「ハア!」
訓練機の打鉄を身に纏った箒はPICによる加速。その加速で一気に一夏との距離を詰めるが、一夏との間にデュノアが割って入った。
「ごめんね、一夏じゃなくて。本人たちは一対一でやりみたいだから」
そう言うデュノアの両手には六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】 が二丁握られており、銃口は箒に向けられていた。勢い良くスライドされ、弾が装填されるとデュノアは【レイン・オブ・サタディ】の引き金を躊躇う事無く引いた。
銃口から無数の散弾が飛び散り箒に向かって遠慮なしに飛んでいく。
「舐めるな!」
箒は回避は不可能とすぐさま判断して体をデュノアから見て箒は体を横に逸らし、銃弾が当たる範囲を最小限に狭めた。【打鉄】は、操縦者を選ばない安定した性能と防御に特化しており比較的癖がない機体であることもあり、そのおかげか箒が受けたダメージはそんなに蓄積しなかった。
箒はその手に近接用ブレード【葵】を握りしめ、PICによる加速でデュノアに斬りかかる。
「!」
デュノアは距離を詰められすぐに武装を近接ブレード【ブレッド・スライサー】に切り替えて箒との鍔鳴りあいに応じる。
「ハア!」
だが近接格闘、しかも剣での攻防戦には小さい頃から篠ノ之道場で剣を振るっていた箒の方が勝っていた。フランスの代表候補生であるデュノアだが、数回の鍔鳴りあいで徐々に押され始め劣勢となっていった。
このままではマズいと思ったデュノアは一旦距離を取ろうとするが、箒はそれを逃さず背後に向かってPICによる加速を行おうとするデュノアが僅かに隙を見せ、その隙に箒はデュノアに一太刀浴びせ、自身の受けたダメージよりも大きなダメージを適確に与えた。
二度目の剣をデュノアは片手で持ち替えた近接ブレード【ブレッド・スライサー】で受け止め、空いた手で六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】を呼び出す。
が、箒はその隙に片手で近接用ブレード【葵】を持ったままもう片方の手で二つの武装を呼び出した。
その武装はおにぎりほどの小さな大きさで、箒はそれをデュノアに目掛けて投げつける。
「ーー!?しまっt」
デュノアは投げつけられた二つの武装が何なのか投げられてようやく分かった。すぐに対処しようとしたが時はすでに遅かった。
眩い閃光と耳をつんざく様な音響がアリーナに響き渡る。
眩い閃光の光がやむとデュノアは苦虫を噛んだような表情となった。
「閃光弾に音響弾―――両耳と利き目をやられた様だね」
閃光弾の眩い光を食らう僅かな時間にデュノアは片眼を閉じた。そのおかげで使い物にならなくなった目は片目だけの被害に留まったが、それでも使える片目は普段の利き目と違い、しかも片眼な為遠近感覚がいつもと狂う。
「……やはり両方の眼を潰せなかったか。だが、ここで決めさせて貰う!」
箒は再び近接用ブレード【葵】を構え、デュノアに向かって踏み込む。PICの補助による加速と箒の踏み込み、更にはデュノアの両耳、利き目を潰されているデュノアの致命的な不利。遠近感覚もままならぬままデュノアは苦虫を噛み潰した表情となったまま近接ブレード【ブレッド・スライサー】を構える。
『まずい!利き目を塞がれた所為で遠近感覚が狂って銃の照準が定まらない!』
六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】を箒に向け照準を定めるも箒のPICによる加速+普段使用しない利き目ではない方の眼で狙いを定めようとしている為、照準が更に定まらずにいた。
危機的状況の中箒がPICによる加速でドンドン距離を詰め危機的状況を加速させる。
「これで終わりだ!篠ノ之流流水斬り」
デュノアの華奢な体に向かってPICの加速と共に篠ノ之流の技を繰り出す箒。狙いは胴。デュノアの構えていた近接ブレード【ブレッド・スライサー】を流水の如くすり抜け、箒が握る近接用ブレード【葵】が胴に触れようとした瞬間障害物が発生した。
ガキンっと金属音が生じ、いつの間にか六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】を握っていたデュノアの手が盾を装備しており、障害物の盾に遮られ箒の近接用ブレード【葵】は、デュノアの胴に届かなかった。
「甘いね。油断禁物だよ」
「しまっt」
箒が台詞を言い終えることもなくデュノアはPICによる加速で箒との距離を詰めて、デュノアは再び盾から六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】に武装を切り替え、銃口は箒の体を適確にロックしていた。
「ゼロ距離なら外さないよ!」
近接ブレード【ブレッド・スライサー】をいつの間にか六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】を切り替えて、合計2丁の六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】で箒の体に向かってゼロ距離射撃を繰り出すデュノア。
体に衝撃が走り、目の前のシールドエネルギーの残量が瞬く間にゼロになっていく中で箒は
「まだだ!まだやられはしない!!最後に一太刀浴びせる」
僅かに残っているシールドエネルギーがデュノアの2丁の六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】のゼロ距離射撃で尽きかけようとしていた時、箒は握っていた近接用ブレード【葵】を振り上げてデュノアに向かって縦に一閃した。
「!」
デュノアは両手に持っていた2丁の六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】を盾に箒の斬撃を受け止める。その結果、箒の斬撃を見事に受け止めれたが代償として2丁の六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】の内の1丁がバッサリと斬られ、もう一丁は銃の芯まで斬り込まれた状態で刀は停止した。
デュノアはすぐさまバッサリと斬られた六二口径連装ショットガン【レイン・オブ・サタディ】を捨て、代わりに六一口径アサルトカノン 【ガルム】を呼び出すと箒に向かって遠慮なしに連射し、銃弾の雨を浴びせる。
元々ゼロに成るか成らないかの状態であった箒が身に纏う訓練機の【打鉄】はスグサマ機能を停止した。
箒が身に纏う【打鉄】の機能が停止したのを確認するとデュノアは一夏の方に視線を向ける。
「こっちは片付いたよ、一夏。ここまでお膳立てをしたんだから絶対に勝ってね。負けたら明日から女子の制服で通ってもらうね」
そのセリフはオープンチャンネルで一夏に伝えているのか負けて活動が停止した【打鉄】を身に纏う箒には分からなかった。だが、一つだけ思った事がある。
――一夏の女子制服姿は気持ちが悪い
と。フリフリのスカートを履いた一夏の姿を想像してみたが吐き気を催す。
――こいつはホモ……同性愛主義者なのか?
と負けた箒は中世的な顔立ちのデュノアに疑いの目を向ける。
この女のように華奢な体。あ、いや。同い年の男性の裸体なんて見た事無いが、あ、あくまで女子から見たら女子の様に華奢な体つき。
生まれ持っての温室育ちの引きニートであれば分からなくも無いけれども、幾らなんでも華奢すぎじゃないか?男ならば、男らしくあるべきであろう。うん。デュノアはもう少し筋肉をつけるべきなのだ。と悶々とデュノアをホモ疑惑の眼で疑いながらやる事も無いのでデュノアの体にケチをつける箒。
疑心暗鬼の眼で見られているデュノアはラウラと一夏の戦いを静かに傍観するのだった。