拳の一夏と剣の千冬   作:zeke

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第7話

 クラッチングスタートをした一夏はセシリアの初弾を走って躱した。

 

「避けますのね。ですが、その回避は何時まで続くか……見ものですわね!?」

 

――スターライトmkⅢ次弾装填。発射。

 更に、ブルー・ティアーズきます。

 

「ええい、鬱陶しい!!邪魔だ!んな事、見りゃあ解んだよ!」

 

 画面に表示される表示に文句を垂れながら一夏はセシリアのスターライトmkⅢの攻撃を蛇行しながら走って回避していた。一夏が2秒前に居た地面はセシリアの主力武装であるスターライトmkⅢのレーザーが地面を抉り取っている。

 

 スターライトmkⅢのレーザー射撃が次々と一夏に襲いかかる中、セシリアのISブルー・ティアーズのバックパックに備わっているガンダムで言フィンファンネルの様な武装ブルー・ティアーズが4機射出される。4機はそれぞれが一夏の周りに張り付くように一夏と距離を置きながらも一夏に付いて回る。

 

 その内、一夏の左方向に張り付いていたブルー・ティアーズ(以下ビット)の一機が一夏に向けてレーザー射撃を行う。

 

 一夏はすぐさま全神経と意識を両足にかけ、急停止をする。

 一夏を狙って撃たれたビットのレーザー射撃は一夏の目の前を通り過ぎ、一夏の左からレーザー射撃を行ったビットと一夏の目の前で並走していたビットはそのまま過ぎ去り、右側にいたビットは、一夏が急停止した際に右手で掴まれていた。

 

 一夏は実は握力が130kgある。そんな一夏がパワードスーツであるISに乗り、ビットを掴んだら、普通の機械では離れる事が出来ない。

 

 一夏はセシリアとの対戦直前まで修行をしていた。オールレンジ攻撃を想定し、IS学園のサバゲー部に見学に行き、複数のサバゲー部員に寄る同時攻撃を受けたり、剣道部や弓道部の練習を見て目を鍛えたり、ISの基本理論であるパワードスーツというのを想定して体を鍛えたり、セシリアのISの情報を収集したりと、凡人なりの努力をした。

 

 そして、一夏の後ろに居て一緒に併走していたビットは一夏が急停止した為一夏の背中にぶつかった。

 

「!?」

 

 一夏はその場で一回転しながらぶつかったビットに裏拳を食らわす。

 遠心力+一夏の裏拳に寄る威力によって一夏の背中にぶつかったビットはその原型を留めることなく爆散する。

 

「な!?」

 

 その様子を見ていたセシリアは驚いてすぐに一夏に向けて主力武装であるスターライトmkⅢによるレーザー射撃を行うも、一夏はその左手に持っていた物をスターライトmkⅢのレーザー軌道上に向かって放り投げる。

 

 スターライトmkⅢのレーザーが一夏が投げた物体に当たると辺りに土煙が舞い上がり、セシリアの視界が悪くなる。

 

 

★☆★

 

 

「凄いですね、織斑君。とてもIS可動時間が1時間未満とは思えませんね~」

 

 一夏の戦う様子をモニター越しで見ていた山田先生は千冬にそう漏らす。

 

「まあ、な。私の弟だからあれぐらいは出来て当然だ」

 

 そう呟く千冬に山田先生は「ハイハイ、弟さん自慢ご馳走様です」と苦笑した。

 その様子に少し拗ねたような態度を見せる千冬。そして、再び視線を一夏の戦っている様子を映し出しているモニターへと移す。

 

「注目すべきは、まだ武装を使っていないという事だ」

 

「あれ?でも、織斑君が何かを投げて視界が悪くなりましたけれども……」

 

「あれは、恐らくだが、クラッチングスタートの姿勢をする前に地面を殴っていただろう?」

 

「え、あ、はい。そうでしたね」

 

「その時に地面を砕いて取った砂の塊だろう。そして、織斑が今右手に持っているのがセシリア・オルコットのブルー・ティアーズの一機だ」

 

「……本当に武装を使ってないんですね。凄いですね、織斑君」

 

「何せ、あれは私の弟でありながら、かつて神童と呼ばれた男だぞ。まあ、重度の怠け癖があって今はその能力が全く活かされていないが、それでも戦闘事になればすぐさまその能力を発揮する。天性の才能を持ちながら怠け癖故に凡人と本人は、ほざいている様だがな」

 

「うわー。それは酷いですね」

 

「全くだ。あいつも少しは態度とか意識を変えればすぐさま、その天性の能力を発揮するんだが……ハア、怠け癖だけでなくおまけに戦闘狂ときたものだ」

 

「頭が痛い」とボヤく千冬に山田先生は「お疲れ様です」と苦笑する。

 

そして戦闘は、いよいよ最終ラウンドへと移る。

 

 

○    ○    ● 

 

 

 砂煙を上げ、視界が悪くなったセシリア。すぐさま砂煙の中に次々とスターライトmkⅢのレーザーの雨を浴びせる。

 

 上空からレーザーの雨が降ってくる中、一夏はすぐさま前方へと駆ける。狙いは先程通り過ぎたブルー・ティアーズ。

 

 すぐに一夏が走っているとブルー・ティアーズに追いついた。一機を踵落として地面にめり込ませて破壊し、もう一機を空いている左手で掴み取る。

 左右両方の手にセシリアのビット ブルー・ティアーズが握られると一夏は初めてISのPICによる加速を土煙の中に姿を隠した状態で行う。

 

「!?」

 

 急に土煙の中から現れた一夏にセシリアは驚いた。

 今まで一夏は走ってセシリアの攻撃を避けており、加速はこれが初めて。全てはこの時の為に加速を行わなかった。セシリアの虚を付いた状態の一夏。コンマ数秒で一夏とセシリアの距離は縮まり、あともう少しでという所でセシリアが動いた。

 

「お生憎様、ブルー・ティアーズは六機ありましてよ」

 

 嘲笑うかのようにセシリアが笑みを浮かべる。

 セシリアの腰部から広がるスカート状のアーマー。その突起が外れて動いた。『弾道型』のブルー・ティアーズ2機が一夏に襲いかかる。そして、そのままセシリアは後ろへと逃れる。

 

「知ってたさ。そのぐらい」

 

そして、そのセシリアを嘲笑う一夏。

 両手に持っていたセシリアのレーザー型のブルー・ティアーズを『弾道型』のブルー・ティアーズに向かって投げつける。レーザー型と弾道型のブルー・ティアーズ同士が激突し、セシリアと一夏の間で白い爆発が起きる。

 

 その爆発にさらに加速して突っ込み、爆煙を駆け抜け一夏はセシリアの前に現れた。

 だが、未だ蹴りや拳が届く距離じゃない。

 

「残念ですが、ここまでですわ!」

 

セシリアのスターライトmkⅢの銃口が一夏に向けられロックされる。

 

「ああ、残念だ。……ここは、俺の距離だ!」

 

 横に一閃。

 セシリアは、持っていたスターライトmkⅢを盾にしてその一閃を回避する。すると、セシリアの持つスターライトmkⅢが斬られ、斬られた部分が僅かにズレて爆散した。

爆発に飲み込まれダメージを受けるセシリア。

 

 彼女は爆発に巻き込まれながら確かに見た。

 

 織斑一夏という武神の手に握られているスターライトmkⅢを遥かに上回る、巨大な大剣を。

 

「近接特化型ブレード 雪片弐型だとよ。お味は如何かな?」

 

 落ちていくセシリアに、にやりと笑みを浮かべる一夏。

 

 セシリアに目掛けて更に追い討ちをかけるかの如く加速する。そして、上段に構えた状態で加速のエネルギーも利用して巨大な大剣 雪片弐型による縦の斬撃を放つ。振り下ろされる斬撃。雪片弐型の重量+斬撃+更に加速によるエネルギーがセシリアを襲うだろう。迫り来る雪片弐型。

 

 その時、セシリアに当たる直前で雪片弐型がセシリアの顔の数mm先で止まった。

 

「降参する?」

 

「ハア、降参しますわ。武装も苦手な近距離武装 インターセプターしかありませんもの」

 

『試合終了。勝者――織斑一夏』

 

 決着を告げるブザーの音。第三アリーナは、来ていたギャラリー達による熱い熱気に包まれた。

 

「よっ、とっ」

 

 地面に降りたつ一夏。地面に雪片弐型を突き刺した瞬間、異変が起きた。

 眩い光に包まれ、アリーナに来ていた全員が目を瞑る。

 光が止み、全員が目を開けるとそこには、滑らかな曲線とシャープなラインが特徴の洗練された形へと変化している『白式』の姿があった。

 

「あ、あなた、まさか!今まで初期設定だけの機体で戦って勝利を収めた言うんですの!?」

 

 信じられないと言いたげなセシリアの表情。

 第三アリーナに来ていたギャラリーたちも「嘘!?」「え、初期設定だけで!?」と口々に驚いている様子。

 そんな中一夏は、何でもなさそうに言う。

 

「あ゛?別に驚くことじゃねえだろう?右手の動かす作動開始時間がコンマ8秒遅く、左手がコンマ5秒、右足が1秒、左足が1.2秒遅かったからそれを視野に入れて計算しながら戦っただけだぜ。普通だろう?」

 

 それを聞いて、セシリアは「……代表候補生のプライドがズタズタですわ」と嘆き、モニター越しでそれを見ていた千冬は「普段からこういう姿勢で生活してくれればどんなに楽か」と嘆き、山田先生は「ええ~、初期設定だけで勝っちゃいましたよ、織斑君」と驚き、アリーナに来ていたギャラリーも( ゚д゚)ポカーンとした表情で見ていた。

 

 予想外の展開に一夏を除く全員が気の抜けたアクションを出していた。一夏だけは「遅せえ!今頃進化かよ!!」と怒っていたが。

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