拳の一夏と剣の千冬   作:zeke

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第17話

「え~と、篠ノ之さんと織斑君いますか?」

 

夕暮れのIS学園の寮、箒と一夏の部屋に来訪者が居た。

 

「はい。織斑は居ませんけど。というか今まで部屋に帰って来た姿を見た事はありませんけど」

 

そう言って箒が扉を開けるとそこには山田先生が立っていた。

 

「そうですか。あの、篠ノ之さん。お引越しです」

 

「ま、待って下さい。それは今しなければいけない事なんでしょうか?」

 

「それは、まあ、そうです。いつまでも年頃の男女が同室で生活するというのは問題がありますし、篠ノ之さんもくつろげないでしょう?」

 

「い、いや、私は――」

 

箒は一夏と話したかった。二人っきりで積もる話もあったし、一夏が何故あのような性格に成ってしまったのか知りたかった。

同じルームメイトと言う環境は箒にとって都合が良かった。良かったのだが、今まで一夏本人と寮で会った事が一度も無い。

無論、生活している痕跡はあるが、朝起きれば一夏は自分より先に起床して何処かに出かけているし、夜は夜で消灯時間に成っても今まで一度も帰ってきたためしがない。

 

仕方ない。他の部屋に移っても寮が同じならまた二人っきりに成れるだろう。

そう思って箒は山田先生の話を受ける事にした。

 

「解りました。すぐに支度します」

 

その日の夜、時刻は日付が変わった瞬間に一夏は修行から帰寮するとルームメイトが普段寝ているベッドが使用されていない事に気づいた一夏は

 

「何だ。帰って来てないか、よその部屋に移ったか」

 

ただ、事実のみを受け入れ、その事実に特になんとも思わなかった。

 

●○●

 

「え~、転校生を紹介します。しかも、二名です!」

 

時は朝のHR。真耶が主催と成って転校生の紹介をしていた。

クラス中の好奇心の視線が転校生に向けられる中、一夏は睡眠学習に励んでいた。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さん宜しくお願いします」

 

転校生のシャルルはにこやかな顔でそう続けて一礼する。

呆気にとられ静まりかえるクラス。

 

「お、男……?」

 

誰かがそう呟いた。

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方が居ると聞いて本国より転入を――」

 

礼儀正しい立ち振る舞いと中性的な顔だち。髪は濃い金髪で首の後ろで丁寧に束ねている。

一言で表現するならば貴公子だった。

 

「「「キャアアアアアアア!!!」」」

 

教室にソニックウェーブが巻き起こる。その威力は千冬の出席簿アタックですら起きない一夏を強制的に起こさすほどの威力だった。

 

「ん、あ?」

 

だらしなく出ている涎を拭きながら眠気眼で状況確認のため周囲を見渡す一夏。

そこには、

 

「男子!二人目の男子!」

 

「しかも、うちのクラス!」

 

「美形!しかも、守ってあげたくなる系の!」

 

元気なクラスメイトと黄色い声を発するクラスメイトの姿が視界に映った。

 

「何だぁ?」

 

未だ寝ぼけた状態で教室の中央に設置されている教卓には、男の姿が映っていた。

 

「まあ、俺が居るんだ。二人目が居てもおかしくねえか」

 

未だ寝ぼけた状態でその事実を受け入れる。

 

「あー、静かにしろ!騒ぐな」

 

面倒臭そうに言う千冬だが、普段の一夏が聞けば「これが教育者かよ」とぼやいていただろうが、生憎と今の一夏は寝ぼけた状態。ああ、眠いとしか思っていない。

 

「……挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

輝くような銀髪の美少女。その銀髪は腰まで下ろしているが、ただ伸ばしっぱなしという印象で女性らしい髪の手入れを押していない様子。

そして、左眼。医療用の物では無く二十世紀の戦争映画に出て来る大佐がしてそうな本物の眼帯。言うまでも無く本物の「軍人」を体から表現している風貌だった。

 

「ここでは、そう呼ぶな。もう、教官ではないし、お前も一般生徒だ。私の事は織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

 

千冬とそんなやり取りをした後、

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「………」

 

あまりにも単純。

単純すぎるが故にクラスメイトの沈黙が続く。続く言葉をクラスメイトは待っていたが、当の本人は口を閉ざしてしまう。

 

「あ、あの、以上……ですか?」

 

「以上だ」

 

空気にいたたまれなくなった真耶がそうフォローするかのように訊くが帰って来たのは無慈悲な即答だ。

 

(社交性ゼロ。こりゃあ、典型的な駄目な人間だな)

 

手前が言うか!?と非難を浴びそうな言葉を思い浮かべながら寝ぼけた状態でラウラの評価をする一夏。

 

「!貴様がー」

 

そんな一夏に気付き、ラウラはつかつかと一夏のもとに歩み寄る。

 

 

バシンッ!

 

 

平手打ち。一夏の頬に向かって。

だが、それを条件反射で受け止めた一夏の姿がそこに有った。

 

「あ?何だ手前。おかげで寝ぼけた状態だったのに目が覚めちまったじゃねえか!?」

 

行き成りの平手打ちにクラスメイトは、「あの子やっちゃったよ!」「やばいよ、やばいよ」と騒ぐが、ラウラはどこ吹く風の如くまるっきり赤の他人と思っているかのように無視している。

 

「私は認めない。貴様の存在を。あの方の弟である貴様の存在を、認める事は出来ない!」

 

その声で一夏は眼を覚まし、改めてラウラの存在を認識する。

その姿全てが、「あいつ」を思わせる風貌。

 

 

周りでは一夏がラウラに拳を振るうビジョンがクラスメイトの脳裏を過ぎるが、一夏はそんな事をしなかった。

 

「………」

 

無言でラウラを観察する一夏にクラス中が絶句する。その中には千冬が含まれて居るほど。

 

「……」

 

来た時と同じように無言で一夏の前を去っていくラウラ。

空いている席に座ると、腕を組んで微動だにしなくなる。

 

「あー、HRを終わる。各人着替えて第二アリーナに集合だ。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。それと、ラウラ」

 

居た堪れなくなったのか、千冬がラウラの名前を呼ぶと

 

「はい、織斑先生」

 

ラウラの返答があるが千冬は

 

「そこは、デュノアの席だ。お前のは空いているもう一つの席だ」

 

そう言ってもう一つの空いている席を指さす。

その言葉にラウラは赤面した。

 

「……了解しました」

 

そんなラウラを見てクラスメイトはラウラをせっかちなドジッコ認定したが一夏は

 

(社交性に欠けたドジッコ。ククク、面白い。あいつの面影があるから興味が湧いていたが、どうやら個人的にも興味が湧いたぜ。ラウラ・ボーデヴィッヒ)

 

その興味を示す、鋭い眼差しは鈴から次なる獲物ラウラへと移っていた。

ゾクリとする悪寒がラウラを襲った。

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