拳の一夏と剣の千冬   作:zeke

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第14話

白式を展開した一夏の前にはセカンドとそのIS『甲龍』が試合開始の時を待っていた。ブルー・ティアーズ同様非固定浮遊ユニットが特徴なそのISの肩にはやたら攻撃的な主張をしていそうな棘付装甲がある。

 

 

「一夏、今謝って素直に私の婿に成るならボコるレベルを下げてあげるわよ」

 

「はっ!だったら尚更手前の婿には成れねえな!!俺が欲しけりゃ、俺を降しやがれ」

 

オープンチャンネルで話しかけてくる鈴に一夏は返答しながらも敵―セカンドのISの観察に専念する。セカンドの手には青龍刀と呼ぶべきか悩ましい、両端に刃が付いた武器を持っており、恐らく武器系統で分類するなら槍と分類するのだろう。

 

『両者既定の位置まで移動してください』

 

アナウンスに促され一夏と鈴は空中で向かい合う。その距離は5メートル。

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

ビーッとブザーが鳴り響くと共に鈴と一夏は互いに動いた。

 

最小の速度で一夏は地面に向かって加速し、鈴は一夏が居た場所に加速して動いた。

 

 

「あんた、何する気よ!」

 

「馬鹿か手前!誰が手の内を相手に見せるかっつ~の」

 

そう鈴に返答した一夏の手には巨大な大剣雪片弐型が握られており上段に構えた状態で地面に向かう。

そして、地面に激突するような形で地面に降り立つと同時に、雪片弐型で地面を叩きつける様に斬る。

 

土煙が一夏を中心に舞い上がる。

そして地面に亀裂が入り雪片弐型が半分以上埋まるとそのまま雪片弐型を中心に入った亀裂を広げる様に思いっきり雪片弐型を動かす。

すると、幾つもの堅い土塊が出来あがり一夏は雪片弐型を収めその土塊を持ち、先程まで自分が居た場所にいる鈴に向かって投げつける。

 

ISによって威力と速度が通常よりも増したそれは、僅かかもしれないがダメージを与えるには十分だった。

 

何しろ、弾と呼べるかわからないが一夏が投げているのは所詮堅い土塊。アリーナの地面として敷き詰められている為、手元に投げる土塊が無く成ればまた作ればいいのだ。

 

最初の2、3回攻撃を食らった鈴のシールドエネルギーに4、5のダメージを受けるが、鈴の性格なのか

 

「ええい、鬱陶しい」

 

手に持つ青龍刀で一夏が投げてくる土塊を斬って防ぐも次第に土塊を投げてくる速度は上昇する。

 

「ああ、もう!ちゃんと戦いなさいよ!」

 

土煙で見えない一夏に怒鳴りつけるように言うが

 

「は!俺の武装は雪片弐型のみ。遠距離武装がねえ。ねえのなら……作りゃあ良いだけだよなあ!?つ~わけでセカンド。俺の的に成ってもらうぜ!ヒャハハハハ」

 

との事。

 

激しさを増す一夏の投石。

それを捌く鈴

 

「ああ、もうウッザイ!」

 

痺れを切らした鈴が加速して一夏が居るであろう投石のもとに向かう。

その手にはしっかりと青龍刀が握られており、一夏を強襲した後にすぐさま攻撃するつもりでいた。

 

加速し、土煙の中に突っ込む。

ただただ、一夏を目がけて土煙の中をまっすぐに直線距離で突き進む。

その間に投石によって80のダメージを与えられるが、残りのシールドエネルギーを考えればさほど問題無い。

 

見つけた。ただ、まっすぐに土煙の中、直線距離を突き進むと一夏が視界に映った。

肉眼では発見しづらい、それをISのハイパーセンサーの補助機能によって確認すると攻撃を行おうと加速しながら青龍刀の攻撃範囲内まで一夏に近づき、青龍刀の攻撃で斬りつけようとすると、上段からの攻撃がISの補助機能によって知らされ、とっさに持っていた青龍刀を盾にして防御する。

 

しかし、防御をしたにも関わらず鈴は体勢を崩しながら大きく後方に押し出されてしまった。雪片弐型の重さに振り下ろす速度と力が加わった事で、凄まじい威力となり鈴の許容量を超えた一撃になったのだ。

その攻撃は雪片弐型の重さ+振り下ろされた速度によって生み出されたのだ。

 

 

 

「くっ、この!」

 

鈴の持っていた青龍刀が変化した。

槍の様だった青龍刀が半分に成り、連結によって槍の様に成っていた青龍刀が本来の姿である二本の青竜刀に戻ったのだ。

 

二本の青竜刀で一夏に斬りかかる鈴。

 

 

一夏は振り下ろした大剣の雪片弐型をクルリと体を回転させて担ぐと再び振り下ろす。

その縦の斬撃は大剣で振り下ろされるものとは思えないほど速かった。

 

普通、大剣は一撃一撃が重く一撃必殺を生業とする。長所は普通の剣よりもリーチが長くその重い重量によっての威力は武器の中でも上位に入る。

大剣の上段を普通の刀で受け止めれば折れる。だが、短所は重過ぎるその一撃の後を躱せば、後は連撃による追撃を普通心配しなくて良いと言う事だ。

 

だが、一夏の攻撃は大きく押された鈴が素早く反撃に向かい普通ならば、追撃や連撃が無いであろう攻撃を一夏が行っていると言う事だ。

 

「「ハア!」」

 

一夏の大剣である雪片弐型による縦の斬撃を鈴は正面から二本の青龍刀で受け止める。

押され気味に成る鈴だが、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「掛ったわね!」

 

鈴の肩アーマーがスライドして開く。

それは、鈴のISに搭載されている『衝撃砲』だった。その衝撃砲は空間自体に圧力をかけて砲身を生成し、余剰で生じるエネルギーを砲弾とする為、砲身と砲弾が見えない事が特徴の武装だ。

 

中心の球体が光り、今にも一夏を攻撃しようとした瞬間鈴は腹部に衝撃を受けると共に大きく後ろに仰け反る。

 

弧を描く様に宙を舞う鈴。

何が起きたのか解らなかったが、すぐさま腹部による痛みに一夏が自身を蹴り飛ばした事が分かる。

 

すぐさま体勢を立て直そうとした時、すでに一夏は鈴のすぐ近くにいて、それは雪片弐型が再び振り下ろされる瞬間だった。

 

鈴が体勢を立て直せた時には、すでに雪片弐型が鈴の右肩アーマーを切り裂いた後だった。その損傷具合から右肩の衝撃砲が使えない事を思い知らされる鈴。

 

すぐさま一夏から距離を取ると一夏は大声で言う。

 

「その光りそうになった肩のアーマーを片方だけだが、ぶっ壊させて貰った。どんな攻撃だったのか知らねえが元が壊れりゃ使えなくなるのが通りよな。それと、どうしたセカンド!手前の強さはこんなもんか!?お前の力は、手前の俺に対する想いは!こんなもんか!」

 

ギリッと歯ぎしりする鈴。

 

「言ってくれるじゃないの!いいわよ!見せてあげるわよ!!」

 

再び加速する鈴。

それに対応する一夏。

ガキーンと金属音が鳴り響き、一夏の大剣である雪片弐型と鈴の二本の青竜刀がぶつかり合う。

 

「どうした!?手前の本気はこんなもんか!?お前の全力は!お前のマジってやつを俺に見せてみろや!」

 

「言って…くれるじゃない!!」

 

両者は拮抗。いや、一夏の方が未だ有利である。

鈴は加速して一夏に攻撃を仕掛けているが一夏は最初土煙を巻き起こした時から加速を行っていないのだ。

 

それに鈴には焦りもあった。先程一夏に蹴られた時に受けたダメージが装甲を破壊し、シールドエネルギーを190削っていたのだ。それにプラスして先程右肩のアーマーを壊され武装を一つ失ったのと、それによるダメージもあった。

 

獰猛な眼で鈴を見て嬉しそうに笑みを浮かべる一夏をみて、鈴は焦る。

 

(不味いわね。このままじゃジリ貧じゃない!)

 

一夏が喧嘩に強い事は解っていた。

鈴が小6の頃に転校してきてそうそう、良くあるいじめが起きた。

苛め主犯とその取り巻き達を一夏は一人で叩きのめしたのだ。

 

また、それでは飽き足らずに中学に入るとすぐに近隣の不良達を相手に一人で立ち向かい、叩きのめした。時には一夏一人対集団での戦闘もあったが、それをモノともせずに立ち向かい全てを道具を使用せずにぶちのめした。

 

それを見ていた鈴は一夏の強さが分かっていた。一夏よりIS稼働時間は長いのは確かだ。普通、IS稼働時間が長いと言うのはそれだけISに慣れていると言う事。

 

ただ、ISに慣れていると言っても戦いに有利なだけ(・・・・・・・・)でそれ自体が勝利に繋がるのではない。あくまで、戦闘をすると有利であるという要因であり、それ自体が勝利への要因ではないからだ。

 

「おらあ!」

 

構えなんて知らないと言わんばかりに雪片弐型によって押される鈴。

両手には青龍刀が握られているが、一夏が繰り出す雪片弐型の重い斬撃にどうしても体勢を崩される。

 

戦いが更にヒートアップして会場が盛り上がった時、

 

ズドオオオオオオンッ!!!

 

突然アリーナ全体に大きな衝撃が走った。

アリーナの一夏と鈴が戦っているバトルステージ中央には一夏が引き起こしたのではない土煙が舞い上がっている。

 

「何だぁ!?」

 

不機嫌そうに呟く一夏に鈴は寒気を感じた。

 

アリーナの遮断シールドを貫通して侵入してきたらしい『それ』に一夏は大声で声を掛ける。

 

「手前、何者だぁ!?」

 

しかし、土煙の中から返答は無い。

 

「もう一度訊くぜ。手前は何者だぁ!?返答次第じゃ、五体満足で帰れると思うなよ!」

 

鈴は自身が感じた寒気が恐怖による物だとこの時解った。何故なら、一夏の声に怒気が含まれていたからだ。

 

こわい。怖い。恐い。

 

恐怖が鈴の体を駆け巡る。

それは、かつて自分を苛めていた主犯やその取り巻き達に見せた一夏の顔だ。

 

――ステージ中央に熱源。所属不明のISと思われます。ロックされています。

 

一夏はハイパーセンサーが告げる緊急告知を見て、そうかと呟く。

 

「そうか……俺とセカンドの一対一の真剣勝負に水を差して、挙句の果てに無視した上でロックが返答と来たか」

 

「あー、参った。こんなにすぐに使うつもりじゃなかったんだけどな~」と呟きながら左手で唯一の武装である巨大な大剣雪片弐型を握りしめる。

 

右手でポケットに突っ込むと携帯電話の1と4のボタンと十字キーの真ん中の確定ボタンを押す。

 

それは、1が襲撃場所付近の扉から順にロックし、生徒や関係者を避難させ、避難し終わった扉から順にロックさせる、いわば内部からの襲撃を想定したもので、4はその防衛警戒レベルを現していた。

 

すぐさま学園のメインサーバーのコントロール主導権を握っている一夏の携帯電話からIS学園の防衛システム命令が発動する。

 

「そんなに、そんなにスクラップがお望みかよ!!それじゃあ、ご期待通りにしてやんよ!――さあ、楽しい楽しい処刑の始まりだ(It`s show time)!」

 

ポケットの携帯電話で防衛システムを作動させた一夏は自身をロックした相手がビーム光線を放って来ると共に加速。

鈴との戦いで一度しか見せなかった加速を惜しみなく使う。

 

一夏をロックした『それ』は、一夏に向かって煙を晴らす様にビームの連射を放つ。

 

『それ』が放つ攻撃を加速をしたまま体を傾ける程度の僅かな動作のみで避け、一切減速しないまま距離を詰め、あっという間に一夏の距離に入ると一夏は巨大な大剣である雪片弐型で未だ土煙の中にいる『それ』の右手を下段から上段に向けて斜めに斬った。

 

土煙が一夏の攻撃によって生じた風圧の為比較的広くに分散すると鈴は土煙の中にいて、空中浮遊する『それ』の姿を見る事が出来た。

 

一夏によって自身の切られた右腕が自分の上空を舞う『それ』は痛みを感じる事はあり得ず、血液を思わせるオイルが切り口から流れていた。

『それ』は、肩と頭が一体化したような形をしており左手がつま先まであるほど長く、全身が深い灰色をしている全身装甲の無人機だった。

 

『織斑君、凰さん!今すぐアリーナから脱出して下さい!すぐに先生達が制圧に向かいます!!』

 

オープンチャンネルで聞こえる山田先生の声を呆然と聞く鈴。その視線の先には一夏が映っていて一夏は口を動かさずにいた。恐らくオープンチャンネルをきっているだろうと思われるその様子を鈴は呆然と見つめていた。

 

 

★★★

「もしもし、織斑君聞いてますか!?凰さんも!」

 

オープン・チャンネルだけでなくプライベート・チャンネルで一夏と鈴に接触を試みる山田先生。ISのプライベート・チャンネルは声を出す必要は無いのだが、そんなことを失念する位真耶は焦っていた。

 

「落ち着け。コーヒーでも飲め。糖分が足りないからイライラするんだ」

 

「………織斑先生!入れ過ぎですよ!?」

 

千冬が砂糖を入れていたコーヒーカップには砂糖による白い山が出来ていた。

 

「………」

 

指摘され、更に入れようとしていた砂糖を容器に戻す。

 

「あ!やっぱり、弟さんが心配なんですね!?だから、そんなミスを―――」

 

「………」

 

嫌な沈黙だった。

正直なところ、一夏が心配なのは確かだ。一夏が暴走するかもしれないという意味で。

 

前と同じように一夏が暴走してしまえば、今いるメンバーで一夏を止めれる者はいないからだ。

生身でISを纏った千冬と互角かそれ以上の実力で戦った一夏が今現在ISを纏っているのだ。

まさに、鬼に金棒。

 

この状態で暴走されてしまえば、一夏を止めれる人物が居ない為IS学園の消滅すらもあり得るし、最悪の場合は世界を股にかけ無差別に争いを引き起こすかもしれない。

 

一夏が負ける事が想像出来ないが、世界を股にかけて無差別に争いを引き起こされるよりは一夏が負けてくれた方が確実に良い。

 

「あ、あの~」

 

無理やり話題を逸らそうとする山田先生に千冬はコーヒーと呼ぶに呼べない砂糖水を渡す。

 

「山田先生、コーヒーをどうぞ」

 

押し付けられる苦みと渋みを置き去りにされたMAXコーヒーを遥かに上回る甘さの激甘コーヒー。

 

「へ?それって、砂糖がゲレンデの如く降り積もっているやつですよね!?」

 

「熱いので一気に飲むと良い」

 

鬼が居た。悪魔が居た。――それは、織斑千冬という名の鬼畜だった。

 

「い、いただきます」

 

涙目で受け取る真耶。そのコーヒーを口に入れた瞬間、真耶は知った。

今まで味わった事のない甘さを。極限まで濃縮された甘味を。コーヒーなのに渋みや苦みが全く無く、甘さの身を研ぎ澄ませたコーヒーの存在を。

 

喉を潤す役割のはずの飲料が喉に絡む様を知った。

 

「織斑先生、私に出撃許可を!」

 

「そうしたいのは山々なのだが、これを見ろ」

 

ブック型端末を数回タッチすると表示画面が切り替わり、それをセシリアに見せる。

それは、現在使用している第二アリーナのステータスチェックだった。

 

「遮断シールドがレベル4に設定!?しかも、アリーナのステージにつながる扉が順にロックされて――あのISの仕業ですの!?」

 

本当は一夏の仕業なのだが、それを確かめる術を千冬は勿論、セシリアや真耶は持っていなかった。

 

「そのようだ。これでステージに行く事は出来ずにいる。幸い生徒と関係者の避難だけは済んだのだが」

 

「で、でしたら緊急事態として政府に応援を――」

 

「やっている。現在三年生の先鋭達がシステムクラックを実行中だ。遮断シールドが開けれればすぐに教師部隊を突入させる。今の所は待機しか出来ん」

 

一夏の知らないうちに、IS学園の三年生の先鋭達と一夏のAIMAKUBEX(マクベス)とのネット世界でのバトルも行われていたのだった。

 

 

●○●

 

 

 

右腕を切り落とした一夏の体は右腕を左方向に切り上げた事によって大きく仰け反っていた。その隙を逃すまいと動く無人機のボディーに鋭い一夏の蹴り込みが入る。

 

後ろに蹴り込まれた事によって吹き飛ぶ無人機。

 

その間に一夏は、クルリとその場で一回転をして雪片弐型を右肩に担ぐように構えると加速をしながら振り下ろす。その思い重量と切れ味、振り下ろされる速度によって圧倒的な破壊力を持った雪片弐型は、無人機の残っていた左腕を易々とぶった切る。

 

両腕を失った無人機に向かって一夏は更に加速し、無人機の頭を掴む。

それは、千冬直伝のアイアンクローだった。握力が130kgある一夏はパワードスーツであるISを身に纏っている。つまり、一夏が掴む事もまた武器と成るのだ。

 

一夏に捕まれた無人機の頭の装甲は、一夏のアイアンクローによって悲鳴をあげるかの様な細かい無数のヒビが入る。

 

無人機の頭を掴んだ一夏は右手でアイアンクローをした状態でもう一度問う。

 

「手前は、一体何者だ?」

 

しかし、無人機は喋らない。

その姿に喋るわけねえかと思い、そのまま無人機の頭にアイアンクローをした状態で

 

「じゃあ、もう良い。……死ねや」

 

地面に向かって加速し地面に激突すると、そのままアリーナの遮断シールドに目掛けて無人機を地面をこすり付けながら一夏は地面すれすれの低空飛行を行い、無人機をアリーナの遮断シールドにぶつける。

 

遮断シールドにぶつかって無数の細かいヒビが入っていた無人機の頭の装甲は破壊され、頭部の残骸が一夏に降り注ぐ。そのボディーは一夏に蹴られ地面に叩きつけられて、引きずられたためか装甲は滅茶苦茶でボロボロ。

状態で言うなら破棄寸前の大破と行った所であろう無人機のボロボロの頭部をアイアンクローした状態で左手で持つ雪片弐型で止めに、ボロボロのボディーを一夏から見て左から袈裟斬りを行う。

 

真っ二つに斬られた無人機は切り口からスパークを放ちながら地面に落下。そして、直ぐに爆発を起こした。

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