今回から叢雲ルートへ突入かな?
『どうやらTypeⅢは敗北したようだね』
『プロトシリーズとはいえ、新型と同等の強化がされていたわ。それを倒すなんてまるで“進化”しているとしか』
『ありえん、改造人間が進化をすることなどない。あるのは組織へ力を発揮することのみ。ホッパーも本来ならば我々へ忠誠を誓わなければならないのだ』
『忠誠もそうだけど、あんな奴へTypeⅣの力を与えてよかったのかな?どうみてもあれ、自己中心的な考えしかないみたいだけど』
『おそらく、我々へいつか牙をむくでしょう。でも今は良いの』
『その通り、目的のために我々は手段を択ばない。使える者は何でも使う。そう全て』
映像はあるモノへ向けられる。
それは本来なら存在しない。四番目の男。
計画になかったが急きょ生み出した存在。
果たしてそれがどこまで貢献してくれるのかはわからない。だが、使えるなら使おう。それがショッカーという組織。
『次の議題だけど、ゴルゴムについてだ』
『最近、鳴りを潜めていたと思ったら急に活発になり初めてもう、嫌になるわ』
『ゴルゴムの歴史は我々よりも古い。向こうも独自の技術を持っている。しかし、世界を制するのは我々ショッカーであり、奴らのような古い連中ではない!』
ショッカーと敵対するのは仮面ライダーだけではない。
同じように世界を掌握せんと目論む、ゴルゴム。
その歴史はかなり古く、ショッカーすら全貌を掴んでいない。何よりショッカーが生み出す改造人間とは別の改造技術を持っており、ゴルゴム製の改造人間とショッカーの改造人間が戦うとどちらが勝つか、それすらわからないほどの科学力。
故にショッカーからすれば目の上のたん瘤でありいずれ潰さないといけない組織。
『ま、今すぐ動く必要もないみたいだね。あっちも内輪でごたごたしているみたいだし』
『世紀王、ゴルゴムのトップたる創生王の候補であり後継者』
『不思議なことに世紀王の片割れが反旗を翻し“仮面ライダー”を名乗っているという』
『ホッパー型の改造人間は今後、開発項目に入れないこととしよう』
『同じことが何度も起きたら困るし、そうね』
『では、次の話へ移ろう』
ショッカーは世界を狙っている。
彼らの計画はいくつも存在していた。
今回の計画もその一つでしかない。
世界を手に入れることこそがショッカーの本望であり本懐なのだ。
故に小さな敵など相手にしない。
それが後にどんな影響を与えることになるなんて彼らは考えなかった。
ヤマトは眠っていた。
普段ならとっくに目を覚ましている時間なのだが起きる気配がない。
傍で従者のように控えている大井は彼の顔を覗き込む。
重力で髪の毛が自然と垂れ下がるが彼の眠りを妨げるようなことはしない。
彼のために、それが大井の信念であり戦う理由でもある。
元々、大井はある鎮守府で活動していた。
そこは艦娘を兵器ではなく仲間として扱っていたいわゆるホワイト鎮守府であり、大井は戦っていた。
しかし、終わりは唐突にやってきた。
深海棲艦の襲撃により鎮守府は半壊、
大井達の奮闘むなしくも撤退を余儀なくされた。
そこをショッカーに狙われる。
艦娘を拉致してデータを集めようという魂胆であり格好の的。
大井達を捕らえようと襲い掛かってくるショッカー戦闘員たちの前に彼は現れた。
バイクに乗って風のように、彼らを許さんというように青い拳で奴らを薙ぎ払う。
当初、大井は恐怖して彼へ敵意むき出しだった。未来の事実を知っていたらあんな態度はとらなかった。過去の自分を魚雷で狙い撃ちにしてやりたい。
そんな大井も今や彼の理解者として行動している。
彼のために行動する。
遊撃部隊にいるのもその一つだ。
だからこそ、大井は彼の邪魔をするものを許さない。
例え。
「アンタ達は出ていきなさい!」
彼へ安らぎを与えるという目的で近づこうとする艦娘であっても。
わらわらと部屋へやってきた艦娘へ大井は冷たい視線を向ける。
「いやいやいや、私達だってご主人様を癒す権利があります!」
「が、頑張ります」
「一人いないけれど第七駆逐隊の力を見せてあげる」
「出ていけ」
「え~、文月はヤマトさんと遊びたい~」
「ボクだってヤマトさんと遊びたいんだ。通してよ~大井さん」
「夜戦~~夜戦~~」
「知るか、とっとと出ていけ。彼の迷惑になるから、てか、夜戦?今は昼よおバカ」
やってきた艦娘。
漣、潮、曙、文月、皐月、川内。
駆逐艦に交じって軽巡がいるというおかしな事態だが大井はそれを言う余裕がなかった。
何故なら。
「(ヤマトさんの眠りを妨げることは許されない)」
それだけに大井は行動しているのだ。
目の前の駆逐艦を追い払って彼の顔をずっと眺めていたいとかそういう邪な気持ちはない。絶対にあるわけがない。
「うるさいなぁ、なんだ?」
大井の上から覆いかぶさるようにヤマトが現れる。
後ろから彼のぬくもりを感じて大井の心臓が爆発しそうになった。
しかし、すぐに能面へ戻る。
「ヤマトさーん!遊ぼう」
「サッカーしよう!」
「夜戦~」
「ご主人様に会うため、漣たちはきました」
「ヤマトさんとお話したいなぁって」
「ご、ご迷惑、でしたか?」
「いや、今、目が覚めたからな。気にしなくていい」
欠伸を噛み殺しながらヤマトは彼女達を部屋へ招く。
「邪魔するぞ」
その時、漣たちを押しのけるようにして一人の艦娘がやってきた。
眼帯をした鋭い目つきの天龍はいきなり押し入るとヤマトの胸ぐらをつかんだ。
「ちょっと!」
「てめぇ、叢雲をどこにやりやがったぁ!」
壁へヤマトを押し付けて天龍が叫ぶ。
その目は殺気立っており今すぐ彼を殺しそうな雰囲気があった。
天龍の気迫に文月と皐月は怯えて、川内の後ろに隠れている。
「ちょっとちょっと、いきなり何やってんの」
「うるせぇ!って、川内、なんでてめぇがいる」
「別にそんなこといいでしょ?それより叢雲がどうしたの」
「アイツがいなくなったんだよ!鎮守府も部屋を、どこを探しても見つからねぇ、連絡も取れてねぇんだよ。だとしたらこいつが何かしたに決まっている!」
決めつけるような物言いに大井が文句を言うよりもはやく、川内が止めに入る。
「焦る気持ちはわかるけれど、彼に話を訊かないとわからないでしょ?」
「お前、本当に川内か?やけに冷静だな」
天龍の知る川内という艦娘は人間へ激しい憎悪を持っている。人間の姿を見たら最後、その人間はひき肉になってしまうほどのものだ。
それがどういうことだろうか。憎悪を感じず。最初にあったころのサバサバした性格へ戻っている。
「(こいつが何かしたのか)」
天龍は川内が元に戻った原因がヤマトだと見抜く。
「ちっ」
胸倉を離して天龍が鋭い眼光を大和へ向ける。
「それで?」
「悪いが、ここ数日、叢雲とはあっていないぞ?何かあったのか」
「てめぇには関係ねぇ!提督でもない奴が口を挟むな!」
「ひう!」
あまりに大きな声で文月が悲鳴を上げる。
申し訳ない気持ちになりながら天龍はヤマトを突き飛ばして部屋から出ていく。
「大丈夫だった?天龍、乱暴だけど良いやつなんだ」
「どこがよ!?」
大井が叫ぶが川内はスルーした。
「ところで、叢雲の件、少し気になるね」
「…家出かねぇ?」
「どうだろ?勝手に外へ出ていくことは許されないから」
的外れなことを言う漣へ朧がありえないというような表情を浮かべた。
ヤマトとしては厄介ごとの臭いがプンプン漂ってきている。
できるなら持ち込まないでくれといいたい。
しかし、事態はそううまくいかないようだ。
「ヤマトさん!」
「ヤマト!」
潮と文月がこっちをみる。
余計に嫌な予感がした。
「「叢雲ちゃんを探すの手伝ってください!」」
ほら、嫌な予感当たった。
「その必要ありません!」と大井が反論しようとしたが川内に取り押さえられてしまい。
味方はゼロだった。
「というわけで叢雲ちゃん特捜チームの会議を始めようと思います!」
文月の宣言に食堂へ集まった艦娘達がおーと歓声を上げる。
その中で唯一、人間たるヤマトが呆れた表情だった。
「叢雲ちゃんの姿が見なくなったのは一昨日から。最後に出会ったのは天龍さんで、執務室で打ち合わせをして以降はみていないんだって。後、艤装による通信もできないそうだよ」
「天龍さんや他の人たちに確認を取っているから間違いなしよ」
状況をまとめた睦月の言葉に如月が頷く。
「あー、だるいけどさー、そうなると探すしか手段ないわけじゃ?」
「望月の言う通りだな。探索の編成をしよう」
「そ、そうですね。あ、ヤマトさん、私と」
「公平にくじ引きで決めようZE!」
「漣にしては良いこと言うわね」
「ヒドス!?」
「………あれ、俺も巻き込まれている?」
くじ引きの中にヤマトも巻き込まれていることに気付いたのは数秒後の事だった。
くじ引きの結果。
第一ペア。
文月、潮。
第二ペア。
望月、漣。
第三ペア。
朧、長月。
第四ペア。
如月、大井。
第五ペア
阿武隈、睦月。
第六ペア。
ヤマト、川内。
「「「「「「ぶ~~~」」」」」」
ヤマトは川内と共に鎮守府の中を歩いていた。
「そういえば」
「どうしたの?」
「お前、いつの間にか俺へ殺意向けなくなったな」
記憶が確かならば隙あれば自分を殺そうとした回数は二桁を超えていた川内。それがなくなっている。
「まー、若気の至りってやつだよ。忘れて」
「お前が言うならそれでいいけど。いいのか?」
「うーん、人間すべてを許したわけじゃないよ?ただ、アンタは他と違うからさ。最後に腐るのか、最後まで私達を助けてくれるのか、それの見極め期間中ってわけ」
「ふーん、とっとと見限ってくれてもいいぜ?」
突き放すような物言いのヤマトへ川内はバシンと肩を叩く。
「そんなつれないこといわない!可愛い女の子と一緒に歩いているんだから喜びなよ。ま、夜戦ならもっと嬉しかったんだけどねぇ」
「本当に夜戦好きなんだな」
「まぁね!」
爽やかに微笑む川内。
出会った当初に向けられていた殺意の顔とはまるで違う。
「(こんな顔が当たり前にできる。それなのに)」
ヤマトが川内の顔を眺めていると彼女が「ん?」と声を漏らす。
「どうしたの」
「いや」
「もしかしてぇ、川内の顔に見惚れちゃったぁ?」
「絶対にないから安心しろ」
「あ、ひっどぉい!」
吠える川内と離れようとするヤマトの前へ陸奥がやってきた。
「あれ、陸奥さんじゃん。どうしたの?」
「おはよう。実はヤマトへ手紙が届いているの」
「俺宛に?誰から」
「宛名がないのよ。とりあえずヤマトに相談しようと思って」
陸奥から手紙を受け取ったヤマトはあっさりと封を切る。
中身を覗きこむ。
「どうやら叢雲は巻き込まれたようだな」
封筒には一言「叢雲は預かった。かえして欲しければ一人で海岸へ来い」というものだった。
紙を握りつぶしたヤマトの顔は怒りに染まっていた。
叢雲が目を覚ますと体の自由が奪われていた。
最初に混乱した彼女だが、さすがに鉄火場をいくつも潜り抜けただけあってすぐに冷静さを取り戻す。
記憶を探り、彼女は思い出した。
夜、休むために執務室から出たところでショッカーの戦闘員に拉致された事。
叢雲が体を見ると鎖で拘束されていた。
「ほう」
聞こえた声に叢雲の耳が動く。
カツカツと靴音が近づいてくる。
「目を覚ましたようだな」
嘘だ。
そう叫びたくなる衝動を堪えて叢雲は顔を上げる。
「久しぶりだなぁ。叢雲ぉ」
鎮守府の前任者にして叢雲の親友を轟沈させた司令官がそこに立っていた。
悪夢が音を立ててやってくる。
牙の矛先は心に傷を抱えた少女。
張り巡らされた罠を潜り抜けていく仮面ライダー。
その仮面ライダーに強敵が立ちはだかる。
NEXT 怒りの矛先。