Fate〜衛宮士郎の救済物語〜   作:葛城 大河

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士郎少年が性能的にぶっ壊れます。


プロローグ2 こうして少年はバグっていく

アレから既に一週間が経っていた。取り敢えず、魔術を教える条件として、この事は誰にも、両親にも内緒にして話しては駄目だと言い。それさえ守れば、魔術を教えると約束した。そしてその約束を子供はちゃんと守り、老人と出会った場所である公園で毎日通い始めたのだ。この一週間、子供は基礎体力を付ける為に毎日、ランニングしたり老人の言う通りに筋トレをしている。

 

 

「ふむ、そろそろだな。少年、ちょっとこっちに来てくれ」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……分かった」

 

 

荒げた息をなんとか抑え、ふらふらながらも、子供は老人の元にへと歩いていく。そして歩き終えるとそこで、座って老人の話を聞く大勢になる。

 

 

「少年。そろそろ君の魔術回路を開こうと思う」

 

「魔術回路ってアレ。魔術を使う為の奴」

 

「そうだ」

 

 

この一週間、なにも筋トレだけをしてきた訳じゃない。少しの時間の間に魔術というものがどんなものなのかを教えていたのだ。そのお陰か、子供はある程度、魔術の事を詳しくなっていた。

 

 

「今からその魔術回路を開く。少年、眼を瞑るんだ」

 

 

その魔術師にとって重要な魔術回路を開くと聞けば、ワクワクが止まらない子供である。彼は老人の言われた通りに眼をギュッと瞑った。しかし、子供の体は興奮を隠せないようで、揺れていた。

 

 

「それでは開くぞ」

 

 

そしてそんな子供の頭の上に手を乗っける。魔術回路は、無理やり開けば、激痛を伴う。その事は老人は百も承知だ。故にゆっくりと、痛みを感じない程にゆっくりと魔術回路を開いていく。これが老人の力の一つだ。数分が経つと完全に魔術回路が開き切った。しかし、

 

 

(やはり、原作と同様に少ないな。よし、ここからが本番だ)

 

 

子供の魔術回路の少なさに呟くが老人は気を取り直して、ここ数十年使っていなかった力を解放した。自分がこの世界に転生して、神から与えられた数多くの特典の一つ。『拡張』。自分の任意でどんなものも『拡張』させる力。そしてその力は今、子供に向けられて行使されていた。老人が『拡張』させる対象は、子供の魔術回路である。回路が『拡張』され、幾つも増えていく。三十、四十、五十、六十、七十、と十単位で『拡張』を続けた。それを数十分と続け、漸く終わらせた。

 

 

(これでよし。数えるのが面倒な程に魔術回路は『拡張』したからな。後は、解析か)

 

「…………おじぃさん。もう眼を開けても良いのか?」

 

「うむ、良いぞ。それと少年、もう一つ用があってな、俺の眼を見てくれ」

 

「用ってなん…………」

 

 

そこで子供の言葉が途絶えた。何故なら、眼を開けて言われるがままに、老人の瞳を見て驚愕した。何故なら老人の瞳には虹色に輝く雫(・・・・・・)が浮かび上がっていたのだから。『全ての式を解く者』。それが今、老人が使用している魔眼の正体だ。その瞳に分からない物はなく、世界全ての式を解析し、完全に読み解く魔眼。序でに読み解いた式を分子や砂に変換させる事が出来る最強クラスといってもいい瞳だ。

 

 

この魔眼の力があれば、例え星の最強種でさえ、解析出来てしまうだろう。その魔眼を老人は代償なし(・・・・)に使えるのだ。その魔眼を浮かばせた老人は、次の段階に移行した。今、自分が使っている『全ての式を解く者』を子供に『譲渡』した。瞬間。老人の瞳から虹色に輝く雫の文様が消え、子供に現れた。そして、その両眼で子供は世界の全てを解析した。

 

 

ーーー理解出来る。

 

 

何故か分からないが、今、自分は世界全ての構成と構造が理解出来、尚且つ如何すれば解除(・・)出来るかも分かってしまった。今、子供は視界に映るその全てを掌握したのだ。その異常性に子供は、分からない。

 

 

(これで完璧な解析が出来るな。最後にもう一つ付け加えるとするか)

 

 

呆然とする彼の姿に、頷き、駄目押しと言わんばかりに手を頭の上に翳した。老人はとある魔術を発動する。自身の知識を植え付ける魔術。といっても、原作知識を植え付ける訳ではない。では、なにを植え付けるのか?

 

 

子供が得意とする魔術は二つ。いや、実際には一つだ。投影魔術。魔力を元に武具を生成する魔術。本来は中身がないハリボテしか出来ないソレは、子供の中に現れるだろう固有結界によって半永久的に存在する事が許されるようになる。故に見せる知識は、ただ一つだ。老人が前世で知り記憶した、英雄達が持つ宝具の数々。星の恩恵を持つ聖剣、その聖剣の姉妹剣でもある太陽の剣、あらゆる魔術や契約を破棄する歪な刃をもつ短剣、因果律逆転の呪いをもつ真紅の槍。

 

 

あげれば切りがない。宝具の数々。それを子供の記憶に植え付けていく。勿論、幼い子供の脳に負担がかからないようにだ。それともう一つ、子供の体にとある力を付与させた。それは彼の中にある固有結界を十全に使えるようにする為にだ。

 

 

老人はある特典を神に頼んだ。それが『隠蔽』。あらゆるモノを隠し欺く力。この力があった故に、誰も老人の力に気付く事なく、こうして平和に暮らせていた。だが、残り僅かな命となった老人は、その『隠蔽』の力を子供に『譲渡』した。しかし老人が子供のなにを『隠蔽』させるのだろう。

 

 

それは子供の存在を別の者に『隠蔽』させる為だ。固有結界は本来、悪魔や精霊種などが持つ力だ。精霊種が作ったものでない限り、顕現した心象風景という『異世界』には世界からの修正が働く。故に、人間が固有結界を発動すれば、維持するのに莫大な魔力を使ってしまい大魔術師でも数分が限界なのである。二十七祖クラスの死徒ですら数時間しか維持出来ない。

 

 

だからこそ、老人は子供に対して『隠蔽』を行う。世界に抑止力に人間ではなく、精霊種として。世界の一部として。

 

 

これにより、子供の運命(Fate)は大きく変動する。一つの出会いにより、変わる物語。これは悲劇ではなく、『正義の味方』が起こす喜劇でしかない。

 

 

原作通りに大火災に巻き込まれ、ある人物に拾われ衛宮士郎となった日、『正義の味方』に憧れを抱き、そこから老人が亡くなった数年後に物語は始まった。

 

 

さぁ、始めよう。転生者によって変えられた『正義の味方』の物語を。

 

 

 

 

 


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