夏休みが終わり、二学期の早朝。午前5時からIS学園の朝は始まる。
ドゴーンという爆発音が日の出と共にIS学園寮にかなりの距離があるアリーナから響き渡り、巡回の先生が爆発音がしたアリーナに向かうとそこにはアリーナのシールドが破壊され、地面は抉れ観客席は一部吹き飛ぶと言う見るも無残な状況となったアリーナが視界に入る。
しかし、周辺を調査するも人影一つ無く、アリーナの監視カメラの映像を分析して犯人の特定をしようとするも映像に記録されていなかった。
そんな日々が続き、IS学園の生徒が睡眠不足で悩まされる日々が続く。
「おはよ~」
「おはよう……」
一夏のクラスの女子は眼の下に隈が出来ており、表情が暗い。クラス中……と言うか、学園中がそんな雰囲気を漂わせ始め、学園上層部もそろそろ「あれ?何か雰囲気やばくね!?」と言う感じで捜査員を増やそうと思い検討し始めた今日この頃。
「フム、ヴェーダにデータが少しではあるが取れて来たな。だが、まだ稼働するには圧倒的にデータ不足ではあるが……」
一夏は小型の携帯端末に表示されるヴェーダの蓄積データ量を見ながら一人男性用ロッカールームで呟く。
ヴェーダ……それは、簡単に言えば内包したもう一つの世界。あらゆる宗教、思考、性格、人種、趣味、性別、性癖、知識のデータを
小型の携帯端末の画面を切り替える。そこには、学園のメインサーバーから第二形態となった白式のデータを取った監視カメラの映像が映し出されており、訓練の様子を記録した映像を見て第3者目線で自らの欠点を知ろうとしていた。
「……やはり、中・遠距離攻撃の圧倒的な経験不足だな。そして、第二形態によってエネルギー消費に拍車がかかっている」
監視カメラの映像からも見て自身の欠点かもと言う疑念が確信へと変わる。一夏は第二形態になることによってウィングスラスターの追加と大型化。更にエネルギー消費武装の追加。零落白夜の威力上昇と言うマイナスの負債を抱えてしまった。無論、全体的なパワーアップであったので雪片弐型のエネルギー供給量アップと言う利点もあったのだが、どうみてもマイナスの負債であった。
そんな事を考えていると携帯端末の画面にロッカールームに侵入しようとする女子生徒の映像が監視カメラを通しての映像が流れてくる。
「………」
どう考えても、変態であろう女子学生。一夏は頭が痛そうに頭を抱えて携帯端末に表示される画像を見ると携帯端末の電源を消して上着とズボンを脱ぎ、パンツ一丁になる。
「フフ、彼の眼を塞いでこうミステリアスなお姉さんとして登場を……「変態だ!痴女だ!!」私は変態よ!痴女よ!!って、キャー!!!」
入って来た瞬間にパンツ一丁姿の一夏を見て、顔を真っ赤にして言う赤い瞳にブルーの髪をした年上の女性。手には扇子を持っており、扇子で真っ赤にした顔を隠している。
「……取りあえず男子更衣室に入って来た痴女という事で警察に連絡を」
一夏がそう呟いて携帯電話を手に番号をプッシュすると、顔を真っ赤にさせた女性は慌てて一夏から携帯電話を取り上げる。
「ちょ、ストップ!ストープ!!」
「あ゛!?何すんだよ!」
「それは、こっちのセリフよ!!」
「俺のセリフだろうが!手前、何普通に男子更衣室に入って来てんだ、ごらあ!?何?俺の裸体が見たかったのか!?この変態!痴女!ペチャパイ女!」
「いや、こうミステリアスなお姉さんとして登場したかったのよ!それと痴女とか変態はこの状況では反論できないけれども最後のだけは全力で否定できるわ!私は簪ちゃんみたいにペチャパイじゃないから!!」
「五月蠅い痴女!!俺の基準はちーたn……織斑先生だ!織斑先生よりも胸がデカくなってから出直して来い、このペチャパイ変態ウルトラ痴女!!」
そう言って一夏は入って来た痴女に向かって自分の上着を投げる。痴女は投げられた上着が視界を塞ぐため、上着をキャッチしようと上着に気取られ、隙を突かれた。
一夏に懐に入られる事を許す機会を与えてしまい――
「織斑流拳術
全身の経穴、ツボと呼ばれる個所を指で突き、相手の動きを封じ込める技である。この技は織斑流拳術の中で弱小攻撃TOP3に入るほど弱い攻撃力なのだが織斑流拳術の為威力は絶大である。
—―動けなくなってしまった。この技の特徴は全身の神経が麻痺して意識はあるが指先一つ動かせなくなるのが特徴の技なのだ。
「え、あれ!?体が……動かない!?」
ぶっ倒れた痴女をそのまま担ぐと一夏は更衣室の窓を開けて……
「あばよ」
そのまま窓から放り投げた。
「え!?きゃああああああ!!!」
更衣室の窓を閉め、窓の向こうから聞こえてくる痴女の悲鳴を聞きながら一夏は「夏の暑さに未だ脳がやられた人間がいるとは、な」と呟きながらやれやれと言いたげな様子で肩をすくめる。
あの痴女が何の為に男子更衣室に入って来たのか知らないし、知りたくもないがどうせ男子更衣室に入って来た変態なのだ。用事があるならば更衣室の外で待つか、時間をずらして会いに来れば良いだけの話である。変態と係わると碌な事にも成りそうに無いので一夏はあの更衣室に入ってくる変態の事を忘れようと考える。どうせ、男子更衣室に入ってくる変態は頭がおかしいのだ。そんな輩の事を思う時間が勿体無い。
「全く、あんな輩が現れるのだ。俺であったから良かったものを……何処かでIS学園の制服が流出されて販売されているのやもしれん。後でちーたんに学園警備について相談せねば」
そう呟くと一夏は汗でぬれたISスーツを着替え始める。授業開始のチャイムがすでに鳴ってしまい、遅刻は確定であったがまあ、変態の出現によって遅刻したと言い訳をすればIS学園の警備の甘さを指摘でき、情状酌量の余地は狙えるのではと思うも遅刻している現状には変わりない。その為、さっさと着替えて更衣室を後にするのだった。
◇ ◇
急いで教室に入った一夏を迎えるのは鬼の形相の世界最強、姉の千冬だった。
「遅刻の言い訳は以上か?織斑」
「いや、だから、変態が痴女が居たんだって!!」
そう吠える一夏に千冬は頭を抱える。
「……男子更衣室に入ってくる変態が、居たとしてもお前が遅刻していい理由にはならないが?」
「異議あり!そもそも、痴女が居なければ俺は痴女にかける時間は生まれなかった!!よって、学園警備の甘さとセキュリティーの甘さによって今回は引き起こされた事件と指摘する!故にこちらに非は無い!!」
「ほう」とドスの利いた声を発し千冬はデュノアを見る。
「デュノア、高速切換の実演をしろ。的はそこの馬鹿で構わん!「鬼!悪魔!!」いつもより2倍増しでやれ!!」
「キャー、今日も素敵なお姉さま!愛してます~。I LOVE マ イ シ ス タ ー !!!」
最早愛?何それ美味しいの?と言わんばかりに愛を大安売りで叫ぶ。喉がつぶれんばかりに声を出す。
デュノアが高速切換をして一夏を的にしても一夏はデュノアをぶちのめす実力は持ち合わせているため問題無いが、これ以上
「……っと、言いたい所だがまあ不審者の対応で遅れたのなら仕方ない。これからは気を付けるのだぞ、織斑♪」
「うっす。解かりました」
『あれ?これだからちーたんもしかして弟離れできないんじゃねえ!?』と思い、自己嫌悪でげんなりとした表情の一夏とご機嫌な千冬。
一夏は『これじゃあ、デュノアとバトってた方が楽だったんじゃない?』と思い始めるも後の祭り。ただただ、
☆ ☆
翌日、SHRと一限目の授業をつぶして体育館で全校集会が行われていた。内容は勿論、今月中旬にある学園祭の内容である。
「う、五月蠅い。……いや、五月蠅いを通り越して姦しい」
女共を集め熱気とガヤガヤと五月蠅い私語によって一夏は非常に不愉快な気分になる。何時も楽しみにしている
もう、この集会をボイコットしようかと考えていると
『え~、それでは生徒会長から説明させていただきます』
そう体育館のスピーカから案内が流れて壇上の中央にスポットライトが当たり、中央に生徒会長が現れる。
「さてさて、今年は色々立て込んでいてちゃんとした挨拶がまだだったね。私の名前は「あ、あん時の痴女!」君達生徒の「出やがったな、この変態!!」よ。って、ちょっと君!?」
IS学園生徒会長 更識楯無のスピーチを遮って一夏はピンポイントで楯無の自己紹介に罵詈雑言を浴びせた。それによって引き起こされる混沌……つまり、
「え!?この学園の生徒会長は変態だったの!?」
「いえ、それよりも名前が痴女って」
「名前が痴女で生徒の変態。これって、つまり……」
「「「つまり、生徒会長は痴女で変態なんだわ!!」」」
もう生徒会長 更識楯無は壇上で涙目である。
体育館は混沌とし、先生方は騒ぎを鎮めようとするも火に油を注いだ状態であり手のつけ様が無かった。混沌とした体育館で一夏はゲス顔のまま涙目の生徒会長 更識楯無を見る。そして、更識楯無を見る眼は、こう言っていた『愉悦』と。
先生達(主に千冬)のおかげにより、ようやく騒ぎが収まって全校集会が再開される。
ジーと疑惑の眼を全生徒から向けられたまま壇上の中央にいる生徒会長はコホンと咳払いをして
「では、今月の一大イベント学園祭だけれども今回に限り特別ルールを設けます。その内容と言うのは」
慣れた手つきで閉じた扇子を取り出し横にスライドさせるとそれに応じて空間ディスプレイが浮かび上がった。
そこには、『各部対抗織斑一夏争奪戦』と書かれていて一夏の写真が浮かび上がる。
「は?」
「「「ええええええええええ~~っ!?」」」
割れんばかりの叫び声にホールが揺れる。
状況判断に苦しむ一夏は頭を押さえてその場にしゃがむが、その間に説明はどんどんされていく。
「静かに。学園祭では毎年弱部活動ごとに催しを出して、それに対して投票を行い上位組に特別助成金が出る仕組みでしたが、今回はそれではつまらないと思い、織斑一夏君を一意に部活動に強制入部させましょう!」
「うおおおおお!!」
「素晴らしい、素晴らしいわ生徒会長!」
「今日からすぐに準備を始めるわよ!秋季大会?ほっとけあんなん」
ギャアギャアと喚くレディーズの中一人黒く揺らめく人物がいた。
「………フフフ」
その者の額には青筋が無数に浮かび上がり、まさに怒り心頭だった。
「俺が、この俺が
怒鳴る様に一夏はボスを呼ぶ。
体育館の扉が蹴破られるように開かれ、扉の向こうから一羽の巨大なダチョウが現れた。
ボスは一夏の所まで駆ける。
ボスの前は生徒たちがいるもモーゼの十戒の如く人が割れ、道が出来る。
一夏はボスに乗るとそのまま壇上にいる生徒会長の所までボスを走らせる。
壇上に向かう途中、先生方が進路方向に立ち塞がるが、その教師の頭を踏み台にしてボスは一夏を載せて跳ぶ。
「私を踏み台にした!?」
「跳んだ!?」
ドンと鈍い音を発しながらボスは一夏を載せて壇上の中央にいる生徒会長の前に立ちふさがると首を下げて一夏を滑り台のように背中から降ろす。
「おい、こらこのウルトラ痴女……いや、グレート変態!!手前、誰の断りを得て俺を巻き込んでんだ。ああん!?」
「あら、これは先生方も公認の事よ?」
「ハ?」
唖然とした表情で職員方を見てみれば、千冬は頭を痛そうに抱えているが他の職員は全員にこやかな表情で一夏を見ていた。それを見て一夏は確信した。こいつ等、何かで買収されやがったな、と。
一夏の怒りのボルテージは更にヒートアップ。
目の前の生徒会長を見るとそこには『計画通り』と書かれた扇子を広げていた。
「……そうか。ならば、力を持って獣と同じように
そう言って拳を振り上げる。
一夏が最も得意とする拳術を持ってして目の前の生徒会長に解からせようと画策する。
「織斑流拳術 断空手刀斬り!!」
スパンと振り下ろされる拳は最早鋭利な一つの刃。手刀となって生徒会長の演説をサポートしていた机を真っ二つにする。
まるで千冬に一刀両断されたかのように綺麗に切られた机は大きな物音を立てながら一夏と生徒会長の間に道を作る。
「表に出ろ雑魚が!身の程を教えてやる」
こうして、本人未承諾で進められた話に怒り心頭、憤怒の一夏は学園最強の事実を示す生徒会長と激突する。
因みに千冬が頭を抱えていたのは絶対にこうなる事が予測出来たからであり、事前に教えておいてくれれば何かしらの対策を考えれた物の、全校集会の直前に言われたため何も対策を立てれずに全校集会を迎えたためである。
「良いでしょう。あなたが勝てばこの話は白紙に、私が勝てば計画通りに」
「いや、違う。敗者は勝者に従うのみだ!手前こそ、自ら地面に吐いた唾を飲み込めぬ現実を思い知れ!!」
かくして、ここに学園最強と学園最凶のバトルが全校生徒の前で宣言された。