救善悪喰な人喰いも異世界から来るそうですよ?   作:洋シキ

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オリキャラの名前を「流丸 郁人<るまる いくと>」から「流丸忌 彌禍<るまるい みか>」に変えました。
物々しくヤンキーみたいな名前ですが、気にしないで結構です。
それに伴い一話も改稿しました。
急な変更申し訳ございません。

見直してたら凄い郁人のままだった。すいません、直しておきました。


Ⅱ.人喰いは箱庭の世界を知るそうですよ?

  十六夜は苛立たしげに言う。

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

「……。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

「いやいや、あんな摩訶不思議で胡散臭い手紙を開けている時点で、この状況に慌てる程の繊細な精神を持ち合わせているのはありえないと思うよ?」

(……パニックになってくれればいいとは思いましたが、確かにそれではまず手紙を開けてくださいませんでしたねえ……)

 黒ウサギは困っていた。できればもっと早く飛び出していたかったのだが、場が落ち着き過ぎているので出るタイミングを計り損ねていたのだ。

 しかし彌禍の言う通り、実際にパニックを起こしているのならば第一にここには来ていないだろう。

 黒ウサギはジレンマに陥っていた。

(まあ、悩んでいても仕方がないデス。これ以上不満が噴出する前にお腹を括りますか)

 四者四様の罵詈雑言を浴びせている様を見ると怖気づきそうになるが、ここは我慢である。

 ふと十六夜がため息交じりに呟く。

「ーー仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」

 物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を掴まれたように飛び跳ねた。

 四人の視線が黒ウサギに集まる。

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ? そっちの猫を抱いてるやつも、腕を組んでる奴も気づいていたんだろ?」

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

「気配隠してないんだし、“見つけてください”って言ってるようなもんじゃないかな?」

「……へえ? 面白いなお前ら」

 軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。四人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の籠った冷ややかな視線を黒ウサギに向ける。黒ウサギはやや怯んだ。

「や、やだなあ御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

「断る」

「却下」

「お断りします」

「イヤだ」

「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。

 しかしその眼は冷静に四人を値踏みしていた。

(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まあ、扱いにくいのは難点ですけども)

  黒ウサギはおどけつつも、四人にどう接するべきか冷静に考えを張り巡らせているーーと、春日部耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲掴み、

「えい」

「フギャ!」

 力いっぱい引っ張った。

「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか⁉︎」

「好奇心の為せる技」

「自由にも程があります!」

「へえ? このウサ耳って本物なのか?」

 今度は十六夜が右から掴んで引っ張る。

「……。じゃあ私も」

「我輩もやろうかなぁ」

「ちょ、ちょちょ待ーー!」

 今度は飛鳥が左から、そして彌禍が真正面で順番を待つ。左右に力いっぱい引っ張られながら、まだマシと思っていた人の弧を描いた口を見た黒ウサギは、言葉にならない悲鳴をあげ、その絶叫は近隣に木霊した。

 

 

「ーーあ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

「いいからさっさと進めろ」

「早くしないとまた耳を引っ張るよ?」

「わかりました、わかりましたからやめてください!」

 半ば本気の涙を瞳に浮かばせながらも、黒ウサギは話を聞いてもらえる状況を作ることに成功した。四人は黒ウサギの前の岸辺に座り込み、彼女の話を『聞くだけ聞こう』という程度には耳を傾けている。

 黒ウサギは気を取り直して咳払いをし、両手を広げて、

「それではいいですか、御四人様。定例分で言いますよ? 言いますよ? さあ言います! ようこそ、“箱庭の世界”へ! 我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

「ギフトゲーム?」

「そうです! 既に気付いていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません! その特殊な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は質問するために挙手した。

「まず初歩的な質問からしていい? 貴女の言う"我々"とは貴女を含めた誰かなの?」

「YES! 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある“コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

「嫌だね」

 十六夜が茶々を入れる。

「属していただきます! そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者”が提示した商品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

「……“主催者”って誰?」

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが"主催者"が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。“主催者”次第ですが、新たな“恩恵”を手にすることも夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて“主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」

「後者は結構俗物ね……チップには何を?」

「それも様々ですね。金品・土地・名誉・人間……そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むことも可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然――ご自身の才能も失われるのであしからず」

 黒ウサギ愛嬌たっぷりの笑顔に黒い影を見せる。

 挑発ともとれるその笑顔に、同じく挑発的な声音で飛鳥が問う。

「そう。なら最後にもう一つだけ質問させてもらっていいかしら?」

「どうぞどうぞ♪」

「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK! 商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 飛鳥は黒ウサギの発言に片眉をピクリとあげる。

「………つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 お? と驚く黒ウサギ。

「ふふん? 中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか! そんな不逞な輩は悉く処罰します――が、しかし! 『ギフトゲーム』の本質は全く逆! 一方の勝者だけが全てを手にするシステムです!店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね」

「そう。中々野蛮ね」

「ごもっとも。しかし“主催者”は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰ぬけは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でごさいます」

 黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界の全ての質問に答える義務があります。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんをいつまでも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話しさせていただきたいのですが……よろしいです?」

「待てよ。まだ俺と彌禍が質問してないだろ」

「お、我輩もか」

「なんだねえのか?」

「まぁ、あるにはあるな」

 静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立ち、続いて彌禍も立つ。十六夜にずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていることに気づいた黒ウサギは、構えるように聞き返した。

「……どういった質問です? ルールですか? ゲームそのものですか?」

「そんなのはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでお前に向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは……たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」

 十六夜は視線を黒ウサギから外し、他の三人を見まわし、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。

 彼は何もかもを見下すような視線で一言、

 

「この世界は……面白いか?」

 

「ーーーー」

 他の二人も無言で返事を待つ。

 彼らを呼んだ手紙にはこう書かれていた。

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。

 それに見合う催し物があるのかどうかこそ、三人にとって一番重要な事だった。

「――YES。『ギフトゲーム』は人を越えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

 

「では彌禍さん。ご質問はなんで、ってなんでそんな眩しいものを見ているかのように目を細めているのデスカ?」

「いや、ちょっと若者の姿が眩しくてな……」

 黒ウサギが十六夜の質問に応え終わり彌禍に目を向けると、太陽を見るかのように十六夜たちを見る姿が目に入る。

「何を言っているのです。寧ろここにいる人たちの中で一番若いのは彌禍さんではないですか」

 彌禍の背丈を見ながら黒ウサギは呆れる。他の問題児たちは高校生くらいで、黒ウサギに至ってはかれこれ約200年は生きている。それらを考慮すれば、成長期が終わっていなさそうな彌禍は一番この中で若いと黒ウサギは思った。思ったのだが、

「ああ、そうそう。その年齢の事なんだけどね、手紙に『少年』と書いてあったでしょ? それはやはり若い方が、まだ先もあるし力があるからなの?」

「? まあ、そうでございますし、実際皆さん少年少女でございますでしょう?」

 彌禍の質問の意図がわからず首をかしげる黒ウサギ。耀も飛鳥もよくわかっていないようだが、ただ一人十六夜は何かに気づいたようだった。

「うむぅ……これは困った」

「なあ彌禍」

 腕を組み手に顎を乗せる彌禍に十六夜が問いかける。

「なんだい不良くん」

「もしかしてとは思うが……お前は、何歳だ?」

 十六夜は己の中である程度の答えが出ているのか、半分確認するかのように見た目にそぐわない一人称と雰囲気を纏う彌禍に問う。

 問われた彌禍は、忘れていた事を思い出したように目を少し見開いた。

「あ、そうだ言ってなかったね」

1人納得しウンウンと頷くと、思い出すように首を傾げながら見た目少年の彌禍は答える。

「そうだな確か……100を超えて更にその半分を過ぎたくらいかな?」

 ハ? とそこにいた彌禍以外の全員が耳を疑った。

「もう我輩は150歳くらいだからなぁ。先を期待されても困るんだけどね」

 流石の十六夜も続いた言葉に、予想していたよりもずっと老いていたからか、暫く動けなかった。

 それから秒針が半周するくらいの時間が過ぎた後、二度目の絶叫が木霊した。




勉強しなきゃ(勉強するとは言ってない)
……すいません机に向かって課題します。
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