拳の一夏と剣の千冬   作:zeke

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第39話

「フーン。成る程解りました」

 

 千冬を筆頭にヒロインの座を巡って言い争う馬鹿共を無視して山田先生が先程千冬に言おうとした事を尋ねた一夏はアメリカとイスラエルが軍用ISを共同開発してそのISが暴走した為、事態の鎮静化をIS学園に依頼が来たらしくIS学園上層部が依頼を受けたらしいという事を知った。

 

 山田先生の話を聞く中で一夏は内心――身に余る力を正当な手段を踏まえずに手に入れた馬鹿とアメリカとイスラエルという国を評価した。

 

 一夏は何事にも責任を持って行動している。AI作りも自壊プログラムをベースに作っているのは暴走した時に何時でも暴走したAIを破壊出来るようにとの対策である。

 

 人が力を手にする時におおいなる責任が伴う。

 だが、まあ、隠さずに話した事は評価できる。その評価によって次は無いZO★ではあるが。

 因みに隠したままIS学園や束やクー、一夏に知り合いにかすり傷一つでも付けば即座にアメリカとイスラエルの軍のサーバーをハッキングして自国の軍が保有するミサイルを自国に向けて発射させ悪 即 滅で国を消滅させていただろう。素直に話した分、評価されアメリカとイスラエルは自国の消滅の危機が次回に繰り越されたのだ。皮肉にも自国の防衛の為に作ったと思われる軍用ISが自国の消滅の危機を招いたのだ。

 

 それに、元々ISは束が人を大空へと宇宙へと羽ばたく為に作ったのだ。ISに武器が装備されているのも宇宙空間で無数に漂う隕石を破壊するためである。何故なら巨大な隕石に遭遇した場合、限られたエネルギーを少しでも抑えるために進行方向にある巨大な隕石を破壊する事の方がエネルギーの消費は抑えられる。その為、ISに武器は積まれたのだ。

 なのにどこぞの馬鹿がISを戦争に使うための道具にしている。

 AIを作る一夏にとってISを作る束の気持ちが何となく解る。

 

――こんな筈じゃなかった。と

 

 自分の作品を戦争の道具に使われて良い思いがするだろうか?

 

「自衛だの何だの関係ねえ。もう、いっその事回収しちまおうか……」

 

 何を?と訊かれたらコアをと答えるしかないが、一夏は非常に苛立っていた。

 だから、今回の件を引き受けて暴走したISのコアを回収してしまおうかとすら思ってしまう。

 

 そもそもコアを回収、と言うよりもコアを取り上げられてもアメリカとイスラエルは文句は言えないはずだ。何しろ、もともと軍用ISの開発はアラスカ条約で厳しく制限されていたのに条約を破ったのだ。大義名分はこちらにあり、命がけの労力の対価にコアを貰ったと言えば不満は出るだろうが誰も文句も言えないだろう。そもそも、そんなに不満なら最初からIS学園に依頼が来る前に出撃して事態の鎮静化を図れば良い訳だし、そもそもIS学園は学校である。ISを学ぶ唯一の学校とは言え、各国も企業や独自の研究施設や軍の訓練所を持っている時代なのだ。学生に頼むよりもベテランのIS操縦者に、モンド・グロッソに出場する選手に依頼するなりした方が事態の収拾は確実だ。

 その辺、全員の実力者に断わられたのか別の依頼があって手が回せなかったのかその真意は解らないが、だが命がけの任務に学生の身分であるIS学園の生徒が当たらねばならないのか理解が出来なかった。専用機持ちと言う大きなアドバンテージはあるといっても、使いこなせるかどうかは別問題。専用機という攻撃能力が300だせるとしても、その操縦者が1/4しか能力が出せなければ量産機で攻撃能力が100だが操縦者がその能力を無駄なく発揮できれば専用機よりも量産機の方が事実上強い。そして、IS学園の専用機持ちはその1/4しか発揮できていない能力を残り3/4発揮させるために練習している場所だ。

 今はまさに1/4しか能力が発揮できない攻撃能力300の専用機持ちに命がけの任務が来たのだ。もう、馬鹿かアホとしか言いようがない。

 軍のISも出撃したと聴いたが、その実力がどこまであるかは解らないし、何人出撃したか解らないが、複数出撃した場合の総合能力が一体どの程度でIS学園の専用機持ち以上に実力があるのかどうかも分からないが、ただいえる事は軍に所属しているという事はそれなりにベテランの操縦者なのにそれが負けたのに学生身分の自分達に命令が下る時点で上の程度が知れる。

 

「山田先生」

 

「はい、何でしょう?」

 

「イスラエルとアメリカの上の人と連絡を取りたいんですが……」

 

「えっと……軍用ISのデータならば口外しないという約束が守れるのでしたら開示しても構わないという連絡が来ているのですが」

 

「偉く向こうは上から目線ですね。でしたら、この依頼蹴って下さい。生半可な力を持った学生程度に上の人が縋るのでしたら上の人の程度が知れます。この学園は日本の国立の学校なんですよ?外国の不始末を何故日本が尻拭いをしなければいけないのか理解できません。普通は土下座でもして頼み込むのが当たり前でしょう?何で上から目線で命令できるのか理解に苦しみます」

 

「えっと……」

 

「それに俺が受けるかどうかは別問題ですよ?赤の他人(虫けら風情)の為に動く道理がありませんから。自分の尻拭いも出来ない赤の他人(虫けら風情)の為に命を賭ける道理もありませんので」

 

「えっと……」

 

「ですのでアメリカとイスラエルの両国のお偉いさんに真意を聞きます。その上で自ら判断します。今現状受ける気は全く起きませんね。このまま両国が共同開発したISが他国の領空を侵犯したら下手をすれば戦争に成るだけで日本がその戦争に参加する理由はありませんから。その前にどうしても事態の鎮静化を図りたいのならば帽子を脱ぎ、自らの非を詫び、その上で土下座は言い過ぎかもしれませんがお願いするのが筋でしょう?なのに行き成り命令だけよこして事態の鎮静化をしろ?寝言は寝てから云えと申し上げたい!……山田先生。あなたに俺が今言った問いが全て答えて頂けるなら別に両国の上の人との連絡は不要です。ですが、答えれないのであれば大至急連絡を取って今から電話での会談のアポを取って頂きたい!」

 

「は、はい!」と一夏の鬼気迫る迫力に委縮し、山田先生はすぐさまアメリカとイスラエルの両国の政府に連絡を涙目でする羽目になった。

 

 戦闘狂である一夏だが、その前に一応人の子である。そして、生粋の日本人である。筋も道理も義理もない赤の他人に動く理由が無い。外国が戦争に成りドンパチしようが日本は知らぬ存ぜぬで通せる大義名分がある。 

 それに、寧ろ戦争に成った方が一夏にとっては都合が良い。戦争に参加する事で更に強く成れるチャンスが多いからである。必要ならば生身でISと戦う事だって出来る。相手が千冬並みの実力者でなければISを展開した千冬を無意志の状態とは言え相打ちに追い込んだ実力があり何だかんだで生き残る確率はかなり高い。

 

 結局戦争に成った方が美味しい話を蹴る理由が見当たらないのだ。

 

 自分の利点を潰してまで手を貸す理由を見つけ、相手の真意を見極める為に山田先生に言って両政府との話し合いのアポを取って貰う。このアポを蹴るのだったら一夏は今回絶対に任務を受けないでいる腹だ。

 

「あ、あの!織斑君。驚きなんですけれどもアメリカとイスラエルの政府の方がOKとの事です」

 

「そうですか。では――」

 

 織斑一夏、一世一代とも言えるほどの会談。

 参加権(カード)はこちらにあり、向こうの出方によってこの命令を受けるつもりは無いと堂々と宣言するつもりだ。

 

「――始めましょうか。我々の口論(戦争)を」

 

 猛禽類や肉食獣の様な獰猛な瞳は更に鋭くなり、口の端は無意識に吊り上る。

 嗤う一夏を連れて山田先生はその場を後にした。

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