

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if~もし先生が祓魔師だったら~

 とても人柄の良いある資産家が、旅先から帰ってくるなり奴隷を虐待し始めた。

 そんな噂が数週間前から流れ始めた。

 「って聞いてるかい、先生?」

 「ええ、まぁ。」

 今俺は近所の居酒屋で八百屋の店主と一杯やっている。よく呑みに誘ってくれるが、医者という仕事上あんまり呑むことができず麦茶という東方の国の飲み物を片手に酔っぱらいの話を聞き続けるというそんな状態にある。

 「でも、その資産家って結構有名でしたよね?この辺のゴロツキも私兵で取り締まってくれたりなんかして。」

 「なんだよなぁ。まぁ、きっとあの人を妬んでる馬鹿共が流したしょうもない噂さ。」

 「ですかねぇ。」

 俺はジョッキ一杯の麦茶を煽り、おかわりを注文する。

 「そんな噂は置いといて、だ。どうだい、最近売上の方はよ?」

 「ぼちぼちってところですかね。流行病とかも無いから至って平穏ですよ。その代わりお金は入りませんが。」

 「ちげぇねぇや、ハハハ。」

 そんなこんなで夜が更ける。俺はすっかり出来上がった店主を奥さんの元まで運び、その足で診療所兼自宅に帰る。

 

 だが、気になる。

 「この噂、臭うな…。」

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 自宅に戻った俺は、本棚から幾つかの本を抜き並べ替える。すると本棚が音もなく右にずれる。そこにあるのは地下に続く階段だ。階段を下ると幾つかのロッカーが置いてある地下室がある。

 俺は手前のロッカーを開き、数個の小瓶と銀色のジッポーを取り出す。後はこれも持って行っておこう。

 「ちょっくらその資産家とやらの顔を拝んでやりますか。」

 そう呟いて地下室からそっと立ち去り、そのまま夜闇に紛れる。

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 とある豪邸の地下…暗く湿った石壁の部屋に少女の絶叫が木霊する。

 「ッーーーーー!?あっ…ぎぃ!」

 その叫びは既に言葉の体を成していない。

 少女の半身は既に薬品によって焼け爛れており、更に無事な部分にも無数の裂傷が走っていた。

 その裂傷の原因となった金属製の鞭を振るうのはその目の前に居る痩せこけた資産家の男であった。

 「ヒヒヒィ!もっと!もっと啼け!啼け!ナケェ!」

 その資産家の男は肉という肉が削げ落ちて、皮と骨だけのような有様だった。ただその顔に不釣り合いなほど大きな目だけがギラつく光を放っており、一目見るだけで尋常では無いことだけは読み取れた。

 鞭が振るわれるごとに少女は叫び声をあげていたが、段々とその声も弱まっていく。

 「ヒヒ、ヒィ!そろそろ、仕上がったかな…?」

 資産家の男は少女の腕をそっと抱え、舌でその皮膚を撫でる。男の口の中に血の味が広がる。

 「ンンッ!マーヴェラッス!!最高の味に仕上がりまッしタ!!!」

 口から涎をだらだらと垂らしつつ歓喜に震える男。

 

 今にも齧り付きたい、そんな状態の男に向かって暗闇から小瓶が飛んで来る。

 「ッ!?」

 人間とは思えない速さで後ろを向き、小瓶を叩き落とす。が、小瓶が割れた瞬間中身が男に振りかかる。

 

 「ギィヤァァァァァ!熱いィィ!?」

 肉が焼ける音とともに、男の右腕が肘から灰と化した。

 「ヒィィ!?」

 

 「聖水、薬効有り…か。お食事中、失礼するよ。」

 暗闇から白衣を纏った男が現れる。

 「何者ダ!?」

 右手を失った資産家の男の誰何に対しこう、応える。

 

 「俺かい?ただのしがない町医者だよ。」

 町医者と名乗ったその男は、銀色に輝くジッポーを指で弾くように開け、火をつける。その炎はまるで宝石の如く蒼く揺らめいていた。そのまま炎に向かって呟く。

 「聖水効果あり。但し即死せず。高位の悪魔と認定、礼装の許諾求む。」

 打てば響くように炎から声が帰ってくる。

 『状況を確認。礼装の使用を許可します。汝に神の祝福があらんことを。』

 「許諾を感謝する。変身…!」

 炎が爆発的に膨れ上がり町医者の体を包む。今にも飛びかかろうとしていた資産家は膨れ上がった炎に弾き飛ばされ壁に叩きつけられる。

 広がった炎は急速に収束し、消える。その後には、白金に輝く全身鎧を纏った町医者が居た。

 『礼装:マキーナ起動完了 霊力残量100% 稼働停止まで残り6時間』

 鎧から町医者に向かって無機質な声がかかる。

 「さて、手っ取り早く済ますとしますか。」

 資産家の男はその圧倒的な輝きを目に入れただけで、その目がプスプスと煙を上げ始めた。

 「ンギィ!モウコノカラダハモタナイカ…!」

 すると資産家の体が急に膨れ始め…鎧の男に向かって破裂した。

 

 「うおっ!いきなり本体のご登場か…。」

 資産家の体から飛び出してきた「ソレ」を受け止め、弾き返す。弾き返された「ソレ」は地面にぶつかり、形を変えてゆく。数秒もしないうちに一つ目の真っ黒な獣となり襲いかかってきた。

 「シネェ!貴様の体を奪い取ってくれる!」

 「死んで欲しいのか乗っ取られて欲しいのか要求は一つにしろ!後どちらの要求も却下だ!」

 襲いかかってきた獣を往なし、拳を叩き込む。

 「グゥゥ!?」

 「浄化及び祈祷済みのPt装甲さ、悪魔のお前さんにはよく効くだろ?」

 怯んだ隙に2発、3発と容赦なく拳を叩き込む。躱して飛びかかろうとした際には蹴り飛ばして初動を押さえつける。

 「おいおい?こんなもんかよ?高位の悪魔の名が無くぜぇ?」

 「チョウシニノレバツケアガリオッテェ!!!」

 いきなり距離を取り咆哮を放つ。金属を擦り合わせたような異質な音が響き渡り、流石の男も一瞬硬直する。

 「うがっ!」

 「モラッタァ!」

 自らの形を崩し、弾丸のように飛んで来る獣をまともに食らって地下の天上を突き破りそのまま外へと飛ばされる。

 「ってぇなぁ!」

 さしもの礼装も今のダメージだけは消し切ることが叶わず膝をつく町医者。

 好機とみたか、獣がすかさず飛びかかる。が、

 「俺の武器が徒手空拳だけなんて、誰が言ったか?」

 腰から鈍色の銃を取り出し立て続けに4発の弾丸を見舞う。

 「…!?!?」

 弾丸は獣にぶつかった瞬間溶け出し、檻状となって包み込む。そのまま空中に繋ぎ止められた獣は檻から出ようともがき暴れるがびくともしない。

 「とっておきだ、クラって逝きな!」

 銃が刀に変形する。そしてその刃先に光が集まっていく。

 「聖なる光を今ここにってなぁ!クロスドライブ!!」

 刃から放たれた光は無数の斬撃となり獣を襲う。捉えられた獣は為す術なくその全てを浴びせられ…

 「神罰執行!」

 爆散した。

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 空気の抜ける音ともに、鎧の顔の部分が開く。

 「ふぅ、相変わらずこいつは息苦しいな。おい、聴こえてるか。こっちは片付いた。後処理を頼む。」

 『了解です。お疲れ様でした。』

 そうして俺はふと思い出す。あの地下室に少女が居たことを。

 「やっべ!巻き込まれてないよな!?」

 顔を青くし、急ぎ地下室に引き返す。床に臥せっていた少女は、今は寝息を立てていた。戦闘には巻き込まれていなかったようだ。流石にほっとした。

 と同時に近くにあった資産家の体が目に入る。腹から寸断されたように吹き飛んだその体は既に事切れていた。誠実だった彼は何かの原因で悪魔に体を乗っ取られていたのだ。悪魔に取り憑かれた人間を救うことはとても困難だ。解ってはいても救えなかった悲しみは大きい。

 『ですが、最低でも一人は助かりました。』

 「うおっ!心を読んだようにいきなり話しかけてくるんじゃねぇよ!」

 『聞こえていましたよ。』

 ポツリと漏らしてたのか俺は…。

 『さて、この屋敷ですが生体反応が殆どありません。あなたと、そこの彼女だけです。』

 「ってことは残りは…」

 『詳しいことは調べてみないと解りません。』

 「そうか。」

 『彼女ですが、どうしましょうか。』

 「保護するんじゃねぇのか?」

 『もちろん保護はしますが。現在の状況から言って精神状態が不安定に思えます。それに奴隷のようですから、回復させたとしても奴隷としか認定されないでしょう。』

 「ああ、そうか、そういう問題があるのか…。……一ついいか?」

 『なんでしょう?』

 俺はふと思いついた提案をする。

 「…というのはどうだろうか。」

 『こちらとしては願ったり叶ったりですが、よろしいのですか?』

 「ああ、構わない。」

 『解りました。手配しておきましょう。』

 「んじゃ、帰るわ。」

 『有難う御座いました。お気をつけて。』

 

 俺はその足で帰宅し、ベッドにすらギリギリで辿りつけず泥のように眠った。

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 あれから数ヶ月が経過した。

 事件は結局、組織によってもみ消され、変死として処理された。

 一時はニュースにもなったが今ではもう下火である。そういう風になるように手回しをしたのだろう。

 そして今日、とある男が訪ねてくる予定だ。

 と、控えめなノックの音が響く、来たか。

 俺は努めて訝しげな表情を作り、扉を開けた。




俺、何が書きたかったんだろう、本当
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