パキッと地面に落ちていたガラスの破片を踏みながらボスは一夏を乗せて摩天楼に着いた。目の前にそびえたつ巨大な廃墟。摩天楼はバブル時代に作られたマンションだが、バブルが崩壊し計画は白紙に戻されそのまま作りかけのままの状態となったマンションが土地ごと安く売りだされていたのを
因みに年々
本家の
そんな修羅の国、
因みにトライアルクラスの
弱き者に
「さてさて、どこまで俺を楽しませてくれるかな?現
不敵に目の前の摩天楼を前にして笑う一夏。
最近入ったばかりの
――運命とは数奇なものだ。
そう思いながら一夏はボスに乗った状態で摩天楼の入り口を目指した。
☆☆
摩天楼の入り口に向かうとボスは立ち止まり入り口を見た後に背中に乗っかっている一夏を見た。
「降りた方が良いという事か?」
一夏が尋ねるとボスは首を縦に振り肯定した。
「解かった。思うがままに暴れろ」
一夏が下りた瞬間ボスは大きく翼を広げジャンプした。
突如、ボスの頭上、摩天楼の二階から2人の人物がボスにめがけて飛び蹴りを繰り出した。
「コアァァァ!!」
ボスは雄たけびを上げながら飛び蹴りをかましてくる二人に目掛けて二段蹴りを食らわす。飛べない翼を広げ、風を受ける抵抗面積を増やすことで滞空時間を延ばしたボスはまさに蹴りに特化した動物であった。
ボスの蹴りで二人の刺客は蹴り飛ばされ、きれいな放物線を描いて地面に落ちた。
ピクリとも動かない刺客の二人。「コア」と雄たけびを上げるボス。ボスの後ろでボスの実力を見定めている一夏。三者三様の反応ではあったが、突如摩天楼の中から人がぞろぞろと出てきて一夏とボスを取り囲んだ。
一夏はフムと唸りながらボスに声をかける。
「どうやら相手も本気を出してきたみたいだが……いけるか?何なら手を貸すが」
しかし、ボスは首を横に振る。
自分だけでやると言う。
「そうか。ならば、俺にお前の力を実力を見せてみろ。ボス」
それは一夏の口には出さないが「信頼している。期待しているぞ」という言葉であった。
その意を知っているのか知らないのか解からないがボスは頷くと相手に向かって駆ける。駆ける。翔る。
ジャンプしたため飛翔という言葉は似つかわしくないが今のボスは間違いなく飛翔していた。
飛翔したボスは相手の顎や頭に向かって回し蹴りや飛び蹴り。
相手の頭や肩を踏み台にして相手のバランスを崩し、他の相手の邪魔となる様に転倒させる。
ボスは遠慮しなかった。相手は大群。味方は自分一人。
しかし、自分には見てくれている主がいる。自分を信じてくれている人がいる。
そう思う事で一夏と組手をやっている、いつも以上に体が軽く感じた。
「コアァァァァァ!!」
襲い掛かる修羅の大群。一人一人実力は一夏には劣るであろうが大群で来られたら、連戦はきつい相手をボスは相手を脚で撃退している。気合十分の雄たけびと共に襲ってくる修羅を一夏に教えて貰った中段目掛けての蹴り込み、逆蹴り、回し蹴り、たか回し蹴り、膝蹴り、かかと落とし、二段蹴り、ひねり蹴り、旋風脚を行い撃退。
ボスから繰り出された蹴りを受けた相手はまさにアクション映画に出てくる敵のように綺麗に蹴り飛ばされる。だが、ここは摩天楼。修羅の国である。ボスの攻撃を受けた相手は常人ならば気絶したであろう蹴りを受け身でダメージを和らげ、一人また一人と立ち上がってくる。摩天楼では受け身は必須科目であり、摩天楼で受け身ができない人物など存在しない
再び立ち上がった修羅達。修羅達はボスに一撃も加えれていない。
ボスも修羅達の攻撃を一撃も食らっていない。
だが、時間が経てば経つほど不利になるのはボスだった。一撃一撃を受けてはいるが完璧にダメージとして与えれていないボスの方が断然不利だった。一夏の様に一撃一撃が重く確実に相手にダメージを与えられるほどの実力をボスは持っていない。一撃一撃はボスの方が上かもしれないが数で勝り、深刻なダメージを与えられていない相手の方が有利なのは火を見るよりも明らかだった。
それでもボスは相手を前にしても逃げず立ち向かう。
再度襲い掛かってくる修羅達。覚悟を決め立ち向かおうとした瞬間に背後からゾクリとする巨大な気を感じた。冷や汗を流し動きが止まる。
どうやら襲い掛かってくる敵も同じように感じているらしく、視線をボスからボスの後ろにいる気を送る人物に向けていた。
その気は敵意であり、殺気であり、戦意を含んでいてそれらが全て入り混じったような気だった。ただ一つ言えることは、その気を感じると自分がちっぽけなミジンコのような存在に感じるほどの巨大な気であった。比べるという事態そのものがおこがましいと思わせる気は全て一夏によって発せられたものだった。
誰一人動かない。いや、動けない。
指先一つ、視線を逸らす事すら不可能。
誰も動けない戦場に陽気な声が響く。
「おいおい、殺気ビンビン。敵意むき出し。戦意満々ってか?一夏」
一夏が視線を摩天楼の二階の窓に向けるとそこには赤い髪をした鮮血の弾こと、
弾は二階から飛び降りると一夏と新人の
「「「リーダー!!」」」
新人の
「リーダー?今はお前がリーダーなのか、弾?」
「あいや、実はだな「手前!リーダーにため口とは良い度胸だな!」「死んだぞ、手前!!」あちゃー」
弾の言葉を遮ってボスと戦っていた
一夏が弾の登場で気をとぎらせてしまったため動けるようになっていた。
一夏と距離を詰めあと少しで攻撃できるという距離で一夏に攻撃しようとした新人たちはバチンという音と共に全員見えない壁にぶつかったかのようにぶっ倒れた。
「あらら、流石規格外だな。だが、こいつ等ならどうよ?」
弾がパチンと指を鳴らすと一夏を囲む様に一夏の前後左右にトライアルクラスの
「「「「「覇!!!」」」」」
一心同体で5人が同時に技を繰り出す。
頭、首、中段、下段、背中。それらに目掛けて振るわれる拳や脚。
「良いだろう、下僕達。まとめて相手をしてやるよ」
獰猛な猛禽類のような目になり、唇の端は吊り上がりながら一夏は
「さあさあ、皆もこの辺で良いだろう?特にリーダー代理」
戦場に響く声。
全員が声がした一夏の後ろに視線を向けるとそこには金髪、耳には丸いイヤリングをした、白いスーツを着たホスト風の男が現れた。
「お帰り、一夏。それとも
「出たな、ホスト野郎」
現れたのは鏡形而。一夏がいる間に結成した
そして、鏡は間違いなく強かった。弾が一夏の右腕ならば鏡は一夏の左腕といった具合に強かった。
一夏にホスト野郎と言われた鏡は苦笑しながら跪いた。
「お帰り。我らが
「皆中々強くなってんじゃねえか」
見ろよと言わんばかりに一夏が鏡に向かって服の左あばら付近を見せるとスッパリ切られていた。
「しかし、君も以前以上にお強くなったみたいで」
「そうか?だが、最後に残っている……ぜ。弾!」
そういうと一夏は弾との距離を瞬く間に詰めて弾の頭に目掛けて熊手突きを行う。
「燕返し!」
当たれば脳震盪を起こすその攻撃を攻防一体の技 燕返しを一夏に向けて行う。
弾の頭に目掛けて振るわれる熊手突きの腕をそらした燕返しの手刀が一夏の首に襲い掛かる。
「甘いんだよ!」
弾から振るわれる手刀を一夏は掴み弾の腕を捻りあげ、背負い投げを行う。
「うわ!?」っと驚いて投げられる弾だが、ひらりと猫みたいに着地する弾。そんな弾に一夏は更に追撃をかける。
「織斑流拳術無影拳」
拳は弾の顎を狙っているもあまりの速さで見えず。
見えぬが故に相手が何処を狙っているのか解からなければ防御も回避もされにくい。それがこの無影拳の特徴だった。
「!半月手刀!!」
しかし、摩天楼にいた団は一夏の視線が自分の顎を狙っている事を感じ取り、一夏から振るわれる拳を弾は左手で半月を描くように少林寺拳法の打上受けで受けて一夏のバランスを崩し、その勢いのまま一夏の脳天目掛けて手刀を行う
「織斑流拳術手刀崩し!」
脳天目掛けて振るわれる団の手刀を一夏は弾の手刀を行う手首に向けて斜め気味のアッパーを仕掛ける。
手刀とは、本来一番最後に最大の力を発揮する。それが、早い段階で対処されれば手刀は最大限の力を発揮できなくなる。そして、この手刀崩しとは相手の力を利用して自身に振るわれる上段を狙った手刀をする手首に目掛けて拳を捻り螺旋の溜を作った拳を叩き込む技だ。史上最強の弟子○ンイチに白刃流しという技がある。それを応用した技だ。
拳と拳がぶつかり合う。
そして、負けたのは
「うお!?痛ってぇ」
弾だった。手刀と手刀に対処すべく編み出された技ならば手刀に対処すべく編み出された技の方が強いのは自明の理だった。しかも、この手刀崩しは手首を狙った、いわば点の攻撃なのだ。力を手首という間接一点に力を集中させているため命中すれば絶大な威力を発揮する。
痛がる弾の首に向かって手刀を打ち込む一夏。手刀は弾の首の数㎜の所で止まった。
「チェックメイト」
「俺の負けだ、一夏」
興産といった具合に両手を上げて幸福の合図をとる弾。
そのポーズを見ると一夏は手刀の手を引っ込める。
「それで、今日はどうしたんだよ
「まあな。だがよお、ここに来た理由は一つしかねえだろ?強くなりに来ただけだ」
「
やれやれと言いたげに傷んだ手首をぶらぶらさせて肩をすくめる弾。
「知らねえなあ。弱い奴は弱い。強くなろうとしねえ奴は現状維持が関の山。あとは堕ちていくのが普通だ」
「手前は相も変わらずだな、一夏。その睨みつけるような鋭い眼光は相も変わらず衰える事を知らず。しばらく顔を見せていなくてひょっこり帰ってきた顔を見せたから実力を見たくて仕掛けてみるもあっさり返り討ちする始末。流石だぜ
「おだてんで良い。それよりも、
「お、お前!?
「ああ」
「お前、
「そんな事情は知らん。俺は強くなりに来ただけだ。それに
「ハア、どうせならいっその事命令してくれや
「そうか、ならば
無限組手。それはとりわけ
無限組手は年々成功率が難しくなっており、その理由として
だが、
その日、摩天楼には一日中ど派手な音が響き渡るのだった。