艦娘と改造人間   作:断空我

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ここでクロスファイヤというタイトルにしたらネタになりそうだったのでボツに。


11.見えない十字架

自らを仮面ライダー3号と名乗った黒井響一郎は叫びと共に拳を仮面ライダーへ放つ。

 

戸惑いながらも拳をいなし距離をとる。

 

「黒井、なぜだ、お前…」

 

「俺の目的は勝つこと。それ以外に理由がいるか?」

 

「ふざけるな!その体になるということは」

 

「あと一つ」

 

指を立てて3号が近づく。

 

「俺の妻子を殺した貴様を潰す!」

 

放たれた拳をよけきれずに仮面ライダーは吹き飛ばされる。

 

地面を転がりつつもすぐに起き上がった。

 

「殺した!?俺が!お前の妻子を!」

 

「勝てば正義、負ければ悪。仮面ライダー、立花大和。お前を殺して俺は正義になる!」

 

叫びと共に仮面ライダー3号が地面を蹴り宙へ舞い上がる。

 

右足に青いエネルギーを纏いながら仮面ライダーへ迫った。

 

「ライダーキック!」

 

「くそっ」

 

仮面ライダーも地面を蹴りライダーキックを同じように放つ。

 

両者はすれ違うように入れ替わり地面へ落ちる。

 

派手な音と同時に仮面ライダーが倒れた。

 

ゆっくりと起き上がろうとした3号。だが膝をつく。

 

「流石は多くの改造人間を倒した男、しかし、お前の技に迷いがあった」

 

仮面を外して黒井は振り返る。

 

起き上がろうとするヤマトへ告げる。

 

「俺は貴様を倒す。次に指定する場所で決着をつけよう」

 

変身を解除した黒井はそういうと去っていく。

 

同じように元に戻ったヤマトは彼を見ていたが次第に意識が遠のき、やがて地面へ倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は不死身だぞ」

 

嘗て、共に戦った親友はそういってなくなった。

 

重たい病でも、敵と戦って殺されたわけでもない。

 

ショッカーの改造人間としての寿命を迎えた。

 

あっさりと友は逝った。

 

別れの挨拶もなく、また会えることを約束していなくなった。

 

唯一の友といってもよかった。

 

だからこそ、彼に甘えていたのかもしれない。

 

独りになったからこそわかる。

 

自分は醜く、弱い。

 

誰かを求めてしまう。

 

そんなことはあってはならない。

 

いずれ、自分も――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤマトさん!」

 

目を開けると涙目の潮がいた。

 

ヤマトが意識を取り戻したことに気付くと泣きながら抱き付いてくる。

 

「いててて、抱き付くなって」

 

「でも、ち、血まみれで、倒れたって」

 

「こんなものすぐに治る。俺は改造人間だからな」

 

そういってヤマトは体を起こす。

 

彼の言う通り胸元にあった傷はなくなっていた。

 

改造されたことによって治癒能力が上昇しており瀕死の傷であろうとなんとかなる。

 

もっとも、一つだけどうしょうもできないものもあったが。

 

「…あの、ヤマトさん」

 

おずおずと潮が上着を羽織ったヤマトへ訊ねる。

 

「なんだ?」

 

「その、無理、していませんか」

 

「別に」

 

潮の問いにヤマトの声が固くなる。

 

「嘘、ですよね?」

 

「何でそんなことをいう?そもそもお前に嘘をつく必要が」

 

部屋を出ようとしたヤマトへ回り込むように潮が覗きこむ。

 

いつもの気弱な、おどおどした目とまるで違う。

 

強い、意志を宿した瞳。

 

それがかつての自分と重なる。

 

「!!」

 

「ヤマトさん、私じゃ、何もできないかもしれません。でも、ヤマトさんの、私達を助けてくれた大和さんの力になりたいんです!!お願いします。私に」

 

「必要ありません」

 

扉を開けて大井がやってくる。その後ろ、ロープでぐるぐる巻きにされている朧と漣の姿があった。

 

「私を呼び出しているという嘘の情報でこんなことをしでかすとはいい度胸ですね」

 

ニコニコと笑みを浮かべているが目は全く笑っていない大井、足が震えて涙がでそうになるが潮は堪える。

 

ここで逃げたら変わらない。彼の力になりたい。

 

真っ向から大井と向かい合う。

 

まさか自分と張り合おうとする艦娘が現れると思わなかったのだろう。大井の顔が少し揺れた。

 

「やめろ」

 

ヤマトが二人の間に立つ。

 

「潮、以前に陸奥が伝えていなかった話、かなり嫌になる話がある。それを訊いたら余計に減滅するかもしれない。俺の事を恨むかもしれない。それでも聞く覚悟があるならここへのこれ、ないなら、帰れ。そして俺に関わるな」

 

潮は迷わずに頷いた。

 

後ろでぐるぐる巻きにされている二人も首を縦に振る。

 

「大井、扉を閉めてくれ」

 

「ヤマトさん!でも」

 

「閉めてくれ」

 

はい、と頷いて大井は扉を閉める。

 

「お前達も聞いていると思うが俺はショッカーに改造された。残念なことに頭の改造もされて最初はショッカーに忠実な兵士だった」

 

「え!?」

 

「そうだったんだ」

 

「ある日、切欠はわからない。気づいたら俺は正気に戻った。その時から俺は裏切り者としてショッカーに狙われた。その際に何度かショッカーの改造人間を殺した。ショッカーの連中も流石に脅威と思ったんだろうな。俺と同じタイプの改造人間を派遣した」

 

ホッパー02。

 

自分と同じ外観ながらカラーリングが異なる改造人間。

 

さらに違いがあれば戦闘経験が自分より上ということ。

 

「そいつと戦っていた時、なんといえばいいかなぁ、そいつもショッカーから裏切り者とされた…」

 

それから彼はヤマトにとって友であり貴重な仲間となった。

 

しかし、ヤマトと異なりある弱点があった。

 

「拒絶反応」

 

「リジェ…クション?」

 

「改造人間は定期的に体内の血液を交換する必要がある。そうしないと体が拒絶反応を起こし死亡する」

 

改造人間の首輪であり忠誠の形。

 

組織から離れれば拒絶反応で死ぬ。

 

頭を改造されていない改造人間が反旗を翻さない最大の理由だった。

 

「って、待ってよ!そんなことがあるんだったらヤマトさんも拒絶反応で死ぬんじゃ」

 

朧の言葉に潮と漣がハッとする。

 

「その心配はないわ」

 

大井の言葉に彼女達の視線が集まる。

 

「俺は、唯一の改造成功例らしくてな。拒絶反応が起きないんだよ。だから死ぬことがない」

 

でも、とヤマトは続ける。

 

「アイツは拒絶反応を起こしながらも最後まで自分を貫いて生きていた。だからだろうな。何も言わずにこの世を去ったよ」

 

思い出すヤマトの表情は哀愁を含んでいる。

 

「ヤマトさんはこれからもショッカーと戦うんですよね」

 

「そうだな、俺は戦わなければならない。ショッカーと」

 

「ヤマトさん、一ついいですか?」

 

ぐるぐる巻きにされている漣は立ち上がってヤマトへ近づく。

 

「ン、なん」

 

「えい」

 

ゴチン!と漣がヤマトへ頭突きをかます。

 

「っぅ、お前、何を」

 

「お願いです!」

 

ペタンと漣が土下座をする。

 

両手が縛られているのに土下座というありえない光景に大井もぽかんとしてしまった。

 

「私達の提督になってください!」

 

「………は?」

 

「さ、漣?」

 

「漣ちゃん…どうしたの」

 

突然の事態に彼女達も困惑する。

 

「私、川内さん達と話をしているのを訊いたんです。一週間したらここをでていくんですよね」

 

「!?」

 

「…聞いていたのか」

 

「その理由はあの3号さんですか?」

 

「そうだな、まさか黒井が変身しているとは思っていなかったが…俺はショッカーに裏切り者として狙われている。そんな奴がここに居座り続けたらここが危険になる。それはわかるだろ?」

 

「わかります。でも、わかりたくありません」

 

「お前な」

 

「あーもう!ヤマトさんは色々と考えすぎなんですよ!敵の追撃とかってね、ここも深海棲艦に狙われているんです!私達だって危険と隣り合わせなんですよ!だったらまだここにいてくださいよ」

 

「意味がわから」

 

「ここなら!」

 

漣は真剣な顔で告げる。

 

「貴方を受けいれる。帰ってこられる家になります」

 

その言葉にヤマトの顔が驚愕へ染まる。

 

「改造人間とか、世界征服とか漣はわかりません。でも、ヤマトさんはとってもいい人です。できるならずぅっといてほしいと思えるくらい。ヤマトさんがその体で苦悩しているなら私達が助けたいと思うくらい大好きなんですよ」

 

「そうだね、私も潮達を助けてくれたし、料理もおいしいから大好きだよ」

 

無言のヤマトへ朧も続ける。

 

「わ、私も、や、や、や、ヤマトさんのことは、だ、だ、だいす」

 

「ありがとうな」

 

ヤマトは三人を見る。

 

自分の事を慕ってくれる子がいる。

 

それだけでヤマトは十分だった。

 

だから。

 

「その話、考えておくよ。大井、調べてほしいことがある」

 

「わかっています。あの話でしょ」

 

「あぁ、黒井の家族の死、それを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲は扉の向こうで言葉を失っていた。

 

立花ヤマトの苦悩。

 

そして、自分が彼へ何を言ったのか。

 

今更ながらに叢雲は理解してしまった。

 

彼はただ巻き込まれた人間なのだ。

 

肉体を弄られて改造人間という存在へ変えられて、洗脳が解けたら裏切り者として狙われる理不尽。そんな世界の中で彼は同じ仲間、今は一人で強大な相手と戦っている。

 

勝ち目はないはず。

 

もしかしたら志半ばで果てるかもしれない。

 

だが、彼はそれをやめない。

 

 

 

 

 

俺は戦わなければならない。ショッカーと。

 

 

 

 

 

まるで自分へ課せられた使命のようにつぶやいた言葉が頭から離れない。

 

「(私は、わかっていなかった…)」

 

彼がどのような十字架を背負い。

 

どんな気持ちで今を生きているのか。

 

今更ながらに叢雲は理解したのだ。

 

「(私、はぁ)」

 

泣きたくなる気持ちを堪える。

 

どうすればいいか。

 

苦悩の中、叢雲は部屋を去る。

 

 

 

 

 

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