拳の一夏と剣の千冬   作:zeke

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デュノア君回です。



第22話

 修行が終わった一夏は自室へと向かっていた。

 体は雨にうたれたせいで冷え、全身びしょ濡れ。しかも、服は泥だらけ。

 

 だが、雨が降ってくれた事でまた別の修行が出来た為、一夏はご機嫌だった。

 

「♪~♬」

 

 楽しそうに鼻歌を歌う一夏。時刻は19時近くだろう。

 

 さっさとシャワーを浴びて、冷えた体を温めて飯食いに行こう。と今後の予定を考えながら部屋の扉を開ける。

 部屋は明かりが付けっぱで、同室になったデュノアの姿が見当たらない。

 

「あ~、寒い。温かいお茶でも飲むか」

 

 部屋に備え付けられている電気ポッドに水をいれコンセントを差し込んで湯を沸かす。

 

「まあ、1時間ぐらい掛かっか」

 

『その間にシャワー浴びよう!』と脱衣所に入るとバスルームからシャワーの音がする。

 

『まあ、先客でデュノアが入ってったか~。それじゃあ、タオルでも貰って居間で濡れた体でも拭くか』と、バスルームへと続く扉の前に設置された棚からタオルを取り出した時、バスルームの扉が開く音が……

 

 

「い、一夏!?」

 

「あ゛ん?」

 

 驚く事でもねえだろうにと思いながら視線をタオルを取った棚から声のした方向に視線を向けると、そこにはデュノアの胸が何故か膨らんでいて、金髪の髪はシャワーによってデュノアの体に張り付いていた。

 

 一夏は知っていた新たなる性(ニュータイプ)の存在を――世間ではニューハーフと呼ばれる新たなる性(ニュータイプ)の人たちがいる事を

 

「……だ、大丈夫だ!世間一般ではポピュラーな事じゃないかも知れないけれども、そこは個人の自由だ!お、俺はプライベートには首を突っ込まない!うん、約束する」

 

 

 彼が新たなる性(ニュータイプ)――ニューハーフであることを確信した。

 

 出来るだけ笑顔でデュノアを傷付けないように言うがその笑顔は引き吊っており、タオルを持つ指先は震えていた。

 

「え!?あ、あの、僕」

 

「うん。大丈夫。誰にも言わないから。お、お前にも色々事情があるだろうから、俺は聞かない!うん、首は突っ込まない!安心しろって」

 

――何か誤解されている。本当は女なのに、真実よりももっと酷い誤解をされている……気がする。

 

 何故か、そんな気がしたデュノアは……

 

「い、一夏!僕の下半身を見て!!」

 

 条件反射で、そう言った。

 だが、そんな事を言われた一夏は『何で野郎の下半身を見なくちゃいけねえんだ!?』とウンザリした表情でそっぽを向いており、デュノアはデュノアで『ぼ、ぼ、僕なんてことを言ってんだろう!?』と赤面しながら後悔していた。

 

 

「えっと~、取り敢えず服着ろ。そんで、とっととバスルームから出てくれ。雨にうたれて寒い」

 

「え、あ、うん。そうする」

 

 一夏はそう言ってタオルを持って一先ず脱衣所の外へ。

 デュノアは赤面して慌てふためきながら下着を履こうとするも、慌てて上手く履けず。結局、下着を着けるだけで五分も掛かってしまい着替えるのに10分以上かかった。

 

 

 

「い、一夏。で、出たよ~」

 

脱衣所から出てきたデュノアは青と白のTシャツとオレンジのズボンを履いており、髪は一応ふいたのであろうが、湿った様子。

 

「了解。話があんなら俺がシャワーを浴びてからにしてくれや。流石に体が冷えた。手前が話したければ話せ。話したくねえんなら黙っとけ」

 

「あ、うん。解った」

 

 タオルと着替えを片手に脱衣所に入っていくと扉を閉めた。

 

『ど、どうしよう!?』

 

 一人居間でデュノアは悩む。

 デュノアがIS学園に来たのは織斑一夏に接触して彼の専用機のデータを取る事が目的だ。

 シャルル・デュノアは、男ではない。デュノア社の社長の愛人の子供で、母親が亡くなったのを境に父親に引き取られた。右往左往あって、男装させられてIS学園にいるのだが、その事実を全部話すか……話さなければ、もっと酷い誤解を生みそう。と言うか、生んでそう。

 

 そう結論づけると今までの事を全部話そうと決意した。

 

 

 ガラガラと脱衣所の扉が開かれ、頭にタオルを乗せて顔を真っ赤にした一夏が脱衣所から出てくる。

 

「あ~、生き返る~」

 

 呑気なことを言う一夏にデュノアは『何か色々考えてたのが馬鹿らしく見えてきた』と一人落ち込む。

 

「んで?お前どうしたいん?」

 

ゴシゴシと頭に乗せたタオルで自分の頭を拭きながら一夏は尋ねると、デュノアは意を決したように話し始める。

 

「話すよ……全部」

 

それからデュノアは全部話した。

自分が女である事。愛人の子供であること。父親のデュノア社が倒産危機に会い、その広告塔として男装させられてIS学園に入学させられた事。一夏のISのデータを手に入れる事を言われていること。

 

――それら全てを

 

「話したらなんかスッキリしちゃった」

 

僅かに目もとに涙を浮かべるデュノア。

一夏は、デュノアが喋っている間「フーン」「へー」「ホー」と何処か興味無さげに聞いていた。

 

「あっそ。そりゃあ、良かったな。んで?お前これからどうすんだ?」

 

「フランス政府も事の真相を知ったら黙ってないだろうし、本国に送り返されるかな。僕は代表候補生を降ろされて、良くて牢屋とかじゃないかな」

 

「へー」

 

「へーって一夏、僕が喋っている間ずっと興味無さげに聞いてたよね!?」

 

「うん。だって、興味無いもん。話したければ話せって言ったし、話したくないなら黙っとけって言ったぜ、俺は。デュノアが喋ると決めただけで俺は強制なんてしてねえし、ぶっちゃけあんまり興味無いから」

 

なんて人だ!とデュノアは思ったが、そんなデュノアを放置して一夏は続ける。

 

「まあ、父親が真正のクズってのは解ったし、母親がいないってのも可愛そうだなとは思ったぞ。まあ、俺にはちーた……織斑先生がいるから、お前と境遇は似てなくもねえけど、俺は俺だし、デュノアはデュノアだ。その事実は変えられようもないし、お前が男だって事実も、まあ、豊胸手術してるけど変えられねえだろ?」

 

「いや、ちょっと待ってよ!僕はれっきとした女の子だよ!」

 

「いや、あの、その、男として入学して行き成り女でした~とか言われても信じらんねえし」

 

「そこら辺は最初の方に説明したよね!?」

 

「いや、まあ、兎に角!お前が女(仮)って事実には変わりないってこったろ?」

 

「ちょっと!女(仮)って何さ!?」

 

「いや、流石に急に言われても……」

 

「だったら、さっき下半身見てくれた方が良かったよ!」

 

「いや、野郎の下半身かと思って見たくなかったし……普通、IS学園に来てなんで野郎の下半身を見なきゃいけないんだ?」

 

「いや、まあ、そりゃあそうだけど!」

 

 話が無限ループしそうだったので一夏は一回パンと手を叩くと話を戻した。

 

「んで、兎に角、手前が手前である事には変わりないわけだ」

 

「まあ、そうだね」

 

「だったら、俺が口を挟むってのはお門違いじゃね?って訳よ。俺は俺の価値観を持ってるし、手前は手前の価値観を持っている。んだろ?」

 

「まあ」

 

「俺の価値観がデュノアくんと一緒かと聞かれたら?だし、俺の価値観を押し付けるわけにも行かねえじゃん?」

 

「まあ」

 

「まあ、こっからは俺主体で言わせて貰うなら」

 

 そう言って一夏は髪を拭いてた左手をデュノアの前に出して握る。

 そして、再び左を開くとトランプのカードが3枚握られていた。柄はデュノアからは見えない状態で一夏は続ける。

 が、その前にデュノアが「そのトランプどうやって出したの?」と尋ねて、「一時期マジシャン目指してた。途中で挫折したけど、トランプを出すぐらいなら出来る」とちょっとしたやり取りがあった。

 

 

「まず一つ目。これまで通りデュノア社の傀儡人形になる」

 

 そう言ってデュノアにトランプカードを一枚渡す。

 渡されたトランプにはジョーカーのカードが描かれていた。

 それと共に、待機状態の白式を弄り、白式のデータをデュノアに送る。

 

「それを持って帰ってこれまで通りの傀儡人形のような生活を送る」

 

「え、これって白式のデータ!?」

 

「おう!俺には必要のねえもんだから、やる。公開されても俺の実力が相手より上回ってたら問題ねえし、上の煩い奴らがグダグダ言ってきたら、白式持って他の国に渡るって脅しときゃあ黙るし、ぶっちゃけ他の待遇が良い国に行くってのもありだから。俺、お前よりも割りかし自由だし」

 

「普通、こんな大事なものポンポン渡さないよ!何か、一夏が心配になってきた」

 

 一人心配そうにするデュノアをゲラゲラ笑いながら続ける。

 

「んで、二つ目。運命に抗ってデュノア社を逆に傀儡にしちまう!」

 

「え、でも、どうやって?」

 

「ん~、普通に教えんのも面白くねえなぁ。まあ、問題出しながらやりゃあ良いか。はい、それでは第一問!とある国家代表候補生がクソ親父の傀儡人形にされてました。そこで、彼はとあることを考えます。それは、な~んだ?①目の前の同級生に頼んでクソ親父の弱みを握らせて貰う!②デュノア社のテストパイロットから目の前の同級生にお願いして、今持ってるISを手土産に日本代表候補性にして貰うように日本政府に取り合って貰って再び学園生活をエンジョイする!③①と②の両方を出来る限り同級生に頼んでやって貰う!さあ、どれ!?」

 

「え、何それ!?凄い事に成ってんだけど!?」

 

 一夏は持っていたトランプを一枚デュノアに差し出した。

 デュノアがそれを受け取ると、そのトランプはハートのクイーンが描かれていた。

 

「まあ、そして、ラスト!……全てを忘れて逃げ出しちまう」

 

 そう言って一夏がデュノアに渡したのは、何も書かれていない真っ白なカードだった。

 

「え?」

 

「その真っ白のカードの様に何もかも忘れて全てリセットして、新たな人生をやり直す!」

 

 話は終わりだと言わんばかりに一夏は髪を拭きながら部屋を出ていこうとする。

 部屋から出る前に「テメエの人生だ。ゆっくり考えな。考えが決まったら、その選んだカードを俺に渡せ」と言い残して出て行った。

 

 部屋の扉が締められる音が妙に重くデュノアに伸し掛かる。

 

「僕の人生………僕の選択……」

 

 今までで最大の選択だろう。

 今後の人生を確実に左右する選択。

 

 ゆっくり今後の事を考えて一夏から渡されたカードを眺めていると、

 

 ガチャッと部屋の扉が開かれて一夏が上半身だけ部屋に入れて「あ、飯食いに行く?」と尋ねた。

 

「もう!シリアスが台無し!!」

 

 一夏から渡されたカードを床に叩きつけるデュノア。

 そんな彼を一夏はゲラゲラ笑う。

 

「ご飯食べに行くよ!」

 

 プンプン怒るデュノア。

 だが、その心にはもう選択肢が決まっていた。




普通、男で通してたのに胸があったらニューハーフだって疑いませんかね?

シャルさん男疑惑!
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