超次元ゲイムネプテューヌmk2++ LastGoddess 作:神奈月 椎菜
ラステイション本都。
黒い壁に包まれた階層都市、外から見れば要塞か何かと思うだろう。事実上層部以外は太陽の光を受けず人口の光しか知ることはできないし、コピーか否かを徹底して識別させている分コピーにも人権を、と言い出す輩も増えているとか。そんな住む場所と言うにはまさしく監獄都市ではあるが、物理的な防備に関しては恐らく四国最硬だろうとどこかで聞いた。
コピーに人権はない。人間コピーが開始された頃から言われ続けてきた常識だ。そうでもなければ大量の人型を捨て駒として使えるわけがない。だが、意思を持つ人間のコピーもまた意思を持ってしまう。戦力増強、労働力増強のために増やしすぎたコピーは自らの人権を要求。現状大掛かりなぶつかり合いこそ起きていないものの、いつ武力衝突が起こってもおかしくはない状況だ。
今、私はラステイションの最上層にいる。
別に私の住処がここというわけではない。最上層は言わば行政区、お偉いさん方が集う場所だ。一介の傭兵が本来来る場所ではない。
私がラステイションに戻り、ドルフィン種モンスターの死体の写真を使い報酬を貰い、意気揚々と住処に戻ったら一枚の手紙が扉に貼られていた。その手紙には、こう書かれていた。
【この手紙を読み次第、教会に来て欲しい。詳しい話はそこでする by姉代わり】
破り捨てたい衝動に駆られた。
誰が姉代わりだとかこっちの都合お構いなしかとか言いたいことは多かったが、対面しなければ言いたいことも言えない。文句を言うにも結局行かなければならない。無視すればいいことではあるが、失脚しているとはいえ相手は一応行政機関だ。何されるかわからない以上、結局行くしか選択肢は残されていなかったのだ。
助走を付け、無駄にデカい扉にドロップキック。接触と同時に大きく蹴り跳ね帰って着地。バンと大きな音と共に扉は開き、入り込んで私は言った。
「待たせたな!」
「普通に入ってこれないのかい君は」
そんな私に冷ややかな視線を送る少年、神宮寺ケイ。
恐らく、私に手紙を送りつけた本人だろう。呼びつけておいて随分な態度だと不満だったのが顔に出ていたのか、ケイはため息をついて再度私に目を向けた。
「久しぶりだねフィオ……そういえば君はフロムと名乗っていたかな?」
「誰のことか知らんが私は一介の傭兵フロムだ。今や落ち目の教会の教祖様が何の御用で?」
「傭兵を呼ぶ用ならば1つしかないだろうね。奥で話をしよう」
そう言われ、教会の内部を歩き連れられた先は最上階の一室。妙に手入れはされているが年単位で使われてはいないだろう、要は生活感がない部屋だった。横長の机を挟んで座るとケイが口を開いた。
「改めて久しぶりだね。9年ぶりかな?」
「さてね、私は刹那主義なんだ。それぐらいもあれば忘れる」
「……そうかい。では話をしよう。傭兵フロム、ラステイション教会教祖神宮寺ケイが君を雇いたい」
意外とすぐに本題に入ったことに若干驚きつつも、私は銃を抜いて机に置く。
「金という概念が崩壊し、コピー品が当たり前とすら言われるこの時代に契約や約束を重んじる私やあんたのやり方はゴミみたいなものだ」
「だが、それが正常だ。少なくともそれが横行しているからといって自ら愚に落ちるつもりはないよ」
「老害思考にならないといいが……まぁいい、それで?雇うっつっても私に何をさせるんだ?」
「簡単だよ。入ってくれ」
後ろの扉が開き、二つの足音が近づいて音と共に私の後頭部に円筒上のものが当たる感覚がした。
突然銃を突きつけられる覚えはないとケイに非難の目線を送るが首を振られる。お前が招いたのだろうがと言いたいが口を開けば撃たれそうなので黙ることにした。
数分が経過するも誰も口を開かない。私は単に迂闊に開けないだけなのだが、何度もお前なんとかしろという思いを込めてケイを睨むもののどこ吹く風。お前はなにがしたいんだ。
「……あんたが、フィオネ・ジャーネフェルト?」
「誰だそりゃ。私はフロムだ、ただの傭兵だよ」
「ユニ。そろそろ話を進めたい」
「……」
銃が下げられる音が聞こえた。
緊張が解けて大きく息を吐く。流石に後頭部に銃を突きつけられてはビビって話もできない。
文句の一言でも言おうと後ろを振り向くと
「……」
「……よぅ、今日ぶり」
旧リゾートでモンスターを狩っていた二人組、脱出の瞬間私に銃を突きつけた女がそこに立っていた。後ろには、もうひとりの紫の女が呆れ顔をしている。
そりゃあ、そうか。ここは教会なんだ、女神が現存していたのなら教会に住んでいるはずだ。
「依頼内容は簡単だ、フロム、いやあえてフィオネと呼ぼう。ユニのお守りをしてくれないかな?」
「「は?」」
「はぁ……」
私と黒女の声と、紫女のため息が漏れた。
子供のお守りに傭兵だと?と文句を言いたかったがそれ以前に女神だ。お守りが必要な年齢にも見えないしそもそも女神にお守りが必要なのだろうか?
「弾代を全て教会で負担、教会での居住許可。これでどうだい?」
「乗った」
「安っ軽っ!?」
立ち上がり握手する私たちを見てツッコミを入れる黒女。
教会は政府に並ぶ最高機関だ、当然施設も最高峰となる。アパート暮らしが高級ホテルのスイートルーム暮らしになるようなものだ。最高の一言だろう。
そんな理由で受け入れた私が何か不満なのかもしれんが私は知らん。
「ともかく、その依頼承った。教会の施設で暮らせるってんなら万々歳だ、その日暮しともおさらばってなもんだ」
「中層部の暮らしが気になってきたわ……」
「どこも同じようなものだよユニちゃん、見てきたでしょ?」
「戦力が増えたのは嬉しいことだ。君の住んでいる場所には話を通しておくから、適当な部屋に案内してくれないかな?ユニ。ネプギア君もモンスター討伐ご苦労だったね」
紫女、ネプギアは表情1つ変えずにいえ、と一言呟いて部屋を出て行く。
無愛想な奴だ、というのが私の感想。あれが女神とは、世も末といったところだろうか。
「ネプギアのことは気にしない方がいいわ、ちょっと色々あっただけ。あたしはユニ、ラステイションの女神候補生よ。フィオネ・ジャーネフェルト」
「だからその名前やめろっつの私はフロムだ」
「なんでもいいわ。部屋案内するからついてきて」
私の文句も聞かず早足気味に退室する黒女ことユニ。なんなのあいつという意味を向けてケイの方向を向くと
「ああいう子だ」
と言われるだけに終わった。
仕方なく、私もユニの後を追い部屋を出た。