かつて、立ちはだかった男がいた。
そいつは組織のために裏切り者を始末するべく現れた。
同じ姿、同じスペック、差があるとすれば戦いの経験。
積まれた経験の差から男は勝利を得る寸前までいった。
しかし、彼の魂は組織を否定した。
組織の在り方を認めなかった男は首輪があるというのにそれを引きちぎり反旗を翻す。
待ち受ける先が死であるとしりながらも男は突き進んだ。
歩んだ友が悲しむということを考えずに。
ヤマトはサイクロンへ跨り鎮守府の外へ出ていた。
バイクに乗っていると全てがクリアになり何も考えずに済む。
永遠にバイクで乗っていたら何も考えずに済む。しかし、そうはいかないのが世界であり現実だ。
道もどこまで続くというわけではない。いずれ終わりや別の道が現れる。
「!?」
横から現れたのは一台の車。
ヤマトはバイクを止める。
赤と白のカラーリングが施されたレーシングカー。
その車に乗っていた人物を見てヤマトは目を細める。
ダークカラーに近い青いグローブとブーツ、風に揺れる黄色いマフラー。傷だらけのバッタを模した仮面。腹部についている白いベルト。
ヤマトの変身する姿と酷似している部分が多い相手はゆっくりと車から降りる。
そして、地面を蹴る。
サイクロンから転がるように飛び降りたヤマトへ強烈な蹴りが放たれた。
それを受け止めて反撃に転じるよりも早く拳が体を貫く。
「グッ!」
体をくの字に折り曲げたヤマトへ止めとばかりに蹴りが放たれた。
瞬間、ヤマトの腹部からタイフーンが現れて、風が吹く。
放たれた拳をヤマトは手で掴み押し返す。
素顔を仮面で隠してヤマトは拳を構える。
赤く輝く複眼が敵を捉えた。
「俺は3号」
構える仮面ライダーに対して相手は名乗る。
「仮面ライダー3号、それが俺の名前だ。1号。俺の目的はお前を倒す事。お前を倒すために俺は存在している」
自らを3号と名乗った男は背を向けるとそのまま車、トライサイクロンへ乗り込む。
「覚悟しておくんだな」
そういうと3号は風と共に去っていく。
これはヤマトが鎮守府を去ると宣言した二日前。
海へ出撃する少し前の話だった。
叢雲は今後の活動について悩んでいた。
海域へ出ようとするならあの重巡級と空母級をなんとかしないといけない。
しかし、戦力ならぬ火力が圧倒的に不足していた。
駆逐艦なら回避能力が高いからなんとかできるかもしれないが火力が心苦しい。
できるなら重巡、贅沢をいえたら空母の力を借りたかった。
「無理ね…」
この鎮守府に重巡と空母は存在する。
しかし、彼女達は様々な問題を抱えていた。
それを前任達にさんざんなじられたことで心が壊れかけている。
叢雲や天龍達以上に危険だ。
そこに大本営から~の話を伝えたら、最悪、大本営を潰しにかかるかもしれない。
「…やっぱり」
自分ひとりじゃ限界がある。
叢雲は先の事を考えて悩む。
何とかできないだろうか?
悩んでいた叢雲の脳裏に陸奥の言葉が蘇る。
「アイツ…か」
相談するかと考えたところで執務室の扉が乱暴に開いた。
「む、叢雲さーん!」
涙目で突撃してきたのは皐月だった。
「どうしたの?」
「大変です!ち、鎮守府に変な人が、そ、それに文月がぁあああああ」
叢雲は慌てて外へ飛び出す。
ヤマトは目の前の状況に困惑した。
「いや、俺は」
「うわぁああああああああああああん」
鎮守府の入口で文月が大きな声で泣いている。
それに男はどうすればいいのか本気で困ったという表情だった。
ある程度、ヤマトでなれているとはいえ、未だ外の人間は怖いということだろう。
助けに入らないとあの男が不味いだろうなと近づいていく。
「文月」
「あ、ヤマトさーん!」
「大丈夫か?」
「はい~」
瞳をうるうると滲ませながら文月はヤマトを見上げる。
傍からみれば泣きじゃくる娘をあやす父親の姿だが本人たちがどう思っているかはおいておこう。
「ここれは俺に任せて文月は鎮守府に戻っていてくれ」
「はーい!」
先程までの涙はどこへいったのやら笑顔になって文月は去っていく。
さてと、とヤマトは呟いて目の前の男を見る。
「久しぶりだな。立花ヤマト」
「そうだな、黒井響一郎」
黒井響一郎、彼との関係を記すなら知り合いでありライバルという言葉が合うだろう。
彼と知り合ったのは本当に偶然、友達に誘われてフォーミュラグランプリを観戦しに行った際のことだ。友人のレーサーがケガで出られなくなったという理由で急遽ヤマトが駆り出された。元々、モトクロスをやっていたことと気まぐれでとっていたライセンスにより飛び入り参加、そして優勝だった。
そのレースに参加していた一人が黒井響一郎であり常にレーサーとして優勝をかっさらっていた。
「あの日の事は今でも忘れられない9連覇していた俺は唯一、お前に負けた」
「それから何度もレースへ参加するように突っかかってきたな」
「しかし、お前は参加しなかった」
黒井はサングラス越しに鋭い目でヤマトを見た。
「何故、レースへ参加しない?お前なら世界だって狙える。少し前からモトクロスの方も参加していないらしいな」
「個人的都合だ」
「海軍に入ったことと関係しているのか?」
黒井の問い詰めるような投げかけは続く。
「だとしてもお前に関係はないだろう」
「ある、俺は一度、お前に負けた。俺に敗北は許されない。なんとしてもお前から勝利という栄光を勝ち取る」
「あれは運が良かっただけに過ぎない。お前も理解しているだろ?最終カーブ、運よく俺はお前を抜くことができた」
「運も実力のうちという…俺は勝つ、勝たなければ意味がない」
サングラスを外して黒井は呟く。
「勝てば正義、負ければ悪」
その言葉ははじめて黒井に出会った時もいっていた。
彼はどこか妄念にとりつかれたようにこの言葉を呟く。
勝つことへの執念が嫌でもわかる。
他者を蹴落としてまで勝利をつかむことを望まないヤマトと異なる。
それがヤマトと響一郎の違い。
「立花ヤマト、俺はお前に勝利する。そうすることで…」
「悪いが」
ヤマトは黒井へ背を向ける。
「何があろうと俺はレーサーへ戻らない………戻るわけにいかないんだよ」
そういって鎮守府の中へ向かう。
ヤマトの背中を黒井は見ていた。
「レースか」
黒井との再会が切っ掛けだろうか。無性にレーサーだった頃の血が騒ぎ始めた。
レースに出たい。
バイクで競い合いたい。
そんな欲求が渦巻く。
しかし、ヤマトはレースへ出れない。
出てはいけないのだ。
立花ヤマトは改造人間である。
彼の体は常人のものと比べ物にならない差ができている。そんな人間がレースにでたら。
「レースへ打ち込んでいる人間に失礼だ」
だからこそ、ヤマトはレースに出ることを拒否した。
レーサーとしての人生をもついえた。
今のヤマトは只の人間ではない。
彼ができることは、この拳で。
「隙あり!」
飛来した拳にヤマトは反応が遅れる。
衝撃と共に鎮守府の外へ吹き飛ばされた。
「グッ…いきなり」
「人間、お前を殺す」
そういって現れたのは軽巡洋艦の川内。
彼女は憎悪に顔を歪ませてヤマトを睨んでいる。
人間への激しい憎悪。
それが嫌でもわかった。
「人の気持ちが沈んでいる時にくんなよなぁ」
「うるさい!お前がここにいるからいけないんだ!」
お前はここにいるべきでない。
その言葉は何度も投げられた。
だからこそ。
「そうだな、本当ならさっさと出ていくべきなんだろう」
「死ね!」
川内の拳がヤマトへ突き刺さる。
内臓を圧迫して口から鮮血が飛び散った。
その隙を突くようにして上空からコウモリの怪物が川内とヤマトへ襲い掛かる。
「なっ!」
予想外の襲撃に川内は戸惑い、ヤマトは彼女を突き飛ばす。
コウモリ怪人の爪がヤマトの体を切り裂く。
「嘘…なに?」
上空で旋回してコウモリ怪人が川内へ迫る。
川内を守るようにヤマトが横から飛びかかりコウモリ怪人を地面へ突き飛ばす。
「ガハッ、クソッ…」
ヤマトの腰にタイフーンが現れる。
旋風と共に仮面ライダーへ変身する。コウモリ怪人が不気味な声を上げる。
仮面ライダーはコウモリ怪人へ拳を放つ。
攻撃を受けて地面へのけ反るコウモリ怪人。
「何なの…あれ」
川内は目の前の光景に息をのむ。
「川内さんは聴いていなかったわね。あれは改造人間よ」
「改造人間?」
隣へやってきた叢雲が戦いを見ながら川内へ話す。
「あれはショッカーという組織によって」
「違う」
叢雲の説明を途中で黒井が遮る。
「アンタ」
何者といおうとした叢雲へ黒井が訂正を入れる。
「あれはショッカーの改造人間じゃない。あれはゴルゴムの怪人だ」
「ゴルゴム?」
「ま、黙ってみているといいさ」
三人が話している間に仮面ライダーはコウモリ怪人へキックを叩きこむ。
ライダーのキックはコウモリ怪人の肉体を切り裂き、内臓をバラバラに砕く。
断末魔を上げてコウモリ怪人は爆発する。
「はぁ…はぁ…」
仮面ライダーが立ち上がると同時に黒井が近づく。
「流石はショッカーの裏切り者ということか」
「…お前」
現れた黒井に仮面ライダーは驚きの表情を浮かべる。
「立花ヤマト、お前がレーサーを引退した理由は知っている。ショッカーに改造された事、裏切り者として奴らと戦っていることもな」
「…なら」
「しかし、俺はそれで納得できない。俺は勝たないといけない。だから」
黒井の腹部に白いタイフーンが現れる。
ベルトの中心にあるのは鷲のエンブレム。
「だから、俺は改造人間になった」
タイフーンの左右のスィッチを入れる。
「変身!」
叫ぶとともに旋風が巻き起こり黒井も変身する。
その姿は仮面ライダーと酷似していた。いや、かなり近いものがあった。
「俺は仮面ライダー3号、お前に勝つ!」