「と言う訳だ。俺は今から
ちょっとコンビニに行ってくると言うノリで言う一夏。
すでに会談の事は話しており、一夏が戻るまで自分がヒロインだと主張しあっていた原作ヒロインズのセシリア、デュノア、セカンド+αの千冬は仲良く一夏に正座を強いられた状態で話を聞いていた。
「いや、ちょっと待て一夏!お前何時の間にそんな約束を交わしたんだ!?」
正座をした状態で千冬は一夏に尋ねるが、一夏は顔をしかめる。
「さっき。どこかの教師が馬鹿やっている間にその教師の代わりに会談を終わらした」
一夏の発言に心当たりがありまくる千冬は目が泳ぎまくる。
「あんたの事だよ、この愚姉!」
千冬の両頬を思いっきり引っ張りながら無理やり視線を合わせる。
「ってか、俺がやった事って本来あんたの仕事じゃねえの!?ねえ!」
思いっきり頬を一夏に引っ張られる千冬は涙目で「いひゃい、ごめんにゃひゃい」と言ってようやく一夏は千冬の頬から手を放す。
「そんで、命がけの任務に参加する奴いる?報酬は一応常識の範囲内なら何でも叶えてくれるらしいんだが……」
「「「何でも!?」」」とハモる原作ヒロインズ+α(千冬)。
少し考えてみる。
何でも叶えてくれる報酬。
何でも――何でも――何でも――
一夏とのデート――一夏との同棲―一一夏との結婚――一夏との結婚旅行。そして、初夜。二人の子供。二人の家……
「「「…良い!!」」」
それぞれが思い描く報酬に束にゾッコンの一夏が絶対に応じるはずもないのだが、脳内ピンクの原作ヒロインズはそんな事をお構いなしに絶対に妄想を膨らませる。
そして、一番酷いのが千冬だった。
「フフ、ハハハ!やはり運命は、天は私に味方した!!その任務、私が受けよう!さあ、一夏!この任務が終われば二人でハワイにでも移住しよう!聞けば報酬は何でもと言うではないか!ならばこの任務が終われば、お姉ちゃんと一緒に南の島でのんびり余生を……」
「喧しいこの愚姉!いい加減そのドピンク脳をなんとかしろ!山田先生、この愚姉を旅館に連れて行って監禁しといてくれ!狗!」
一夏の怒声と共に呼ばれたラウラは、さっと一夏の背後に現れる。
「狗、お前はどうする?」
「私は――「因みに任務を達成できればプレ1な」受けます!!」
即答だった。プレ1とは、千冬のプレミア級の写真を1枚の事で千冬ファンにとっては家宝にするぐらいの貴重な写真だ。それが、任務達成できればくれると言うのだから千冬ファンクラブの会員番号1番のラウラには美味しい話この上ない。
「そうか。では、任務の前にこの愚姉を山田先生と一緒に旅館にぶち込んどいてくれ。もう何なら襲ってくれても構わんが、まず無理だろう。この愚姉も残念なことに
「一夏!?」
もうこの世の終わりみたいな、もしくは捨てられる子犬のような表情をする千冬に一夏は頭を抱える。
「いい加減弟離れ出来ねえのか、あんたは!?あんたがブラコンなのは薄々感じていたが流石に酷いぞ!」
「私が弟離れだと?……そんなものは、この世が終わってもありえん!!」
誇らしげに胸を張っていう千冬の頭に一夏の拳骨が炸裂する。
「胸を張って言える事かこのバカ!」
涙目で一夏に拳骨された頭をさすりながら千冬は反論する。
「好きな者を好きと言って何が悪い!私にとってお前が大切なだけだ!!」
「うっ」と唸る一夏。そんな一夏などつゆ知らず千冬のトークは更に加熱していく。
「というかだな、お前はお姉ちゃんを置いて遠くに行ってしまうのか!?」
涙目で訴える千冬に一夏は心がえぐられる。
一夏の最大の悩み。それは千冬に彼氏らしき人物がいないことなのだ。
家族が最優先事項の一夏にとって千冬に彼氏がいないというのが一番の問題なのだ。千冬に彼氏の一人でもいればゆくゆくは、それぞれの家庭を持つだろうが彼氏の一人も居ないのでは拙い。非常に拙い。ブラコンと家事が出来ないという事を除けば黙っていれば一夏の目から見てだがかなりの美人だ。男が群がってきそうな雰囲気もある。なのに、家事が出来ないというのとブラコンという欠点があるため一夏は、千冬に彼氏ができないのだろうと思っている。
もう、このまま千冬のブラコン度が悪化すればブラ婚化になりそうな勢いだ。
「ええい!今すぐにどうこうする気はないし、日本の法律だと俺はまだ結婚できない!」
「法律!?そうか、そうだったのだな!」
一夏の発言に何か考えが浮かんだのかフフフフフと黒く笑っている。
もう、千冬の考えていることが直ぐに解った一夏はツッコミたくなかったため山田先生とラウラに命令して千冬を強制退去にした。
色々と分かる。理解できる。
今まで育てた弟にいつの間にか婚約者がいて、自分に彼氏がいないことの焦りとショックで先程の千冬になっているのだと一夏は思っている。
「まあ、今まで訊かれなかったから言わなかった俺も悪いんだけどさ流石にちーたん、ブラコンすぎじゃね?」
もう先が思いやられると言わんばかりに一夏は大きなため息を一つ吐いた。
ただ、今回の任務だが千冬が請け負うと言った時にかなり任務の成功率は上がった。だが、個人的な意見だが千冬にこの命懸けの任務は任せたくなかった。それに、先程千冬が言っていた報酬を本気で望んでいたなら本気でブラ婚化になりそうな勢いであった。
すでにアメリカのクリミア大統領及びイスラエルのベリブン元大統領の責任宣言を先程確認したため、サイは投げられている。地面に吐いた唾を飲み込めない状態でいる為、一夏は今回の任務は確実に参加せねばならなくなっていた。
「ねえ、いっくん」
ちょんちょんと一夏の背中を指先でつつく束。
「あ゛、どうした?」
一夏が後ろにいる束にふり返ると束は言い始める。
「ちょっと、雪片弐型を出して」
「ああ」
束に言われるがまま一夏は雪片弐型を展開すると束はどこからか取り出した工具を両手に雪片弐型を触り分解し始める。
「行って欲しくは無いけれども、それでも行くのならせめて貴方に力を」
更に分解は続き、雪片弐型の持ち手部分の柄と刀身が分けられると束は茎部分に柄のような装置を取り付け、鎬に何か薄い板のような物を取り付けて板の端にある線を茎部分に取り付けた柄の様な装置に繋げた。
「これで完成」
「これは?」
「雪片弐型に取り付けたのはエネルギー供給装置。この鎬部分に取り付けた板の様な装置に受ける衝撃エネルギーを茎部分に取り付けた柄の様な装置でシールドエネルギーを回復させる。ただし、受けた衝撃の1/10しかシールドエネルギーに変換出来ない。しかも、雪片弐型を握ってないとシールドエネルギーが供給されない」
これは束に出来る唯一のサポートだった。命を懸ける一夏と命を懸けてほしくない束。
一夏が命を懸けるのは、いつもの事だ。
自らの行いに責任を持つ。それは自らの命を懸ける事に他ならない。故に一夏は強い。文字通り命懸けであるが故に。自らの生存本能すらも利用し、修行にも戦闘にも命懸けであたる。
エネルギー供給装置が取り付けられた新たな雪片弐型を掴み、片手でブンと横に一閃する。今までよりも重くなった雪片弐型を感じながら一夏は束を片手で手繰り寄せ抱きしめる。
「ありがとう、束。絶対に、絶対にお前のもとに帰ってくる。この任務が終われば、少ない時間だけどまたデートをしよう」
束の耳元で囁くように言うと一夏は雪片弐型をしまい、少し離れた場所にいるセシリア、デュノア、セカンドのもとへと向かう。
「さあ、参加者の確認をしよう!命懸けの任務だ!無理強いはしない。それでも今回の任務に参加するという奴は挙手を!」
「「「………」」」
デュノア、セシリア、セカンドの全員が無言の挙手をし、それを確認すると頭の中でこの場にいないラウラも今回の任務に参加するメンバーに加える。
「それじゃあ、すまないが皆のISのデータを白式に送ってくれ」
任務に参加するメンバーのIS特性を理解した上で一夏は作戦を立てる。
今回の作戦は命がけの任務だ
今この場に山田先生がいない為、作戦は立てれない。
「箒ちゃんもあの中に加わりたい?」
「……姉さん」
一夏やセシリア、デュノア、セカンドが話している中、少し離れた場所にいる箒に束は声をかけていた。
自らの心の中を見透かしたような束の発言に箒は困惑する。
「箒ちゃんが望むなら、いっくんに待って貰って箒ちゃんの専用機を後は微調整の最適化とパーソナライズのみだから、それが終われば参加できるよ?」
一夏の隣で一緒に飛びたいと思う。一緒に戦いたいと思う。好きだから。一夏が好きだから。
だが、その一夏は束の婚約者――
「分かりました。お願いします」
――それでも、好きなのだ!
彼の隣を飛び、彼と共に戦いたい!彼のそばに、居たい!!
箒の眼にもう迷いは無かった。
「OK☆それじゃあ、いっくーん!!箒ちゃん、専用機を持つんだけど最適化とパーソナライズが終われば、任務に参加するから待っててくれる~?」
その場から動かずに大声で一夏に束に一夏も大声で返事をする。
「解かった!何分かかりそう?」
「ざっと見積もって15分ぐらーい」
「解かった」
「さあさあ、いっくんもOKくれたし最適化とパーソナライズをしようか」
「……はい」
「それじゃあ、はい」と言って束から箒に渡されたのは赤い紐だった。
「これは?」
「待機状態の紅椿だよ。箒ちゃん、紅椿を呼んで」
「はい」
束に言われるがまま『来い、紅椿』と心の中で唱えると箒の周りに光が集まり始め、光が集まると箒は腰に左右一本ずつの日本刀型ブレードを付けた紅いISを身に纏っていた。
「それじゃあ、最適化をするね」
束はそう言ってそれぞれ6枚の空中投影ディスプレイと空中投影キーボードでを呼び出すと6枚のディスプレイを同時に見ながらキーボードを叩く。
箒は束が奏でるキーボードの音を背景に内心、新たに
『これが紅椿。私の、私の専用機。私だけのIS。これで、これで一夏と共に戦える!少しでも一夏の傍に居れる!!』
そう思いながらやがて最適化が終わり紅椿は文字通り箒だけの専用機と成った。
浮かれる箒と作業する束を一夏は遠くで尻目で見守りながら、デュノア、セシリア、セカンドから着々と送られてくる専用機の各データに目を通し戦力の把握に取り掛かる。
後、この場に居ないラウラとパーソナライズが出来ていない箒の紅椿のデータが必要だ。全てのISのデータを知り、
ただ、浮かれる箒を見るとあの状態では何か失敗をやらかす可能性が高い。
心の隙は、武術をする者にとって戦闘での隙であり、その隙が命を失う要因になる事だって大いにある。それ故に箒が今回の任務中にケガをする事だってあり得る。幾らISがシールドエネルギーによって操縦者が守られていると言ってもシールドエネルギーがキレてしまえば、ただの動く事の無い重い鉄の鎧でしかないのだから。
『箒の奴、浮かれてやがるな。あいつも武術を習っていたのだからその油断が致命的な隙と成る事だってあり得るって事を知っていやがるだろうに……』
内心そう思うが故に任務中少し箒を気にかけ、いざと成ると箒のサポートをしようと心に決める。箒がケガをすれば、もう、箒が望んで浮かれていたじゃんと思っても束が泣いて自分を責める事は目に見えているが故に。
――もう、笑顔が似合う