空港の倉庫付近に着いた一夏達。建物の陰に隠れながら目的の倉庫の様子を探ってみる。
倉庫の入り口は半分開かれており、倉庫に何者かが出入りしたことが伺える。ISを展開し、セシリアにブルーティアーズのレーザービットで倉庫を包囲させる。ラウラに合図しレールカノンの照準を倉庫に向けさせた
「さあ、景気よく派手に行こうぜ。奴らに手向ける花火としては立派だろうよ」
一夏の合図と共ラウラ、セシリア、デュノアの3人による倉庫への集中砲撃が始まった。IS3機による集中砲火により倉庫は瞬く間に瓦解していく。崩れ落ちる倉庫から二つの機影が飛び出た。
「おいおい、随分なご挨拶じゃないか。なあ、フォルテ?」
「そうっすね」
レインは火球を、フォルテは氷の槍を専用機持ち達に投げる。
降りかかる火球を一夏は雪片弐型で一刀両断に切り捨て、フォルテから放たれた氷の槍はラウラのAICによって止められた。
「どうした?その程度じゃあ俺を殺す事も俺から逃げることも出来んぞ?」
瞬時加速によってレインとの距離を詰めた一夏に迫り来る機影があった。
「お前の相手は私だ!」
娘のマドカその人だ。
新たなる力を手に入れ、再び一夏の前に現れた。再び現れたマドカに一夏は歓喜の声を上げそうになるのをぐっと堪えマドカを見据える。
「良いだろう。お前の相手をしてやる」
マドカと共に瞬時加速でその場を離脱する一夏。突然の事にうろたえ始める専用機持ちに対してラウラは作戦中だ、しっかりしろ!と叱責する。
再びレールカノンの砲口をレインとフォルテに向けるラウラ。照準が定まると連続砲撃を開始する。
爆音が倉庫群に鳴り響く。
「ハア!」
新たなる力を手にしたマドカ。その手にバスター・ブレードの【フェンリル・ブロウ】を持ちダークパープルのエネルギーが刃に展開され最大出力で振るわれ唸りを上げる。
「零落白夜起動!」
一夏もまた雪片弐型の刃に消滅エネルギーを纏わりつかせマドカが振るう【フェンリル・ブロウ】の斬撃を受け止め、鍔成り合いを繰り広げる。数回の鍔成り合いで決着が付かない二人は一時的に距離をとる。
対峙する二人。
「……ハッキリ言っておこう。素晴らしい、素晴らしいぞ、マドカァ!だが、まだだ。今のお前はただただマシーンに操られているだけの装置に過ぎない。武器と心を一つとなる。これこそ、武器持ちの原点。武器を己の手足と同化させる」
まあ、俺には無理だったがな。とボヤキながらマドカに教える。
その一夏の説明を聞きマドカは目を閉じる。意識を機体に、剣に向け感覚を研ぎ澄ます。
マドカの眼が再度開かれた瞬間、マドカの体が僅かにぶれ横に一閃の斬撃が放たれた。【フェンリル・ブロウ】の刀身が伸び、ダークパープルのエネルギー刃が一夏を襲う。
それを雪片弐型を楯にして防ぐがその圧倒的なエネルギーが一夏を河まで大きく吹き飛ばし巨大な水柱を作る。
河の中から出てくる一夏は歓喜の声をあげる。
「素晴らしい!予想以上だ!!何れは俺を超えるであろう原石、その片鱗を俺は見た!」
それはお世辞でもない純粋な賞賛だった。
ただ一度の教えでここまでやるマドカの才能は稀有だ。マドカならば自分が持つ技の全てを習得出来るかもしれないと思ったが、だがマドカは武術タイプとしては恐らく動のタイプ。感情を爆発させ、速度と威力が上昇するが大振りになりやすく失敗すればリミッターが外れた状態で理性を失う。静に比べて動は習得しやすいと言われるが反面育成に失敗すれば理性を失った怪物となる。
「ダイヤの原石も磨かなければ石屑か」
そう呟きながら一夏はマドカに雪片弐型を振るう。白き消滅エネルギーを纏った刃とダークパープルの刃が交差する。徐々に徐々に雪片弐型を振るう速度を早くしているが、マドカはそれに必死に追いついてきているのが解るがそれでも呼吸が荒くなっており、肩が上下に動き疲労の色を見せる。気を密かに練り、それを活用している一夏と何も解らぬままただただ剣を振るうマドカとの差。疲労を見せるマドカに対して全く疲労を見せず感じさせない一夏。体は互角かマドカの方が勝っているかもしれないが、力の使い方を知らなければそれは宝の持ち腐れと化す。
振るわれるダークパープルの刃。刀身が伸び続け、周囲の景色を一変させる。
「だが、甘い!」
フェンリル・ブロウの伸び続ける刀身が周囲の景色を一変させるその瞬間、一夏は瞬時加速でマドカとの距離をいっきにつめ、フェンリル・ブロウの剣の上に乗る。一夏の重みでフェンリル・ブロウの重さが重くなりフェンリル・ブロウの剣先が垂れ下がる。
その瞬間マドカの首筋に消滅エネルギーを纏った雪片弐型の刃が突きつけられる。
「「……」」
お互いに無言でその顔をじっと見る。
一夏は宙返りで後ろに飛び、マドカは剣を引っ込める。
突如、パチパチと拍手音が鳴り響き一夏とマドカはその音のする方向へすぐさま視線を向ける。いつの間にか、そこには見た事も無い正体不明のISが宙に浮いていた。ただ、そのISの背後には色々な色の数多の球が浮いていた。バイザーで隠れた顔だが、操縦者は信じられないが男。それがもし真実ならば世界でISが操縦できる2番目の男性という事になる。
マドカの前に移動し、マドカを背中で隠すような立ち位置に陣取る一夏。
マドカは殺気全開だが、マドカではこの相手は勝てない。マドカは弟子クラス。対する相手はその体から滲み出る気での推測だが達人クラス。マドカを守りながら戦うハンデを負っている以上迂闊には動けない。
「……一つ問おう。手前が俺に連絡を寄越してきた糞野郎か?」
「ああ、その通りだ」
その声を聞いて怒りが滲み出る。全ての元凶が今目の前に居るのだ。
待ちに待った相手が、探し続けていた存在が今目の前に。
鼓動が早くなり、汗が噴出し始める。
突如、相手の姿が消えると同時に気配が真上からした。
雪片弐型を楯に上空から振るわれる斬劇を防ぐ。ダークパープルのエネルギーを纏った刃。信じられないことにマドカと同じISを身に纏った相手。
瞬時加速で距離をつめ、消滅エネルギーを纏った雪片弐型を振るう一夏とダークパープルのエネルギーを刃に纏わせたフェンリル・ブロウで刃と刃がぶつかり合う。バイザー越しで見る相手の顔を見た瞬間、一夏の体は硬直した。
「な、なんであんたが!?」
硬直した一夏の体は隙となり、その隙を逃さない蹴りが叩きこまれる。
蹴りこまれた勢いを殺せずに一夏はそのまま放物線を描きながら山肌に落下する。その落下の衝撃はIS越しでも伝わり、すぐさま起きようとする一夏にダークパープルのエネルギーを纏ったフェンリル・ブロウが襲い掛かる。
襲い掛かってくるフェンリル・ブロウ。鞭のようにしなり、何処までも伸びる刀身はまるで蛇の如くうねりをあげる。
「クソが!」
フェンリル・ブロウの迫り来る刀身を雪片弐型で地面に叩き伏せ、地面に食い込ませその上に乗る。これでフェンリル・ブロウは使えない。
空中に佇んでいる相手。一夏には戦えなかった。
「なあ、どうしてなんだ!?」
どうしてあの人があんな事をし一夏の前に立ちふさがるのかわけが解らなかった。
困惑する一夏に対する返事は無慈悲な攻撃だった。背後に浮かぶ球の中から金色の球体が相手の中に入り込み逆に紫の球体が排出される。
すると、相手のISが変化しスコールのISゴールデン・ドーンへと変貌する。
ゴールデン・ドーンから連続して放たれる火球ソリッド・フレア。
「この!」
加速と共に迫る来るソリッド・フレアを一刀両断で真っ二つにして距離を詰める。
雪片弐型が相手に振り下ろされるも、その振り下ろされる速度は鈍いものだった。
雪片弐型を振り下ろす際に一夏の脳裏に悲しそうな表情の束の姿がチラついてしまいその太刀筋を鈍らせているのだ。いや、この戦闘行為そのものが本来ならば束が望まないものであるはずだ。故に満足に戦えないのだ。マドカを守っているというのも相手に押される要因の一つではあるが、それ以上に脳裏に束の悲しそうな表情がチラつくことが一夏の現時点での押されている要因なのだ。
振り下ろされる雪片弐型。だが、その振り下ろされる速度は遅いものでゴールデン・ドーンの尻尾の先端が割れ、食虫植物の様な口をした尻尾が雪片弐型をがっちりと受け止める。押しても引いてもびくりともしない雪片弐型。そうこうしているうちにゴールデン・ドーンの手には特大の火球が形成されており、その火球が一夏に向けて至近距離で放たれる。
逃げる事も出来ずに特大の火球は一夏に命中し、白式の装甲が一部破壊され地面に向けて白式は落下していく。
落下していく白式を纏った一夏に更にソリッド・フレアが連続して放たれ、炎をまき散らしながら一夏に命中し一夏は炎にまみれる。装甲が更に破壊され、皮膚は火傷を負っていく。
「お前!」
マドカは激高し突然の乱入者に対しバスター・ブレード【フェンリル・ブロウ】を振るう。刀身が伸びていき、鞭のようにしなり乱入者に襲い掛かる【フェンリル・ブロウ】。
「フン」
しかし、簡単にゴールデン・ドーンの尻尾で弾かれ軌道を逸らされ、すぐに反撃がなされマドカにソリッド・フレアが向けられる。迫りくるソリッド・フレア。だが、マドカに命中する事は無くマドカの前に一つの機影が現れマドカを迫りくるソリッド・フレアから守る為、その身に攻撃を全て受ける。炎が機影を覆う中で炎の中からその人物現れた。
全身に大やけどを負い、装甲が更に破壊されボロボロの機体を身に纏いながら一夏は炎をかき分けるかのように炎の中から現れる。そしてマドカの手を取ると、思いっきり引っ張り耳打ちをする。
「すまないが、後は自分でなんとかしてくれ。お前を守りながら相手をするのは少しきついのでな」
そう呟くとマドカをハンマー投げの要領で思いっきり投げた。無理やり戦線離脱させられるマドカ。マドカの体は戦闘空域を即座に離脱するほどの勢いで投げ飛ばされた。
全身に大火傷を負い、見るからに重傷な一夏。ISの白式は既に装甲が半分ほど破壊されており、戦闘継続が困難な状況でしかも、相手が相手だ。一夏が躊躇する相手の為戦闘能力は心が揺れ最も低下し対戦相手としては最悪の部類に入るだろう。
拳を構える一夏。脳裏に束の悲しむ顔がチラつき一夏の心情を体現するかのように拳が震える。
「……それでも!」
その瞬間一夏は動いた。瞬時加速と共に拳を振るう。
「織斑流拳術断空手刀斬り!」
スパンとすれ違いざまにゴールデン・ドーンの尻尾を叩き斬る。
更に脳裏に束の姿がチラつき、拳が激しく震え始めた。
それは恐怖。篠ノ之束に嫌われるかもしれないという一夏の恐怖がその幻影を脳裏に生み出していた。
「それでも、俺にはあの人に問わねばならない事があるんだ!」
再び動く一夏。
逃げる相手に瞬時加速で追いつきその体に拳を叩きこもうとしたとき、束の姿が一夏の前に現れた。両腕を広げ一夏を止めるような束の姿。
それは一夏の恐怖が作り出した幻影だった。そこに篠ノ之束は居ない。
だが、その幻影のせいで一夏の体は硬直し敵に攻撃を与えさせる隙を作ってしまった。
ソリッド・フレアが連続して放たれ一夏に直撃する。炎に包まれ一夏は意識を失ってしまう。
「……素晴らしい。その体、依り代として最高だ。貰い受けるぞ」
意識を失った一夏に魔の手が迫る。
〇 ●
視界を動かす限り何もない真っ黒な世界。指一つ動かない状態で一夏は目を覚ます。
ただあるのは自分とそっくりのもう一人の人物が目の前に立っていた。前にもこういうのがあったなと思いだしながらそいつを見る。
「無様だな」
開口一番非難されるが、それに何も言えなかった。
何も出来ずに意識を失ったのだ。反論など出来るはずもなかった。
「織斑一夏は最強であらねばならない。そうだろう?」
そうだ。織斑一夏は最強であらねばならない。
「「天才の横に並び立つために!」」
ただ一度の敗北も許されない。
「だったら、任せろよ。あいつに、もう一人のあいつに」
だが、それでは……
「意識があるから負けるのだ。恐れるな。あいつはお前、お前はあいつ。そして、俺もお前なのだからな」
そうか。ならば、任せるとしよう。
後は、頼んだぞ。
「任せろ」という言葉を耳にして一夏は意識を失う。
意識を失った一夏の皮膚が剥がれていき中からそれは現れる。
「さあ、久しぶりの出番だ。存分にやるが良い。深層心理、無意識の織斑一夏よ」
今ここに最強が現れる。ISを纏った世界最強と生身でやりあい、ISを凍結にやるまで追い込んだ真の世界最強がISを身に纏った状態で再臨する。
□ ■
迫りくる魔の手。その手には一本の禍々しき刃が握られていた。
迫りくる刃。だが、突如一夏は眼を見開いた。その眼は金色に輝き白式の壊れた装甲が剥がれて行き下から新たなる装甲が現れ、その現象は全身に現れ始める。
そして、白式だったものは白騎士へと変貌する。織斑千冬の守りたいと言う白式のコアに残されていた残留意識と無意識状態の一夏の自己防衛本能と闘争本能が共鳴しあい白騎士が出現したのだ
「流水制空圏 発動」
迫りくる刃を右腕で受け流し、左腕で裏拳を行う。
裏拳が相手に命中し相手の装甲が破壊される。ボトリと落ちる金色の装甲。
意識があるから躊躇したのだ。ならば、意識を無くせば躊躇などする筈も無い。
明らかに雰囲気が変わった一夏に対し相手は警戒する。が、その警戒など圧倒的な力の前には意味をなさない。
瞬時加速で距離を詰め相手の視界から消える一夏。相手が気付いた時には相手の上空に位置していて、上空から真下の相手に向けて右、左と連続して踵落としをする。右の踵落としを防がれても左の踵落としを同じ場所にするので二撃目は防ぐ事が困難で現に相手は両肩に備わっている炎の鞭プロミネンスを高速回転させ全身をすっぽり覆う防御シールドとして使用したが一夏の連続踵落としで両方とも半分にへし折れる始末。しかも、プロミネンスをへし折られても踵落としの勢いを殺しきれずに胸部の装甲も一部蹴り飛ばされ、何とか攻撃を回避できたもののつかの間の安堵で、白騎士の腕に武装が展開された。
「!?」
腕に展開されたのは荷電粒子砲。相手が回避した分だけ武装を展開できる距離を作ったという事であり、その距離は荷電粒子砲を展開させるのに十分な距離だった。展開した荷電粒子砲の砲口には壊れていくゴールデン・ドーンを纏った相手がおり、プロミネンスを半分にへし折られた状態で満足に防御など出来るわけもない。
驚く相手に荷電粒子砲は眩い光を集め十分に溜まったエネルギーはゴールデン・ドーンに向けられる。荷電粒子砲から眩い光を見た瞬間、荷電粒子砲に裏拳をして砲口を無理やり逸らすがそれでも間に合わなかった。
荷電粒子砲から溜まったエネルギーが発射されゴールデン・ドーンの背部の装甲を消し飛ばす。
辛うじて肉体は損傷はないが最早ゴールデンドーンは使えなかった。
「素晴らしい、素晴らしすぎるぞ織斑一夏!ISの適合率を持ち、その圧倒的な戦闘能力。瞬時に状況に適応する適応能力。やはり、我が依り代として相応しいのは汝だ。今ここで手に入れたい、手に入れたいがここは退くとしよう。ゴールデン・ドーンも大破してしまったみたいだし、我が能力の全てを使えば汝を手に入れる事は出来ようが、それではこちらもただではすまんだろうし如何せん回復に時間がかかる。そうなってしまえば折角の依り代も台無しになるやもしれんからな」
そう言って相手は連続して火球ソリッド・フレアを一夏に向けて放つ。ソリッド・フレアを全て手刀で真っ二つに一刀両断していくが如何せん数が多く、視界を覆いつくす炎の壁へと変貌する。
炎の壁を加速で突破するとそこにはもう相手の姿は居なかった。
誰も居なくなった戦場。ただ一人白騎士へと変貌した一夏は人気の無い京都が見渡せる丘へと移動する。