「糞ファ○ク!痛てえ!!」
一夏は今現在、
半分流されるような形で無人島についたとは言え、それでも戦闘の後の数キロの水泳はそれなりに来るものがあり、何よりもアドレナリンが戦闘が終わったため分泌がされなくなり、しかも腹に穴が開いた状態での水泳はもはや拷問の類だった。
更に言うなら、エネルギーは半分ほどあるが千冬や山田先生がいる宿泊施設までのエネルギーはもうないし、周りに船も見当たらない。それに拍車をかけるように
「痛てえし、疲れたし、周りに船がねえし、海上に浮上した時に戦闘が終わってるし」
ゴロンと砂浜で横になりながら一夏は眼を瞑る。
疲労困憊、今の現状はかなり拙い。希望的観測にすがり、船が通るのを待つか?ブラコンである千冬は一夏のシグナルロストに慌てて巡視船を出す可能性もある。それにかけるか……
「………いや、そんな甘っちょろい希望的観測縋るほど頭はパーじゃねえ」
すぐさま考えを否定し現状打破を考える。
そして、気付いた白式に。いや、正確に言うならば思い出したと言った方が正しいだろう。雪片弐型にエネルギー供給装置が取り付けられていた事に。
「うっし!今日の晩飯が海水にならなくて良かったぜ!希望が見えて来た!!」
一夏は直ぐに起き上がると雪片弐型を呼び出して雪片弐型の鎬の部分、エネルギー供給装置に向かって拳を連打する。
無人島で金属音が響き渡るのだった。
☆ ☆
時は少し遡り、一夏が
「織斑君の生体反応シグナルロストです!」
「何!?」
山田先生の報告を聞き、千冬は眼が飛び出るほど動揺した。胸の前で組んだ腕を握りしめ、爪がスーツの上から腕部の肉を抉る。
だが、直ぐにオープンチャンネルを山田先生に開く指示を出してオープンチャンネルが開くと同時に専用機持ちを叱責した。
本当ならば千冬自身が今すぐにでも飛び出して行きたかったがそれは出来ない。一夏に約束したから。いざと成った時の指示はこちらに任せろと約束したから。
一夏との約束を破ってしまえば千冬は織斑千冬でなくなってしまう。自分自身をひいては、一夏との約束を守るために千冬はそれをしない。やってしまえば千冬は自分自身を許せなくなってしまう。
「全員任務を続行しろ!!」
だが、その叱責も空しく専用機持ちは全員撃墜されてしまった。
目の前の画面に表示される専用機持ちのバイタルデータ。
だが、その中で一夏の部分だけがシグナルロストの表示がされていた。
「…………」
「……あの、織斑先生?」
「……アメリカ及びイスラエルの船を急行させて専用機持ちを全員回収させろ」
「りょ、了解!」
千冬は山田先生にそう指示を出すと目の前のディスプレイに表示される福音に進路方向と専用機持ちのバイタルデータを唯々見つめていた。
――これからどうする?学園に連絡して教師部隊を出撃させるか?IS学園の教師であればもし他国の領空に侵入しても外交問題にはならないだろう。だが、何時あのISもどきが襲撃してくるか解らない為学園を手薄にするのは悪手だ。学園の教師部隊を応援に来て貰い手薄になった学園を襲撃されたら……
……様々な可能性を思い描くが、それでもこの状況を打破する決め手には成らなかった。
仮に日本政府に応援を出しても戦闘領域が限られてくる。もし、戦闘空域ででた砲撃や銃弾が一発でも他国の領空や経済水域に着弾すれば外交問題に発展する。
――一夏。私は、私はどうしたら良い?
今の千冬は守るべき唯一の家族と言える一夏すら失った状態。辛うじて一夏との約束を果たそうと頑張っている為心の均衡を保っている状態だ。この任務が終わればどうなるか解らない。ただただ、居ない者に縋りつく世界最強の姿は弱弱しい女性の姿だった。
○ ○
白式のエネルギーが全て回復した一夏は、砂浜に寝っ転がっていた。疲労困憊でこの後、戦闘に戻るのも宿泊施設に一旦帰るもどのみち移動しなければいけない。
もし、仮に前者の戦闘に戻る事になると今の疲労困憊の状態では任務失敗どころか命を失うリスクが高くなる。
「少し、休むか」
瞼を閉じ、体の力を抜く。
休める時に休む事が生き残るコツでもあるのだ。
睡眠がベストなのだが睡眠が出来なくても体を休めるというのは大切だ。
やがて意識は遠のき一夏は夢の世界へと移る。
「ハアハア、
卑猥な言葉に一夏は起こされ、一夏は瞼を開ける。
周囲は白い海のような大量の水。そして、所々黒い木々や流木が突っ立っている中、一夏は仰向けに寝ていた。
――何かいる。いや、正確には乗っかっている。
視線をその元凶に向けるとそこには白いワンピースに麦わら帽子を被った白髪の少女が一夏の体に乗っていた。
そして、一夏の体をクンカクンカと言わんばかりに抱きついて臭いを嗅いでいた。
「ファッ○!手前、何してんだ!?」
「あ、
一夏は乗っかっている少女に指弾を叩きこむ。
指弾とは簡単に言うとデコピンだが、意識をデコピンをする指先と溜と成る指先に集め、限界に限界まで溜められたエネルギーを相手に効率的なダメージを与える入射角に叩き込む結構難しい技なのだ。因みにこの技で相手の脳を揺さぶり、脳震盪を引き起こさせることによって戦闘不能に出来たりするのだ。織斑流拳術の中で上位を争うほど最弱の技なのだ。
指弾を食らった少女は弧を描き、一夏の足元から数メートル離れた所へ落下した。
「手前、どんだけ石頭なんだ!?」
思ったよりも石頭だったためデコピンをした指先がジンジンする。
「酷いよ
涙目で額を抑える少女に言われて一夏は視線を自分のお腹に向けると確かにお腹に空いた穴が塞がっていた。
「そうか、ありがとな」
「えっへん!って事で
「うわー、今すぐ待機状態のお前を取り外してコアだけ取り出したくなって来たわ」
もう目の前の少女にドン引きの一夏。
こう、黙っていれば目も覚める美少女――束、クー、千冬を除いて――なのに、下ネタ発言で美少女要素が全部台無しである。
「ってか、手前今白式って言わなかったか?」
「うん、白式だよ。
「手前みたいなのが全ISのアイドルならば世も末だな。IS界も終わりだろうな。ファ○ク!こんな奴がアイドルでそれを支持するIS達に負ける世界なんて要らねえ!俺が全部ぶっ壊してやる!!」
一人使命感に燃える一夏に白式は笑う。
「大丈夫!
「要らねえよ、そんなサービス!糞くらえだ!」
白式は笑いながらスッと立ち上がった。
「行かなきゃ」
「あ?何言って」
一夏がやれやれと言うように頭を振り白式を見た時、そこにもう白式は居なかった。
代わりに水の中から人影が出現した。
「!?」
一夏はその人影に見覚えがあった。何故ならばその人影は唯一の家族で一夏が振り向かせたいと思った人物が乗った機体なのだから。そして、いつの間にか一夏がいる場所は夕日が昇る砂浜になっていた。
白騎士――忘れる筈がないあの事件。一夏にとって全ての始まりである、あの事件を解決に導いた機体なのだから。
白騎士は地面に剣を突き立てた状態で剣の頭に両手を置き、一夏に尋ねる。
「力を、力を欲しますか?」
「あ゛?」
「力を欲しますか?」
再度の問いかけに一夏は考える。目の前の相手が言いたいことが何なのか考える。
だが、解らない。思考が読めない。
「ああ」
「何の為に?」
未だ相手の考えている事が読めない中で現状、一夏のアドバンテージは無い。一夏がその場を仕切る要素が無いのだから。
相手の弱みを握っている訳でも無いのにその場を仕切れるわけがない。
「俺が、俺であるために、だ。俺は、さ、振り向かせたい人が居るんだよ。その人ってさ、世界最強の剣士なんだが、家事はからっきしダメなダメ人間な俺の姉なんだけどさ、何時か何時の日かその人と全力で戦いたいと思っているんだよね。そして、さ、何時の日かあの人を倒して世界最強の
『なら、行かなきゃね』
何時の間にか居なくなった白式が一夏の隣にいて一夏の手を引いている。
「あ゛?………そうだな、行かなきゃな。もう休憩は終了だ!立ち止まっている場合じゃねえ!ただただ、あの人のいる
そして、一夏は突然周囲が眩しくなり、反射的に眼を瞑る。
意識は鮮明に成りやがて現実となっていく。
次回、一夏君復活!
原作とは少し違った武装になりますのでお楽しみに!!