一夏は@クルーズでコーヒーを飲んでいた。
目の前にいるのは銀髪の美少女。誰もが眼を引くその美少女は何を隠そう一夏の自慢の娘である。料理はおろか家事や裁縫、掃除洗濯が出来るのである。
一夏はこの日娘との家族デートを楽しむために@クルーズに来ていた。
目の前でおいしそうに季節限定のパフェを食べるクーは可愛らしく家族大好きなファミリーコンプレックス――略してファミコン――な一夏にとって微笑ましい光景だった。
モグモグと子リスの様にパフェを食べる娘の姿はとても可愛らしく思えた。
娘が可愛らしくパフェを食べる姿を見ながらのコーヒーとは考え深く奥深いものだった。
「そう言えば、今度お母様の実家の方でお祭りがありましたね?」
そういえばと言いながらクーはパフェを食べる手を休め、ポケットの中から一枚のチラシを取り出した。チラシには箒と束の実家篠ノ之神社で祭りが開催されることが書かれており、時間が16時からとなっていた。
「クー、行きたいのか?」
「はい」
「まあ、祭りには屋台が出てリンゴ飴とか綿菓子とか甘栗とかチョコバナナとかが出るからな」
「リンゴ飴!?綿菓子!チョコバナナ!!??」
もう眼をキラキラさせ是非とも行きたいと云うが如く一夏を見る娘に一夏は苦笑する。
「そう言えば、クーは一回もお祭りとか行った事無いんだっけ?」
「はい」
「お祭りでは大抵花火が打ち上げられるんだが………お祭りを行った事がなければ見た事無いか?」
「花火?」
不思議そうな表情をする娘に一夏は今後のプランを考えながら花火の説明をする。
「ああ。夜空に打ち上げる日本の伝統技術が詰まった一種のアートだ。夜空に打ち上げられる花火は色々種類があるが、俺が好きなものだ。一瞬のために命を燃やす様は、とても美しい。見ていて飽きた事が無い。材料は金属の粉末と火薬なのだがその配合はもはや職人レベルで調整されている」
「是非とも行きたいです!!」
身を乗り出してそう言うクー。
服にパフェが付きそうになるが、付かなかった。スイーツが好きなクーにとってリンゴ飴や綿菓子は作ったことがないし食べた事の無い未知のもの。更に花火というものを見た事が無い為、行きたいという欲望に拍車がかかる。
クーは外見だけで言うだけならば美少女で一夏と同じ学年に見えるが実際中身は子供。世の中の知らないことの方が多かった。
一夏はそうかと呟くとコーヒーの残りを一口で飲み干しなんか見た事のある金髪執事服の店員さんにお代わりを頼む。
「それじゃあ、俺の方も用意しておくか」
「出来れば父様と母様と三人で行きたいです」
クーの発言に一夏はエッ!?と驚く。それは願っても無い事ではあった。束本人を前に一緒に祭り行こう!とか愛を囁くよりも気恥ずかしくて普段は言えない。だが、今回は娘の頼みだ。メインは娘との触れ合いとして、サブで束とイチャイチャする事に成るだろうが、まあそれでも構わない。
しかし、束と娘と三人で行動とは少しリスクが上がってしまう。何しろ世界は束の持つIS技術を欲している。一機で世界の軍事バランスを崩せるほどの戦闘能力を秘めたISを悪用しようとする輩も現れないとは限らない。そんな輩が束を見つければ娘を人質に束にISを作る事を強いるかもしれない。世界各国どころか色々な企業がISを欲して束の行方を追っているのだ。三人で行動する事はそれだけ発見されるリスクを増やす。
「となると確実に安全な方法を取るか」
「?どうかされましたか?」
「あ、いや、お祭り楽しみだな!束と一緒に折角のお祭りだから浴衣を着てこい。それと、変装用のウィッグも」
「はい!」と嬉しそうに返事をするクー。パフェはもう残り少しで食べ終わる。
一夏はお代わりのコーヒーにミルクを入れマドラーでかき混ぜてコーヒーカップに口をつける。程良い香りが口の中に香り、この後の娘との家族デートで何処に行こうかと考えていると入り口を蹴破る様に覆面をした男たちが雪崩れ込んできた。
男たちの背負うリュックからは何枚かのお札が宙を舞う。男たちは格好からして銀行強盗をしてきた帰りに逃げ切れなくなって、この@クルーズに入ってきた感じの負け犬だった。
「全員動くんじゃねえ!!」
銀行強盗の一人が天井に向けて手に持つショットガンを威嚇射撃で撃つ。ダンという銃声が店内に鳴り響き、天井にはショットガンで撃たれた特有の銃弾の跡が刻まれた。
「あー、犯人に次ぐ。君達はすでに包囲されている。大人しく出てきなさい」というメガホンから流れる声が外からする。店内の誰かが「うわ、古」と呟くも緑の覆面を被った銀行強盗の一人はガラスを割り、店外にいる警察車両に向けて銃弾をぶち込む。
「うるせえんだよ!こっちは人質がいるんだ!人質を大人しく返してほしけりゃ車を用意しやがれ!もちろん発信機なんかつけんじゃねえぞ!!」
そう言ってもう一度警察車両に銃弾をぶち込む。
店内に緊張が走る中で一夏は「すみませ~ん」と今度はこれまた見た事のある銀髪メイド店員を呼ぶ。
「すみません。この@クルーズ 季節限定シューを持ち帰りで。あ、後@プリンを一つお願いしまーす」
注文を済ませてお代わりしたコーヒーに口をつける。今も束は一人でISの研究をしているだろう。ならば、差し入れぐらいしようと思い一夏は季節限定シューを注文した。因みに@プリンは自分で食べるために注文したのだ。
だが、これを快く思わないものがいた。
「手前!今どういう状況かわかってんのか!?俺たちは銀行強盗なんだぞ、ごらあ!!脳みそ逝かれてんじゃねえのか!?」
銀行強盗だ。まあ、実際に自分たちが天何に入ってきてちょっとした騒ぎになっていたが一夏は気にも留めなかった。何故なら一夏にとって有象無象の赤の他人は虫けらと同じく所詮風景の一つでしか感じず、語ることも同じ時を過ごした事も無い相手にかける興味など持ち合わせていないからだ。
@クルーズに銀行強盗が押し寄せ店内が混乱に見舞われようとも一つの風景でしかなく娘に危害が加えられなければ店内で銀行強盗が発砲して何人の負傷者や死者が出ようともどうでも良いのだ。所詮風景の一つが変わった程度でしかないのだから。
「あ゛、現状?如何にも負け犬臭満載の銀行強盗(笑)が店内に入って来た事?」
「手前ぇぇぇ!!」
オレンジ色の覆面をした銀行強盗の一人は怒った。地獄の底から這いあがるような声を出し、怒りで肩を震わせる。
「手前等がどう思っていようが俺は客としてこの店に入ったの。手前等の負け犬臭満載のリアル銀行強盗ごっこに付き合うためにこの店に入ったんじゃないの。お 解 か り?こっちはお金という対価を支払ってここにいる訳。それを急に入ってきて俺たちに付き合え?寝言は寝てから言いな、坊や」
ブチブチと怒り心頭の銀行強盗。それもその筈。銀行強盗は犯罪を犯し、自分たちは銃をもっているので皆言う事を聞くと思っているのだ。だが、銀行強盗の相手は一夏。銃なんて、やくざの青狼会の事務所にかち込んだ時に十分見たし、普段からIS用の銃ではあるが見ているため大して脅威ではない。
「ん」
すっと一夏が銀行強盗の頭に目掛けて手を出す。それは、デコピンの溜を作った構えだった。
「あ?何だ、こりゃあ?」
「何ってデコピンだよ。デコピン。解かる?」
オレンジ色の覆面をした銀行強盗の一人が仲間の方を見て「デコピンだってよ。ハハハ。こいつ頭おかしいんじゃねえの!?」と笑い再び一夏を振り向くと、それは放たれた。
「織斑流拳術指弾」
バチンという音と共に吹き飛ぶ銀行強盗。@クルーズのガラスを割り店外へ。そして、ガシャーンという音と共に警察車両のフロントガラスを頭から割り、犬神家状態で動かなくなっていた。
「「「………」」」
店内に静寂が訪れ視線は全て一夏に降り注がれるが、一夏は注文した@プリンが来たので黙って@プリンを食べ始める。
口の中に広がる程良い甘み。しかし、後を引かない甘味。程良く計算され尽くされている。
「フム、これは中々美味だな」
「あ、でしたら一口下さい」
「いいぞ。ほれ」
「はい。あ~ん」とどう見ても@クルーズの店内でいちゃつくカップルでしか見えない一夏とクー。店内は銃を持った銀行強盗で占領されているのだが、一夏がいるためかクーは驚く様子も恐怖する様子もない。
「手前、ヤスオをよくも!!というか、指先一つでヤスオを弾き飛ばす手前はナメ○ク星人か!?」
ヤスオ。どうやら先ほどのオレンジ色の覆面をした銀行強盗の一人で一夏にデコピンされて弾き飛ばされた人物らしい。
緑の覆面をした銀行強盗の一人が一夏にハンドガンの銃口を向ける。
「つーか、おたくら何か注文しなよ。店の良い迷惑じゃねえか。所詮お前らは、かねd……カm……お客様なんだから」
「お前今、金づるとか、カモとか言おうとしたよな!?」
「知らんな。変な言いがかりはやめてくれ。お客様」
「待て、お前にお客様と言われると何故か鳥肌が立つ。後、お前も客だろう!」
「それじゃあ、ご主人様。ご注文を」
「やめろ!」
「はい、ダーリン こちらメニュー表で~す 」
「やめろ!やめろ!!やめてくれえええええ!!!」
一夏にメニュー表を差し出されるも一夏に銃口を向けた緑の覆面の銀行強盗は、床で頭を抱えてのたうち回る。眼は虚ろで焦点が定まっておらず、「俺は男にご主人様って言われたくないんだ!女の子に、あわよくばメイド服を着たメイドさんにご主人様って言われたいんだ」とうつ伏せの状態で呟いていた。
「ククク、こいつ中々面白いだろう?人間の壊れていく様は見ていて飽きないな。しかも、壊れても迷惑をこおむら無い人間であればある程やがてその存在が人々の害悪でしかないと知った時の絶望した表情はさぞ愉快だろう。いやはや、今は絶望した表情はしていないが、それでも壊れる様は愉快愉快」
「ええ。本当に楽しそうですね、父様」
クーはパフェの最後の一口を食べ終えるとそう言い、一夏はそれを見て「フム、いかんな」と@プリンの残りをパクッと食べてしまう。
「そんなに急がなくても」とクーに言われるが「お前との貴重な時間を無駄にしたくない。それにまたここに来たければ来れば良いさ」と言って二人の時間を過ごしている間に銀行強盗の最後の一人、この銀行強盗のリーダーが「おい、しっかりしろ!!俺らには金があるんだ!海外に豪邸を立てて自宅に金髪美少女のメイドさんを抱えるんだろう!」と床でうつ伏せ状態の仲間のけつを蹴り、正気に戻させる。
銀行強盗を働く動機としては最低の動機であった。
「さて、次行くか」
「はい」
席を立ち、伝票を手に会計に行こうとする一夏とクーの進路を塞ぐ二つの影。
「へへへ、さっきはやられたが今度は負けねえZE」
「おおっと!お前らは俺らの大事な人質なんだから大人しく席に座って貰おうか」
負け犬臭どころか負けフラグが経った瞬間であった。
持っていたショットガンとハンドガンを一夏とクーに向ける銀行強盗二人。
別に一夏に銃口を向けるのは良かった。問題があったのは……
「手前ぇぇぇ!そんなきたねえ黒光りした物を誰に向けてやがんだ!ああん!?」
銃口が娘のクー、クロエ・クロニクルに向いていたことだ。殺気全開で目の前の二人を硬直させ、娘のクーに銃口を向けていた相手を殴り飛ばした。殴り飛ばされた相手はパトカーのボンネットの上に飛ばされ白目をむいている有様。
「お、おめえ、化け物め!!」
殺気を放つ相手を銀行強盗二人から殴り飛ばした相手に切り替えたためショットガンを持った銀行強盗のリーダーが一夏に銃口を向けるが、肩を叩かれ振り返るとそこにはニコリと笑顔のクーが居た。
思わず美少女のクーに笑顔を向けられ覆面の下の顔がにやける。
「撫子」
そして、クーは一夏直伝の撫子を銀行強盗の腹部に向けて放つ。
「ぐべふ」
クーが放った撫子は銀行強盗の正中線を直撃し、銀行強盗は激痛で蹲る。
「別にお前が手を下すまでも無かったのに」
「申し訳ありません。父様に銃口が向けられていたので、つい」
しょぼんと弱々しくしょぼくれるクーの頭を撫でながら一夏は言う。
「構わんさ。お前に怪我が無くてよかった。もしもお前にかすり傷一つでもついていればこの下手人共を八つ裂きにしても飽き足らず、こいつらを逃した無能な警察共がいる警察署に殴り込んで八つ裂きにしなければ気が済まなかったが……大事にならずに済んで良かった」
「父様!」
涙目で一夏に抱き着くクーとそんな娘を優しく抱きしめる一夏。
もう、なにこれ状態である。
だが、そんな空気をぶち壊すかのようにクーに撫子をぶち込まれた銀行強盗のリーダーが立ち上がり羽織っていたジャケットをめくった。
「おのれ、おのれ、おのれぇぇぇ!こうなったら全員吹っ飛ばしてやる!警察に捕まって
ジャケットの下にはプラスチック爆弾がセットされこの店を軽く4軒は吹き飛ばす規模の火薬量だった。手にはもちろんリモコンが握られ、いつでも俺逝けますぜ状態だった。
ハア、やれやれと言った具合に一夏はその銀行強盗を見るとクーに向かって待ってくれるようにお願いをする。
「すまんが少し待っててくれ。片づけてくる」
「解かりました」
クーの承諾を得て一夏はコキコキと肩を鳴らし、銀行強盗に近づこうとする。
「おっと、待ちな兄ちゃん!それ以上一歩でも近づけばこのスイッチを押すぜ」
もう三下の言い方ではあったがすでに銀行強盗の指はリモコンのスイッチボタンに置かれていた。
「だからどうした?」
そう言い終わると同時に一夏の姿が銀行強盗の前から消え、次の瞬間「織斑流拳術断空手刀」という声と共に一夏の姿が現れバキッという音と共に銀行強盗のリモコンを持っている左手が折られ、リモコンは宙を舞い一夏の左手に落ちる。
「さて、リモコンのスイッチを押したがっていたな……フム、そんなに死にたいならば手伝ってやろうか?俺がお前を空中にぶん投げてこのリモコンのスイッチを押せば、お前は一人で愉快に汚い花火となりながらも俺を楽しませてくれるかもしれんしな」
そう言いながら一夏は爆弾を体に巻き付けた銀行強盗の右の親指と人差し指で銀行強盗の気道を塞ぎ、壁に銀行強盗を押し付けゆっくりと持ち上げる。
みるみる顔が真っ青になっていく銀行強盗を眺めながら一夏は考える。
――どうしたらこの下手人共に奪われた時間の腹いせを行えるかと。
そして、思いついた。
「そう言えば、お前は刑務所が地獄とほざいていたな。ならば、お前に本当の地獄を見せてやろう」
クククと愉快そうに一夏は銀行強盗を床におろし、気道を塞いでいた親指と人差し指をのける。
ゲホゲホとむせる銀行強盗を前に一夏は右手でポケットから携帯電話を取り出した。
「あ、俺だ。今集めれる人数を全員集めろ。あ゛?50人ほどしか無理?構わん!すぐに集めれるだけの人数を集めて@クルーズに集合しろ。警察がいるが、まあ構うな。何かあればぶちのめせ!大至急だ!!」
そう言って電話を切ると一夏は今度は別の所に電話を掛ける。携帯電話の画面にはパシリの文字が浮かび上がり……
「お゛い!俺だ!!どうなってんだ警察は!銀行強盗を取り逃がしてこちらに火の粉が降り注いだじゃねえか!あ”申し訳ねえ!?ふざけんなや手前等!俺の気分を害しやがって!銀行強盗なんざ撃ち殺しゃあいいんだよ!あ゛人権?知るかボケが!!兎に角、今回の手前等の不祥事に俺はブチ切れなわけ!街中で銃撃戦が起きるのと銀行強盗が自暴自棄になって街中で店を4軒軽く吹っ飛ばす爆弾抱えて自爆テロを起こすのとどっちが被害が少ないと思ってんだ!?この一件で犯人は俺が預かって料理するから犯人よこしな。あ゛出来ない?出来ないじゃねえよ!やれつってんだろ!!」
……怒鳴る様に電話を切ると未だ咽びかえる銀行強盗の方を向く。
「これから手前等には一つのチャンスをくれてやる。勝てば手前等はお咎めなし。負ければ銀行強盗を行ったせいで出た被害総額とこの@クルーズの被害総額+この@クルーズにいるお客さんの気分を害したってことで今いるお客さんのお会計を全て負担ってことでどうだ?」
お咎め無し。まさに甘美な響き。甘い誘惑であり、その証拠に@クルーズの店内からブーイングの声が鳴り響く。「まあ、そう言うな。この賭けはこちらが有利なんだから」と言って店内の客をなだめる。
「お、来たか!良し、賭けをしよう」
そう言って一夏は銀行強盗のリーダーをアイアンクローで捕まえたまま割れた窓から外へと飛び出た。
一夏が外に出ると野次馬達が遠目で見ており、すぐ近くの警察車両に銀行強盗の残りの犯人2人は乗せられていた。
すぐに警察官の一人が一夏に向かって走ってくると
「ご協力感謝します!犯人はこちらで預かり「あー、そこの警察車両に乗っている犯人たちをこっちに寄越して」え?」
「え?じゃないよ、君。何警察が犯人取り逃がしてんのさ。そんな無能な集団に犯人預けちゃあ拙いっしょ?また犯人逃しちゃうかもしんないじゃん。そんで、また混乱を招くわけ?ねえ、答えれるんだったら俺の納得がいく返事を頂戴よ。こたえられないんだったらさ、犯人を俺に引き渡して。ってか、君たち警察は駆け付けただけじゃん。何もしてないよねえ?全部俺らが事態を収拾したじゃん。犯人が要求した車両準備した?車種とか何も要求してなかったからさあ、そこら辺のレンタカー屋からレンタカーを借りれば良かったんじゃないの?ねえ。そんな事もしないあなた達に犯人を任せられません。こちらにとっとと引き渡して下さい」
既に一夏が呼んだ修羅の集団は到着済みで一夏を待っていた。
「ぐずぐずすんなら勝手に持ってくよ」
そう言って一夏が銀行強盗のボスをアイアンクローをした状態で持ち上げて警察車両に近付こうとした時、一夏の携帯電話が鳴った。
チッと舌打ちをして携帯電話を取り出すとそこにはパシリの文字が浮かび上がっていた。
「はい、もしもし」
「あ、現場の警察官に電話を替わってもらえますか?」
ほいよと一夏が先ほどまで話していた警察官に向かって、あんたに電話だとよと言って携帯電話を渡す。
数秒すると先ほどの警察官は一夏に携帯電話を返し急いで警察車両に乗っている銀行強盗の犯人を一夏に引き渡した。
「おーい、こっちに来てくれ~」
修羅達に向かってそういうと50人ほどの修羅が一夏に向かって行進する。
修羅に集団が一夏の前に止まると一夏は銀行強盗の首に何やら機械仕掛けの首輪をつける。
「はい、完成。ガダルカナル22号。通称首チョンパ爆弾だ。お前らの首を吹き飛ばすだけの爆発量しかない周りに被害を出さない米ちゃん試作型爆弾だ。無理やり外そうとすれば首チョンパ。賭けは簡単。今からお前たちにはこの修羅達全員と戦って貰う。お前達が勝てば爆弾は解除してやるが、負ければ今までの全被害分をすべてお前たちの体で払って貰うだけだ。そんじゃあ、弾。後は宜しく。無限組手の挑戦者はそこの下手人3人。全員試作の技をかけてよし!!たっぷりと可愛がってやれ!!」
「「「押忍」」」
ぞろぞろと無彩男たちに囲まれる銀行強盗達。もはや絶望的な状態でしかない。
無彩男たちは全員修羅の国摩天楼の修羅。つまり、修羅中の修羅でありそこら辺のチンピラとは訳が違う純格闘家達なのだ。しかも、無限組手。倒しても倒しても終わりが無いまさに無限の組み手をやらされる非常な現実。敗北すれば銀行強盗をした全被害額を奴隷同然で支払わねばならない。負けられない戦いではあるが出来レース同然である。素人が毎日切磋琢磨して強くなろうと頑張っている修羅に勝てる訳などない。
無彩男達は銀行強盗を担ぎ上げると摩天楼に強制連行する。
「こっちでお前らの就職先を探しといてやるから……まあ、頑張れや。俺の予測を裏切ってくれることを期待しているぜ」
クククと悪魔な笑みを浮かべる一夏。
先程、銀行強盗達につけた首輪は単なる首輪。爆弾の火薬など一ミクロも入ってないが、銀行強盗達を逃さないための嘘である。逃げれば首が飛ぶと言われれば誰も逃げないだろう。逃げてしまえば単なる無駄死にである。自爆テロを起こすにしても周囲を巻き添えにできなければ単なる犬死であり無駄死になのだから誰も逃げようとは思わないだろう。
修羅達に弄られ、肉体的な限界と負けた事による現実での精神的な限界を銀行強盗達は味わう事に成る。その時、無限組手に失敗した時の銀行強盗達の絶望した表情を思い浮かべるだけでゾクゾクする。
「さ~て、俺も悪魔じゃないからな」
*どう考えても悪魔です
「銀行強盗達に少しばかり希望を持たせてやるか」
そう呟いて一夏は連行される銀行強盗達を背に@クルーズへ戻る。@クルーズへ戻ると店内は銀行強盗が居なくなった所為かガヤガヤと騒がしくなっており、一夏はクーの所に行くともう少しだけ待っててくれと言って店員に話しかける。
「すみませ~ん。店長さんいますか?」
「生憎店長は不在です。副店長は私ですが……」
「そんじゃあ、物は相談なんですけれども、今回の事件でこちらのお店の被害総額を計算して俺に電話してきてもらえますか?それと、あの銀行強盗3人をここで雇って貰えませんかね?給料から最低限の生活できるだけの額にして被害額を天引きにして渡すという形でお願いしたいのですが……。まあ、あなた一人の判断では決め兼ねられないでしょうから上の人と相談し判断して貰った上でご連絡ください」
それでは、と言って一夏はサラッと自分の携帯電話の番号を財布に入っていたレシートに書くと副店長に渡し、さっさと会計を済ませてクーの手を繋ぎ、とっとと@クルーズから出て行く。後日、銀行強盗犯が@クルーズに社畜として迎え入れられ、この世の地獄を体験する羽目になったのはまた別のお話しである。
それを影からこっそりと除く二つの影。
「僕達の出番が……無い!?あ、でも、一夏に気付かれなくて良かった~」
「だなシャルロット。しかし、あの姿……」
「あれって一夏の不倫相手なのかな?」
「ううむ。解からん」
執事服を着た金髪の美少女と銀髪の眼帯をつけたメイドさんが仲良く手を繋いで店から出ていく一夏とクーの後姿を見送るのだった。