それは何時もの公園で遊んでいた時だった。まだ■■士郎だった時の話だ。
「やぁ、少年。君は『正義の味方』について如何思う?」
「おじさん誰?」
声がした方向に視線を向けると、そこには一人の老人が立っていた。老人は自身の髭を触り、再度尋ねる。
「俺はただの暇人だよ少年。さて、もう一度聞くか『正義の味方』を如何思う少年」
「『正義の味方』? そんなのカッコいいに決まってるじゃんっ‼︎」
「ふふ、そうか。カッコいいか」
少し考えた素振りをした後に、言い切った子供に対して隠さずに微笑みを浮かべる老人。そして老人は別の事を聞いた。
「では、少年は『正義の味方』になりたいとは思うかい」
「それはなりたいけど、俺には無理だよ」
老人の言葉に子供は無理だと否定の言葉を告げた。それに眼を細める老人である。まだこの子は憧れを抱いていないのだ。確かにその心には『正義の味方』がカッコいいという感情はあるが、それが憧れに変わっていないだけ。老人は知っている。後、数年もすれば、この子供はとある人物と出会い『正義の味方』に憧れるのを。彼は
「なら少年、もしも、もしもだよ。人を助けられる力があれば、なにをする」
「そんなの助けるに決まってるじゃん」
次の言葉に、子供は考える素振りすら見せずに即答した。その事に、本当に『正義の味方』なのだなと頷く。そしてそこで老人は本題に入る事にした。
「少年。実はね、俺は
「………は? なに言ってるんだよおじいさん」
突然告げられた言葉に、子供は信じられないのだろう。呆気に取られて、ジト目で老人を見据えた。対して老人は、子供の方に手を差し出した。いきなりの行動に訝しむ子供だが、次の瞬間に眼を大きく見開く事になる。ボゥッと老人の手から炎が迸ったのだ。初めての超常現象に、少しやり過ぎたかと老人は胸中で呟くが、暫く迸る炎を見た子供は声を大にして叫んだ。
「なんだ今のっ⁉︎ おじぃさん如何やったんだ⁉︎」
「クスッ。今のが魔法だよ」
やはり、こういうのに憧れていたのか大はしゃぎする子供に、今のが魔法だと答えた。それに子供は先程の光景を思い出しているのか上の空だ。これで信じてくれる気になっただろう。
「これで分かっただろ少年。俺は魔法使いなんだ」
「魔法使いって凄いなっ」
「と、そこでだ少年。君も魔法使いになってみたくはないかい?」
「……………え?」
そこで突然の老人の提案に子供は暫く硬直した。だが、意味を理解すると満面の笑みを浮かべて叫ぶ。
「なりたいっ‼︎」
元気良く答えた子供に老人は、笑顔で頷いた。こうして、ここに一人の子供と奇妙な老人が出会った。この出会いにより、子供の未来が人生が大きく変化するなど、老人以外は予想出来ない。