拳の一夏と剣の千冬   作:zeke

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第26話

 一夏が無断拝借したパソコンを返しに学校に行き寮に帰る道中に視界の隅にラウラと千冬の姿が目に映った。一夏は、ラウラをからかって怒らせたばかりだ。未だほとぼりが冷めてでいないであろう相手との接触は無用な争いとなる。

 無論、争い事バッチ来い!!『( ゚Д゚)∂゛チョットコイヤ』との状態であろう。普段ならば。

 だが、今の一夏は睡眠不足。ただでやられる気は全く無いが、今のコンディションではラウラとの戦闘は勝てるかどうかわからない。故に隠れてやり過ごそうと思い、忍び足でラウラと千冬に近づき木を背にして隠れる。

 

「何故です、教官!?あなたの様な人がこの様な学園に何故!?」

 

「私には私のするべき事がある」

 

「!……再び我が国でのご指導をお願いします!この学園にはあなたの指導を受ける価値のない者達ばかりです」

 

「ほう?」

 

ピクリと千冬の眉が動き、ラウラはそれを好印象を与えれたと思い、更なる説得を試みる。

 

「この学園の生徒達は、皆ISをファッションか何かと勘違いしている。そんな者達の為に教官が時間を割かれるなど「そこまでにしておけよ、小娘」……」

 

 ゾクリとする視線を浴びラウラは開いていた口を閉じた。

 

「見ない間に随分と偉くなったものだな。もう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

「わ、私は!」

 

「この学園の生徒がISをファッションと勘違いしている様ならば、私たち教師がそれを正してやるまでのこと。それが我々教師の役目だ」

 

「話は以上だ」と千冬は一方的に会話を終える。

 ラウラはこれ以上の説得は無駄だと悟り、踵をかえして千冬の前から立ち去った。

 

 ラウラの姿が見えなくなった所で千冬は木に隠れている生徒に声をかける。

 

「さて、異常性癖は感心しないぞ。そこの男子生徒」

 

 だが、木の陰からその者は出てこなかった。

 千冬は、ハアと溜息を一つ吐くと木の陰に隠れている生徒のもとへと歩く。

 

 千冬が木の陰に隠れている一夏に近寄ると一夏は木に背中を預けてもたれ掛かった状態で目を閉じて寝ていた。

 ハアと再び溜息を吐きながら一夏の方をゆする。

 

「おい一夏、起きろ。こんな所で寝ていたら風邪をひくぞ」

 

千冬に揺すられながら声をかけて貰ってようやく一夏はその重い瞼をゆっくりと開いた。

 

「……うーん。あれ?もう話し合い終わったん、ちーたん?」

 

「ちーたん言うな」とペシッと一夏の頭をしばきながら千冬は尋ねる。

 

「しかし、いつにも増して随分眠そうだな」

 

「うん。まあ、男子高校生ですから。色々な付き合いがあるわけですよ」

 

「……どうやら本当に頭が回らないほど眠いみたいだな」

 

 本来の一夏ならばここまで頭が悪くなる事はそうそう無い。女子高に入学しておいて男の付き合いなど有るはずがなく……

 

「まさかとは思うが、お前不純異性交遊などはしておらんだろうな?」

 

 この枯れた、出涸らしの様な弟が、まさかとは思うけれども年頃の男子と同じように女子と遊ぶことを覚えたのでは?と言う不安が千冬の脳裏をよぎる。

 

「……うん?浮遊異星交流?ちーたん。宇宙人っているの?それって、IS使ってやるの?」

 

 どうやら致命的なまでに睡眠不足の様だと結論付けた千冬は一夏に「今日の授業は休め」と命じる。

 だが、一夏は「いんや。皆勤賞狙いたいから行くだけ行って授業中でいつもの通りに寝る」と言っておぼつかない足取りで寮へと向かう。

 そんな一夏の後ろ姿を千冬は溜息を吐きながら見送る。

 

 一夏は、5歩程歩いて思い出したと言わんばかりに振り返り、千冬に頼みごとをする。

 

「あ、そうそう。ちーたん、もしかしたらちーたんにお願いする事になるかも知れないからそん時は宜しくね」

 

 千冬は驚いた。

 先ず、一夏は基本、欲が無いといっても過言ではないほど微欲。戦闘狂であることを除けば実質無欲。だが、そんな一夏が千冬にお願いとは、初めてかも知れない。

 

「何だ?お前がお願いとは珍しいな」

 

「う~ん。もしかしたら、ちーたんのブリュンヒルデの名前を使って圧力をかけて欲しい事になるかもしれない」

 

「圧力?詳しく話せ」と尋ねる千冬だが、一夏は「時期が来たら話すよ。必要ないかも知れないからね」と言って寮へと戻るのだった。

 そんな一夏の背を千冬は頼られた嬉しさ半分、理由を教えてくれなかったショック半分といった状態で複雑そうな表情で再び見送るのだった。

 

 

 

「お帰り、一夏。ねえ、何をやったのさ!?急にあの人から電話がきて「今まですまなかった。任務は破棄。これからはお前の生きたい通りに生きろ。そのための支援はこちらがする」とだけ言って電話がきれたんだけれども…」

 

 一夏が部屋に帰って来た途端デュノアが捲くし立てる様に一夏に質問を始める。その手には携帯電話が握られていて先ほど電話がきて急展開についていけないといった様子だ。一夏は、『まあ、あれだけの事をしたらそうなるか』と思いながらデュノアの話を黙って聞く。

 

「昨日の約束だぜ、デュノア君。何も言わない。何も聞かない。手前は、今の現状を黙って受け止めときゃあ良いんだよ」

 

 まあ、ちーたんの名前で圧力をかける必要はなくなったが、絶対にちーたん何があったのか尋ねてくるんだろうな~等と思いながら登校の準備を始める。

 そんな一夏を見てデュノアはこれ以上尋ねても教えてくれないだろうと諦めた表情で手に持っていた携帯電話をしまう。

 

「あ、そうだ。今月の学年別トーナメントなんだけれども二人組のペアが原則らしいよ」

 

思い出したように言うデュノアだが、一夏の眉がピクリと動く。

 

「なに?」

 

「理由は分からないけれども、そういうルールになったって昨日廊下ですれ違った先生がぼやいてたよ。今日あたりHRで連絡されるんじゃないかな?」

 

 一夏は冷や汗が流れた。

 まず、一夏とペアを組んでくれそうな人物は居ない。

 セカンドは下僕にしたため怒って協力してくれないだろうし、箒は専用機を持っていない為ペアで対戦するなら息を合わせる練習が必要になるが訓練機の使用願いを出しても承認されるのに時間がかかるし、学年別トーナメントをやるのならば皆、練習で訓練機の使用願いを出すだろうから余計に箒が訓練機で練習する時間が少なくなる。

 

 そんな事を悩んでいる一夏にデュノアは、だからねと続ける。

 

「だから、今度の学年別トーナメントを一緒に出て欲しいんだ。僕が女だってことを知っているのは一夏だけだし、無論いつかは皆にも話すけれども心の準備ってものがあるから、出来れば一夏に一緒に学年別トーナメントに一緒に出て欲しい」

 

 目の前でモジモジというデュノア。

 棚から牡丹餅とはまさにこの事と言わんばかりに一夏はデュノアの手を取り、「本当か!?」と尋ねた。

 

「え、あ、うん。出来ればお願いしたいな~と思って」

 

「うっし!よし!!」

 

「え、えらく嬉しそうだね?」

 

 デュノアはも、もしかして自分に気があるのでは!?と年頃の少女の思考で期待したが、

 

「ああ。今、この学園に友達がいなかったのを自覚してピンチだったんだからな」

 

 帰ってきたのは無慈悲な一夏(バカ)の返事。

 

「へえ~、そうなんだ」と落胆した表情をする。

 

「何期待してたんだ?」

 

「別 に !!」

 

 やれやれと言った表情で「何を怒ってんだか」と呟く一夏にそっぽを向くデュノア。

 ふあああと眠たそうに欠伸をする一夏に内心「ありがとね。一夏」と密かにデュノアは呟くのだった。

 

 

○○●

 

『・きて・・か・・かご・よ』

 

 大地が揺らぐ。

 場所は新宿。高層ビルが立ち並び、アスファルトで舗装された道路を一夏が歩いていると空から声がし、地震が発生する。

 

「おいおい、でけえなこの地震」

 

 その地震のせいで世界が揺れる。

 だが、不思議なことに一夏が揺れを感じることはなかった。

 

「あ゛?なんだこれ?」

 

 しかし、地面は揺れ視界は地震が発生していることを物語っていた。電柱が揺れケーブルも揺れている。

 

『・きて・ちか!』

 

 聞いたことのある声が再び空からする。

 一夏は不思議な事に気がついた。地震が発生しているというのに道路で人が普通に歩いているのだ。

 しかも、車も地面が揺れているのに走行している。

 

「んだよ。これ」

 

 わけが解らない。理解できない。理解不能。

 しかし、目の前で起こっているのは現実(リアル)である。

 

「それとも……こっちが夢か」

 

 どちらにしてもどうでも良い。

 何故ならば、織斑一夏にとって世界が滅びようとも構わないのだから。

 

 一夏の周囲の人間が関わらなければ動くことはない。特に束やあの子、千冬などの親しい人間に害がなければ、アメリカで虐殺が起きようとも、中国が飢饉になっても、世界戦争になって人口の9割が死滅しようともどうでも良い。

 彼の目標である世界最強になり、幸せな家庭を築ければ。

 

『起きて、一夏!』

 

 今度ははっきり聞こえた。

 その声を聞くと共に景色が真っ白になる。

 

 

「んあ」

 

 意識が戻るとそこは教室だった。

 窓から射す光は夕焼けで赤色。時間は放課後を示していた。

 

 目の前にはデュノアが一夏の方に手を置いており、体を揺すって起こしていた事を一夏は働かない頭で現状把握をする。

 

 

「もう、一夏ってば今日一日中ずっと寝てたよね?もう放課後だよ」

 

「……」

 

 デュノアに指摘され、だらしなく垂れた涎をポケットティッシュで拭きながらボケ~っとデュノアの顔を見る。

 

「……今何時?」

 

「もう16時30分だよ」

 

 つまり、朝のHRからずっと給食も取らずに一夏は寝ていたことになる。

 

 グーーーーと腹の虫が喚き、空腹状態である事を知らす。

 

 

「はい、これ。オルコットさんから約束のチョココロネ」

 

 デュノアに渡された2個のチョココロネ。それは、セシリアと戦う前に彼女と約束したセシリアからの貢ぎ物だ。今まで渡されなかったが、ようやくチョココロネが貢がれた。

 

「うん」

 

 頭が働かない上に空腹状態の一夏にとってそれは、ありがたい現状だった。

 デュノアに渡されたチョココロネを1個口に入れる。噛むとチョコの風味がしてパン生地もそこら辺のスーパーやコンビニで売っている菓子パンと次元が違う。

 

「………美味い」

 

 デュノアから渡されたチョココロネを2,3分で完食すると腹の虫は喚かなくなったが未だ腹が減った状態である。だが、今から学食をたのもうにも時間が過ぎているし後2時間もすれば夕食の時間だ。今から飯を食うのは、と躊躇いが生じる。

 

「ねえ、一夏。一夏の白式って大剣武装だけなの?」

 

 デュノアがチョココロネを食べ終わったと同時に尋ねる。

 

「ああ。なんでも空き容量が無いらしい。まあ、理由はおいおい解ると思うぜ」

 

 理由は聞かされている。

 だが、それは一夏が大剣をコントロール出来ていないせいで使わないだけである。

 

……いっその事無い方が良かったかも知んねえな。

 

 太刀筋が滅茶苦茶な一夏にとって大剣を扱う事は困難を極める。

 雪片弐型は大剣であるが故に圧倒的な攻撃力を誇る。その威力だけで見るならばTOP10に入るぐらいである。無論、大剣であるが故にその重量も半端ではないぐらい重いが、ブンブン片手で振り回せる一夏は問題ない。

 だが、その威力を更に増やす能力を雪片弐型は持っている。その能力込みで威力だけで見るならば世界最高を誇っていると言っても過言ではない。

 ならば、何故一夏はその能力を使わないか?……それは、強すぎる威力だからである。

 その能力を使った強力な一夏の斬撃を受ければシールドエネルギーは瞬く間にゼロになる。

 

 逆を言えばゼロになり、鉄の塊になったISに気付かずに斬撃をぶつけることで操縦者の命すら奪う諸刃の剣である。仮に千冬ならば部分破壊などで問題なく使えただろうが、一夏のメインは拳。千冬みたいに剣ではない。

 高すぎる攻撃性ゆえに人を殺しかねないため一夏はその能力を出来るだけ使わないようにしている。仮に拳にその能力を纏った形ならば一夏は遠慮なしに使っていただろう。だが、枷でもあり同時に力でもある雪片弐型は大剣である。

 

 

「それじゃあ、これから僕の銃を使ってみない?その方がもしこれから相手が射撃型でも対応がイメージしやすいだろうし……」

 

 デュノアの提案は一理あった。

 セシリア戦では視界を塞いで対応したが、これから同じ手が二度も使えるとは思ってない。マジックのネタがわかれば怖くないのと同じで、攻撃方法が分かれば攻略されるのが自然だ。

 

 

「……ああ、そうだな。折角のお誘いを無下にする気もないから受けるとしようか」

 

 そう言って一夏は重い腰を上げる。

 一日中うつ伏せで寝ていたため、筋肉が固まって首を振るとポキポキと関節が鳴る。

 

 未だ眠たそうな一夏を連れてデュノアはアリーナへと向かうのだった。




一夏「おい!作者ぁぁぁぁぁぁ!!」

作者「は、はいいいいいいい!?何でしょう、一夏さん!?」

一夏「手前、感想欄見たぞ!何で篠ノ之束(最愛の人)の名前を間違えてんだ!?あ゛ん!?」

作者「すんません。すんません。すんません。ってか、何で作品のあんたが俺の感想欄見てるんすか!?」

一夏「ネットを介してんだぞ?俺にハッキングできないとでも思ったか!?」

作者「ええ!?」

一夏「手前、死んだぞ!」

作者「勘弁してください!!」

一夏「じゃあ、もう二度と束の名前間違えんじゃあねえぞ!?」

作者「……善処します」

一夏「……まあ、良いだろう」

作者(ホッ

一夏「9割9分殺しで許してやるよ!!」

作者「それ、ほとんど許されてないいいいい!!!」バキッ ゴキン ドカッ


―――作者はその後、救急車で病院に緊急搬送されたのだった。






『えっとー、誤字報告をしてくださった綾鷹(あやたか)さん、氷咲(ひょうざき)さん、ありがとうございます。時間が空き次第、誤字を訂正していこうと思います』
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