架物語   作:藍鳥

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 今回は今までよりちょっと長め、と言っても7000字程度ですが......。
 大体何字程度がいいのでしょうか?


こよみアクセル 003

   019

 

 阿良々木暦、忍野忍、垣根帝督。

 

 浜面仕上、麦野沈利、一方通行。

 

 滝壺理后、フレメア=セイヴェルン、打ち止めちゃん。

 

 「こんな感じで良いよね」

 

 「ああ、別に良いんじゃないの?」

 

 僕たちが何をしているのかと言うと、班分け、である。

 謎の魔術結社『新世界』に対抗するため行動する科学サイド、つまりは学園都市の主戦力メンバーの班分け。

 なぜそこに僕と忍が混じっているのかはいささか不思議なところではあるけれど、関わってしまったものは仕方ないだろう。

 扇ちゃんが何と言うか......。またののしられるだろう。

 

 「滝壺はチビたちの面倒見といてくれよ」

 

 浜面が滝壺に言う。

 そのとおり、滝壺班は打ち止めちゃんたちの面倒見だ。だから実際に動くのは阿良々木班と浜面班。

 これから何をするのかは知らないけど。

 下手をすれば魔術師と直接戦うはめになるかもしれない。

 

 「よろしくな、垣根」

 

 『こちらこそ。ところで、忍野さんは?』

 

 「忍は......拗ねて引きこもっちゃったよ」

 

 喋る白いカブトムシ___学園都市第二位、垣根帝督が一体どれほどの実力者なのか想像できないが、仮にも第二位。僕なんかよりずっと強いはずだ。

 司会役兼本部隊隊長、滝壺が最後に言う。

 

 「で、名前付けたいんだけど、何か案ない?」

 

 名前......だと!?

 つまりは組織名を決めるつもりなのか滝壺隊長。

 また騒乱が起こりそうなことを......。

 

 「組織名? 別に『アイテム』でいんじゃね?」

 

 「このメンバーで『アイテム』?」

 

 「......ダリィ」

 

 『別に何でも構いませんが』

 

 「『アイテム』って何?」

 

 「わからないなら黙っててよね、阿良々木」

 

 「扱いが酷い!」

 

 またこんな感じであれやこれやと言い争いが始めた我々。

 数分言いあって結局、

 

 「『アイテム』とか『スクール』とか、別に由来とかないし、適当に決めりゃあいいだろ」

 

 と浜面が意見し、

 

 「『リムーブ』」

 

 と僕が言った。

 即座に反応したのは麦野だ。

 

 「何『リムーブ』って」

 

 「いや、携帯で『り』って打って予測変換で出てきたからさ。めっちゃ適当だろ?」

 

 「あァ、もォそれでイイだろ。イイ加減めンどくせェ......」

 

 そうして僕ら『リムーブ』の第一回作戦会議は終わった。

 

 「じゃあな、阿良々木」

 

 「ああ」

 

 そのまま先程の班に分かれて行動する。

 今は特に目的はなく、何かわかれば携帯で共有する、と言ったところだ。

 あまり学園都市での情報は少なく、集められるのは『消失者(ロスト)』の情報くらいらしく、後は全部土御門の魔術サイドとの繋がりに頼っているそうだ。

 

 「一体、いつになったら帰れるのやら......」

 

 ほんと、お先真っ暗だ。

 

 

 

 

 

   020

 

 第七学区の帰り道。

 僕は一人寂しく歩いていた。

 一応三人行動してるんだけどな。

 忍は僕の影の中で、垣根とかいうカブトムシは制服のポケットの中。

 

 「なぁ垣根」

 

 世間話のつもりで僕は話を振る。

 

 『なんでしょうか』

 

 「いやさ、聞いたところによると、こっちの世界って相当ギクシャクしてるんだってな。僕たちの世界じゃあ第三次世界大戦なんて起きてなかったぜ?」

 

 まぁ、僕たちの町に限っては、吸血鬼がやってきたり詐欺師が暗躍してたりいろいろあったんだけどな。

 戦争をしましょう、とかマジで言ってたヤツもいたし。

 

 『私、その時死体同然の状態でしたから、直接的に関わってはいませんけど、私の力は利用されていたみたいですし、第一位や第四位もいろいろあったみたいです。戦争というのは良くも悪くも人を変えてしまいます』

 

 「そうなのか......」

 

 学園都市第一位、一方通行に、第四位の麦野沈利。

 彼らにも彼らなりの過去や守るべき存在があるのだろう。

 過去は良くも悪くも自身を紡ぐ重大な要素。過去が現在を創り、やがて現在は過去になる。

 僕の場合はどうなのだろう。

 僕の場合は......。

 

 『阿良々木くん』

 

 突然、カブトムシが警戒感を露にする。

 この感じは。

 さっきのアレと同じだ。

 怪異特有の、あの雰囲気。

 もし、また何者かと戦うことになるのなら、先に言っておかなければならないことがある。

 

 「垣根、僕はお前を信用する。だからお前も僕のことを信用して、僕のことはあまり気にしないでくれ」

 

 『わかりました』

 

 つまりは、お互い連携をするのではなく、個々で戦うということ。お互い、力を詳しく知らないのだから、下手に連携すればどうなるかわかったもんじゃない。

 仮にも敵は、学園都市第一位を上回る可能性があるのだから___

 

 たんっ、

 

 と小さな音を立て、そいつは降り立った。

 

 「よぉ、学園都市」

 

 今度の敵は先程のようなローブを着ていない。

 ヴァンパイアハーフのエピソードを彷彿とさせる白ランだ。

 周囲に人間はいない。

 

 『何者ですか』

 

 カブトムシが訊く。

 

 「俺か? ははっ、そーだなァ、別に正体隠せって言われてる訳じゃねーし、この親切なエイザー様が......って名前言っちゃったじゃねぇか!!」

 

 なんかひとりでキレ出したぞ。

 何なんだ、こいつ。

 しかし油断はならない。こいつもおそらくは『新世界』のメンバーだ。どんな魔術を使ってくるかわからない。一発K.O.なんて御免だぜ。

 

 「お前は、『新世界』の魔術師なんだよな」

 

 「あァ、そうだぜ」

 

 ニヤリ、と笑いながら答えた魔術師。敵確定。さぁ、どうでる?

 そして、エイザーの右腕が動く。

 不穏な動き。攻撃への構え。

 僕は自然と脚に力を込める。

 

 「俺ァ、お前を狩りに来たんだぜ、阿良々木暦クゥン?」

 

 「!?」

 

 こいつは、僕の名前を知っている!?

 だが、事態は僕の思考を待ってはくれなかった。

 

 「んじゃまぁ、とっとと終わらせますか、っと」

 

 しゃいぃぃん、と刀を抜刀する音が昼の街に響く。

 エイザーは一振りの刀を抜刀した。

 自身の影から。

 

 「ははっ、久しぶりにおもしれェ獲物だぜ! ったくよぉ!!」

 

 だんっ! とエイザーはダッシュで僕たちの方に駆けてくる。

 異常なほど禍々しい刀と共に。

 

 「くそっ!」

 

 エイザーの斬撃を避ける。

 どうする!? まともにやって勝てる相手なのか!?

 

 『___阿良々木くん、少し下がっててください』

 

 僕とエイザーの間に入り込む白いカブトムシ。

 そして。

 

 ズガァッ!!

 爆音が轟いた。

 

 「何!?」

 

 白い土煙りが舞う。

 エイザーもカブトムシの姿も吸血鬼の目をもってしても見えない。

 やがて、視界が晴れる。

 そこに立っていたのは。

 

 「おおぅ、お前が学園都市第二位様かァ......」

 

 カブトムシではなく、全身真っ白な格好をした少年だった。

 ていうか、

 

 「お前人間だったのか!?」

 

 ロボットか何かだと思っていた。白いし、カブトムシだし。

 

 「私の超能力は『未元物質(ダークマター)』。そう簡単に倒せる程やわな力じゃないですよ」

 

 直後、白の翼が展開した。

 もう、何がなんだかわからない。けれど、これが学園都市第二位の超能力。『未元物質』。

 垣根帝督が宙を舞う。

 

 「うわはははっ!! イイねェ、こりゃぁたまげた! わざわざこんな所まで来た甲斐があったぜ! なァ、超能力者!!」

 

 純白の翼は暴風を巻き上げ、別の翼が直接エイザーを叩きにかかる。

 ガキィン! とエイザーの刀が翼を弾いた。

 垣根はもちろんのこと、エイザーの方も劣ってはいないようだ。何より、あの刀が気になる。

 さて、と。

 これでひとまず垣根の力は見れた。そろそろ僕も加勢しようか。

 

 「借りるぜ___『心渡』!」

 

 エイザーと同じく影から一振りの刀を抜刀。あらゆる怪異、そして魔術を斬り伏せる妖刀『心渡』。

 今回も頼らせてもらうぜ!

 

 「ああああっ!!!」

 

 「チぃッ!!」

 

 僕の剣術に型などない。我流にもなってない、ただ刀を振り回しているだけだ。大体、この刀は初心者には重すぎる。

 それでも垣根と二対一で戦っているおかげか、エイザーの刀は僕を掠めない。僕の刀も掠めていないのだが。

 

 「ははっ! 楽しいねェ阿良々木ィ!!」

 

 「楽しか、ねぇよ!!」

 

 「おわっと!!」

 

 何度目かの剣戟。

 僕とエイザーの刀は互いを弾いた。

 エイザーに今まで無かった隙が生まれる。

 そうだ、今がチャンス!!

 

 「ナイスです、阿良々木くん!」

 

 僕は後方へ大きく跳ぶ。

 一遍の容赦も無かった。

 無慈悲な翼の大連撃がエイザーに叩きつけられた。

 大地に轟く衝撃と暴風。爆音と粉塵が舞う。

 

 「やったか?」

 

 「これならさすがに...... 」

 

 垣根は翼を消滅させ、僕の方を向いて言う。

 

 「とりあえず『リムーブ』のメンバーに連絡しましょう。向こうの班でも何かあったかもしれな___」

 

 「垣根ッ!!!」

 

 僕は叫んだ。

 吸血鬼な目だったから見えたのだ。白煙の向こうから迫りくる影が!

 

 「死ねェ!!」

 

 垣根は横へ回避する。しかし、

 

 「があっ!?」

 

 エイザーの禍々しい刀が腕を掠めた。

 僕が彼の名を呼ぶ間もなく、エイザーは僕へ突進してくる。

 

 「くそっ!」

 

 『心渡』で受け止める。

 

 「オイオイ、阿良々木。まさかアレで終わったなんて思っちゃいねぇよなァ......」

 

 バッ、とエイザーは後方へ跳ぶ。もちろん常人ではあり得ない距離を。

 ヤツは笑っていた。

 ニヤリ、と刀と同じくらい禍々しい笑顔で。

 

 「エイザー!!」

 

 「ははっ、俺の方ばっか見てて大丈夫なのかァ、阿良々木くんよぉ」

 

 どういうことだ?

 僕の敵はこいつだけだ。他に警戒すべき対象なんてどこにも......。

 嫌な予感がした。

 

 「お、おい......」

 

 僕は振り返る。

 振り返って、垣根帝督を視界に捉えた。

 

 「お、おい! 垣根!?」

 

 「......」

 

 垣根帝督は僕を見据えて立っていた。しかし、その瞳には元の緑の光はない。

 あるのは、赤に染まった瞳。

 明らかな警戒色だった。

 一体、何が起こったんだ? 確かさっき、エイザーの刀に斬られて......!

 僕は気付いた。

 

 「お前、まさか!」

 

 「ははっ、お気付きかなぁ、阿良々木くん。そうだぜ、こいつぁ、妖刀だ。『羅刹』っつうんだぜ? カッケェだろ?」

 

 妖刀『羅刹』、だと?

 あの刀、そんなんだったのか。

 しかしヤバいな。垣根帝督がやられた。エイザーと戦えるのは僕一人だ。垣根と同時攻撃を仕掛けても大したダメージは与えられなかったのに、僕一人でどうにかできるのだろうか......。

 だがここで引く訳にはいかない。

 悪いけど、垣根には手当てを少し待ってもらう必要がありそうだ。

 

 「ああ、僕一人でだってやってやるよ。そのための『心渡』だからな。お前一人くらいどうってことないさ」

 

 ハッタリでもなんでもない。ただの強がりだ。

 あの魔術師に打ち勝つなら、弱気でなんていられない。

 

 「そぉかァ、そりゃ良かった。その大太刀、結構強そうだもんなァ......。だけどまぁ、無理だわ」

 

 「あ?」

 

 「お前は一つ勘違いをしている。阿良々木」

 

 何、を言ってるんだ、この男は。

 勘違い? 僕のエイザーに対する勝算のことか? それとも『心渡』を過信していることについてなのか?

 いや、そうじゃない。

 そんなこと、エイザーは気付いていても指摘するようなことじゃない。だとすれば......。

 僕は、ゆっくりと振り返る。

 

 「......ッ!?」

 

 垣根帝督が、白から赤へ変色していた。

 明らかに様子がおかしい!

 

 「おい! 垣根!? おい!!」

 

 「......」

 

 しかし垣根は動かない。

 光の失せた瞳はそれでも僕だけを見据えている。

 

 「ははっ、気付いたかなァ? 俺のコイツ、妖刀『羅刹』はよォ、斬った相手を侵食するんだと。侵食して、意のままに操る」

 

 つまり、今の垣根は完全にエイザーの言うがまま、ということか?

 だとすれば、敵は一人ではなく、二人だ。

 形勢が完全に逆転した。二対一から一対二へ。学園都市第二位という大戦力が傾いたことによって。

 

 「よぉし、第二位。殺れ」

 

 エイザーが短く告げた。

 その命令をコードに、垣根帝督が動いてしまう。

 僕を殺すべく、動き出す。

 

 「......」

 

 「どうすりゃいいんだ......!」

 

 再び純白の翼を広げ、天空へ飛翔する垣根。狙っているのは僕。

 詰んだな、とそれだけを思った。

 今の僕の吸血鬼性じゃ、あの連撃を耐えることは到底不可能だ。あとはこの『心渡』で対抗するしかないが、それにも限界がある。それに、エイザーが今はフリーなのだ。

 僕もあの妖刀に斬られて終わりだ。

 

 「......っく!」

 

 純白の殺意が僕を標準した。

 来る!

 直後。

 

 ズガァァァァァッ!!!

 

 「......何!?」

 

 何かが、垣根に横から突撃をかましたのだ。

 垣根は同じく白い何かと共に墜落する。

 あれは......何だ?

 

 『大丈夫ですか、阿良々木くん』

 

 白い何かは言った。____何かではなく、白いカブトムシが。

 

 「ええっ!? 垣根!?」

 

 いや待て、垣根帝督は確かにエイザーに操られて僕を殺そうとしていたはずだ。なのになぜカブトムシが?

 やがて砂煙が晴れ、中から赤い少年が現れた。正真正銘、僕と行動を共にしていた垣根帝督だ。

 つまり、いまここには垣根帝督が二人いる。

 

 「ど、どういうことだ?」

 

 『すみません。言っていませんでしたか? 私は一人ではなく、複数が同じ「垣根帝督」として存在していると。私たちにマスターはなく、その全てが「垣根帝督」そのものとして存在しているのです』

 

 「え、ええ.....?」

 

 この白いカブトムシの言っていることがわからない。

 ていうか、そもそもなぜカブトムシの姿で人語を喋れているのかわからない。

 

 『まぁ今は気にしないでください。すぐに分かることですから。今は目の前の敵に集中しましょう』

 

 「お、おう......」

 

 ともかくこれで二対二だ。なんとか希望が見えてきた。

 赤垣根は白垣根が対処するとして、僕はエイザーの妖刀『羅刹』を攻略する必要がある。

 あの刀身に少しも触れずに戦うとなると、少し厄介、というかかなり厄介だ。

 かと言って特に打開策があるわけでもない。これが僕の普通だ。そう簡単に物事が進む訳がないのだ。

 ___まぁ、扇ちゃんや羽川ならば、話は変わって来たのかもしれないけど。

 いない人間を頼っても仕方がない。

 今は僕の力だけでなんとかしないと。

 

 そして、垣根の方では更なる異常が起こっていた。

 

 「......え?」

 

 思わず呆けてしまう。

 垣根が増えていたのだ。それも五人に。

 

 「さて、どうしたものでしょうか、これは」

 

 「さぁ? 一応科学の範疇に無い物、とだけは分かりますが......」

 

 「魔術、ですか」

 

 「異常を察知して来てみれば、全く、何をやっているのですかね」

 

 「仕方ありません、彼にできないことは私たちにもできませんから、こうやって複数で相手をする、ということです」

 

 とりあえず、垣根の『未元物質』は自身を複製できる能力だと理解しておく。

 これ以上は頭がパンクしそうだ。

 全く、一体学園都市って何なんだ?

 

 「ははっ、これで六対二、か。なかなかイイ感じじゃねぇか。なぁ阿良々木!」

 

 「知らねぇよ。けどこれで決着は着くんじゃないか? 垣根一人じゃ五人の垣根には勝てないだろ? だとすれば次はお前の番だ」

 

 「ははっ、なるほどねェ......。ま、結局何も変わってないんだけどな」

 

 なんでこいつはそこまで余裕なんだ?

 普通に考えたら、この状況、絶体絶命だぜ?

 イマイチ理解が追いつかない。それとも何かまだ奥の手があるのか?

 垣根五人を押し返せる程の奥の手が。

 

 「ま、絶体絶命なのは変わんねぇけど、どっちにせよ、俺は()()()()()

 

 その言葉を皮切りに戦闘が再開した。

 僕とエイザーは再び激突する。

 『心渡』と吸血鬼の動体視力でなんとか対抗する。

 

 「おらァッ!!」

 

 「くっ!」

 

 何度かの剣戟。

 なんとか互角に戦闘を進める。

 そして、早くも向こう側では___

 

 「とどめだッ!!」

 

 「.....!」

 

 五人の翼が垣根帝督を貫いていた。

 これで六対一。

 勝てる!

 

 「おおぅ、やられっちまったかぁ、第二位さんよぉ。まぁイイ、阿良々木、お前の顔は覚えたぜェッ!!」

 

 バッ、とエイザーが飛び退いた。

 僕の斬撃が空を切る。

 

 「ま、今回はこれくらいでイイだろ。また今度相手してやんぜ、阿良々木」

 

 「お、おい!?」

 

 たんっ、と地面を蹴ってビルを跳んで行ってしまった。

 ......なんとか、なったのか?

 垣根軍団の方を見ると、一人を残して四人がカブトムシ化して飛んでいくところだった。

 

 「お前ら! 助かったぜ!!」

 

 僕は礼は言っておく主義だ。

 どこかしらへ消えていく四匹のカブトムシを僕は黙って見守っていた。

 残った垣根が言う。

 

 「事情は把握しています。とりあえず浜面さんたちに連絡しましょう」

 

 「あ、ああ」

 

 僕はポケットから携帯電話を取りだし、数少ない電話番号から浜面を見つけ、コールした。

 さっきのファミレスでメアドとか交換しておいたのだ。

 

 「......あれ? 出ないな......」

 

 もしかして、向こうも何者かの襲撃の合ったのか? もしくはただ手が込んでいるだけか......。

 仕方がないので今度は麦野の携帯に掛ける。

 しかし___

 

 「おかしい、電話に出ない......」

 

 「何かあったのかもしれません、一応メールを残しておいたらいいと思いますが___」

 

 その時だった。

 プルルル、と僕の携帯が震える。

 電話だ。

 それも麦野から。

 何事もないことを願い、電話に応じる。

 

 『阿良々木! そっちは大丈夫か!? 変なヤツが来やがった!!』

 

 何事か、あったらしい。

 麦野が怒鳴るような大声で話す。

 

 『くそっ! 浜面がやられた!!』

 

 「なん、だって......?」

 

 浜面がやられた?

 誰に? ___おそらく僕を襲ったヤツと同種の魔術師だ。

 しかしなぜだ? 浜面班には超能力者が二人、一方通行と麦野沈利が一緒にいたはずなのに?

 それとも学園都市第一位に加えて第四位が共に戦ったとしても勝てなかったのか?

 ならいまだ麦野が危険に晒されている可能性があるじゃないか。

 応援に駆けつけるべきなのか。いや、僕が行ったところでなんになるというのだ。

 僕はエイザーに一度も刀を掠めることができなかった。

 ......そうだ、ならば垣根に行ってもらえば良いじゃないか。

 垣根の力は本物だ。それにいざとなったらまた別の垣根に駆けつけて貰えばいい......。

 

 「___木くん___阿良々木くん!!」

 

 垣根が僕を呼んでいた。

 随分と長く呆けて固まっていたようだ。

 気が動転しているが自分でもわかる。

 吸血鬼に始まる幾つもの怪異に関わり、時に戦った僕だけれども、こんな経験は初めてなのだ。

 そしてここまで敗北したことなど無かった。仲間がやられたのも初めてだ。

 つまりこれは未経験の恐怖。

 新たな怪異と向き合うような、恐怖。

 

 「何があったのですか? 話してください」

 

 垣根の言葉を聞き、なんとか落ち着きながら、僕はゆっくりと口を開く。

 

 「浜面が、やられたらしい......。どうすればいいんだ? 今すぐにでも駆けつけるべきなのか?」

 

 「行くのなら、私も行きます。今一人で動くのは危険すぎます」

 

 よし。

 なら、早く行こう。通話はいつの間にか切れていたようなので、僕は再び麦野にコールする。

 待ってろ、浜面、麦野、一方通行。

 今すぐ行くぞ! 

 

 




 という訳で、新世界の敵魔術師1、エイザーです。
 格好はエピソード&削板軍覇のような白ラン、同じくエピソードと被りますが金髪的なイメージで。特に重要なことではありませんが......。
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