艦娘と改造人間   作:断空我

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次からある話へ入る為、番外編としてこの男の話を。


EX.心優しい少女とキザな二人目

駆逐艦電。気が弱くいつもおどおどしている所は綾波型の潮と似通っている所が多い。尤も、電は潮よりも平均的なスタイルなので体外的な違いは大きい。

 

そんな電にとって大切な記憶がある。

 

たった一度だけ、司令官の許可をもらって一人で外出した時、電は姉たちから頼まれたおつかいを果たすべく歩いていた。そこを怪しい集団に絡まれた。

 

そんなときにさっそうと現れた一人の男。

 

彼と交わす電にとって忘れることのできない約束。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、コイツ艦娘だぞ!?」

 

「艦娘が外に出ているのか?」

 

屈強な男たちに囲まれた電は恐怖のあまりしゃべることができなかった。そもそも気の弱い彼女だ。目がギラギラしていたことで恐怖していて、動けない。

 

そこへ一人の男が現れる。

 

「おいおい、こんなちっさな餓鬼を大の男がよってたかってみっともないぞ?」

 

電が視線を向けると白いタキシードのようなものに身を包み、スカーフで首元を隠した男の人がいる。

 

整った顔立ちの男にガラの悪い連中が集まった。

 

「あぁ?てめぇ」

 

「俺達の邪魔するなよ」

 

「おいおい、男によられても嬉しくないな。離れろよ」

 

「コイツゥ」

 

飄々とした態度に男達は一斉に男の人へ殴りかかる。

 

電は目をつむった。

 

しかし、男の人は無事でガラの悪い連中だけが地面に倒れている。

 

「全く、ここの治安も悪くなっているな」

 

男はそういうと電の横を通り過ぎていく。

 

「あ、あの!」

 

 

「ガキがこんなところをうろつくもんじゃない。提督の所へ帰りな」

 

「い、電は餓鬼じゃないのです!」

 

「俺から見たら餓鬼だな。もっと身長とか成長させてからくるんだな」

 

「ま、毎日牛乳は飲んでいるのです!!」

 

「そうかい」

 

失礼な物言いに電はぷりぷりと怒る。

 

助けてもらったお礼を言うことを忘れていた。

 

 

「あの、さっきの人達は」

 

「さぁな?男に興味はない」

 

ひらひらと手を振って彼は去っていく。

 

残された電は眉間へしわを寄せつつもすぐに用事を思い出して走る。

 

夕方が近づいてきた。

 

電は買い物袋を抱えて鎮守府の道のりを歩んでいた。

 

遅くなったら提督や姉たちが心配してしまうだろう。電が小走りになった所で悲鳴が聞こえた。

 

「なのです?」

 

困惑しつつも電は音の方へ向かう。

 

電は知らなかったがこの近辺は謎の惨殺事件が多発していた。

 

人の五体がバラバラにされて放置されていることから警察を含めて陸軍も動き出していた。

 

露とも知らない電は薄暗い森の中へ足を踏み入れる。

 

「た、助けてくれ!」

 

茂みの中から現れたのは昼間、電を誘拐しようとした男の一人だった。

 

恐怖で顔を歪めている男は電をみつけて彼女の後ろへ回り込む。

 

「お、お前!艦娘だろう!アイツを倒せ!」

 

そういう男の言葉に振り返ると茂みの中から現れたのは人の形をした狼だった。

 

金と青の特殊戦闘服を纏い、口元からは鋭い牙が覗いている。

 

「我々の姿を見た貴様らを生きて返さん」

 

最初、目の前に現れた存在を深海棲艦だと考えた。

 

深海棲艦は艦艇の怨念が形となった存在で人間を恨んでいる。少し前に陸地へ深海棲艦の一部が上陸したという話が合ったので敵かもしれないと電は艤装の一部を纏う。

 

全てを纏ったとしても海面ではない。全力は出せない。

 

連装砲を構えた電をみて狼男は声を漏らす。

 

「ほぉ、貴様、艦娘か」

 

「だ、だったらなんなのです!」

 

「お前達、艦娘を回収するように上からいわれている。貴様だけは生かしてやろう。だから、そいつをよこせ」

 

「い、電は人を、守るためにいるのです!見捨てるなんてできないのです」

 

「ならば、痛い目を見ろ!」

 

狼男が襲い掛かる。

 

電は震えながらも連装砲を放つ。

 

衝撃と風が吹き荒れる。

 

狼男はその連装砲の一撃を片手で受け止めた。

 

「!?」

 

驚く電を他所に一瞬で間合いを詰めて拳を繰り出す。

 

艤装で受け止めるがあまりの衝撃に電は地面へ倒れる。

 

「に…」

 

腰を抜かしている男へ電は手を伸ばす。

 

逃げて――。

 

そういおうとした言葉は男の声にかき消される。

 

「くんな!化け物!!」

 

「え…?」

 

電へ男は叫ぶ。

 

何故、という言葉が出ずに彼女は困惑する。

 

目の前の男は電を化け物と叫んだのだ。

 

その言葉の意味を理解するより前に男は叫ぶ。

 

「何だよ!なんで、俺がこんな目に合わないといけないんだよ!?深海棲艦とか艦娘とか、化け物同士で争っていろよ!俺らを巻き込むなぁ!」

 

叫んで男は逃げ出す。

 

狼男は鼻音を鳴らした。

 

「愚かな」

 

指先からピックのような手裏剣を投げる。

 

爆弾手裏剣は男の腹に突き刺さった途端、爆発を起こした。

 

「あぁ!」

 

目の前で人が死んだことに電は慟哭する。

 

守れなかった、助けられなかった。

 

「何で…」

 

「あんな屑は生きている価値がない。貴様も、我らと同じ存在なのだから理解しろ。奴らは守る価値もない。手を差し伸べたところで裏切られるぞ」

 

激しい後悔が電へやってくる。

 

ぽろぽろと涙がこぼれていく。

 

人間を助けられなかった。

 

艦娘は深海棲艦と戦うためにいる。それは戦えない人間のため。

 

 

 

 

申し訳ないけれど、お願いします。

 

 

 

 

提督はそういって電の頭を撫でる。

 

だから、電は人間を守る為に深海棲艦と戦ってきた。

 

しかし、目の前で人間から化け物といわれて、狼男からも同族といわれた彼女の心はズタズタだった。

 

何も言えない電へ狼男はゆっくりと近づいていく。

 

その時、闇夜を切り裂くようにして一台のバイクが狼男を突き飛ばす。

 

派手な音を立てて木々へぶつかる狼男。

 

「おい、また、お前か」

 

聞こえた声に電は覚えがあった。

 

自分を助けてくれた人。

 

「どうして…」

 

「うるさい泣き声が聞こえた。それだけだ」

 

そっけない態度をとりながら男は電へ手を差し伸べる。

 

「よく、頑張ったな」

 

電を抱き起してバイクへのせる。

 

男は微笑み、電を撫でる。

 

その撫で方が不思議と心地よかった。

 

「貴様ァ」

 

狼男が体を起こす。

 

「そこにいろ。すぐに終わる」

 

男はそういうと上着をめくる。

 

赤いベルトが現れて旋風が巻き起こった。

 

しばらくして男は変身する。

 

黒い特殊戦闘服。薄緑色のプロテクター、グローブ、ブーツ、そして飛蝗を模した薄緑色の仮面を被り、銀色のクラッシャーをはめ込むことで赤い複眼が輝く。

 

「その姿、貴様、裏切り者の!」

 

拳を肩と胸の前で男は構える。

 

「仮面ライダーか!」

 

男、仮面ライダーは暗闇の中で狼男の放つ爆弾手裏剣をいなす。

 

狼男は獣のような唸り声を上げて襲い掛かる。

 

仮面ライダーは木々の間を飛び交いながらぶつかり合う。

 

互いに互角の動きを見せていた。

 

しかし、仮面ライダーが急に動きを止める。

 

「ゴホッ!」

 

クラッシャーの隙間からどす黒い血が噴き出す。

 

ふらついたところで狼男の爆弾手裏剣がさく裂する。

 

激しい炎がいくつも起こる。

 

「ふん!拒絶反応か!我らショッカーを裏切るからそんな惨めな目にあうのだ!」

 

狼男は笑いながら手裏剣爆弾を投擲する。

 

「この体、力を好きなことに使えるのだ。これほど幸せなことはないだろう!?我々はショッカーと共に世界を掌握する!そのためなら」

 

「軽い」

 

炎の中、仮面ライダーがゆっくりと現れる。

 

口周りを血で汚しながらも彼は炎の中を突き進んだ。

 

「お前達の言う言葉は軽い。一つも俺の心に響かないぜ?まぁ、男のセリフよりかは女の愛のささやきの方が響きやすいかもしれない」

 

「貴様ァ、侮辱するか!」

 

激昂した狼男が接近して拳を放つ。

 

仮面ライダーはその拳を受け止める。

 

「だから…軽いって言っているだろ」

 

一撃が狼男の腹部を打ち抜く。

 

くぐもった声を上げる中、仮面ライダーは何発も拳を放つ。

 

何発も、何発も。

 

何度も攻撃を受けた狼男は近くの木々にぶつかる。

 

「くそっ、俺が、この俺が」

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

叫びと共に仮面ライダーのキックが狼男を貫く。

 

アーマーから火花を散らして大爆発を起こした。

 

「…がはっ、がはっ」

 

仮面を投げ捨てるように脱いで男はせき込む。

 

口からぽたぽたと血が零れていく。

 

「はぁ、はぁ、生きている…な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し傷ついた電をバイクに乗せて男は鎮守府の前まで来ていた。

 

「ほら、気を付けて帰れよ」

 

「……」

 

沈んだ表情の電は無言でバイクを下りる。

 

そのまま鎮守府へ入ろうとしたところで呼び止められた。

 

パチン

 

「あう」

 

振り返った途端、額に小さな痛みが走る。

 

男によってデコピンされたようだ。

 

「な、なにをするのです!?」

 

「ガキがくだらないことを考えるな。無邪気に生きろ」

 

「……な、なにが」

 

「あの人間が全てというわけじゃない。俺みたいな奴からガキみたいなおどおどした奴まで無数に存在する。それが人間だ」

 

「無数に…?」

 

「お前の事を認めない人間もいるだろう。それが全てじゃないってことだけは覚えておいてやれよ」

 

そういって電の頭を撫でる。

 

「……また、会えますか?」

 

不思議とこの人とまた会いたい。もっとお話ししていたいという気持ちに電は包まれて、口が勝手に動く。

 

「そうだな。お前の身長がもっと伸びて、胸も大きくなったら会いに行ってやらなくもない」

 

「意地悪なのです…あ、お兄さんの名前知らないのです」

 

「一文字隼人だ」

 

「電は、電なのです!」

 

「…これをお前に預けておく」

 

一文字隼人は電へ微笑みながら胸元のスカーフを彼女へ巻く。

 

「じゃあな、また会う時は良い女に成長していろよ。その時にそれを返せ」

 

「はいなのです!」

 

バイクを走らせて一文字は去っていく。

 

さっきまでのもやもやが晴れて気分がいい電は鎮守府の門を潜り抜ける。

 

帰ってきたところでボロボロだったことから姉や提督からものすごく心配されたことは当然だろう。

 

 

 

 

 

 

それから電は人のため、多くの人が傷つかないよう奮闘する。

 

全てはもう一度彼と会うためということもあるが、何よりも前よりも成長した自分を見てもらいたいという気持ちが強かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この約束が果たされることはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故なら、一文字隼人は改造人間であり、常に拒絶反応という爆弾を抱えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一か月後、ショッカーの企みをもう一人の仮面ライダーと叩き潰した一文字隼人は寿命を迎えてこの世を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は静かにこの世からいなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで本編でちらほらと語られているもう一人について書きました。

何故、電にしたか。気弱だけど、純粋だよなぁというところが話で活かせるのではないかと思ったからです。

ちなみに今回の狼男はゾル大佐が変身した姿です。わからない人はググルかレンタルしてみてください。
何気にゾル大佐変身の話は作者的に大好きなのでおすすめです。

次回の本編から少し話がとんでもないことになる・・・かもしれないです。
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