第五話
(とりあえず余分に買ってきておいてよかった。なかったら俺がアリアに半殺しにされてたな)
俺はおかわり分も考えて余分に買ってきたのだ。
そして俺とゼンが料理をしている間アリアとキンジはまた口論を始め、何かが出てくる予感がしてたまらなかった。
(できるだけ無視しよう)
さすがにアリアでもキンジを殺す事はしないだろう。
俺はもくもくと料理することにした。
ゼンには俺が変なことにならないように、卵をつけるなどの小学生でもできる指示をしておいた。
「そういえばお前がなっている人って誰なんだ」
俺は2人が聞こえないところにいることを確認して聞いてみた。
「この姿はお前の又従姉のナギサっていうやつだよ」
「え!? 俺に又従姉いたの?」
「あれ? 知らなかったのか」
「知らなかった」
そんなの初耳だ。というか親戚がどれだけいるかさえ知らないんだけどな。そもそも。
「どんなやつなんだ」
「うむ。それがな、なんていうかその・・・・何も読めないんだよなー」
「どうゆうことだよ」
「いや、俺たち悪魔は魔力の流れを読むことができるだろ? でもナギサは流れが見えないんだ。隠すことはできないはずなんだが・・・・」
確かに半分人間の俺でも、魔力の流れを読むことはできる。
「なんなんだそいつ」
「さっぱり。でもまあ、わかることといえば『戦うな』と言ったとこだな」
「そうか・・・・」
「まさかそのナギサっていうのもこっちに来たりしないよな」
俺は心配になったので聞いてみた。
「まさか、そりゃないと思う。だってあいつ強いやつしか興味ないから」
ゼンは笑いながら言った。
「興味ってどういうことだ」
「あいつ強いって言われているやつにケンカをふっかけて、それでボコるか殺すかしているんだよ」
「殺すって・・・・なんでそんなことをしてるんだよ」
「さあな」
「それならお前狙われたことあるのか?」
「ある。でもそん時はじじいがきたから逃げてったよ」
「さすがにあの人には勝てないか」
「そりゃそうだろう。なんたって大魔王なんだからな」
そう、俺の祖父は悪魔のトップの大魔王なのだ。
父さんが息子の魔王。
そして俺はその魔王と人間の間の悪魔。
つまり俺は王家の悪魔なのだ。
でも実際に身内にあったことはない。身内の者で会ったことがあるのはゼンだけだ。
俺の家族は人間界に住むことにしたので王家から切り離された。
「お前それいつの話?」
「俺とあいつが13のとき」
「はああ!?ナギサはいつからそれやってるんだ」
「たしか10歳からだったかな。そういや10のときに小さい町を一個破壊したんだと。たぶんそれがはじまりだと思う。それからじじいが捕まえるために追っかけてんだよ」
「マジかよ・・・」
小さくとも町一個を破壊って、いくら王家だからってあり得ないだろ。しかも10歳で。
「まあ今だに捕まえられてないんだけどな」
「そうか」
俺は絶対に間違っても人間界にこないことを願った。
俺は豚カツをあげた。
じゅうううう
「おお、いい音するな」
「お前豚カツ初めてか」
「うん。魔界には無いからな」
「そりゃそうだろうな。まあとりあえず俺はキャベツ切っとるでこれ見ておいてくれ」
「わかった」
ゼンに任せるのは若干心配だったが、焦げるまで待つことは無いだろう。たぶん。
(しかしナギサって実際どんなんだろうな)
姿はゼンが今なっているからわかるが、性格まではゼンの説明だけではわからない。
俺はキャベツを切りながら想像していた。
「零、これくらいがいいのかな」
ゼンがちゃんと知らせてきた。
「うむ、じゃあ豚カツをすくってくれ」
「はいよ」
俺は食器棚から皿を出した。
そしてその皿にキャベツを盛って
「じゃあ豚カツを・・・・」
盛ろうと言いかけたところで止まった。
「ん? どうした零」
ゼンが手でトンカツをすくっていた。
「お前なんで手ですくってんだよ!」
俺はゼンの手をつかんだ。
「え・・・・」
ゼンの手は火傷してなかった。
「悪魔なんだからこれくらい平気だよ」
ゼンは平気な顔で答えた。
「なんだったら、マグマの中で泳げるよ」
「一応言っとくがやるなよ」
「な・・・・なにやってるのあんたたち」
急にアリアが赤面しながら聞いてきた。
まずい、ゼンは今女の姿だ。
なのに俺は手を握ったままだった。
これは何と言ったらわからない。
「あとマグマってなに?」
ああ、アリアの両手がスカートの中のガバメントにのびている。
(何て言ったら正解なんだ)
いやどちらにしろ撃たれる気がする。
「ええと、な・・・・こ・・」
「『私たちマグマのように熱い関係だね』って言ってそしたら零が手を握ってきたの」
ゼン(女)は微笑み、俺の腕にくっつきながらながら言った。
はい。このバカは悪魔の存在を隠そうとしたのはまだいいが、余計なことを言いやがった。
(何がマグマのように熱いだよ・・・・聞いているこっちが恥ずかしくなるわ)
ほれ、とんでもないことを言うからアリアの赤面がさらに赤くなったじゃないか。
アリアは赤面のさらに赤面のまま口をぱくぱくしている。
「き、き・・・・キッチンでそんなことしてんじゃないわよ!!」
アリアは叫びガバメントをぬいた。
「おおおおお!! 落ち着け!! でないと豚カツやらんぞ!!」
俺がそう言うとピタリと止まり、ムウーとふくれ銃をしまった。
(よ、よかった・・・・)
なんとか乗り切った。一応。
「イスに座っといてくれ、今運ぶから」
「わかった」
アリアはそう言いイスに座った。
「おい、お前なんであんなややこしくさせること言うんだよ。もっと別の言い訳を言えよ」
「え? あれじゃだめなの?」
「当たり前だろ!」
「えーまじで!?」
(だめだこいつ、バカでアホすぎる)
いや、バカとアホって同じか。
まあそんなことはどうでもいいや。
「ねえ、まだなの?」
アリアがイスに座りながら聞いてきた。
「ああ、今持っていく」
そう言い俺はゼンが(手で)すくったカツをキャベツを盛った皿にそれぞれのせてそれを持っていった。
「ふうん。これが豚カツか」
「なんだ、アリアも知らなかったのか」
「だって帰国子女だもの、知らなくて当然だわ」
「お前、外国から来たのか」
「あら、言ってなかったっけ? 朝、ロンドン武偵局からきた言ったと思うんだけど」
「そりゃお前、俺たちは教務科に報告に行って遅れてきたんだから聞いてないに決まってんだろ」
キンジがイスに座りながら言った。
「ヘ~。これがトンカツか。初めてだわ」
アリアはキンジを無視してさっきも言ったことを言いながらじーっと見ていた。
「おお! うまい!」
ゼンが勝手にトンカツを手で食っていた。
「おい、手で食うな」
俺はゼンに箸を渡しながら言った。
「へ~い」
ゼンは箸を受け取りまた食べ始めた。
「行儀悪いわね。イギリスじゃありえないことよ」
アリアがそう言ってもゼンはスルー。
昔っからたいした事でない限り、ゼンは聞く耳を持たない。
「うん、まあでも本当にうまいよ」
キンジは珍しく感想を言った。
「どうも」
俺は一言だけ言って自分も食うことにした。
(確かに自分としては結構うまくできたな)
「本当だ、おいしいわね。これ」
どうやらこのトンカツは普通のやつにも帰国子女にも悪魔にも好評なようだ。
「はぐ・・・・うん。うまいなー」
その後もゼンは一口食うたびにうまいを連呼した。
(まあ、喜んでくれたからよかったな)
俺は心の中でそう呟き、俺のトンカツへ箸を伸ばした。
そこで俺は異変に気付いた。
(気のせいかな・・・・トンカツが減っているような気がする・・・・)
いや、気のせいじゃない。さっきは四切れあったのが三切れになっている。
(誰が取ったんだ・・・・)
しかしそれは考えなくともすぐわかる。
(ゼンだな)
なぜならここには俺とゼン、アリア、キンジの4人である。そしてこの中から容疑者を絞ると、まずアリアはイギリス育ちだから人の食いもんを横取りなんてしないだろう。そしてキンジは人のものを盗んだりはしない。
このようにアリアとキンジにはアリバイがあるが、ゼンはアリバイどころか疑う要素がありすぎる。
ということからすぐにゼンが容疑者となった。
ゼンのトンカツを見てみると、トンカツは四切れだった。
(どうやって俺からとったんだ?)
そうおもった瞬間、ゼンのトンカツが五切れへと増えた。
(まさか!)
そのまさかだった。俺のトンカツは三切れから二切れになっていた。
「おい・・・・ゼ・・ナギサ」
「ん? なあに?」
「お前、俺のトンカツ盗んでるだろ」
「えっ!・・・・なななんのことやらさっぱり・・だな〜なはは・・・・」
「嘘ついたって無駄だぞ。俺は見たんだからな。その現場を見たんだぞ」
俺はゼンを睨むと
「ふぐぐ・・・・ピ、ピンポーン! 私が盗みました! でも気付くの遅かったね。もう今ので四切れ目なんだよ」
ゼンはそう言って、はっ!と口を手で隠した。
「てめ~~~~!!」
俺はゼン(女)の首を締めながら振った。
「く、苦しい! 苦しい! か、返そうにも返せないよー! 返すとしても原型がない状態になるけどそれでいいなら袋もってきなよ! そこにいれてやるから。 あはははは!!」
「このやろ~~!!」
結局俺はゼンの残りのトンカツをもらうことにした。
こうして武偵高の始業式の訳わかんない一日が終わった。
これからパソコンがなんとかなるまで、不定期更新になると思いますのでよろしくお願いします。