自らを仮面ライダー4号と名乗った空海の姿に艦娘達は言葉を失った。
ヤマトと同じ仮面ライダー、時雨は知らないが少し前に現れた3号も自らを仮面ライダーといった。
その姿に驚いている陸奥達。
仮面ライダー4号は指を鳴らす。
途端、上空からプロペラ音と共に戦闘機、スカイサイクロンが現れる。
「やれ、スカイサイクロン!」
4号の指示で艦娘達へスカイサイクロンが迫る。
「陸奥!大井!時雨!そっちは任せたぞ」
「わかったわ」
「ヤマトさんのために頑張ります」
「空の敵は苦手だけど全力を出すよ!」
ヤマトの言葉に三人は驚き、外へ向かう。
そして、4号と対峙する。
「所詮、貴様は古い。俺様の敵ではない!」
叫びと共に4号が拳を放つ。
それをヤマトは手でいなす。
「ふん、まぐれだ」
そういいながらハイキックを繰り出すがヤマトに受け止められる。
「その程度か?」
「キッサァマァァァァ!」
物言いに激昂した4号は先ほどよりも速い攻撃を仕掛ける。
しかし、それらをヤマトはあっさりと躱す。
小さく鼻音を鳴らしながら仮面ライダーに変身する。
躱すと同時に4号に一撃を放つ。
「お前は覚悟がない」
仮面ライダーは4号に本気を出す価値なしとみる。
戦った3号は覚悟と意志があった。譲れないものがあるからこそ、ヤマトは黒井と戦う道を選んだ。
しかし、この4号はそれがなかった。
ふわふわしていて、無価値。
改造する人間を間違っているのではないかとすら思うほどだ。形はどうあれ戦ってきた奴らからは何かを感じた。それが良いモノばかりではないが目の前の奴と比べると倒してきた連中のほうが何倍も強いだろう。
「くそっ!なんなんだ!お前はぁ」
叫びと共に拳を前へ繰り出す。
「ライダーパンチ」
躱そうとした時、嫌な予感がして後ろを見る。
仮面ライダーの後ろ、そこは磔にされていた叢雲がいた。
「ちっ!」
仮面ライダーは4号のライダーパンチを受け止める。
「おらおら、どうした?よけないのかぁ?」
一撃を当てたことで4号は笑う。
元来、調子に乗りやすい性格なのだろう。拳を構える動きに余裕が出ていた。
「次々行くぞぉ」
ライダーパンチを4号は繰り出す。
仮面ライダーはそれを受けるのみ。
次第に、仮面ライダーのアーマーや特殊戦闘服に傷がついていく。
叢雲はなぜ避けないのか。すぐに気づいた。
「どうして…」
震える声で叫ぶ。
「どうして、逃げないの!私のことなんか嫌いでしょ!?助ける価値なんか……価値なんか、ない!私達は兵器で、アンタは人間でしょ」
「愚かだよなぁ!兵器を庇うからそんな目にあうんだよ。兵器というのは利用してナンボ!お前みたいに恩や愛情を抱くことは愚かだ!このまま死んで」
叢雲の必死の叫びに便乗するように4号があざ笑う。
ピクリ、と仮面ライダーの指が動く。
何発も放っていてライダーパンチ。
続けて放った一撃を仮面ライダーが受け止める。一撃はマスクへ当たっていた。
「…どいつも、こいつも、いい加減にしろ」
うつむいていた仮面ライダーが顔を上げた。
途端、ものすごい怒気が4号へ向けられる。先ほどと比べ物にならない怒り、それに後ろへのけ反る。
「少し、引っ込んでいろ」
放った拳が4号を捉える。
派手な音と共に壁へめり込んだ。
「グッ…へっ」
クラッシャーから血を吐きながら4号が動かなくなる。
仮面を外してヤマトは叢雲へ振り返り、彼女を拘束している鎖を破壊した。
「叢雲…」
近づいてヤマトは叢雲の額へ凸ピンをした。
「いっぅ!?」
「馬鹿なことをいってんじゃねぇよ」
「ば、馬鹿ってなによ!?」
「馬鹿は馬鹿だ。兵器?お前達は笑ったり飯を食べたり、怒ったりしている。そんな奴が兵器なわけがないだろう。ふざけたことをいうのもいい加減にしろ。俺もこんな会話をするのは嫌いなんだよ」
「嫌いって、それは私達が――」
「俺は改造人間だ」
「っ」
「人間じゃない。どうあっても人間へ戻れない。化け物と一緒だ。壊すことしかできない。ただ、壊して傷つけるだけ。お前達みたいに誰かを守っているわけじゃない」
「そんな…」
叢雲は言葉を詰まらせる。
人間を守る気などない。そう思っていた彼女だがヤマトの「守っている」という言葉に動揺した。
「俺ができるのはこの手を血で汚す事のみ、だから、俺ができるのはお前達が傷つかないよう力を振るうこと」
「それなら、守って」
そこで彼女は気づく。
自分たちの戦う深海棲艦は怨霊ともいえる不可思議な存在。決して艦娘というわけではない。しかし、ヤマトの戦う改造人間は同じ存在。同じ存在なのだ。彼はいうなれば家族を殺しているようなもの。
見えない十字架、叢雲は今になって立花ヤマト、仮面ライダーが自ら背負っているものの重さを理解した。
理解してしまった。
「…」
叢雲が言葉を発しようとした瞬間、彼女の手は勝手に動いた。
「う…そ」
手の中に現れた槍が彼の腹部を貫く。
突然の事にヤマトは目を見開いて、地面へ倒れる。
「嘘、なんで、なんで!?」
困惑する叢雲、そこへ狂ったように笑う4号が叫ぶ。
「馬鹿が!艦娘は提督のいう事に逆らえないよう特殊なコードが刻まれている!奥の手は最後までとっておくもんなんだよ!」
笑いながら4号は倒れているヤマトを蹴り飛ばす。
何度も、何度も、何度もヤマトを蹴り続ける。
「やめてぇ!」
ヤマトを守るように叢雲が覆いかぶさった。
「お前はもう用済みなんだよ!兵器は大人しくしていろ」
叢雲を蹴り飛ばして4号が笑う。
“兵器”
その言葉に彼女は反論した。
生まれてはじめて、否定する。
「違う!私は、兵器、じゃない!」
「あ?」
「私は」
そこから先が出てこない。
言葉を発しない叢雲へいらだった様子の4号が近づこうとした。
「何だ、いえるじゃないか」
聞こえた声に4号は絶句し、叢雲は顔を上げる。
ふらふらと血まみれの立花ヤマトが立ち上がった。
戦闘服やアーマーに血が滴り落ちながらも彼は叢雲へ微笑む。
自分よりも深い傷と十字架を抱えているのに、彼は微笑んだ。
ヤマトは叢雲の頭を撫でる。
「何を」
「忘れないでくれ」
ヤマトは彼女を撫でながら言う。
「お前達の事を大切に思っている人間もいるということ、それだけは忘れないでくれ。忘れない限り、俺は何度でもこの拳を振ろう。今一度、俺はここに誓う」
おいていた仮面を被り、拳を構える。
左手を動かして右手を前へ。
複眼が赤く輝いた。
強い風が吹き荒れる。
まるでヤマトの意志を表すように。彼女達を傷つけた目の前の男を許さないという怒りが風となって吹き荒れるかのように強い風が広がっていく。
「俺はお前達を守る。血まみれの手でも守れる何かがあるというのなら、ショッカーが、悪意が多くの誰かを傷つけようというのならそれを潰す風になってやる。悪を許さない風に!」
「ぐだぐだ、うるせぇんだよ!とっとと消えろやポンコツ!」
起き上がった4号がライダーパンチを仮面ライダーへ放つ。
「…その程度か?」
「なっ!?」
4号は絶句する。
ボロボロの男が自分の拳を受け止めていた。
本来なら肉を裂き、骨を断つほどの威力のある攻撃。それを自らの体で受け止めている。その姿に4号は言葉を失う。
「この程度か」
「ヒッ」
4号は一歩下がる。
目の前にいた男から放つ闘気が目に見えるほど上昇していく。
「行くぞ」
――ライダーパンチ。
彼の放った拳は4号の片腕を体から引き裂いた。
「ぎゃああああああああああああああああああ!?う、腕が俺の腕がぁああああああああああああ」
地面へのたうち回る4号へ冷たい視線を向ける。
「お前に仮面ライダーを名乗る資格はない」
「だ、黙れぇええええ」
血を吹き出しながら4号は叫ぶ。
「スカイサイクロン!こいつを殺せぇええええ」
空に向かって叫ぶ。
しかし、何も起こらない。
「どうした!?スカイサイクロン」
「あの戦闘機なら私達が倒したわよ?」
「なっ!?」
陸奥と大井、そして時雨が現れる。
「全く、サイクロンの真似なんかしてもっとも、性能も愛嬌もあっちの方が上ですけど」
「あ、愛嬌は関係ないような…」
苦笑する時雨を横に大井はフンと鼻音を鳴らす。
「くそっ、こうなったら」
逃げるしかないと4号が背を向けようとした時、壁が壊れる。
突然の事に4号は混乱した。
壊れた壁から現れた腕が伸びる。
「ニクイ」
現れたのは重巡級。
仮面ライダーと戦っていた重巡級。その姿はまがまがしく。赤い光を放っている。
「重巡級…」
「嘘!?あれどうみても普通の重巡じゃないでしょ!?」
「Flagship級だ」
「ガッ!離せ、この化け物、俺を誰だと、俺をなんだと思ってぇえええ」
「ニクイ、ニクイ、ニンゲンガスベテガニクイ!」
じたばたもがく4号だが憎悪に支配されている深海棲艦は声を上げながら彼をバラバラに引き裂く。
おそろしい断末魔を上げながら4号は息絶える。
それから重巡級は艦娘達を見据えた。
赤い瞳は激しい憎悪に包まれている。
次の標的としたようだ。ただ、壊す。
壊すだけと深海棲艦は語っていた。
身構える陸奥達を仮面ライダーが止める。
「俺が…やる」
仮面の中でヤマトは重巡級を見ていた。
相手も同じようにみているような気がした。
しばらく対峙する両者だが動いたのは仮面ライダー。
地面を蹴り、迫る。
近づけまいと砲弾を次々と撃つ。
爆発する周囲を気にせず、空へと舞い上がり。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ニクィィイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
重巡級の砲塔とライダーキック。
二つがぶつかる。
そして、
「すまない」
勝利したのは仮面ライダーだった。
「ァ…ア」
俯き、重巡級は爆発を起こした。
残されたのは仮面ライダー、陸奥、大井、時雨、そして叢雲。
仮面ライダーが彼女へ手を伸ばそうとした時、ハッと叢雲は手を払い、距離をとる。
その時、室内から火花が散った。
施設の至る所から爆発が起きる。
「脱出しないと危険だわ!」
「ヤマトさん、いきますよ!」
艦娘達が施設を脱出しようとする中、叢雲はヤマトから距離をとるだけで動かない。
「ここから脱出して鎮守府へ帰るぞ」
「…もう、無理よ」
叢雲は項垂れる。
「私は、生きている価値がない」
「…そんなことは」
「アンタはないっていうのはわかっている!でも、私はそうは思えない。みんなを守るといいながら多くの危険に晒した。一歩間違えたらみんな沈んでいた。そんな私が戻る場所なんて…それに、私はアンタを」
ヤマトが来てから、否、ずっと前から彼女が抱え込んでいた闇。
空海と出会って、ヤマトの覚悟を見せられて、彼女の中に擽っていた絶望、嫉妬といった様々な負の感情が混ざり合い、彼女を追い詰めていた。
「…お前」
彼女の悲しみを察したヤマトは声をかけようとした。
しかし、彼女を止める資格が果たして自分にあるのだろうか?こんな中途半端な自分で止められるのか?そんな疑問が浮き上がる。
――そんなことないよ!!
その時、ヤマトでもましてや叢雲でない第三者の声が響いた。
重巡級がいた場所へ二人は視線を向ける。
「…嘘」
叢雲は絶句する。
そこに立っていたのは一人の艦娘。
彼女を叢雲は知っている。
知っていたからこそありえない。
今にも泣きそうな顔をして一人の少女が見ている。
茶色に近い黒の髪、白と紺のセーラー服。
叢雲と同じくらいの年齢。
その名を。
「吹…雪」
「叢雲ちゃん」
「嘘、なんで」
困惑する叢雲へ吹雪は手を差し伸べる。
「さ、帰ろう」
その姿は失ったはずのもの。叢雲にとってもう二度と聞くことがないと思っていたもの。
「どうして、私は」
「ずっとみていたよ」
俯いている叢雲へ吹雪は微笑む。
「ずっと、叢雲ちゃんが苦しんで悲しんでいること、なんとかしてあげたかったけれど、私にはどうすることもできなくて…でもね」
吹雪は手を差し伸ばす。
昔からそうだ。
何があっても吹雪は手を差し伸べることをやめなかった。
はじめは拒否していた叢雲も次第に彼女を受け入れるようになっていた。だからこそ、吹雪は今の叢雲の為に手を差し伸べる。
「叢雲ちゃんは悪くないよ」
ヤマトの言葉よりも彼女の言葉は強く。叢雲の闇を払いのける。
敵の施設から脱出したヤマト達は鎮守府へ戻る。
空海の言葉通り鎮守府に先ほどの映像が流されていたようで叢雲が戻ってくると文月をはじめとする駆逐艦仲間達が泣きながら出迎えた。
少し離れたところで川内と天龍の姿がある。
そんな彼女達を陸奥達とヤマトが遠くから見ていた。
「疲れた、部屋へ戻って寝る」
「そうね。私も今回は疲れたわ」
「ヤマトさん、一緒にお風呂入りましょうよ」
「あ、ずるい!僕も」
「二人で勝手に入っていろ」
半ば突き放すように言いながらヤマトは部屋へ向かおうとする。
「あの!」
そんな彼へ吹雪が声をかけた。
「…なんだ?」
「挨拶が遅れてすいません。特型駆逐艦吹雪です!よろしくお願いします。司令官!」
敬礼をして挨拶をする吹雪。
「見ていたんなら知っているだろう?俺は此処の司令官じゃない」
「はい…でも、提督代行なんですよね」
「そう、だな」
「今までありがとうございます。みんなを守ってくれて」
微笑む吹雪を見て成程とヤマトは察する。
吹雪という艦娘の器の大きさ。
だからこそ彼女を慕っていた叢雲の失った時の傷は相当のモノだったのだろうとヤマトは推察した。
「それにしても、あんなところでドロップが起きるなんてね」
「神様の悪戯にしては出来過ぎている感があるわ」
陸奥がまじまじと吹雪を見る。
ドロップ。
それは艦娘が出動して作戦遂行中の際、極稀に起こる現象で解明されていないが戦力として確保することができる。
ほとんどが深海棲艦を倒した時に起こる現象である。今回、あの施設でヤマトが重巡を倒した際にドロップ現象が起きたと推測される。
今回の驚きは、この鎮守府に所属していた艦娘だったということ、轟沈する直前までの記憶を有していたということだろう。
「そろそろ挨拶して来たらどうだ?」
ヤマトはこちらを眺めている艦娘達を見ながら訊ねる。
どうやら吹雪がいることに全員が驚いている様子。
「とっとといってこい」
「失礼します!」
笑顔を浮かべて吹雪はかつての仲間たちの所へ向かう。
その姿を眺めながらヤマトは呟く。
「もう、大丈夫か?」
今回、4号はかなり劣悪というか劣化版の印象で書いています。
正直、ワイルドな4号かいてみたかったけれど、そういうことをしたら違うものになるしなぁということで汚い人間を全面的に出してみた。
艦これ小説で轟沈した娘が帰ってくる方法がいくつかあった中で今回はドロップを採用しました。
吹雪だってドロップできた…ような?
ま、いいか。
キャラ紹介をそろそろ作ろうか検討中。