一夏がデュノア社にサーバー攻撃を仕掛けて4時間後、朝の出勤時間と成って一人のデュノア社の男性社員が出勤して会社のパソコンを開いた瞬間
「うえええええええ」
―――ゲロを吐いた。
何事かと思ってゲロを吐いた社員の周囲に人が集まり始め、大丈夫?と周囲の社員たちがゲロを吐いた社員に手を貸す。
そんな中、また一人の男性社員がゲロを吐いた男性社員のパソコンを何気なく見ると――吐瀉した。ゲロを吐いた。
「おええええええ」
「「「!?」」」
ゲロを吐いた男性社員に周囲は驚きの声を上げる。
ゲロを吐きながらその男性社員は最初にゲロを吐いた男性社員の会社支給のパソコンを指さして「見るな!」と言った。
見るな!と言う前にパソコンを叩き壊すなり、電源を切るなりすれば良いと思うがそこまでの余裕がなかった。
「うげえええええ」
また一人、ゲロを吐く社員が現れた。
今度は最初の被害者が使っていたパソコンではなく、自分のパソコンを立ち上げた人だ。
混乱が巻き起こり、動揺が職場に走る。
「グエエエエエエ」
また一人パソコンを立ち上げた職場の人間が吐いた。
そのパソコンのデスクトップに映し出される画像の気持ちの悪さに生理的に吐いてしまったのだ。
「な、何が起きているんだ!?」
職場に戦慄と動揺が走り、ゲロの匂いが充満する。
「と、取り敢えず窓を開けよう!」
そう言って窓を開ける者もいれば、
「きゅ、救急車を!」
救急車を呼ぶ人もいる。
「取り敢えず、全員パソコンを起動させるな!!」
出勤している人の中で職場の一番偉い課長が指示を出す。
吐いた人、全員がパソコンを起動させての吐瀉という共通点を見つけての判断だ。
その場にいた出勤していたデュノア社の社員全員が、パソコンから離れる。
すぐに会社のアナウンスでパソコンを起動させない事を伝える。
デュノア社の本社の前に1台のクラウンが止まった。
クラウンの扉が勢い良く開くと、中から高級なスーツを身に纏った一人の男性が飛び出して出て行く。
その者は、デュノア社の社長。
男性としてIS学園に潜入しているシャルル・デュノアの実父。
10時に出勤する予定だったが、会社のパソコンに彼のとある画像がトップ画像として会社の社員全てのパソコンに設定されているかも知れないという情報が耳に入った為、9時出勤に時間を早めたのだ。
「ええい!こんな時期に!!」
苛立ちの為かその足取りは早く、歩く歩幅が大きい。
デュノア社は今、経営危機に陥っている。
第三世代機の開発を強いられ、中々形に出来ない状況で痺れを切らしたフランス政府からISライセンスの剥奪を宣告されている。後一年でどうにか形にしなければ、デュノア社は潰れるか、他の同業他社に吸収合併される。
第二世代のシェアを誇っているとは言え、現状は崖っぷちなのだ。
そんな中での今回の騒ぎである。
苛立ちと共に足早に会社に入ると、職場はゲロと混乱にまみれていた。
「ええい!何が起きている!?」
苛立ちと共に、課長に尋ねると課長はオドオドと話す。
「じ、実は会社のパソコンがハッキングかウィルスにやられた様でして……申し上げにくいのですが」
非常に申し訳なさそうに話す課長に社長は苛立ちが募る。
「何だ!とっとと話せ!」
「見て貰った方が早いかと……」
課長はそう言って最初にゲロを吐いた社員のパソコンに向かうとそのパソコンのマウスを少し動かす。
すると、スリープモードだったパソコンの画面が表示される。
「こ、これは!?」
狼狽する社長に、課長は「ご覧のありさまです。正直、私も気持ち悪くて。うっぷ」と手を口に当て、心底気持ち悪そうな表情をする。
そのパソコンに表示されている画像――――それは、デュノア社の社長がフリフリのプリキュア衣装で投げキスをしている合成画像だった。
社内を見れば、全員が社長に気持ちの悪い物を見る眼を向けていた。
「ち、違う!私はこんな事をした覚えがない!!誤解だ!」
一夏の言葉で言うならば、人は自分の信じたい情報を信じる。人の悪い噂が早く長く広まり、良い噂が遅く短く広まるのと同じで、幾らデュノア社の社長が否定し、それが事実無根であったとしても人は本能的に自分の信じたい情報のみを信じる。それが、人の心理であり性である。
「兎に角!全員パソコンに触れるな!業者を呼ぶ!!」
そう言い残して、社長は社長室に向かう。
「……何なんだ!朝から何故私がこのような目に遭わねばならないんだ!」
怒鳴り声を上げながら社長室の椅子に腰掛ける。
高級なその椅子は座り心地は世界最高峰を誇り、その影響で極々僅かであるが社長の苛立ちを解消する。
「……コーヒーでも飲むか」
苛立っている感情を抑えるためにサイホンの電源を入れ、豆をセットする。
数分で香りが社長室に漂い、社長は再び椅子に腰掛け天井を見た。
そして、視線をふと机の上に設置しているパソコンに向ける。
「……まさか、私のパソコンにも」
無いと思いたい。だが、先程のトップ画像を見るとどうしても無いとは言い切れない。
「……まさか、な」
そう思ってパソコンを起動させる。
パソコンを起動させると1件のメールが届いていた。
「誰だ?……このメールアドレスは私の?」
なぜか自分のメールアドレス宛で送られているメール。
ワケが解からなかった。そもそも自分用に送る事はマズ無い。
だが、メールは確かに自分のメールアドレス宛に送られている。
「一体これは?」
訝しげにメールを開き読んだ瞬間、社長の目は見開かれ驚いて椅子から立ち上がる。
「こ、これは!?」
そこには、こんなメールがフランス語で書かれていた。
『ハーローヽ(´▽`)/デュノア社の社長さん。随分と胸糞悪い事をしてくれたね?貴方の娘であるデュノア君から全て君の話は聞かせて貰った。罰として君の会社の君のパソコン以外の全てのパソコンにエゲツナイ画像をトップ画像として設定しておいてあげたよ。まあ、これは本の序の口で、君の大切な大切な第三世代機の今までの開発データを4/5程修復不可能なまでにクラッキングさせて貰ったヨ。そんで、君の会社の商品データも1/4を残してこれもクラッキング。こちらは、頑張れば修復できる程度には力加減をしておいてあげたヨ。非道いと思う?んでも~、日本の諺で言う因果応報ってやつじゃないかい?まあ、別にどうでもイイけどね~。これとデュノアくんの件がフランス政府に知れたらどうなるか解るかい?君のやった事は犯罪。君は死刑。良くても牢屋生活を余儀なくされる。デュノア君は、あの実力があれば他の国家代表候補生に鞍替えって事も有り得るね~。君は牢屋でかたや君の娘は代表候補生。フフ、面白いね?君が道具の様に扱い、見下していた娘が今度は君を見下す事に成りえるんだから。君の今後は全てデュノア君の手に委ねられたと言う訳さ。でも、デュノア君は優しいからね。君が牢屋行きに成るのだけは辞めてくれるだろうね。君が今までむげに扱った娘なのにね?私は、君が同じ人間であると思いたくないよ。なんで君はそんなに非道な事が平気で出来るんだろうね?まあ、長くなったから短縮させてもらうけど、こちらの主張は三つ。先ず一つ デュノア君にこれから奴隷の様に無条件で協力をする、つまり言いなりに成る事。手抜きは許さないヨ。二つ目 君の命はこちらが握っているという事を自覚すること。私はデュノア君の協力者だから君が犯人探しなんかをすればすぐに解る。その瞬間君の社会的な命はジ・エンドさ。三つ目、デュノア君にもう命令する事も協力以外で関わる事を禁ずる。以上の三つが守れなかった時点で君の社会生命は無いよ。無能な社長さん、私の期待に応えてくれヨ。それと、もし私達に不都合なことがあれば添付した画像をゴシップ記事として出版社に送りつけるから。この崖プチの時期に例え事実無根の記事であろうともゴシップ記事は致命的なダメージだろう?君の判断で君の今後は変わる事をお忘れなく。それでは IS学園の月光仮面』
恐る恐るメールに添付されている画像を社長がクリックするとそこには――女王様スタイルでムチを持ち男にムチを振るうおホモSM画像。木馬に縛られた状態の社長の合成画像。男の放尿を浴びるメイド服を着た社長の画像等――気持ちの悪い合成画像でいっぱいだった。
「……」
社長はやつれた表情となり、口からは魂が出そうになる。
全て自分が悪かった。ここまでされてやっとその事に気づいたのだ。
天井を見上げ、放心状態になりながら椅子にもたれ掛かる様に腰をかける。
娘のシャルルに電話しようとも思わない。相手がシャルルの協力者であるのならばシャルルもまたグル。相手はIS学園の月光仮面を名乗っている以上IS学園に所属している。下手に動けば本当に社長の社会的命はない。
普段ならば冷静にそう分析するだろうが、今の社長はそんな事を考える余裕がなかった。
ただただ自分の愚かさを、罪の深さを知った。
「すまない。シャルロット」
自然とその言葉が口から出る。
傲慢な自分に今更ながら嫌悪感を抱く。
自分勝手。愛人を作っておきながら生活費だけを渡し、シャルロットが生まれてから一度も会おうとしなかった。そのくせ、愛人が亡くなればシャルロットを強引に呼びつけて、デュノア社のスパイとして強制的に育成した。
成程。メールの相手が誰だか解らないが、同じ人間であると思いたくないというのには頷ける。自分はなんて――
「――なんて傲慢だったのであろうな」
もう、全ての運命をシャルロットに委ねようと思った。彼女の望む通りに……それが自分勝手ではあるかも知れないが贖罪だと信じて……
作者「一夏さん、デュノア社の社長さんは今後どうするおつもりでしょうか?」
一夏「ん?そりゃあ、決まってる。今後の展開しだいさ」
作者「と、言いますと?」
一夏「向こうが下手に手を出そうとするならば予告通りにデュノア社を潰す。シャルル
は代表候補生だぞ?実力は本物だ。そんな奴が代表候補生の座から落ちそうになって俺が宣伝してみろ。絶対のどこかのIS企業か国が好条件でスカウトに来る」
作者「うわ~、色々と考えてますね」
一夏「まあ、な」
作者「うわ~照れちゃって。可愛いですね~」
一夏「手前、表にでろや!」
ミシッ、メキッ、ゴキン
作者「うぎゃあ!一夏さん、ゴメンなさい」
一夏「解れば宜しい」
作者「それでは」