Fate〜衛宮士郎の救済物語〜   作:葛城 大河

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如何なってるんだ⁉︎ 息抜き作品の筈なのに、お気に入りが二千越えだとッ⁉︎

こ、これじゃ途中で辞める事も出来ないじゃないか(汗

そして今回の話は、士郎君の新たな力? が出て来ました‼︎ まぁ、最後らへんですけどね。一体、転生者のお爺さんは、士郎君をなににしたかったのか。

それでは、楽しんでください‼︎


第三幕 二人のバーサーカー

静寂。誰もが喋らない無音が続く中、銀髪の少女が大男を従えて、凛とした言葉を発した。

 

 

「こんばんは、お兄ちゃん。こうして会うのは、初めてだね」

 

 

美しく微笑むその少女の言葉に、士郎は疑問を覚えた。その言い方では、まるで自分を知っているようではないか。だが、勿論、士郎は目の前の少女の事など知らない。忘れてるいると言われれば、それまでだが。妖精のような少女の姿をはたして、簡単に忘れるだろうか。

 

 

 

「驚いた。貴方のバーサーカー、他のサーヴァントと比べると段違いじゃない」

 

 

そして隣から驚きを含んだ声が発せられた。少女は士郎から視線を隣に移して、一歩前に進むと、自分のスカートを少し上げてお辞儀する。

 

 

「初めましてリン。私はイリヤ…………イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。アインツベルンと言えば、分かるでしょ?」

 

「…………アインツベルン」

 

 

恐らくはなんらかの家系なのだろう。隣に居る遠坂が、ポツリと呟いた。すると、霊体化していたアーチャーが遠坂に聞いた。

 

 

「凛、如何する?」

 

 

それはここで戦うか、それとも撤退するかの質問。だが、撤退するなど選べられない。撤退を選べば、背後からあのバーサーカーが強襲してくると簡単に予想出来るからだ。あの怪物のようなサーヴァント相手に撤退など悪手。ならば、ここは向かいうつしかない。ふぅ、と遠坂はゆっくりと息を吐いとアーチャーに指示を出した。

 

 

「アーチャー。貴方は本来の役割に徹して」

 

「…………了解した」

 

 

本来の役割。それは即ち、弓兵としての超遠距離攻撃だ。その指示に頷きを一つ返し、アーチャーはその場から離れた。チラッと一瞬、士郎に視線を向けて。アーチャーが離れて行くのを士郎は眼で追ってから、銀髪の少女に向き直り、腰を低くして戦闘態勢を取った。もうすぐ、この場が戦場にへと変わる。気を引き締めなければいけない。

 

 

何故ならあの大男が、解析の結果通りなら、油断は出来ない。彼は静かに目蓋(まぶた)を閉じて最強の自分をイメージする。これは一種の戦闘前のルーティンだ。そして少女ーーーイリヤは、士郎達の戦闘準備を待っていたのか、こちらに視線を向けた。

 

 

「もう準備は終わった? なら初めちゃて良い? じゃあ殺すね。やっちゃえ、バーサーカー」

 

 

軽く言うイリヤの言葉。その言葉で、いままでなにもせずに屹立(きつりつ)していたバーサーカーは動き出した。筋肉が膨張し、右手に持つ斧剣を振り上げて咆哮を上げる。

 

 

『オオォォォォォォォォォォォッッッ‼︎』

 

 

空間が震える程の咆哮。そして己のマスターの(めい)に従い、鋭い眼光で見たバーサーカーは、地面を踏み砕いて、数十メートル跳躍して、士郎達の方へと落ちていく。

 

 

「シロウ‼︎ 下がって‼︎」

 

 

戦う姿勢の士郎の前にセイバーが前に出て、下がる事を促す。そして落ちてくるバーサーカーを向かい打とうとするが、何処からか迫ってきた数本もの矢が、バーサーカーの背中に当たり爆発した。だが、バーサーカーは平然と地面に着地し、次々と放たれた矢を、その斧剣で打ち落とす。が、死角からの矢に命中して、大きな爆音を響かせた。土煙が舞い、地面を抉り取る。

 

 

普通のサーヴァントなら、傷を負うだろう。しかし、目の前に居るバーサーカーは生憎普通ではない。

 

 

『グルルルルアアア』

 

「嘘っ⁉︎ 効いてない⁉︎」

 

 

当たった筈にも関わらず、バーサーカーは全くの無傷。傷らしい傷一つ付けられていなかった。バーサーカーは、腰を落とし足で地面を掴むと、一気に蹴り飛ばす。ドゴン‼︎ と足元が爆ぜ驚異的な速度で移動した。遠坂は近付くバーサーカーの狙いに気付き叫ぶ。

 

 

「ッ⁉︎ 衛宮君ッ⁉︎」

 

「…………ッ」

 

 

しかし、士郎の眼には近付いてくるバーサーカーの姿がちゃんと捉えられている。彼の真横に止まると、右手の斧剣を士郎の体めがけて振り下ろす。風を切り裂くその一撃を、だが、彼は恐れずに息を吐いた。そして投影魔術を使おうとするが、その前に後ろから走り寄ってきていたセイバーが、士郎の前に躍り出てバーサーカーの一撃を不可視の剣で受け止めた。斧剣と不可視の剣の激突により、周囲に衝撃波が発生する。

 

 

セイバーは受け止めた斧剣を、流して裂帛の気合いと共にバーサーカーの体を斬りつけるが、剣と体の間に斧剣が差し込まれる。だが、セイバーは関係ないとばかりに、体を吹き飛ばした。轟音を鳴らし、吹き飛んだバーサーカーは、しかし何事もなかったように着地する。見合う形になった二人のサーヴァント。

 

 

『グォォォォォォ』

 

「…………ふっ‼︎」

 

 

そしてまた戦闘が始まった。肉薄するセイバーを、叩き潰そうと斧剣を振り下ろすが、彼女は意に介さずに斧剣を掻い潜って避けると同時に、剣を振るう。しかし、巨体に似合わない俊敏さで、斧剣ですぐさま迎撃した。続いて何度も剣を振るうセイバー。だが、バーサーカーはそれらを全部弾き序でとばかりに斧剣を叩きつけた。剣で防いだセイバーだが、余りの力に体が五メートル程下がった。

 

 

しかし、彼女は負けずにまたバーサーカーに向けて突撃した。ぶつかり合うセイバーとバーサーカーを見ていた遠坂は、驚いた風に叫ぶ。

 

 

「あの肉達磨。見えない剣が、見えてるの⁉︎」

 

「……………」

 

 

対して士郎は、その隣でセイバーとバーサーカーの動きを観察していた。魔眼の力を最大限利用して、二人の戦闘を見据える。足捌き、体重移動、剣の振り方、戦いで使われる様々な動作を鋭い視線で見ていく。すると、戦っている二人の戦況が変化した。

 

 

「…………強い」

 

 

振るわれた斧剣を跳躍で躱してセイバーは呟く。と、同時に地面を蹴り、一瞬でバーサーカーの懐に入り込むと腹部に斬撃を放つ。が、斧剣で防がれ剣を弾かれる。そして勢い良くバーサーカーは斧剣を振り上げて、そのまま振り下ろした。ズンッ‼︎ とセイバーが避けた事により、地面に減り込む斧剣。その好機をセイバーは見逃さない。持ち上げようとする斧剣に、セイバーは足で押さえつける。斧剣の上でバーサーカーの首筋に向かって、剣を横一閃に振るった。

 

 

間違いなく当たる斬撃。離れた場所で遠坂が「殺った‼︎」と言っている。しかし、首筋を当たる直前、バーサーカーは容易く自分の得物である斧剣を手放すと、体を背中側に反らせ剣を躱すと同時にバク転をしながら蹴りを放つ。それを紙一重で避けるセイバーに、拳と蹴りで追撃するバーサーカーだ。

 

 

巧い。その戦いを見ていた士郎は、胸中で呟いた。バーサーカーとは思えない。それ程の技量だ。セイバーがその場から離れると、バーサーカーは地面に減り込む斧剣を左手で掴む。その姿を見たセイバーは、感服するように言葉を紡いだ。

 

 

「さぞ、高名な英霊なのだろう。狂気に呑まれようと、失われぬ太刀筋。感服するほかない」

 

 

剣を構え直すセイバー。それに遠坂は、アーチャーに指示を出した。

 

 

「アーチャー。援護‼︎」

 

 

その数瞬後、遠く離れた場所から赤い光が光ったと思ったら、動かないバーサーカーの体に矢が命中した。爆発が巻き起こる。その光景に傍観していたイリヤが、ため息が士郎の耳に聞こえた。まるで無駄だというように。そのイリヤのため息が次で分かった。

 

 

バーサーカーは悠然と、その場で立っていた。アーチャーの矢など当たっていないかのように。無傷で。その理由を士郎は看破していた。あのバーサーカーを解析して、脳裏に現れた単語。『十二の試練(ゴッドハンド)』。恐らくソレが、全くダメージを負わない原因だ。士郎はゆっくりの息を整えた。そろそろ自分の番が来る。

 

 

その間にセイバーはバーサーカーと戦闘を繰り返しており、それに遠坂が走りなんらかの宝石を投げて魔術を発動させた。すると、バーサーカーは重圧によって膝を付く、そんな隙にアーチャーの数本もの矢が全て無防備の背中に突き刺さり、先程とは比べものにならない程の爆発が起きる。だが、それすらも『十二の試練(ゴッドハンド)』を突破するのに至らない。

 

 

その事に呆然となる遠坂だ。そしてセイバー達の戦闘は激しさを増して行き、戦いながらセイバーは場所を移動して行った。サーヴァントが居なくなり、イリヤは移動したバーサーカー達を歩いて追いかける。それに視線を向けてから、遠坂は士郎に逃げるように言葉を告げようとした所で、遮られる。

 

 

「衛宮くn…………」

 

「遠坂。俺は行くよ」

 

「はぁ⁉︎ ちょ、衛宮君貴方正気なの⁉︎」

 

 

信じられない発言をする士郎に、驚愕して遠坂は聞き返した。それに集中する為に閉じていた目蓋を開き、両眼に虹色に輝く雫の文様を浮かばせて士郎は答える。

 

 

「俺は正気だよ遠坂」

 

「ッ⁉︎ 衛宮君。貴方、その眼は」

 

 

魔眼を向けて大丈夫だと言う士郎に、眼を見開く。彼の両眼にある虹色の魔眼に驚愕して、まるで全てを見透かされたかのような錯覚を覚えた。そして士郎は、全身を脱力させると。体を強化魔術で強化し、遠坂の返事を聞かずに、セイバー達の後を追う為に走った。

 

 

「ちょっ⁉︎ 衛宮君⁉︎」

 

 

走り去る士郎に向けて叫ぶが、最早、彼の耳には聞こえずに辺りに木霊するのだった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

教会。その中で一人の神父が、立ちながら本を開いて、言葉を紡いでいた。

 

 

「多くの声。多くの欲が貴方を惑わす。語りは安く、偽りは人の常…………」

 

「………口元が歪んでいるぞ、聖職者。人に見せられたものではないな」

 

 

神父の言葉を遮り、一人の男の声が教会内に響いた。その男は最後尾の椅子に座っていた。金色の髪をした男。神父は本を閉じて、視線を向けずに口を開く。

 

 

「そう見えたかね?」

 

「見えたとも。鉄面皮(てつめんぴ)に相応しい笑みであった。良い出会いでも会ったのか? 綺礼」

 

 

そこで金髪の男は神父の名を告げた。それに神父ーーー言峰綺礼は、言葉を返す。

 

 

「まぁ、そうだな。旧い知己(ちき)に再会した気分だ。嬉しくない筈がない」

 

 

そこで言葉を切り、言峰は体を金髪の男に向けてから口を開いた。

 

 

「………貴様の言っていた通り、僅か十年で聖杯戦争は始まった。監督役として、此度(こたび)こそ奇跡の成就(じょうじゅ)。聖杯の実現を願うのみだ」

 

「この地が、地獄になろうともか?」

 

「それは私の預かり知る所ではないよ。競い合い、殺し合い、踏みにじるのは、マスターの役割なのだから」

 

 

そして言峰は笑った。金髪の男も同様に笑う。

 

 

「主は天にましまし、血の罪全てを許される。ふむ、まずは待とうではないか。初戦の結果がどのようになるのかを」

 

 

言峰のこの言葉を最後に、会話はなくなった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

士郎は走っていた。耳に聞こえる爆音と、戦闘が起きたであろう跡を目印にして。戦いの足跡を踏み越えていき、士郎は精神を集中させる。もう少しだ。もう少しで追い付く。バーサーカーの咆哮と、剣戟の音。それを耳にしながら、士郎は墓地に着いた。そしてその墓地で戦いが繰り広げられていた。

 

 

バーサーカーに一筋の切り傷が出来ている事に、士郎はセイバーの剣なら奴の体を貫けれると理解した。今、バーサーカーはセイバーの相手をしていて、こちらを警戒していない。いや、警戒をする必要はないと思っているのか。舐められたものだな、と呟く士郎。そして士郎はもう一つのルーティンを心の中で呟いた。

 

 

(ーーーーI am the bone of my sword(体は剣で出来ている))

 

 

ただの武器では駄目だ。あの岩のような体は断てない。破壊力が必要だ。バーサーカーの体にダメージを与えられる程の。なら、自分の知る中で、最も良い奴があるではないか。ついさっき、あの真紅の槍を持つ男に対して使った『宝具』が。士郎は己の右手に作り出す。あのバーサーカーと同じ斧剣を。ズシッ‼︎ と質量を持つソレを、士郎は斧剣に眠る持ち主の力を憑依経験させる。

 

 

瞬間。一瞬だけ、士郎の筋肉が膨れ上がった。準備は完了した。後はーーー

 

 

「さぁ、バーサーカー。(ヘラクレス)の力と、あんた(ヘラクレス)の力。どっちが強いか試そうか」

 

 

重さを感じさせないように、右手で斧剣を持ち肩に担ぐ。そして、今だにセイバーと剣を打ち合わせるバーサーカーに向かって、地面を蹴り飛ばした。次の瞬間ーーー数メートルの距離が一瞬にしてゼロになり、バーサーカーの懐に潜り込んだ。

 

 

『グオォォォォォォォッッッ‼︎』

 

「なっ⁉︎ シロウ⁉︎」

 

 

セイバーの驚きの声が耳に聞こえる。しかし、彼はなんの返事も返す事なく、バーサーカーただ一人を見据えていた。そして士郎の斧剣と、バーサーカーの斧剣が激突する。本来ならただの人間が、バーサーカーと打ち合う事は自殺行為だ。しかし、

 

 

「やっぱ、本物は凄いな」

 

『グルルルルル』

 

「そんな事が…………」

 

 

士郎とバーサーカーの力は拮抗(きっこう)していた。余りにも体重差があり、なによりも人間である少年が神代の時代の大英雄と拮抗しているというあり得ない状況。そんな己のマスターの規格外さに呟くしかないセイバーだ。ギギギギギギギギッッッ‼︎ と互いに斧剣で鍔迫り合いする二人。だが、数秒間、そうする状態が続いても、一向に変わらない士郎とバーサーカー。

 

 

「バーサーカー。そろそろ、行くぞ」

 

『グルルルルルル』

 

 

バーサーカーに向けて告げる士郎に、唸り声が返ってくる。そして斧剣に込めていた力を抜き、士郎はバーサーカーの横に移動した。突然、拮抗していた力がなくなり前に倒れこむバーサーカー。しかし、踏み留まり、バーサーカーはギロリと鋭い眼光を向けて斧剣を頭上から振り下ろす。それを同じ斧剣で、弾き返してから、胴体を狙って薙ぎ払う。が、バーサーカーの蹴りが士郎の斧剣の側面を蹴飛ばし、彼の態勢が崩れる。

 

 

そこに立て直したバーサーカーが斧剣で襲う。だが、それを態と地面を蹴って後ろに跳躍する事により躱す。地面に着地した士郎はすぐさま、バーサーカーに肉薄した。

 

 

「シロウ。貴方は、一体」

 

 

セイバーは目の前で繰り広げる戦闘に眼を見開く。それは人の戦いではない。それは神話の戦いの再現。巨大な斧剣という質量を持ちながら、しかし、全く重さを感じさせずに周りを駆け巡り激突する両者。一人は分かる。バーサーカーのあの体があれば、あの武器を使いこなせるのは分かる。だが、セイバーはそんなバーサーカーと互角に戦う自分のマスターが信じられずにいた。

 

 

マスターは衛宮士郎は人間だ。なら、何故あのような戦闘が可能なのか。魔力が膨大だという事は、召喚されて分かった。何故ならそれに伴い、自身の力が生前に限りなく近付いているからだ。それでもこの光景は信じられるものではない。確かにランサーとの戦いで、『宝具』の効果を消した事には驚愕した。だが、それだけではなかったのか? セイバーは知らない。

 

 

自分が召喚される前、味方が誰も居ない状態で、ランサーを相手にたった一人で彼が相手にしていたという事を。再度、戦いの場を見てセイバーは呟いた。

 

 

「…………シロウ。貴方は一体、何者なのですか」

 

 

そんな少女の疑問に誰も答える事はなかった。

 

 

「ーーーーはぁぁぁぁぁッッッ‼︎」

 

『グガァァァァァァァッッッ‼︎」

 

 

士郎とバーサーカーの斧剣が激突して、衝撃波が発生する。一体、何回目の衝突だろうか? 士郎は斧剣をぶつけながら、そう考えた。だが、すぐに無用な考えだと至り、今の戦いに集中する。バーサーカーのギラギラと燃えるような瞳には、狂気の欠片はなく必ず士郎を倒すという意思が感じられた。それに士郎も答えるように、鋭い視線をバーサーカーに向ける。次の瞬間。

 

 

士郎とバーサーカーが同じタイミングで、離れてお互いに横に並んで移動する。と、急に立ち止まったバーサーカーは、士郎に横一閃に斧剣を振るった。風を切り裂きながら迫るソレに、しかし士郎は笑みを浮かべて、まるで刀を扱うかのように斧剣でいなした。と、同時に手が届く位置に居るバーサーカーの腕に左手を添えた瞬間。

 

 

グルン、と。バーサーカーの巨躯が、面白いように回り地面に叩き付けられた。

 

 

『グルルルルルアアアアアァァァァァァァッッッ‼︎』

 

 

だが、地面に叩き付けられた程度では、バーサーカーには傷一つ付かない。士郎もそれは百も承知だ。しかし、バーサーカーには隙がない。あの『宝具』を貫く事は出来る。だが、そのタイミングがない。という事は、まだ自分はバーサーカーを超えていないという事。バーサーカーを圧倒し、力を放つタイミングを作らせる。だからこそ、見せろ。

 

 

お前の武器の使い方を、体の動かし方を、戦闘における全ての技術を。衛宮士郎に吸収(・・)させろ。まだ自分は未熟だ。戦う術を持つが、圧倒的に戦闘経験が少ない。故に、それを補う為に観察するのだ。自分は未だに未完なのだから。

 

 

『グォォォォォォォォォォォォォッッッ‼︎』

 

 

バーサーカーが動く。斧剣を振り下ろす。それを士郎はバーサーカーの腕の動きと、腰と足の動きを見てから、無駄を省いた体捌きで避けて見せた。ヴォォォォンンンッ‼︎ と鼻先数ミリの所を斧剣が通過する。士郎の動きが、足捌きが、体捌きが、戦う際に使うであろう肉体の全てが、バーサーカーとの戦闘で磨かれ昇華していく。その光景を見たセイバーとアーチャーは戦慄した。

 

 

強くなる。あの男は戦闘を長く続ければ続ける程に、あらゆる要素をその身に吸収(・・)させて、無限に強くなる。一度目の攻撃を躱し、二度目の攻撃をより精錬させて躱す。一度目の攻撃を放ち避けられ、二度目の攻撃は一度目と比べられない程に鋭く疾い。現にバーサーカーは、徐々に士郎の斧剣の一撃を防ぎきれなくなっていた。アレはもう人間の動きではない。

 

 

英雄の領域だ。いや、このまま行けば衛宮士郎は、一体何処まで行くのだろうか? セイバーはそんな未来の士郎を考えて、背筋が寒くなった。すると、轟音が響いた。そちらに顔を向けると、全身傷だらけのバーサーカーが、士郎の体を素手で殴って吹き飛ばしている光景があった。

 

 

「ッ⁉︎ シロウッ⁉︎」

 

 

吹き飛んだ士郎に、セイバーが心配そうに声を上げた。それに士郎はゆっくりと立ち上がる。バーサーカーに殴られたのにも関わらず、士郎は少ししかダメージを負っていない。

 

 

「まだだな。まだ、俺の回避は甘い」

 

 

そして呟くのは、自分の回避にまだ改善点があるということだ。唸るバーサーカーに視線を向けて、笑みを浮かべる。

 

 

「まだまだ、俺に教えてくれ。戦い方をな」

 

 

斧剣を構えてそう告げる士郎。対してバーサーカーも斧剣を構えた。次の瞬間。何度目かの激突が行われた。これにより、第二ラウンド開始である。

 

 

 

 

 

 

 

 




という事で士郎君の新たなバグでした‼︎ なぁにこれ(白目

士郎君、一体何処を目指しているんだい。
という訳で二人のバーサーカーでした。あれ? サブタイトルの剣士と弓兵が活躍していない。


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