艦娘と改造人間   作:断空我

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ファーストシーズン
プロローグ:改造人間、鎮守府へ


男は体の自由を奪われ、全身を切り刻まれた。

 

肉はより強いモノへ骨は機械と別の素材へ。脳みそも書き換えられ、一度、彼自身は存在をなくす。

 

先兵として全てへ牙を向けるはずだった。

 

しかし、そうなる前にすべてが終わった。

 

彼の存在が明るみになる前、彼らの手によって全てが終わる。

 

それから彼の存在は忘れ去られる。

 

誰も彼の事を思い出さない。

 

誰も、彼の存在を語らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘という存在がいる。

 

世界大戦中に活躍し沈んだ戦艦や駆逐艦の記憶と力を宿した少女達。

 

彼女達はある理由のために海で戦い続けている。

 

深海棲艦、

 

海で沈んだ船の怨念が形となって現れた者達。

 

深海棲艦は世界中の海を支配する。

 

深海棲艦という脅威は人類の兵器を一切受け付けず、人類は敗北の歴史をたどり続けていた。

 

そこに艦娘が現れる。

 

彼女達だけが“唯一”深海棲艦と戦える存在だった。

 

艦娘によってかろうじて海の完全支配は逃れている。

 

彼女達は鎮守府という場所で訓練や生活を行っている。

 

「しかし、普通の人間で誰も艦娘の存在は知らないのである」

 

目の前で開かれている資料に目を通して青年が顔を上げる。

 

「それで、こんな機密まみれの書類を俺に読ませてどうするつもりさ?」

 

重要とスタンプされている書類を見せた男は一言だけ告げる。

 

「キミへある鎮守府の司令官を務めてもらいたい」

 

「いやいやいや、待ってくれよ」

 

青年は苦笑しながら手を振る。

 

「俺に司令官って、そんなガラじゃないことは知っているでしょ?なにより、艦隊指揮経験もないわけだし」

 

まともな生活を送っていないという言葉を辛うじて飲み込む。

 

「確かに艦隊指揮経験はない。だが、キミは…」

 

「何より」

 

男の声を遮り青年は告げる。

 

「こんな体になった俺にどうしろっていうんだ」

 

男と青年の目が合う。

 

その目は語ってはいけない秘密を明かすのかという問い。

 

話すべきではない内容の問いかけだった。

 

「その答えはキミが見つけることだ」

 

「はいはい」

 

わかりっている応答だった。

 

青年はその答えを自分で見つけなければならない。

 

何故なら―。

 

「さて、俺はこれで失礼させて」

 

「ある鎮守府にいた提督が職務を放棄した」

 

去ろうとした青年の背中へ男が言葉を投げる。

 

男は続ける。

 

「艦娘達はまともな補給を受けられず。敵対する深海棲艦へ抗うことができない。疲弊の毎日を送っているそうだ」

 

「…チッ」

 

青年は舌打ちをする。

 

「勿論、無理に司令官へなれとはいわない。まずは様子だけでもみてきてくれないか?」

 

男の提案に青年は少し考える。

 

「わかった…見に行くだけならいいさ」

 

この言葉を青年はすぐに後悔することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……帰る」

 

「ま、待ってよ!」

 

大本営の入口で待っていた少女は去ろうとしていた青年へ待ったをかける。

 

黒髪に青い瞳、黒に近い制服を纏った少女。

 

彼女の名前は時雨という。

 

そしてもう一人。

 

「もう~、逃げることないじゃない」

 

「離せ」

 

露出度の高い服を纏った女性が青年の腕へ抱き付く。

 

「陸奥、もう一度言おう、離せ」

 

「もう、ヤマトは冷たいわねぇ」

 

長門型二番艦陸奥。

 

白露型二番艦時雨。

 

この二人は先ほどの男が言っていた艦娘達である。

 

そして、青年と少なからず縁があった。

 

青年、立花ヤマトは面倒な表情を浮かべて駐車しているバイクへ乗ろうと歩みだす。

 

「あ、バイクなら既に鎮守府へ届けているから」

 

「…は!?どうやって行くんだよ」

 

「私が運転する車よ」

 

陸奥が車のカギを見せる。

 

「お前、免許は」

 

「持っているわよ?」

 

特別!というハンコが押された免許証を見せて陸奥は微笑む。

 

頭痛がしたような気がして頭を押さえる。

 

「さ、いこっか」

 

時雨がヤマトの手を引いて歩き出す。

 

抵抗する気力すらなくなってしまった。

 

その後、ヤマトは睡眠をとる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眠っている立花ヤマトの顔をみて時雨と陸奥は微笑む。

 

「眠っているね」

 

「ねぇ、陸奥はどう思う?今回の件」

 

助手席にいる時雨が陸奥へ問いかける。

 

その内容はヤマトの鎮守府着任について。

 

「元帥の選択は正しいと思いたい…けれど、配属先に問題がありすぎるわ」

 

「そんなに?」

 

時雨も鎮守府に所属していた艦娘だ。

 

過去にひどい場所をみてきた。

 

そこまで?と彼女の目は訊ねる。

 

与えられた情報。

 

陸奥は大淀から教えられていた情報を伝えた。

 

「それは最低だね。そんなところへいくの?」

 

「私達も所属よ…といってもヤマトが拒絶したら遊撃隊へ戻るけど」

 

陸奥が眠るヤマトの姿をミラー越しにみた。

 

「彼は何度、傷つかないといけないのかしら」

 

「何もできない僕らはもっと最低だね」

 

時雨の言葉に陸奥は返せない。

 

返すことができなかった。

 

そして、車は目的地たる鎮守府へ到着する。

 

 

 

 

 

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